ふと睫が揺れ、その奥からラズライトのような瞳が覗く。
ただぼんやりと天井に視線を漂わせ、何かに気づいたかのように勢いよく起き上がる。
……が……
―ぎしっ
「!!?」
起き上がろうとした行動は何かが擦れる音によって止められた。次第に体の感覚がはっきりしてくる。
背中に冷たく硬い板があり、両腕は左右に開かされ頭上にある。直接肌に触れる感触からすると、それは革のベルト。自分が乗せられている鉄の板にある取っ手に括り付けられてある。足には付けられていないようだが、この状態では一人で起き上がる事など出来ようはずがない。周りの雰囲気から察するに、『神への貢物』か、それとも『悪魔への餌』か。とにかくそこは祭壇らしき場所のようだ。
ひとまず自分の状態を理解したところで軽いため息を漏らした。
「あ……起きた?蛮ちゃん」
どうにか外れはしないかと腕に力をこめようとした時、聞き覚えのある声がかかる。その声がする方に視線を送るといつもの人懐っこい笑みを浮かべた相棒が立っていた。
「……何のつもりだ?」
「ちょっとね」
相棒がそこにいる事と、自分の体に微かに残る痺れで、なぜこのような状態になったのかが理解出来た。電気ショックで気絶させた上でこの状態にしたんだろう。その表情に悪びれた色は読み取れない。ただ嬉しそうに、幸せそうに見下ろしてくるのみだ。
「ちょっとじゃ分からねぇだろ」
その締りのない顔に思い切り睨みつける。だが睨まれる事に慣れたのか、怯む様子は全くない。それどころか手を動かせないのを良い事のように上から覆い被さってきた。
「ちょっと、興奮する事教えてもらったんだ」
にっこりと笑ってそっと口付ける。いつものように舌を絡める事なく、触れるだけのキス。これからしようとすることへの懺悔とも取れる優しい口付け。
「こんな事する必要あんのかよ?」
「うん すっごくある」
「……悪趣味な事じゃねぇだろうな?」
「さあね?」
「!銀次!?」
蛮の質問を軽く受け流し、腰元からナイフを取り出した。最近ではさほど珍しくもないアーミーナイフ。そこまでなら奪還屋の仕事上お目にかかる事は結構ある為、驚く事もない。
……しかし、その後の行動が問題だった。
銀次はそのナイフを蛮の首筋にあてがったのだ。息を呑む蛮を愉悦の表情で見つめながらそっとナイフを滑らせていく。肌に傷を付けることのないように、細心の注意を払って……
―ビリリッ
「っ!」
白いシャツの合わせ目に付けたと思った瞬間ナイフが閃いた。高い音を立ててシャツが刻まれる。何の抵抗も出来ない事に恐怖感を煽られ、蛮は思わず瞳を閉じる。耳にボタンの跳ねる音が届く。そのままボタンが地面の上を転がり、どこかにぶつかって止まった。恐る恐る瞳を開けると銀次の視線とかち合う。その瞳はいつもの銀次と一緒。決して雷帝にはなっていない。
何をされるか分からないという事が生理的に蛮の呼吸を荒げる。戦闘経験が豊富とはいえ、こんな状況では何の役にも立たない。
「……そんな顔しないで?蛮ちゃん」
「……無……っ理……」
「大丈夫。怖い事はしないから」
「……銀……」
「これも……すぐ終わるよ」
「!」
頬や額にキスを散らして気分を和らげさせる。が、それも束の間。またナイフが閃き始める。
縦に大きく開かれた白いシャツを縦横無尽に切り裂いていく。白いシャツだけではなく、直に着ているタンクトップさえも……ナイフが閃く度に破れた隙間から覗く白い肌がもっと露にされていく。ふとナイフの動きが止まったかと思うと今度は腰元に突きつけられる。まさか、と思った時にはすでに遅かった。鈍く引き裂く独特の音を立てて、ナイフが足の付け根へと動いて行く。徐々に布を剥ぎ取られ、体に纏う部分が極端になくなった。
永遠に続くかのように感じた、布の裂ける音が止む。ナイフが床を叩く音がして蛮はびくっとする。
「……蛮ちゃん……」
「……ぁ……」
生理的に感じる恐怖に打ち勝とうと硬く瞳を閉じていた蛮の頬に、銀次の暖かい手の感触が広がる。その手がつうっと滑ると濡れた感じが広がり、蛮はふっと瞳を開ける。
「そんなに怖かった?」
「……ちが……」
「ごめんね」
「……っん……」
両手で蛮の顔を包み込み、震える唇に優しくキスを落とす。それを甘受して、蛮は与えられる安心に身を任せた。冷たいナイフではなく、いつでも高い銀次の体温がじわりと肌に伝わり蛮の内に芽生えた恐怖を摘み取っていく。
「お詫びにうんと気持ちよくしてあげるから」
「え?……っあ!」
裂けた布の隙間から覗く胸の飾りをぺろっと舐め上げると蛮の口から嬌声が上がる。口に含んで舌先で転がすだけで蛮の体が跳ねて快感の度合いを知らせる。もう片方も指で摘んでは揉み潰して……と刺激を加える。胸への刺激だけで達してしまいそうな蛮の声に、銀次は気分を良くして更に攻め立てる。
先ほどまでの気分と一変してしまった為、肌が快感に対して敏感になってしまっているのだ。しつこく舐めてくる感触に蛮は嬌声しか上げられなくなっている。
「気持ちいい?蛮ちゃん?」
「……っん……ぁあ……」
銀次が顔を上げて聞いてくる。止んでしまった快感に蛮はぐったりとしているだけだ。それでも硬く立ち上がった胸の飾りが、体の変化を正確に伝えている。蛮の表情も怯えた色をなくし、陶酔したような表情になりつつある。服が中途半端に切り裂かれている事と、両腕の自由が奪われている事が更なる快感を煽ってくるのだ。
銀次はおもむろに、くたっと力なく放り出された白い足を折り曲げさせた。太ももとふくらはぎをぴったりくっつけて何かを巻き始める。
「?……銀次?」
「あ、大丈夫だよ?あまり痕がつかないようにするから」
にこにこと答えた銀次に何かを感じ自分の足へと視線を移す。
「な?!」
「駄目だよ蛮ちゃん 動いたらちゃんと付けられないよ」
「っざけんな!すぐ解け!!」
「ダーメ!せっかくマリーアさんに教わったんだもーん」
「!」
怒りに身を任せてしまいたい蛮の目に写ったのは、自らの太ももを交差する赤く細いベルト。足を折った状態でがっちり固定して、手首を締め付けるベルトと結ぶ。そうすれば自然と足が左右に開かれたままになってしまう。下半身の服はほぼ皆無。つまり銀次の目の前で蛮は非部まで惜しげもなく晒した状態なのだ。
足を下ろそうにも手首と繋がって下ろす事は叶わず…かといって閉じようにも両腕と同じく開かされた状態で固定されていてそれすら叶わない。開かされた場所に銀次の視線を感じずにはいられる訳もなく、中心が熱を帯びていく。
「感じちゃうの?蛮ちゃん」
「っるせ……」
頬を朱に染めそっぽ向こうとする蛮の顎を捕らえてその表情を堪能する。
「蛮ちゃん可愛い」
「……悪趣味野郎」
「悪趣味にさせてるのは蛮ちゃんのせいじゃん」
「てめぇが年中発情するからだろ!」
「だって蛮ちゃんいつでもおいしそうなんだもん」
「〜〜〜〜〜!!!」
「はい、おしゃべりはここまで。いい声で鳴いてね?蛮ちゃん」
「やめっ……ぁあん!」
頬にちゅっとキスをすると銀次はさっそくと言わんばかりに開かれた足の中央に顔を埋める。ふるふると立ち上がりかけている蛮のモノを口に含み音を立てて吸い付く。それに体を仰け反って答えると、ベルトがぎしっと音を立てる。銀次の与える刺激に蛮の体が応える度にベルトがしなり、二人を駆り立てた。
「……っあ……ぁんっ……ぁあっ……やぁ……も、イ……くぅっ」
―ぎしっ……ぎっ……ぎ……ぎちっ……ぎし……
「あぁっ……ぎん……っんあぁぁぁぁぁぁ!!」
更なる強い刺激を受け、蛮が銀次の口の中で果てる。体をびくびくと反らせ、銀次の口に余すことなく注ぎ込む。銀次も注ぎ込まれたそれを零す事のないように、喉の奥へと収めた。その際に聞こえる嚥下の音が蛮の耳に届く。信じられないとでも言いたげな表情をして蛮が銀次を見つめていた。
「……おいしかったよ……蛮ちゃん」
「っ……ばか……」
蛮の視線を感じた銀次がふわりと微笑み、蛮の耳へ言葉を投げかける。するとやはり悪態が返ってきた。
蛮にまだ悪態がつける余裕があると判断した銀次が再び顔を埋める。ただし先程と違って口づけた場所は、先走りが辿り着く所。淡く色づいた蕾。蕾を舌先で突くと即座に反応が返ってくる。ひくひくと動き、まるで何かを話しているように。
指で蕾を押し開き、舌を差し入れると蛮の体が大きく跳ねた。そのまま中へ唾液を入れるように出し入れすると細い腰が自然と揺れる。ぴちゃっという卑猥な音が響き始めた。
「……気持ちいい?」
「……あぅ、ぅうんっ……あぁ、ぁ」
自分を誤魔化すように蛮の首が横に振られる。体はどこも「気持ち良くて狂いそうだ」と訴えているのに、蛮の理性と上の口が断固として肯定しない。舌だけでの刺激から、指も交えての刺激に切り替える。銀次の唾液と先走りの蜜で塗れたソコに指を突き立てた。一本だけだというのに蛮の体が思い切り仰け反る。同時に両足ががくがくと震えだした。
「まだ駄目だよ?」
「……やっ、ん……」
「駄目……イかせない」
「ぁ……ぎん、じ……ぃ……」
すっかり濡れて、勃ちあがったソレの根元を銀次がベルトを取り出して締める。どくどくと脈打っているのを全て根元に食い込むベルトがせき止める。白い肉棒に赤いベルトが絡み付いている光景が銀次を更に煽っている。しかし蛮はそれどころではない。体中に渦巻く、行き場のない熱を持て余し、腰を振る事で紛らわせていた。
「……ぃあっん……あぁっ……あっ……あっあ……」
蕾に差し込んだ指を少しでも動かす度に蛮の甘い声が零れる。体が淫らに動き、快感がいかに体内を蝕んでいるか表現している。肌はうっすら桃色に色づき、しっとりと濡れてきた。腰は更なる快感を求めて突き出されている。
蕾の中では銀次の指を離すまいと蠢き、吸い付いている。その収縮を和らげるように銀次の指が中をかき回していた。出し入れを繰り返しては折り曲げてポイントを探り出す。もはや肌に食い込むベルトも今の蛮には快感を引き出す刺激の一つにしか捕らえられない。
「ぎ……じ……ぁ……も、イかせ、てっ……」
震える声での懇願を銀次は快く了解をした。目の前で晒される蛮の痴態に銀次とて限界が近いのだ。散々弄っていた指を引き抜くと蛮から物足りなげな声が漏れる。
「……ぎん……じ……」
「一緒にイこう、蛮ちゃん」
「ぁ、あぁんっ!」
銀次はひくついている蕾に自身を当てると、一気に押し入った。それによってベルトが一層大きな音を立ててしなる。だが、蛮の口から出たのは甘い鳴き声。苦痛の声音はどこにも窺えない。体も悲鳴をあげる事なく、淫らにうねり銀次を受け入れた。
「あぅっ……っあ……あぁっ……っ……あっん……」
「蛮ちゃん……蛮ちゃんっ……」
「ぎ……んじ……っ……」
「……ば……ちゃ……っ……」
「…ひ…あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「ばーんちゃーん」
「………………」
「蛮ちゃーん」
「…………………」
「ごめんってばー」
「………………………」
「蛮ちゃんー」
「………………お前さ……」
「……はい……」
「跡付けないようにするっつったよな?」
「うぅ……はい……」
「どーこが付けないだっ!!」
「うわぁーん!ごめんなさいぃぃ!!」
「しかも服ぼろぼろにしやがって!」
「はうぅ……」
「どうやって帰るんだ!?」
「あ!大丈夫ちゃーんと服もらって来たから!」
「ほぉお?」
「ほら!」
「…………………」
「…………………」
「…………………」
「…………………」
「…………………」
「…………………」
「…………………銀次」
「…………………はい」
「死にてぇようだな!!」
「めっそうもございません!!」
「逃がすか!」
「許してぇぇぇぇぇ!!」
この時銀次が持って来た服を用意したのは他でもない、マリーア=ノーチェス。果たしてどのような服を持たせたかは……皆様の豊かな想像力にお任せしよう。
「スネークバイトォォォ!!!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
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