簡単に言うと、私は今欲求不満である。最近、ソウルがかまってくれないから。
夕食も何故か別の時間に食べたりだとか、一緒にいる時間が減ったりだとか…、会話が少なくなったのだ。時折家に帰ってこないときもある。
それに学校では、男子とは勿論のこと、他の女子とばっかり話して…私になんか目さえも向けてくれない。
昔は毎日のように2人で笑っていたのに。
ソウル、私がそんなに嫌い?嫌?そこまで遠ざけて何がしたいの!?
…と、自らの怒りは爆発しかけていた。
だから、今日こそは、と毎日思っているのだけれど、逆ギレされて怒られるのもな…と恐怖もあった。
そんな日が続いてから、しばらく経った。学校に行くときと帰るときは一緒に並んで歩く。
その間、会話は全くしない。いや、できない。
彼があんな態度だ、話しかけても会話が成立しないだろう。
行く途中、出るのはため息ばかり。
「はあ〜…。」
今はわざとやってみたのだが、あえなく無視された。昔ならせめて[どうした?]くらいは言ってくれたのに。
なんだろうこの孤独感。…昔ならとか。
私は何故過去を羨ましがっているんだろう…。
そう思ううちに学校についた。
ソウルは言われずともモテるのは知っていた。
だからといって女子共、正面で待つことは無くないか。猿の集団のような黄色い声が耳にキンと響いてきた。
五月蝿いな雌猿共!
…できれば言葉に発したかったが、私のキャラ的に公衆の面前では言えない。課外授業のときは別だけど。
ソウルも昔は嫌がって、走って避けていたのに、今はいろいろ話している。
そんなんだったら私と無理して付き合う必要ないのに…。そう考え始めると心が痛くなる。
只ただ、唇を噛み締めるだけだった。
その日の夜である。ソウルがソファーで暇そうにしていたから、話しかけてみた。…パートナーに話しかけてみたって、なんか可笑しいな。
「ねえ、ソウル」
「ん?」首だけ起こして返答された。話したくなさそうだ。
けど、ここで話さないと一生話せない気がした。
「あんなに女子が群がって気持ち悪くなかった?」
「別に、もう慣れた」まばたきしかできない。空いた口が塞がらない。が、表情には出さないように頑張った。
でも…慣れたって、[慣れた]って!
「最近増えてきたし…、態度も軽いよね。ため口使う奴だっているでしょ?」
「ああ、時々は」前と比べて口数も減った。態度も素っ気ない。今一番態度が悪いのは彼かも。
「嫌…じゃないの?」
「……」彼は黙ったまま、目を反らした。
嫌じゃ、ないんだ。そうなんだ。私なんか!どうだって…いいんだ。
「そう」
もういい。お前なんか。
「じゃあ勝手にすれば!?」
大嫌いだ。もう顔も見たくない。自分の部屋に行こうとしたときだった。
「待てよ」彼が起き上がった。嬉しかったがそれだけでは私の怒りは収まらない。
「何か?」
「それは…俺が言いたい。勝手にって、何だよ」彼も戸惑っている。
だけど、何か疑った顔で聞かれても答えてやりたくはならない。
「勝手に、の意味も分かんないの?馬鹿なんじゃないの!?話しかけた私が阿呆に思えてくる!」
私は本気で怒っているのだ。冗談なんかではない。
一発殴ろうかと思ったが、こいつはブラック☆スターみたいに器が大きそうなやつでもないし、ソウルの顔を傷付けた際の女子の目を想像したときがおぞましい。
…自分の相棒なのになんでこんなにも配慮しなきゃならない?他のために考慮するなど矛盾にも程がある。
「…まか…。」
「うん?」そう考えていると、ソウルがちっちゃな声で何か言った。当然聞き返した。
彼は俯きながら呟く。
「そういえば…最近マカに何も言ってねぇなって」
「…最近?もう随分会話してませんよ」顔を覗き込んでやった。どこかの弱腰の負け犬の顔だ。
「…何すれば許してくれる?」…ごめんと言わないところが彼らしい。
「そうだなぁ、キスなんてしてくれたら良いかな」
こんなことを要求するなど私も堕ちたものだと思う。
「―…。」彼は黙ったまま。
そして小さな静寂のなかで、二つの唇が重なった。
…キスなんて何日ぶりだったろう?もしかしたら何ヵ月とかたっていたのかもしれない。だから、この前のキスより数倍も胸が大きく鼓動を打っていた。
いつもは別に勝手にすれば良い。自由に遊ぼうが何しようがソウルの勝手だよ。
でもたまにはちゃんと、私を構ってね?
enど。