「…C.C.」
「うん?なんだ?気難しそうな顔をして」
「カレンに…どこまで話した?」
「一通り…生い立ちと私達の出会いは話したが」
「…一通り…」
「あぁ、性別は話していない。」
「そうか…」
「話すのか?」
「あぁ。俺の騎士を勤めてもらう以上。知ってもらった方がいいと思ってな」
「…そうだな。お前はおっちょこちょいだから、フォローしてもらえる人間が身近にいた方がいいだろう」
「…一言多いな」
「ふふ…本当のことだろう?」




―ゼロ…ルルーシュから呼び出し。なんかどうしても話しておきたいことがあるって…なんだろ?改まっちゃって…

 ゼロの個室(C.C.も一緒だが…)の扉の前でカレンは腕組みをしていた。定例会議が終わるとゼロ直々に呼び出しの要請があった。話しておきたいことがある、との前置き付きだ。

「なんて…考えたって分かるわけないのよね…あいつの思考なんかいっさい分からないもの…」
「…とか言い出してもう数分経ってるぞ?」

 うん、と決意を新たに握りこぶしを作ると同時に扉が勝手に開いた。しかも開いたところには緑の髪をした魔女、もとい、C.C.がチーズくんクッションを抱き締め立っている。

「うわぁッ!?びっくりしたぁ!」
「いつまでもそんなとこにいないでさっさと入ればいいだろう?」
「う、うるさいな!今入るわよ!」

 その場にずっといたことがばれていて恥ずかしい思いとどこかほっとした気持ちが入り交じっている。ゼロ直々に改めて話しておきたいことがある、なんて言われて内心怯えていたからだ。屈辱的であろうと入るきっかけを得たので、口には出さないが心の中で礼を告げておく。
 部屋に入ると今更ではあるが、けじめはけじめ、と敬礼をした。

「ゼロ親衛隊、紅月カレン、ただいま参りました。」

 斑鳩内に設けられたゼロのプライベートスペースはワンルームマンションよりも遥かに広い。元皇子であったならこのくらいの広さは当たり前といったところか。それに実際は魔女もいるのだ、一人きりではない。
 とはいえ、せっかく来たのに呼び出した当の本人が見当たらない。今日は会議が終わったら斑鳩で一泊せず学園に帰ると言っていた。もしや入るのが遅いからもう行ってしまった??そんな不安に駆られ始める。

「あぁ、来たか。」
「は、はい!」
「すまない、もう少し待ってくれ」

 不意に右側からゼロ、ルルーシュの声がした。視線を移すと小部屋があるのか、扉が少し開いている。そこへC.C.が歩いていく。

「なんだ、着てしまったのか」
「当たり前だ。誰かさんのように破廉恥な格好など出来るわけないだろう?」
「破廉恥とはなんだ、失礼な。今更だろう?」
「うるさい、放っておいてくれ」
「ふん、言われなくてもそうするさ。だが、私の言うことを聞かなかったこと、後悔するぞ」
「誰がするか」

 相変わらずこの二人の間には秘密が存在するらしい。すっかり蚊帳の外にされてどうにも居心地が悪い。

「カレン?つっ立ってないでソファーに座ってくれ」
「あ、はい…」

 C.C.が離れ、扉の隙間から顔だけ出して言うルルーシュ。ちらっと見えた首元は白いブラウスだ。学園に戻るのだからゼロの姿ではないのは分かってはいたが…マントを外した姿を見たかった、などと頭の隅で考え、少し落胆してしまった。

―な…何落胆してんの?私…

 はた、と我に返り頭を振る。
 ルルーシュに対して前々から体力のない貧弱者というレッテルを密かに貼りつけていたが、ゼロと同一人物であったこと、付き合いが長く深くなりつつあることから見方が変わってきている。
 ここ最近は、貧弱としか映らなかった体のラインが気になって仕方ないのだ。ぴったりとフィットした服装を好むルルーシュの体型は長身の割にすらりと儚げなラインを描いている。それが、というわけではないのだが、カレンの庇護欲を刺激してやまない。その上年頃の女の子でもある彼女の頭の中では色々な想像が広がっている。

―だいたい男のくせにあんなに細いのが問題なのよ。玉城さんなんてマントの隙間から見える尻がそそられるなんて不謹慎なこと言ってたし…

「すまない、待たせたな」
「い…やぁ??」

 小部屋から出てきたルルーシュを見て、『いや、気にしないで』と続くはずの言葉はおかしな具合に伸びてしまった。凝視している間にルルーシュは向かいの席へと落ち着いた。横では不敵な笑みを浮かべたC.C.が黙々とピザを口にしている。

「話と言うのは他でもない。この姿のことだ。」

 優雅に組まれた足は黒のニーハイソックスに覆われ、俗に言う絶対領域は素肌だ。膝上20センチほどの短い黒のスカートには見覚えがある。何より独特の曲線を描く白いブラウスの上、きっちりと絞められたネクタイが記憶を裏付けしていた。

「…アッシュフォードの…女子制服…」
「あぁ。会長にばれてな。」
「…女装趣味が?」
「なんでそうなる。」
「だって男女逆転祭りの時もそうだったけど、それ、詰めてんでしょ。」
「あの時はそう言って誤魔化しただけで、残念ながら自前だ。」
「………………」
「…なんだ、その顔は。」

 怪訝な表情のカレンにツッコミを入れる。その横ではC.C.がニヤニヤと笑っていた。

「ほら、見ろ。私が言った通り裸体になれば変な疑いをかけられることもなかったものを。」
「そんなはしたない真似など出来るか。」
「あぁ、そうか、今だと不自然な痣だらけか。」
「…好き好んで付けているわけじゃない。」

 C.C.の茶々入れに眉間のシワを深くしていると突然カレンが立ち上がった。その表情は前髪に隠れて伺い知れない。

「…カレン?」
「相手にされなくて拗ねたか?」
「うぅん。…確かめようと思って。」

 すぅっと上げられた顔は固い決意を表している。その横で握られた拳にルルーシュは首を傾げ、C.C.は何か思い当たったらしい。手に持ったピザを置き、チーズくんクッションも脇に退けている。

「それはいい考えだな。手伝ってやろうか。」
「手伝うっていうより単におもしろそうなだけでしょ?」
「まぁな。」
「…否定しなさいよ」

 二人が話し合っている間、何を言い合っているのか分かっていないルルーシュはただ座っているだけだった。口を挟む余地すらなくカレンが横まで移動してくるのを見つめている。すると不意に後ろから肩を掴まれた。

「んなッ!?」

 首を捻れば綺麗に微笑むC.C.が見えた。が、見た瞬間がくりと体が揺らぐ。慌てて顔を戻すとカレンがのしかかってきている。

「何ッ…」
「言ってただろう?確かめるんだよ。」
「はぁ??」

 C.C.の膝の上に頭が乗りかかるように転がされ、カレンが覆い被さってきた。両腕を持ち上げられるとC.C.の腰に回されて固定されてしまう。何をする気なんだ、と目を白黒させていると乗りかかっているカレンが一つ深呼吸をした。

「ふぅんぬぅッ!」
「ほわぁあッ!?」

 妙な掛け声と共に両胸を鷲掴みにされる。そのまま感触を確かめるように揉みしだかれた。

「なッ…こら!カレン!」
「何ッ!?この弾力と大きさ!めちゃくちゃ気持ちいい!」
「ば、馬鹿か!何言っている!」
「ほぅ…ルルーシュは着痩せするタイプか…む。私より大きい…」
「あ!こら!C.C.まで!」

 両手首を背中側で一纏めに固定したC.C.が空いた手を胸に這わせ始めた。必死に抵抗を試みるも元より非力なルルーシュと黒の騎士団のエースデヴァイサーであるカレン…結果など日の目を見るより明らかだ。
 わしわしと揉みくちゃにしているようでも、痛みは全く感じず、マッサージを受けている気分だった。しかしそれは単に手触りを確かめるものであって決してマッサージをしているわけではない。その証拠に下着の話しを持ち出されてしまう。

「つか、この感触…まさかブラ着けてないの!?」
「そんなわけないだろう!」
「…さては…スポーツブラだな」
「う…」

 図星を指されルルーシュは言葉を詰まらせてしまった。
 人生の約半分を男として生活してきたルルーシュが女性用の下着など買いに行けるはずもなく、むしろ、ミレイに何組か渡されたものすら恥ずかしくて着けれていないのだ。
 しかしどうやらその事実がカレンを怒髪天に導いてしまったらしい。

「なんですってぇ?!あんた、乳を甘く見てるでしょう!?」
「甘くなどッ…」
「いいや、甘く見ているな」
「な、何を根拠にッ」
「根拠は…」
「あんたが今ブラを着けてないことよ!」

 ずいっと顔を近付けて言い放つカレンの威圧感に思わず閉口してしまう。ちらりと視線を上げればC.C.も呆れた表情をしていた。

「なん…で…?」
「乳ってのは!きちんと形を整えて支えてやらないと、垂れて形が悪くなるどころか小さくなったり、余計な部分に肉が流れて贅肉に成り下がるのよ?!」
「…小さくなるなら大歓迎だが…」
「「ダメッ!!」」
「なん…」
「「触り心地がいいのに勿体ない!」」

 双方からピタリと息の合った反論にルルーシュは言葉を飲んでしまった。しかし、はたと思い付く。

「ちょ、待て! C.C.だって着けていないじゃないか!」
「お馬鹿め。私を誰だと思ってる?もう長い間ずっとこの体型のままなんだ。」
「…そっか…それで胸の大きさもそのまま…」
「一言多いぞ、カレン。」
「あぁら、ごめんなさい。てっきり毎日マッサージでもして大きくしようと頑張ってるのかと思っちゃった。」
「ふん。筋肉の付いた大根足が。知ったふうな口をきくな。」
「む。なぁに??その言い方。あ、図星だったぁ?」
「何が悪い?お前こそ、そのがっさがさな肌をどうにかしたらどうだ?」
「えぇ、えぇ、どうにかしてみせますよ!」
「ま、せいぜい頑張って美容液に頼るんだな。」
「うぅ〜…」

 寝転ばされたまま、上方で広げられる言い合いをぼんやり眺めていた。ただし、脳内では数百通りのシミュレーションを構築して何とか逃げ出そうど考えている。

―この方法を使うと確実にカレンの機嫌を逆撫でしてしまいそうだ…かといってあの方法では…C.C.には効果がなさそうだ…どうする?どうする?どうする?どうする?…

 ぐるぐると考えていると結果を出すより前にカレンが先に発言してしまった。

「いぃわ…こうなったら…強行手段に出ましょう。C.C.!」
「任せろ」
「な、何をする気だ?!」
「悪くは思うなよ?ルルーシュ。」

 言うが早いかするが早いか…C.C.がルルーシュを背後から羽交い締めにする。その間にカレンがどこからかメジャーを取り出してきた。ぱちくりと見守っているとおもむろにブラウスのボタンが外されていく。ここまでされればさすがに鈍感なルルーシュでも何をするか分かるだろう。

「ままままままままってッ!やめ!やめろ!カレン!」
「往生際の悪い!じっとしてないとブラウスを引き裂くわよ!」
「それは困るが!」
「じーっくり見てもらえ?」
「なっ…あ、ちょッ…見るなぁ!」
「……………………えっ?」

 ばさぁっ!とブラウスの前を全開にしたカレンが固まった。そこには自白した通り白いスポーツブラ。しかし、柔らかそうな肌の上にいくつもの花弁が散っている。ルルーシュは頬を染め、涙目を反らしてだんまりを決め込んでいた。その後ろではC.C.が楽しそうな笑みを浮かべている。

「…キスマーク…」
「ずいぶんと大量に付けてもらったな。」
「俺が頼んだわけじゃないッ!」
「強姦されたの!?」
「どうしてそう危ない方向の言葉しか出ないんだ!お前は!」
「だ、だってッ…」

 ブラウスの前合わせを握りしめたまま泣きそうな顔をするカレンに、ルルーシュは泣きたいのはこっちだ、と心の中でため息を溢す。しかし、前門に泣く虎、後門には笑う龍。C.C.は笑みを更に深めてさらなる爆弾発言をみまう。

「無理矢理なのは間違いないんだろう?」
「だ、黙れ!C.C.!」
「むりやり…」
「お前のことだから押し倒されて言いくるめられて流されたんじゃないのか?」
「うぐ…」
「誰…に…?」

 図星を指され思わず言葉に詰まるとカレンの様子が激変した。どこからか冷気が漂い、寒気に身を震わせる。更に彼女の背後にめらめらとたぎる炎まで見えてきた。

「大方、枢木スザクか?」
「なっ…」
「…くるるぎ…」
「しかもずいぶんしつこくされたところを見るとちょっかいを出されたな」
「そッ…それは…」
「あのジノとかいう貴族の騎士か。ナイトオブスリーだったかな」
「なななななななな…」
「なんだ。全部図星か?当てずっぽうに言ってみただけなのにな?」
「何ッ!?」
「…ナイトぉ…オブ…らぁううんずぅ…」
「ひっ」

 ゆらりと立ち上がるカレンの形相に短い悲鳴が漏れた。彼女の発する言葉がどこかのロール親父に似ている気がするがそれどころではない。纏う空気が、オーラがどす黒いを通り越して異常なまでに禍々しい。更には口から蒸気まで吐き出されていた。

「次ぃ…戦場で会った時はぁ…死…あぁるのぉみぃ…」
「ほほう…本気だな、カレンは」
「何を暢気に!」
「いいじゃないか。排除してくれるかもしれないぞ?」
「それは…ありがたいが…」
「だろう?このままにしておいてやれ」



−後日談−
 KMFでの交戦真っ最中。ランスロットとトリスタンが戦場に姿を現した時、紅蓮からカレンの雄たけびが轟いたという。

「死にさらせやぁーッ!!!こんのケダモノラウンズがぁああぁぁぁぁああぁぁあッ!!!!!!」

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