リヴァイヴの導きによってイノベイターに覚醒したアニューは、 ライルの言葉に耳を貸す事なく、プトレマイオスを去っていった。 裏切りという重苦しい動揺をクルーに残して――。 リヴァイヴが当初奪おうとしたオーライザーは、ハロの妨害のおかげで強奪を免れたものの、 そのコックピットは短期間ではとても修復不可能なほどに破壊し尽くされてしまった。 その上、アニューの工作によってか、プトレマイオスのシステムはウイルスに冒されダウンし、 艦機能・ガンダムともに戦力は著しく低下してしまった。 艦の統制が大幅に乱れたこの機会をアロウズやイノベイターが見逃すはずがなく、 程なくして、プトレマイオスは敵の総攻撃に晒された。 ガデッサ・ガラッゾに加え、未確認の新型MA・MSを駆使し、 イノベイター達はプトレマイオスを撃墜せんと、猛然と襲い掛かってくる。 敵機の突破を食い止める為、必死に防戦するセラヴィー、そしてアリオスガンダム。 その中で、敵軍の中にアニューの姿を認めたライルは、 もう一度彼女を自らの元に取り戻す為にケルディムを駆った。 全速力で飛び去っていくケルディムの背中を、ティエリアは複雑な思いで見つめていた。 先刻、リヴァイヴの脳干渉によって見せられたライルとアニューの愛の交歓、 そこにあった愛情のやりとりには確かに嘘はなかったはずだ。 だからこそ、アニューの裏切りと言う現状が心に重くのしかかる。 「愛した女はイノベイター!命がけの恋って奴だね!」 コックピットにヒリング・ケアの残酷な嘲笑が響き渡り、ティエリアは怒りを噛み殺した。 この切なく重い感情は、経験したものでしか分からないのだ。 ライルとアニューの真剣な恋情を面白半分で踏みにじる権利など、誰にもあるはずがない。 この離別を画策したのがイノベイターであるなら、尚更――。 憎悪を冷静さに変化させて、ティエリアは新型MAの常識外の攻撃を何とか交わした。 視線の先で、アニューのMSとケルディムが交戦状態に入っている。 ライルの攻撃には迷いが濃く混じっている事が、遠目にも確認できた。 おそらくアニューに戻ってくるよう、必死に説得しているに違いない。 『お前が撃てないのなら、俺が代わりにアニューを撃つ』 刹那がライルにそう告げていた事は、ティエリアも知っている。 ライルの迷いを汲み取って、あえて告げた刹那の決意の言葉。 それでも、もしアニューが変心して再びトレミーへ、ライルの下へ、戻ってくれるなら――。 たとえイノベイターであっても、皆はアニューを受け入れるに違いない。 それだけの絆が、あの艦の人間には出来ている。 しかしアニューが説得に応じず武器を向け続けるのなら、もはや甘えは許されない。 (ライル…!彼女を取り戻す事が出来るのは、君だけだ。彼女の心を取り戻せ…!) ティエリアは強く願いながら、襲い掛かってくる敵機への応戦に精神を集中させた。 「あんた!このあたしに逆らうなんて、いい度胸じゃないのさ!」 ヒリングのガラッゾが防戦一方のセラヴィーを弄ぶように笑いながら、 GNフィールドを引き裂かんばかりにビームサーベルを振りかざして襲い掛かってくる。 「ティエリア。僕たち相手に一体どこまで持つかな…?」 その背後からリヴァイヴのガデッサがバルカンを射出して、セラヴィーの機体を激しく揺さぶる。 「黙れ…!!」 押し込まれながらもその間隙を縫い、全ての武器を稼動して、ティエリアは攻撃を仕掛けた。 「甘い…!!」 ガデッサがセラヴィーの放ったキャノン砲を颯爽とかわし、 ガラッゾと連携してセラヴィーに切りかかろうとビームサーベルを振り上げる。 「く…っ!」 GNフィールドを貫通してくる事を予感して、ティエリアがサーベルを構えて防御の姿勢を取ったその時、 リヴァイヴの攻撃が突如中断し、荒ぶっていた機体が急に沈静化した。 「ちょっとぉ、リヴァイヴ。あんたやる気あんの…!?」 「静かにしろ、ヒリング」 咎めてくるヒリングを牽制し、リヴァイヴは何か不穏な気配を感じ取ったかのように後ろを振り返って、 遠くケルディムと抗戦しているアニューのMSへと視線を向けた。 促されるように、ティエリアとヒリングの目もそちらに向く。 3機のパイロットの視線の先で、アニューのMSはケルディムに圧倒され、動きを止めていた。 装甲が剥がされ、剥き出しのコックピットに座る生身のアニューの姿が見える。 ライルがそっと彼女に手を伸ばした。 その時、アニューから敵意がふっと消失したのを、ティエリアは直感的に感じた。 「アニューめ…!これだから女は…!!」 リヴァイヴの刺々しい言葉がコクピットに響き、 ティエリアはライルがアニューの奪還に成功した事を確信した。 しかしその直後、宙域の雰囲気ががらりと変わった。 「甘いよ!!バァカっっ!!」 ヒリングの高笑いが響き渡った次の瞬間、アニューのMSに冷酷な敵意が瞬間的に戻り、 今まで以上の殺意を込めてケルディムに襲い掛かったのだ。 全ては、一瞬の出来事だった。 「ライル、危ない…!!」 ティエリアが思わず声を上げたその瞬間、漆黒の闇を切り裂いて鮮やかなビーム砲が 背後から放たれ、アニューのMSを直撃した。 響く爆発音と迸る閃光。 その場に居た誰もが、漆黒の宇宙空間に拡散していくGN粒子の、 禍々しくも美しい彩りに目を奪われた。 それは紛れもなく、命の終わりの瞬間だった。 「せ、刹那…が撃ったの…か…?」 ビームの元を辿って狙撃手の姿を確認し、ティエリアはライルとアニューの恋に 終止符が打たれた事を知った。 機体から漏れるGN粒子が柔らかな光のカーテンのように揺らめきながら、 ティエリア達の下へと伸びてくる。 戦闘は終わった。 しかし、煌く粒子の一粒一粒にアニューの哀しみが漂っているような気がして、 ティエリアは何故か離脱に移れず、ただぼんやりとその煌きを眺めるしか出来なかった。 粒子のカーテンが、セラヴィーを、ガデッサを、ガラッゾを優しく包み込んでいく。 3つの機体が粒子の光の渦に完全に飲み込まれた時、世界が急転した。 ティエリアの周囲で喧騒が息を潜め、全ての肉体的な感覚が消え去り、 精神的な感覚が研ぎ澄まされていく。 リヴァイヴに干渉されて、二人の世界に引きずり込まれた時と酷似した感覚だったが、 あの時のように暗淵に引きずり込まれる不快な感覚ではない。 もっと優しく、慈愛に満ちた安らぎの空間に、ティエリアは投げ出されていた。 どこまでも白い空間に、つい見惚れてしまうような穏やかなパステルカラーの色合いが ふわふわと混じって心を癒す。 まるで雲の中にたゆたっているような不思議な心地よさが、ティエリアを包んでいた。 この場所もまた、現実の肉体から離れた精神的な世界に違いない事は何となく分かった。 それでいて、身体の概念はちゃんと残っていた。 ただ、意識の狭間で実体化しているらしき身体は、 現実世界より遥かに澄み切って、軽くて心地いいのだった。 以前、沙慈や刹那から聞いていた不思議な精神世界の話を思い出し、 ティエリアはこここそがその空間なのだと確信した。 「ライル…、アニューは…?」 この世界のどこかにいるはずの二人の姿を探し、飛ぶように白い空間を走る。 しかし、どこまで行っても二人は見つからない。 現実の肉体を離れているという、足元が固まらないような不安がにわかに強まり、 ティエリアは見渡す限りの白の中で歩みを止めて立ち止まった。 意識を集中させて他の誰かの気配を探る。 ふと、背後で何かが揺らめいた。 二人分の意識が確かに存在しているのを空間の揺らぎで察知し、ティエリアは後ろを振り返った。 だが、視線の先に現れた二人の人物は、ティエリアが探していた人間の姿ではなかった。 薄紫と薄緑の非人間的な髪の毛が、白い空間で照らされて現実世界よりなお映えている。 ティエリアと同じく何も身に付けていない彼らの裸体は、 内部から光り輝くような美しさを湛えて、ティエリアの瞳にまぶしく映った。 (あいつら……!) 嫌な予感を感じるままに踵を返して立ち去ろうとした瞬間、 リヴァイヴとヒリングがティエリアに気付き、にやりと笑った。 牽制する間もないままに、彼らは大股にずんずんと近づいてくる。 一歩も身動きするなとでも言う様に、威嚇を色濃く浮かべたイノベイターの4つの金色の瞳が ティエリアを射竦めた。 あっという間に、リヴァイヴとヒリングはティエリアの目前に立った。 空間に頼りなく浮かんだまま、どこにも逃げる事も出来ずにただ立ちすくむだけの ティエリアの裸体を上から下まで不躾に舐めるように見て、ヒリングがくすりと笑う。 「ふうん。ここが、例の不思議空間ね?ほーんと、聞いてた通り、素っ裸なんだ?」 世界を確かめるように辺りを見回すヒリングには、動揺の気配さえ見えない。 一方で、ティエリアは現実世界にいるような不快感に襲われていた。 ――イノベイター達と、この空間を共有していたくない。 急に胃のあたりが苦しくなり、ごくりと生唾を飲み込む。 「そんなに緊張しなくてもいい。  恐らく粒子の拡散が終了すると、この状態も解除されるはずだ」 リヴァイヴが落ち着き払った態度でティエリアを気遣った鼻の先で、 ヒリングが小馬鹿にしたように声を上げて吹き出した。 「あははっ。さっすがリヴァイヴ、大人の余裕を見せてるってとこォ?」 そして下からリヴァイヴの顔を覗き込み、挑発するように唇を釣り上げる。 「…それとも、あの役立たずの相方さんが死んじゃって、落ち込んでるのかしら…?」 「何だと…?」 ムッと顔をしかめてヒリングを睨み返すリヴァイヴだったが、 確かにトレミーの会議室で会った時の様な尊大な雰囲気は、今の彼には漂ってはいない。 代わりに、どこか物悲しい重苦しさが、感情を押し殺したような鉄面皮の上にもはっきりと見て取れた。 ティエリアは、にわかにリヴァイヴの言葉を思い起こした。 『同タイプである僕たちは、意識を繋ぐ事が出来る……』 そのイノベイターの特質によって、リヴァイヴは今まさに消え去ろうとするアニューの意志を共有し、 哀しみを分かち合っているのかもしれない。 「慰めてあげよっか?ブリングの時みたいに…、さ?」 しかしその一方で、同類を憐れむどころか茶化すようにくすくすと笑って、 ヒリングはリヴァイヴの顔が我知らず引きつるのを愉しげに見つめているのだった。 「寂しいんでしょ、リヴァイヴぅ?  今頃あの子、あっちの方で男とイチャついてんじゃない?  あの世に旅立つ前のお別れって感じでさあ。仲間に入れてもらったら?  ずっと覗いてたんでしょぉ?」 「うるさい。あんな女と一緒にするな」 「ふうん?ブリングが死んだ時のデヴァインと同じような事言うのね。おっもしろーい」 「黙れ」 同じ存在であるが故に、ティエリアには彼らの真実の姿が全く見えない。 (一体こいつらはどういう存在なんだ…。同類の死を共有したり、それを見て嘲笑ったり…) 気が合うのか合わないのかさえ定かではない様子で会話を続ける二人に、さすがに違和感が募る。 その時ようやく、ティエリアの存在に今気付いたかのように、 ヒリングが目を細めてティエリアを見つめた。 まるで意識の裏側まで覗き込んでくるような視線で、じっと顔を覗き込んでくる。 「……っ」 トレミーでリヴァイヴと対峙した時に勝るとも劣らない不快な視線を正面から受けて、 ティエリアは反射的に目を反らそうとした。 しかし、一歩早くヒリングの意識が強引にティエリアの脳を揺らした。 『はっは〜ん…、なるほどねぇ。  リヴァイヴの言ってた通り、全然脳量子波使えてないじゃない、あんた』 「な……」 直接的に、ティエリアの脳内にヒリングの嘲りの言葉が響き渡った。 前回のリヴァイヴの時と同様に、ティエリアは簡単にヒリングに意識への侵入を許してしまったのだ。 悔しいが、干渉を防ぎたくても、全く防御の仕方が分からない。 ヒリングの思念が、ティエリアへの単純な興味から、 悪意に満ちた嗜虐心へと変わっていくのが感覚で分かる。 まずい。逃げなければ、またこの前のように意識を好きにされてしまう――。 何とか自らの意識を、体を動かそうとするティエリアだったが、 ヒリングの思念に絡み付かれたかのようにやはり体が全く動かない。 金縛りにあったかのように、軽く体を震わせるのが精一杯のティエリアのすぐ近くへと、 ヒリングがふわりと浮き上がって近づいてくる。 「う……、う……、く、来る…な……」 声の発し方さえ忘れてしまったように、ティエリアの全身は硬直していた。 ヒリングがティエリアの首に両手を回して軽く抱きつき、上目遣いでじっと表情を見つめてくる。 イノベイターの長、リボンズに瓜二つの少女の顔が、その幼さ故になお残酷に見えた。 ヒリングの頬が嗜虐的に歪む。 彼女が今何を考えているのか、意識に介入されるまでもなくティエリアにははっきりと分かった。 予測を裏付けるようにヒリングが話し出す。 脳量子波で直接脳波に語りかけるのではなく、普通に口を開いたのは、 後ろにいるリヴァイヴにも聞かす為だったに違いない。 「あんた達さぁ、この前仲良くしたんでしょ?  アニューの記憶まで共有してさぁ?羨ましいなぁ…。あたしも混ぜてよ」 ティエリアを甚振るように見つめながらクスクスと笑い、 ヒリングは背後のリヴァイヴにチラチラと視線を送った。 対照的に、リヴァイヴの顔は表情を無くしていく。 この前はヒリングと同じような顔つきでティエリアを弄んだくせに、 今日はそんな事には興味はない、僕をお前と同じに扱うなとでも言うかのように、 黙って不快感を露わにするリヴァイヴ。 (自分だって、この女と同じじゃないか……) 割り切れないティエリアの思念は、空間を伝わってリヴァイヴに届いてしまったらしい。 リヴァイヴの眉がピクピクと引きつったのを、ヒリングは見逃さなかった。 「ほらぁ。怒らせちゃった。あんたのせいだからね?ねぇ、リヴァイヴ。  悪い子にはお仕置きしなきゃ。そう思わない?」 愉しげに言って、ヒリングは有無を言わさぬ勢いでティエリアの背後に回り、 ぐいと背中を押してリヴァイヴの前へとティエリアを押し出した。 下等生物を見るような冷たい目で、リヴァイヴがティエリアを見てくる。 この前と全く違う冷たい態度は、アニューの死ともヒリングの同席とも 関係しているのは間違いないように思われた。 「あたしがいるからって遠慮しなくていいよ。二人で気持ちいい事してたんでしょ? やりなよ、思う存分さぁ?あたしも手伝ってあげるからさぁ」 更にぐいと背中を押され、ティエリアの顔面がリヴァイヴの裸の胸へと押し付けられた。 リヴァイヴは面白くもなさそうにぷいと横を向いてしまったが、 かと言ってティエリアを突き放すでもなく、その場から一歩も動こうともしない。 「ほらほらぁ、リヴァイヴにサービスしてやりなよ?やり方知ってるんでしょ?」 リヴァイヴが何も喋らないのをいい事に、ヒリングは後ろからティエリアの頭を掴み、 顔を強引に持ち上げてリヴァイヴの胸下へと押し付ける。 すぐ目前に薄いピンクの乳首が迫り、ティエリアは無意識に目を閉じて拒んだ。 嘲笑いながら、ヒリングがそこへとティエリアの唇を近づけていく。 「アニューがされてたの思い出してさぁ、ペロペロ舐めてみなよ、ティエリア?」 頭を強引に押さえつけてぐぐっと動かされ、遂にティエリアの唇がリヴァイヴの乳首を捉えた。 ツンと尖った肉塊が、渇いた唇に押し当てられる。 そのままぐりぐりと押し付けられて乳首を唇が押し潰したが、 カサカサに渇いた唇によってリヴァイヴが得た感触は、快感とは程遠いものだった。 「へたくそ♪」 ヒリングがお仕置きとばかりに、ティエリアの乳首をぎゅっと摘んで転がした。 「ぁ…っ!」 乱暴な刺激に鋭い痛みが走り、思わずティエリアが悲鳴を上げた。 その耳元に、ヒリングが囁きかける。 「ほらぁ、痛いでしょ?リヴァイヴも同じなんだってさ…?  どうせ同じ事やるなら、気持ちよくなった方がお互い良いに決まってる。  そう思わない?ティエリア」 「…るさ…、ああっ…!!」 反抗の言葉を搾り出す前に、ヒリングが更に乳首を強く摘んで捻りあげた。 さっきよりも強い痛みが走って、ティエリアの目に涙が滲む。 「それともまさか、男の乳首は嫌だって言うの?  イノベイターの癖にそんなちっさい事言わないよねぇ?  ていうか、この精神空間ってなんでもありなんだったら、  リヴァイヴ、あんた試しに女になってみなよ?アニューの事を思い出してさぁ。  あんたが脳量子波で味わってた快感、その体で味わえるかもよ?」 きっとヒリングを睨み付けたリヴァイヴは、不快感を露わにして反論した。 「何故この僕が、女になんかならなければいけない」 「……女になっちゃって、情に流されるのが怖い?  例えば、ティエリアに情けをかけちゃって、次から戦えなくなっちゃうとかぁ?」 ヒリングはティエリアの乳首を責め続けながら、リヴァイヴの心を抉るように笑った。 これにはさすがのリヴァイヴも、怒りを隠し切れそうになかった。 自分と同型のアニューは、女に作られたばかりにイノベイターにあるまじき くだらない感情に囚われ、結果として死出の旅にでてしまったのだ。 その事実がまるで自分への侮蔑そのものに感じられて、リヴァイヴははらわたが煮えくり返りそうだった。 痛みに顔を歪め、頬を紅潮させて瞳を潤ませるティエリアを静かに見下ろす。 膨らんだ胸、くびれたウエスト。 対する自分の体は、確かに男の形態を取っている。 リヴァイヴはようやく優越感を取り戻し、心を落ち着けた。 (大丈夫だ。ここにいるのは女二人。僕はこいつらより上等なイノベイターだ。アニューとは違う) 声に出さず脳内だけで自分に言い聞かせると、アニューの惨めな死の束縛からようやく心が解放されていく。 余裕が戻ると、途端にティエリアを痛めつけてやりたくなった。 「ティエリア、君が脳量子波を上手く使いこなせていれば、アニューの存在にいち早く気付けたはずだ。  それならば、彼女は死なずにすんだ。そう思わないか?」 リヴァイヴは冷たく言い放ち、ティエリアの髪の毛に指を絡ませた。 もしティエリアが同じイノベイターとしてアニューに気付いていたら、 リボンズの計画は頓挫していたに違いない事は当然分かっている。 ティエリアが満足に能力を発揮できていない事が前提のスパイ作戦だったにも関わらず、 その無能を責める事が、リヴァイヴには楽しくて堪らなかった。 「そうそう。あんたがもっとまともなイノベイターなら、アニューは死ななくてすんだのに」 ヒリングも同調して話を合わせた。 二人のイノベイターに嘲られて、ティエリアの顔が羞恥と怒りが混じり合って歪んだ。 血が滲まんばかりに噛み締めた唇が、わなわなと震えている。 「なるほど。どうやら君も分かってはいたようだね。自分の愚かさというものが」 リヴァイヴは悦に入ってティエリアを見下ろし、ヒリングをちらりと見た。 目が合っただけで意志の疎通が叶うのは、やはり同類だからかも知れない。 「やっぱり、無能な子にはお仕置きが必要よね♪」 ティエリアの頭をリヴァイヴに託し、 ヒリングは背中からティエリアの両胸を鷲掴みにして、乱暴に揉みしだいた。 先端を指先に捉えて押し潰さんばかりに捻り上げると、ティエリアを激痛が襲った。 「……ッ!!」 瞬間的に金縛りが解け、痛みから逃れるように、ティエリアが目の前のリヴァイヴの体を必死で掴む。 瞳のすぐ横で、リヴァイヴの薄桃色の乳首が誘うように微かに揺れた。 「ホラホラァ、痛いのが嫌だったらちゃんと奉仕しなよぉ?  こうやって、唇を湿らせて、ネコみたいに、舌でペロペロってさァ…?」 ヒリングは自らお手本を示すようにぺろりと舌で唇を湿らせると、 ティエリアの背中へと屈み込み、背骨に沿って下から上までゆっくりと舐め上げていった。 「……っ!!」 悪寒にも似たぞくぞくとした塊が、舌が動く度に背筋を走り抜けていくが、 ティエリアの体に生じた感覚は決して不快感などではない。 リヴァイヴと意識を繋げた時に感じたような熱い疼きが、下半身に満ちてくる。 ヒリングの舌が美味しそうな音を立てながら、背中のあちこちを舐め回す度に 疼きはどんどんと強まった。 「や…、や…っ…」 体がぶるぶると震え出し、ティエリアはいつしかきつくリヴァイヴの体に縋り付いてしまっていた。 「痛いじゃないか。やはりイノベイター相手だと随分感じるようだね、ティエリア。  肌を舐められているだけなのに、もう限界なのかな?」 爪が食い込むほどにきつくしがみ付かれているにも関わらず、 リヴァイヴは眉一つ動かさずにティエリアを侮った。 ヒリングが肩甲骨の尖りを舌先でチロチロと素早く舐めながら、リヴァイヴの表情を窺う。 「ほらぁ、王子様はおかんむりみたいよぉ?  人にばっかさせてないで、あんたもさっさとしてあげなよ」 ぐいっと頭を引き摺られ、ティエリアの唇が再びリヴァイヴの乳首に押し付けられた。 背中を這い回るヒリングの湿った舌が、確かに素肌に甘い快感を与えていて、 ティエリアの抵抗の意志を殺いでいく。 前回のリヴァイヴとの接触で得た深い快感を、脳も体もしっかりと覚えていた。 痺れる頭がまともな思考を阻止し、ティエリアはほとんど無意識状態で、 唇にツンツンと当たる尖りをゆっくりと含んだ。 一瞬リヴァイヴの体がびくんと仰け反って、乳首が硬さを増したように感じられた。 ティエリアの鼻先に、ほのかに匂い立つような芳しい香りがどこからともなく香ってくる。 『そうそう、舌を巻きつけて、動かして、舐めて――』 ヒリングの教示のような声が、どこからともなく響く。 もう耳から聞こえているのか、脳内に直接語りかけられているのかさえ分からない混乱した意識の中で、 ティエリアが出来る事と言えば、ただ促されるままに奉仕を繰り返す事だけだった。 「ん…、んん…、んん……」 背中に感じるヒリングの舌遣いに同調させるように、ねっとりと舌を先端へと押し付けて レロレロと舐め上げると、舌先で乳首が形を変えてはコリコリと弾力を増して押し返してくる。 『上手いわよぉ、ティエリア……』 ヒリングの褒め言葉を聞きながら、ティエリアはリヴァイヴの脇腹をしっかりと掴み、 ぴちゃぴちゃと粘った音を立てながら尖りの先端をちろちろと丁寧に責め立てた。 ふう…、と頭上からリヴァイヴの湿った息が、気持ちよさそうな声と共に落ちてきた。 舌技を褒めるように、リヴァイヴがティエリアの頭を撫でる。 『じゃあ、そろそろあんたも……』 ヒリングがご褒美とばかりに、ティエリアの乳首への戒めを緩いものへと変えた。 乳房を揉みながら、今度は指の腹で優しく乳首を捏ね回す。 「…んっ…、あ…んっ……」 ティエリアのそこにも痺れるような快感が走り、思わず声が漏れて舌の動きが止ってしまう。 無作法を咎められる前に、ティエリアは自ら快感を押し殺してリヴァイヴへの奉仕を再開した。 唾液でベトベトにテカったリヴァイヴの尖りが、心なしか震えている。 ふと視線を落とすと、その下半身では、リヴァイヴの男の分身がしっかりと脈打ち、 雄雄しく勃ち上がっていた。 アニューの記憶に重ねてかつて味わった、ライルのペニスの熱さと快感が重なり合って思い起こされ、 ティエリアの体の奥底に妖しげな欲望が目覚めはじめた。 リヴァイヴの中性的な容姿と、力強く存在を誇示するペニスの逞しさが余りに対照的で、 あの時のライルとアニューのようにこれと交わるのだと想像しただけで、熱いものがじわりと溢れ出す。 自らの体では未だ味わった事のない本能的な疼きに苛まれ、 ティエリアの全ての感覚が研ぎ澄まされて行くようだった。 『そうだ…。これが、本当の君の姿なんだよ、ティエリア・アーデ…。  イノベイターを求め、イノベイターであらんとする。これが君のあるべき姿だ……』 リヴァイヴの声が意識を根底から蕩かすように、魅惑的に脳内にこだました。 ティエリアの体が自然に動き出す。 リヴァイヴの乳首からチュパっと音を立てて離れた舌は、そのままだらしなく伸ばされたままで、 ずるずると下方へと向かって行った。 シミ一つ、余計な体毛一つないリヴァイヴの美しい肌が、禁忌を侵す背徳感をより高めていく。 「んふふっ」 堕ちたティエリアを見て、満足げにヒリングが笑った。 ほとんど四つん這いのようになったティエリアの目前に、熱を孕んだ男根が現れた。 真っ白い精神空間に隆々と勃ち上がる、イノベイターの男芯。 ライルのものよりも遥かに美しいそれに思わず見惚れ、 ティエリアは崇めるように片手をおずおずと添えて、そろそろと上下に這わした。 リヴァイヴの低いうめきと共に、ペニスがびくんと波打つ。 先端に滲み出た先走りの粘液が、否応なくティエリアの淫欲を誘った。 が、舌を伸ばしてそれを舐めとろうとした瞬間、リヴァイヴの腰が勢いよく押し出されて、 ティエリアの口腔内へと乱暴に勃起が突き入れられた。 「―――!!」 いきなり喉奥に先端が押し付けられるほどに深く突き入れられて、 強烈な吐き気とともに涙が一筋零れ落ちる。 「ざーんねん。せっかくサービスしてあげるつもりだったのにねえ?  リヴァイヴの方は、もう限界だったみたい」 ヒリングの笑い声と肉塊の不快さで、ティエリアは唐突に我に返った。 (や、嫌だ…っ…!) リヴァイヴの腰を押し戻してペニスを引き出そうとしたが、 頭を物凄い力で押さえつけられて身動きも出来ない。 今や雄の性臭さえ漂ってきそうな醜悪な男根の圧迫感で一杯になり、 こんなものを一度は美しいと思ったのが嘘のような、激しい不快感に苛まれた。 (やっ…、やだ…っ、抜け、抜いて…っ) 必死に抵抗し、リヴァイヴに目だけで懇願するが、返答の代わりに脳内に響き渡ったのは リヴァイヴとヒリングの嘲笑だった。 『無駄無駄♪今更何言ってんのよぉ?さっきまでノリノリでしゃぶろうとしてたくせにさぁ』 『そうだよ、ティエリア。さっきみたいに舌を遣ってくれれば、僕はそれでいい』 「んっ…」 抑え付けられた頭をそれでも何とか左右に振って抵抗の意志を示すティエリアだったが、 願いが聞き入れられるはずもなかった。 『ほら、行くよ』 リヴァイヴはティエリアの頭をしっかりと固定して、ぷくりと膨れた亀頭を舌に押し付けながら、 勢いよくペニスを抜き出しては再び奥深くへと素早く突き入れていく。 喉の奥で先走りが唾液と混じって、肉棒の往復の度に苦味を口腔一杯に広げた。 激しい出し入れで、ティエリアの髪の毛が乱雑に揺れて頬に張り付いた。 勃起し尽くしたペニスで口腔内を犯される感触は、抗う気さえ失せるほどの苦しみだった。 きつく閉じたティエリアの瞳から、堪らず涙が一粒二粒と流れ落ちる。 「ううっ…、んんっ……」 歯が当たる度にぴしゃりと頬を張られ、ただ精一杯大きく口を開き続ける事しか出来ない。 自分の意志とは全く関係なく、乱暴に肉棒が口腔内を出入りしていく屈辱感。 度重なる肉棒の抽迭で攪拌された唾液が、ティエリアの口の端からだらしなく垂れおちていった。 ずっ、ずっと薄皮が舌と擦れ合う卑猥な音と、つつーっと涎が顎にまで垂れ落ちる感触は、 怒りよりも惨めさをティエリアに与え続けた。 どれだけ堪えようとしても、涙が止らない。 「苦しい?そりゃあ、苦しいよねぇ?」 ヒリングが嘲笑いながら、ティエリアの背後に座り込んで、陰部を覗き込んだ。 リヴァイヴの抽迭によって前後に揺れるティエリアの尻肉を掴み、左右に押し開いていく。 ヒリングの目の前でくぱぁと開かれた膣口は、ティエリアの苦痛に反してしっとりと潤っていた。 「あははっ、もう濡れてる。あんた、本当は感じてるんでしょ?いっやらしい子!」 ヒリングは声を立てて笑いながら、人差し指の腹でつーっと濡れた秘裂を上下になぞった。 「……っ!!」 突如、そこに淡い快感が生まれて、ティエリアの腰がびくっと跳ね上がる。 同時に生理的に動いてしまった舌が、リヴァイヴの亀頭をやんわりと刺激した。 リヴァイヴは目だけでヒリングと疎通し、もっとしてやれと促した。 軽く頷いて、ヒリングは指で秘裂を上下に何度も撫でていく。 「んっ!!」 思わず腰を浮かしたくなるようなもどかしい快感が、秘裂に走った。 『ほらほらぁ、こんなに濡れてる。もっとして欲しいんでしょォ?』 「ん…っ…、…んっ……!」 ティエリアの体が。指が往復する度に不規則にビクビクと震え、 中から溢れ出した愛液がヒリングの指先をべっとりと汚した。 ティエリアが僅かな快感の喘ぎを漏らす度に、その舌もヒクヒクと蠢いてリヴァイヴに快感を与える。 「だけど、まだ足りないな、ティエリア。もっと上手に出来るだろう?」 「……っ!」 ぐいぐいと遠慮なく肉棒を突き立てながら命令してくるリヴァイヴの言葉を断固として拒絶し、 ティエリアはこれ以上思い通りになってたまるかと、必死で舌根を抑え付けた。 途端に、リヴァイヴの意志が頭に流れ込んで来る。 『強情だね、ティエリア。  そんなんじゃあ、今度リジェネとまともな対面が出来るとは思えないな。  彼はもう一度、君に逢いたがっている。  せっかく再会した同類に満足なサービスも出来ないようじゃあ、見限られてしまうよ?』 (だ、誰が…っ!) 頭の中だけで抵抗の言葉を吐いた瞬間、喉奥深くまでペニスを勢いよく突き入れられ、 ティエリアは嗚咽のような声を漏らして吐き気を堪えた。 最奥まで埋め込んだ所で、肉棒の抽迭がぴたりと止る。 リヴァイヴは今度はヒリングにも聞こえるように、口を使って話した。 「そろそろ粒子の散布が終了する。そうなったらしばしのお別れだ。 そうなる前に、同じイノベイーター同士、この空間をもっと楽しもうとは思わないのかい、ティエリア?」 言いながら、リヴァイヴは膨れ上がった先端でティエリアの咽頭をぐりぐりと押し込んだ。 吐き気が強まり、強まった苦痛でティエリアの全身が強張っていく。 もはや言われなくても、リヴァイヴがティエリアに奉仕を要求しているのは明らかだった。 有無を言わさぬ苦痛を与える事で、リヴァイヴはティエリアを追い込んでいた。 「そうそう。早くしないと、あんただってイケないままで終わっちゃうわよぉ?」 あははっと笑いながらリヴァイヴに同調し、ヒリングは膣口を擦り続けながら、 もう片方の指でクリトリスをやわやわと摘んだ。 「んんっっ……!」 苦悶の狭間を縫って急激に快感が強まり、ティエリアの頬が鮮やかに紅潮する。 一瞬ティエリアの体が弛緩した隙を狙い、 ヒリングの指が濡れそぼった膣肉を割ってずぶずぶと突き入れられていった。 「ほらほら、ティエリア、入ってく、入ってくぅ♪気持ちいいでしょぉ?  リヴァイヴにもしてやらないと、不公平よ?」 ヒリングの嬉しそうな声で、ティエリアの屈辱感がより強まった。 白い空中を頼りなく握り締め、ティエリアは辱めに懸命に耐えた。 しかし、感情とは裏腹に、指が壁を擦りながら奥まで入っていく感触がどうにも気持ちよくて堪らない。 何もない空間に突いた両腕が、ぶるぶると震え出す。 「頑張るわねぇ?じゃあ、こうするとどう…?」 ヒリングの指が前後に動き出した。 ゆっくりと膣壁を擦りながら、愛液にまみれた指が膣内を出入りしていく。 「それに、こっちも…♪」 ヒリングは溢れた愛液でもう片方の指を湿らせると、 嬲るようにクリトリスをゆっくりとした動きで擦った。 「ぁっ…!んんっ…!んぁっ…!」 もうごまかしようのない強烈な快感が、ティエリアの下半身に満ちる。 口にしっかりと栓をされていながら、高い嬌声が漏れるのを我慢する事が出来ない。 膣内を出入りする指とクリトリスを刺激する指の動きが同調し、なおティエリアを昂ぶらせていった。 ヒリングの息が嘲笑とともに敏感な場所に何度も当たる。 風に撫でられるようなその緩い刺激でさえ、快感に様変わりしてしまう。 やがて指が段々と規則的に抜き差しの速度を速めていくと、ティエリアの腰も我慢できずに揺れ始めた。 「自分で腰振っちゃって、ほんと、やらしいんだから」 言葉で嬲りながら、ヒリングは両手の指を器用に使って、ティエリアを責め立てた。 「んんっ…、んんっ…、ぁ…んんっ…!」 快感が強まるごとに喘ぎが大きくなり、息が苦しくなる。 口の中に居座ったまま、がっしりと栓をし続けるペニスが憎らしくてたまらない。 快感の昂ぶりに合わせて舌がピクピクと蠢く度に、熱量を増して嬉しそうに脈打つのがなお恨めしい。 だが、この熱を放出させないと終わりが来ない事は、どうやら明らかだった。 膣肉はいやらしい音を立てながらヒリングの指を飲み込み続け、 強まる一方の快感で、ティエリアはもう何も考えられなくなっていた。 ただ、口に蓋をする不愉快なペニスから解放されて、純粋に己の快楽にだけ集中したい、 そんな肉体の欲求だけが膨らんでいく。 相手は敵なのだ、自分が自分の意思で訣別したイノベイターなのだ、 こんな事をしてはいけないという理性の反逆を、快感が覆い尽くした。 耐えていた最後の砦が、脆くも崩れ去った。 遂に箍の外れたティエリアは、狭い口腔内で舌先だけを巻き、ペニスの根元をれろれろと刺激した。 舌を押し返してくるほどのペニスの勢いに圧倒されつつ、筋張った血管の一筋一筋にまで 一生懸命に舌を押し付けて舐め上げる。 初めてティエリアの意志による舌の動きを肉棒に感じて、リヴァイヴが気持ち良さそうに腰を揺らした。 そこからのティエリアは、もはや何にも邪魔される事なく、一心不乱に奉仕を行った。 ヒリングの指の抜き差しに合わせるように顔を前後させてペニスを抽送し、 熱い側面や裏筋に舌を這わせると、リヴァイヴの快感とティエリアの快感が完全に同調した。 先走りの苦味を唾液で中和し、それさえも潤滑油にするかのように亀頭に舌を絡ませてじっくりと舐る。 「いい子だ」 リヴァイヴが甘い溜息を吐きながら、押さえつけていたティエリアの頭を解放して 優しく髪を撫でてやったが、ティエリアはもう逃げ出す事もなく、無心で奉仕を続けるのだった。 舌とペニスの絡み合うじゅぶじゅぶという卑猥な音が、 ヒリングによって起こされるティエリアの下半身のいやらしい水音と重なり合った。 「リヴァイヴとティエリア、どっちが先にイクか、競争ね♪」 ヒリングが指の抜き差しを速めて、ティエリアを絶頂へと追い立てる。 「んあんっ…、ん…っ、んっ…、んんっ…!」 愛液が淫らに飛び散り、膣壁は快感に震えた。 秘所の快感を紛らわすように、ティエリアのリヴァイヴへの奉仕も激しさを増していく。 自分の奉仕によって刻々と快感を高めていく肉棒が、まるで自分の一部であるかのように思え、 いつしかティエリアは男根の圧迫感、放出される熱、先走りの苦味さえ愛しく感じていた。 愛情と丁寧さを増した口戯は、リヴァイヴに極上の快感をもたらした。 「もっと、もっとだ、ティエリア……」 それでもまだ足りずに、リヴァイヴはティエリアの頭を優しく抱くように掴み、 腰を軽く押し出してペニスに最後の刺激を与えていく。 最初に弾けたのは、リヴァイヴの方だった。 ああ、と絶頂の深い溜息を吐きながら、リヴァイヴはティエリアの奥深くまで ペニスを突き入れ、ドクドクと精液を注ぎ込んでいった。 その間もティエリアの舌とすぼめた頬肉が肉棒を刺激し続けて、 リヴァイヴは最後の一滴を出し尽くすまで、最上の射精の快感を味わった。 全て放出し尽くして、萎える前に肉棒を抜き出すと、 先端から唾液と白濁の混じった雫が数滴ぴちゃりとティエリアの唇に飛び散った。 ティエリアが名残惜しそうにそれを見たのはほんの一瞬の事だけで、 直後、その頬が快楽に染まって歪んだ。 「ああっ、ああんっ、ああっ、あんんっ!!」 ようやく栓が取り払われた口から、いきなり最高潮の淫らな声が迸る。 ヒリングに後ろから激しく指を突き入れられ、クリトリスをぐっと押し込まれて激しく摩擦され――。 完全に自分の悦楽だけに集中して喘ぐティエリアを、リヴァイヴは満足げに見下ろした。 瞳を金色に輝かせながら、リヴァイヴはティエリアの快感に悶える姿を凝視し、 脳内へと直接語りかけた。 『そこに挿れる役目は、リジェネに譲る事にするよ。  小娘の指なんかより、もっと強い快楽が得られるはずだ。楽しみにしているといい』 ティエリアが嬌声を発し続けながら、快感に呆けた目でリヴァイヴを呆然と見上げた。 獣のように両手両足を付いた淫らな体勢、 その女の部分に激しく突き入れられ続けるヒリングの指の淫らな動き、 その度に迸るティエリアの甲高い喘ぎ。 その全てで優越感を存分に満たされて、リヴァイヴは悠然と仁王立ちしたままで ティエリアの痴態を見下ろした。 『ほら、想像してごらん。ヒリングの指の何倍もある太くて熱いものが、君の中を掻き回す快感を…。  ついさっきまで、その可愛い口で味わっていた男のものが、君の中を擦り上げる感覚…。 どれだけ気持ちいいか、想像がつくかい?』 リヴァイヴの声にティエリアの脳細胞は反応し、自動的にその想像を膨らませていく。 今まさに膣内を擦りたてている、ヒリングの少女の指を何本も重ね合わせたような 重厚な肉棒から得られる快感――。 それを現実のものとして想像出来た時、急激に膣肉が疼き、その期待感が一層悦楽を増幅させた。 「あっ、あぁぁぁぁっっっ!!!」 下半身に押し寄せてきた快感の奔流が、一気に弾けて脳髄を奮わせる。 四つん這いの腕を折り、尻だけを高く上げた淫らな体勢で、ティエリアの背筋が反り返った。 激しい快楽の波の中でぼやけるティエリアの視線の先に、絶頂の瞬間をほくそ笑んで眺める リヴァイヴの顔が浮かんで消えた。 「どう?気持ちよかったでしょ…?」 ヒリングが、がくりと力をなくしたティエリアの膣内から指を抜いた瞬間、 中から大量の愛液が溢れ出した。 指先から膣穴まで、水飴のようにとろりと繋がった粘液を嫣然と微笑みながら見つめた後、 ヒリングは、力なくうずくまるティエリアの肌でそれを拭うように、背骨に指を這わしていく。 ティエリアの火照った肌の上から下まで、じっとりと愛液が湿らせた。 「精神世界でもこんなに濡れちゃうんだったら、現実だとどんなに凄いか、楽しみよねぇ?」 ニヤニヤと笑いながら、ヒリングは濡れた指ですすーっと丸まった背骨を撫で続ける。 「は…っ、んんっ……!」 それだけの事で、ティエリアの肌は再び薄い快感で疼き出し、熱を持って昂ぶっていくのだった。 「あっははっ♪まだやりたりないみたいねぇ?でも、残念。今日はここらへんで終了みたい」 ヒリングが指で刺激を続けながら、辺りを見回した。 その言葉通り、白い空間の彼方の方から、段々と暗闇が押し寄せてくる。 刻一刻と、現実世界の足音が近づいてきていた。 3人それぞれに精神的な感覚が薄れ、代わって重苦しい肉体の神経が目覚めていく。 足元で白と宇宙空間の黒が混じり合い、ティエリアの視線の先で、 ヒリングとリヴァイヴの裸体が透き通ってぼやけ始めた。 別れの時が迫っている。 「ティエリア、さっさとこっち側に来なさいよ?あたしがリボンズに頼んであげるからさぁ」 ヒリングがニヤニヤと笑いながら、冗談とも本気とも付かない調子で勧誘してくるのを、 ティエリアは頭を激しく振る事で拒否した。 「ふふっ、いくら拒んでも、君がイノベイターである事に変わりはない。  人間と長くいればいるほど、その違いは君を苦しめるだろう。  来るべき対話――。その世界に、人間の存在など必要ないのだから……」 リヴァイヴの声がどんどん掠れて、小さくなっていく。 やがて精神空間の全てが消え去って、ティエリアの意識がセラヴィーのコックピットを捕えた瞬間、 脳内にヒリングとリヴァイヴの声が重なり合って響いた。 『もう、猶予はない。これが最後のチャンスだ、ティエリア。早く帰ってこい』 はっと意識を覚醒させたティエリアの目に飛び込んで来たのは、 宇宙空間を飛び去っていくガデッサとガラッゾの背中だった。 同時に、ライルの慟哭が通信機から響き渡った。 「アニュー、アニューッ!!何でだよ…ッ、何で、こんな事に…っ」 ライルの叫ぶような泣き声が、ティエリアの胸を締め付ける。 人間とイノベイター。 分かり合い、愛し合っていたはずなのに、決して結ばれる事はない。 2つの存在の距離が果てしなく隔たって居るように、ティエリアには思えてならなかった。 戦力で圧倒的な優位に立ちながら、結局、リヴァイヴとヒリングが とどめを差していかなかった事に、何故だか戸惑いと苛立ちを覚えた。 『帰って来い、ティエリア…。君はイノベイターだ……』 何度となく彼らに言われ続けた言葉が、ティエリアの脳内で呪縛のようにこだました。