俺とマカは、今ベランダにいる。
今日の昼に、部屋の片付けをしていた彼女は、自分の部屋からでっかい望遠鏡を見つけたらしい。それでせっかくだから、星を見ようということになった。
別に星は肉眼でも見えるんだが…と思ったが、まあそこは彼女なりの考えがあるのだろう。敢えて突っ込まないことにした。
「星を見るぞー!」
「…おー」
俺がやる気の無い声を出すと、彼女はこっちを睨んだ。
「何でそんなに元気無いわけ?」
「…寒いんだよ」
今は1月、夜中の1時だ。気温は一桁ぎりぎりだった。一応防寒着を重ね着しているが、それでも寒いものは寒い。なんでこんな遅くにベランダにでなければならないのだ。
空は雲ひとつ無い快晴。天体観測にはぴったりの天気で、いくつかの星が瞬いていた。
まだ目が夜の暗さに慣れていないから、うっすらと小さく見えた。
「本当に見えんのか?」
「ママが使ってたやつだからだいぶ古いけど、大丈夫だと思うよ」望遠鏡を設置しながら彼女は言う。
寒いねー、と呟きながら、白い息を吐いていた彼女はどこか曖らしかった。
でもこの姿は今じゃなくても見られる気がする。…いや、今見られたことも十分嬉しいが。
「今天体観測なんてしてるの俺らぐらいじゃない?というか今日である必要ある?」
「何言ってんの、直したら次いつ出すか分かんないでしょ。それに、星は年中無休365日光っているんだもの。1日1日違う空になるはずだよ」
「…ふうん」
なんか天文学者の講演のように話すから、ほんの少しだけ笑いが込み上げてきた。勿論顔に出すと怒られるから、表情は抑え殺した。
「…そうだ!」
彼女はふと思い付いたように声を上げると、部屋へ入っていった。
そして、手に何か持って戻ってきた。
「何それ?」
「何って、カメラ」
手に持ったものを見せるように振ると、それをポケットに入れた。
そうしてから、彼女は接眼レンズに左目を当てた。
「何撮るんだ?」
「ふふっ、秘密。」
彼女は望遠鏡のレンズをどこかに合わせながら、少しだけ笑う。何を企んでいるのか…。
「ねえ、」
「さっきから質問ばっかりだね?」
首を気付かないくらいに動かして此方を見てくる。まるで、瞳から光線でも出しそうな勢いだ。
そして、声の調子がすごく低かった。一言でいうと、怒ってる。彼女はゆっくり口を開いて、「ちょっと静かにしてて」と言った。
あまりにも恐くて、これ以上怒らせないようにしようと思った。取り敢えずごめんと謝る。
だけど、それから目のやり場に困って、しょうがなく空を仰いだ。
宵闇の空には、見慣れた一等星たちが輝いていた。他の小さな星たちも、まるで撒き散らしたように、斑に光っている。
あまり星座や天体には詳しくないから、どれがどの星座の一部かは分からない。けれど、すべてが綺麗に見えた。
「…ソウル」暫くして、彼女に声を掛けられた。
「何?」
「覗いてみて」彼女は得意げに笑う。
しぶしぶと望遠鏡に近づき、レンズに目を当てた。すると見えたのは…―。
「…木星?」
「うん」彼女の頷く声が聞こえた。
画面いっぱいに映った惑星は、綺麗に光っている。
「テレビで言ってたからさ、木星が見えるって」
「…望遠鏡はわざと出したわけ?」俺は望遠鏡から目を離し、彼女を見た。
「それはどうかなぁ」
彼女はにこっと笑い直した。全く、嘘か本当か分からない。
「そんなことよりさ、ちょっとどいてよ」
…さっきから何なんだ。と、少々イラッときたので、たまには反抗してやろうと思う。
「やだね」この反応に驚いたのか、彼女は目を丸くした。
が、すぐに普通の顔に戻った。
「どーいーて、よ」彼女は、俺の腕をぐいぐいと思いっきり引っ張ってくる。我慢の限界が来た気がした。
「…っ、何がしたいんだよ!」
「これ!」
そう言うと同時に、先程のカメラを取り出した。そんで、俺の目の前に突き出した。
「撮るの、いま見えてる星を」だからどいてよー、と彼女はもう一度腕を引っ張ってきた。
…そのためのそれだと分かったから、仕方なくどいてやった。
「ありがとう」マカは首を傾げ、微笑んだ。
この時の彼女の笑顔は周りのどの星よりも耀いていた。これだから俺は弱いな、そう感じる。
冬の寒さも忘れて、俺たちは星空を見上げ続けた。
enど。
見上〜げて〜ごらん〜夜の〜ほ〜しを〜♪
大きい望遠鏡欲しい…。な私です。えー、だいぶ前の話なんですが、ふたご座流星群が出た時期があったんですよ。
でも真夜中だったんで、どうしようかなぁなんて思いながら布団の中でじーっと東の空を見ていましたw(結局見てた)
それでずっと出てこなくて、嗚呼もう3時かー遅ぇなー寝よーと考えていたら、
ひとつだけ ぴゅっ って流れてきて。「キター(゜∀゜)ー!」と叫んだよーっていう
夜更かしの話。
木星なのは木星が好きだから!!
天体観測っ、BUMPいいよねっ そういえばBUMPのアルバムに無かったっけ、jupiter…。
サブタイは「天体観測」の歌詞だって、皆さん気づきました?