二月十七日 AM1:37

  ―とある橋の下で、男は追い詰められていた。
  「なっ、なんだよてめぇ」
  『Death code 4201、死を先導する者』
  そういうと、少年は二つの鎌を空に掲げた。鎌は月明かりに照らされ、鈍く光っている。
  「こっ、こんなところで殺されてたまるか!俺はまだ生きていかなきゃならねぇんだ!」
  少年は聞こえなかったかのように男に歩み寄る。男は恐怖に怯え、動けなかった。
  『お前はもう死ぬ。他の人間に殺されて02に助けられるよりかは遥かにましだ』
  そう言った刹那、橋の上から声がした。”あいつだ。あれがうちの娘を殺した奴よ。あの娘の敵。とってやりましょう”
  橋の上の人々は包丁やハンマーなど凶器をたくさん持っていた。
  「ひぃっ!あいつ等、追ってきやがった」
  人々は狂うように橋から飛び降りようとする。
  『時間がない。お前はあれ達に八つ裂きにされたいか?』
  男は首を振る。顔は涙でぐしゃぐしゃだった。
  『―只今より。刑を執行する』
  その言葉とともに、二つの鎌は振り下ろされた…。

 (・∀・) (・∀・)
  ―二人は、ある廊下を歩いていた。
  「ねぇ、ソウル」
  「あ?どうしたマカ」
  「あんな集会抜け出して逃げてもいいと思う?」
  月1回行われる死に神会。死神界に居る死神は、必ず出席しなければならない決まりが在る。
  「いいけど?怒られるのはマカだからね?俺、ただの“鎌”だし」
  「…あんたに聞いたあたしが悪かった。ま、そのなりじゃぁ寝ててもバレないしね」
  「ははは。んでもうそろそろ着きますけれども、マカさん、ツインテを取った方がよろしいかと」
  「はいはい、ご忠告どうも」
  マカはヘアゴムを外すと、普通の二つ結びに直した。死神界ではツインテールは禁止なのである。理由はよく分からないらしい。
  「ふぅ、なんかなぁ。今年はキッドが居ないからつまんないなぁ…。」
  「しょうがねぇだろ?あいつは一年出張で帰ってこれないんだから。あと今年も3ヶ月なんだから我慢しなよ」
  死神としての課題がこなせるようになると、その死神は人間界へ送られる。これが出張、いわゆる仕事だ。
  キッドは成績優秀&父親の好意により普通の死神よりも早く出張できたのだ。しかも、最上級の4201番の称号を手にして。
  「はぁ…。早く格上げされたい…。」
  「ま、そのうちになるさ。…今日も大人ばっかりだな」
  「もともと未成年は出席する義務ないからね、しかたないよ。あたしは母さんから行けって言われてるけど」
  二人が着いた場所は死武専の隣にある大きなホール。ここは様々なイベントを行う場所である。
  「今日は、“大事な話があるから必ず来い”って言われてたんだっけ?」
  「うん。“大事な話”って、一体なんだろう…?」
  《それでは、只今から死に神会を始めまーす》
  「あ、始まった…」
  ホールに響き渡る音声と共に、ホール内の死神たちは一斉に拍手をした。マカもつられて拍手をする。
  (大事な、話。か)
  マカの頭の中は“大事な話”でいっぱいだった。
  《…ではー、皆さんに伝えたいことがありまーす。No.1225001のー、マカちゃーん》
  「―…!はいっ!!」
  呼ばれたマカは、ホールの前にあるステージへ駆け上がった。マカの心臓の鼓動はいつもの二倍以上に高鳴っていた。
  《―マカちゃん》
  ゴクリ、とマカは唾を飲んだ。緊張しているためか、手には汗が握られていた。
  《今日からいきなりだけど、日本支部から人員要請が来てね、マカちゃんに行ってもらいたいんだよ》
  「え、それって…」
  《仕事、ってやつだね。ちなみに番号は4203。管理だ》
  いざ、願いが叶うとなると、人も死神も状況をすぐに把握できなくなるようだ。マカは少しの間ぽかーんとなったあと、だんだん表情が笑顔になった。そして大きくうなずいて、
  「はい!頑張ります!」
  と言った。周りからは盛大な拍手が送られた―。

  死に神会終了後、マカは会長に呼び止められた。
  「あの、もうひとついうことがあるんだけど」
  「はい?何ですか?」
  「実はひとり新入りがいてね、マカちゃんに付き添いをしてもらいたいんだ」


To be continued.



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