「ほら……ちゃんと咥えて?」
薄暗い部屋。殺風景でコンクリート剥き出しの壁。唯一の窓から差し込む月明かりが部屋の中央を照らし出す。所々解れ、中のスポンジが飛び出している革のソファ。黒くてらてらと反射するそのソファに一人の男が腰掛けている。片肘で頬杖をつき、目の前の光景を愉悦の表情で見ていた。
「歯、立てちゃ駄目だよ?」
「……っん……ぅ……」
空いた方の手でその短い黒髪を梳いて表情を見えるようにかきあげさせる。男の指の間を通ってはさらりと落ちていく。
男が座るソファの前に座り込む人影。開かれた男の足の間に体を置き、目の前のソレを口に咥える。咥え込むのに精一杯のソレを頬張り、唇の端からはとろりとした蜜を溢れさせていた。
月明かりに白く浮き上がる肌と光の輪を作る黒髪。ラズライトの瞳は濡れていて、頬はほんのりと色づいていた。白い首には血のような紅い革ベルトがつけられ、細く白い腕は後ろで交差され縛られている。体には一糸も纏わず、首にぶら下がる鎖が白い肢体の前で揺れていた。
「っ……そう、いい子だね……すごく気持ちいいよ」
「っん……ぅ……っぅ……」
水のような卑猥な音を立てて男のソレを舐め続ける。口の中にあるソレが徐々に激しく脈打ち始め、男の限界を知らせている。
「……出す……よ……ちゃんと飲んでね」
「っっんんぅッ!!」
どくっと大きく脈を打ったと思うと、口の中に熱い液体が注ぎ込まれる。大量の液を数回に分けて飲み込むと、咥えさせる為に抑えていた手が離され、ようやく開放される。ソレを口から取り出すと、荒い呼吸を始めた。
「っぁ……はっ……はぁ……」
「きちんと全部飲んだんだ。本当にいい子だね、蛮ちゃん」
「……っ……」
床の上へ座り込んでしまった蛮を、首の鎖で引き上げる。ぐいっと引っ張って立たせたら、前のめりに自分の上へと引き寄せた。
「……銀次……あぅっ」
「違うでしょ?……ご主人様♥でしょ?」
「や……無理っ……」
切なげに名前を呼ぶ蛮の乳首をきつく抓ると、痛みのせいに、か、それとも、快感に、なのか。白い体がびくんっと跳ね上がる。そのまま言う事を聞かない蛮から手を離した。すると蛮の体が重力に従って床へと崩れ落ちる。重たい音を立てて鎖が床の上を跳ねる。
「ご主人様って呼べたら相手してあげる」
「……ぁ……」
「簡単でしょ?呼び方を変えるだけなんだよ」
床に崩れ落ちた蛮を銀次がソファから見下ろしてくる。顔はいつもの柔らかい笑顔。なのに、なぜか違って見えた・月を背に顔へ色濃く影を落として見つめる銀次を、蛮は潤んだ瞳で見上げる。月明かりに照らし出された自らの裸体に羞恥を感じ、蛮は銀次の要求を飲むべく覚悟を決めた。
「ほら……呼んでみて?」
「………ぅ……ご……主人様……」
「もう1度?」
「……ご主人様」
「ん、よろしい」
ソファから身を屈めて鎖を拾うと引っ張って蛮の体を起こす。膝立ちにさせて床にまで届く鎖を蛮のモノに絡めた。
「……っあ」
「腰、動かして」
二重ほど巻きつけた鎖の端を手に持ったまま、次なる要求を出してくる。そのまま腰を動かせばどういうことになるか、蛮には容易に想像できた。
銀次がさせようとしているのは、鎖で自慰を営む姿。徐々に立ち上がりかけているソコを鎖が擦れる。そうやって自らの欲を曝け出す姿。考えるだけで眩暈が起こりそうな行為。
「蛮ちゃん」
「っ……」
元VOLTSのリーダー。ロウアータウンの帝王。その名に相応しい眼光は今も衰える事なく、絶対服従の力を持って蛮を見つめる。その上に低く掠れた声は命令の力を持っている。
抗えるはずのないその瞳に、蛮はゆるゆると腰を使い始めた。銀次が持つ事により固定された鎖の輪の中を蛮のモノが擦れる。鎖同士が擦れる音と、鎖の質感に快感を煽られ始めた。
「いい眺め♥」
「……ぁ……ぅ……っ……」
「こうしたら気持ちいいかな?」
「ぁあんッ」
絡めた鎖を引き絞るようにくっと持ち上げると、巻きつけられた鎖が締まり、更なる快感を追う。
「あっ……や、もぅ……ッ無理」
「じゃあお願いして?」
「……イかせ、てっ……」
「それじゃ駄目だね」
「あぁうッ」
「『ご主人様』にお願いするんでしょ?もう一度だけ言わせてあげる」
「……イかせてください……」
「ん、良く出来ました♥」
首輪を引っ張り顔を近付けさせる。そうしてもう片方の手で掴んだ鎖を思い切り引っ張った。
「っんあぁぁぁッ」
「いい顔♥床汚れちゃったね……舐めとって」
「……んぅ……」
余韻を十分に味わう暇もなく銀次の命令が下される。朦朧とした思考で、蛮は命令に従う。床に飛び散った自らのソレを舐め取り始めた。その光景はさながら猫が餌を喰らうかのよう。
「そのくらいでいいよ。ここに上がって?」
床から顔を上げた蛮が恨めしそうな表情をする。
「相変わらず素直に聞いてくれないんだね。しょーがないな」
断固として『人』に従おうとしない蛮。体へ悦楽による強要をしない限りは聞こうとしないようだ。
銀次はくすくすと笑うと一端笑いを収め瞳を細めて蛮を見下ろした。その視線にびくりと体を震わせる。帝王の降臨。だが金色の髪は降りたまま・瞳も虚ろではなく、綺麗な琥珀色。それでも十分な威圧感を滲み出す銀次は絶対的な王としてそこにいる。
「ここへ上がれ」
『王の下す命令は絶対である』
どこかで聞いた大昔の人間の言葉をこんな風に実現させる事になるとは思っても見なかっただろう。
思考は拒否を示しているのに、体は従うべくのろのろと動き始める。銀次が座るソファの空いている所へと。ちゃり……と鎖が鳴り、太腿の間で揺れる。ソファに片膝を立てた時銀次の視線が下肢へと注がれた。その視線を居たたまれなくなりながらも命令を遂行させる。
「次は……俺にソコがよく見えるように座れ」
「っ……」
ソコと言って指されたのは先程まで見つめられていた下肢。ソコが良く見えるようにと言う事は自ら足を開け、と言う事だ。命令に逆らう事の出来ない蛮は反対側の肘掛に背を預け、見えるように足を広げる。
「もっと開くだろ?」
「……ぅ……っ……」
「背もたれに片足を乗せろ。そうすればもっと開く」
「……っ……」
言われた通りに片足を乗せると肉棒だけでなく、最奥に潜む蕾までも晒す体勢になる。その事に気付いた蛮が頬を赤く染めそっぽ向いた。
「相変わらず可愛い反応してくれるよな」
「……可愛くなんか……ねぇ……」
「そういうのを可愛いって言うんだ」
「………雷帝?」
先程からの口ぶりはどう聞いても雷帝のもの。圧倒されて気付かなかったが、入れ替わった?蛮がそういう思考を廻らせている事に気付いた銀次が、いつもの柔らかい微笑を浮かべ、不安げな蛮に優しくキスをする。
「違うよ?蛮ちゃん」
「……?銀次?」
「蛮ちゃんが従いやすいように……演じてるだけだ」
「っ!」
ざわりと背中を撫で上げられる感覚に蛮は体を震わせる。間近で見せたその表情がいつもの『銀次』から『獣』に豹変したからだ。息を詰まらせた唇に激しいキスが落とされる。口内を貪り、酸素を奪っていく。柔らかい舌に歯を立て、きつく吸い上げれば体の下にある体が震える。
「……ぁ……はっ……」
唇を開放すれば熱い吐息を漏らし、潤んだ瞳が見上げてくる。上気した頬が更に艶かしい。
「いい子だ……ご褒美をやるよ」
「っあ……ゃあっ」
くたりと力の入らない体の中心へと手を伸ばし、ソコにあるモノを握り込む。ぎゅっと力を入れれば今にも達しそうな声を上げて仰け反った。手の中でびくびくと振るえるソレの根元で輪を作り、流れをせき止めると口付ける。
「ぁん……っあ……あ……ぅんっ」
粘着質な音を立てて舐め回せば蛮の口から鳴き声が漏れる。逃れようと自由な片足を閉じようとするが、難なく銀次の手によって捕らえられ、さらに大きく開かされた。きつく吸い付かれては舌先でゆっくりと舐め上げられる。先端に溜まった雫を舐め取っては茎の部分へ塗り込む。ぴくっぴくっと震え、なんどかの排泄感を味わっているにも関わらず、握られた根元のおかげで達する事が叶わない。体を這い回る快感の波に頭を振り乱し、無意識に腰を揺らして解放の時を強請っている。
「イきたいか?」
「ん……イきた……いっ……」
「言う事があるだろ?」
「あぅ……っん……イ……かせて……くださっ……」
「いい子だ」
せき止めた指を離し、先端をきつく吸い上げると呆気なく達してしまった。数回に分けて吐き出された蜜を、喉の奥に収めていく。
「ぁ……あぁ……ッ……ひあぅっ!」
イかされた直後に蕾へと指を差し入れられた。ズッと奥まで突き刺し、くるりと円を描けば白い肢体が仰け反り跳ねる。足がぴんっと伸ばされ空を蹴っては震えていた。
入口は先走りの蜜で濡れていたので難なく入ったのだが、予想しなかった挿入により蕾がきゅうっと締められる。
「きついな……力を抜け」
「っむ、りっ……」
瞳を硬く閉じ、震える蛮に苦笑を漏らすと指を咥えたままの蕾に舌を這わせた。ひくっと体を引きつらせたが構う事無く舐め始める。指も抜き差しを繰り返し、唾液を中へと送り込む。徐々に淫らな音が聞こえ始め、その頃には蕾に差し込まれた指は三本にもなっていた。
「もういいか……」
「……ぁ……っぁ……」
蕾に埋めた指を引き抜くと腰が切なげに揺れる。その痴態に淡く微笑むと背もたれに引っかかっている足を下ろさせる。
「……ぎ……っ……ご……主人さま?」
「よく間違えなかったな」
「……ん……」
「うつ伏せになれ」
間違えなかったご褒美にキスを与えられると次の命令を出される。快感によってうまく動かない体を反転させ、肘かけに顎を乗せる。足をどうしたらいいのか分からず困っていたら、銀次の手が腰を鷲掴んだ。肘掛に顎を乗せたまま腰を高く持ち上げられ、銀次の目の前に非部を曝け出す状態にさせられた。後ろで銀次が動く気配を感じたら衝撃が脳天にまで駆け抜けた。
「っあぁぁぁぁ!!」
「欲しかったんだろ?」
「あ……んぅっ」
縛られた腕を掴まれぐいっと引き寄せられれば、銀次の雄が最奥までねじ込まれた。熱く猛り狂った雄が中を支配している。腕と腰を掴まれたままずるりと引き抜かれる感触に体を振るわせれば、ズグッと奥まで貫かれる。それを何度も繰り返されれば蛮の口から狂ったように甘い嬌声しか出されなくなった。
「あぅっ……ぁんっ……んんっ……あぁんっ」
「気持ちいいのか?」
「いぃ……すごくっ……いぃっ……ぁ……ご主人様、は……?」
「あぁ……いいよ」
赤く色づく耳にキスを落とすと銀次の動きが激しくなる。更に、更に高みへ目指すように動きを複雑にすれば、それに応えるように蛮の中も収縮を繰り返す。
「蛮……」
「あっん……んっ……あぅっ……ぃ……イくぅっ……」
「いいよ……イっていいよ……蛮……」
がくがくと振るえる肩に優しくキスを落として、上体が辛くないように抱き寄せる。ひくっと仰け反る首に痕を残し、絶頂を目指す。
「あ……ご……しゅ……」
「……名前で、いいよ」
「んっ……銀次……」
抱き寄せた体を膝の上に乗せて蛮への負担を和らげる。月明かりを受けて白く浮き出す背中に唇を押し当てて耳の裏に舌を這わせる。耳たぶを食んで離すと、再び腰を掴み揺さ振り始めた。
「うん……もっと……呼んで……」
「銀っ……じ……っあ……銀次っ……あぁっ……」
「……蛮ちゃん……」
「イっ……くぅ……銀次ぃっ……」
「イっていいよ……蛮ちゃん……俺もすぐ……イくから……」
快感に委ねきった上体を肩に凭れさせ、膝裏を掬い上げる。そうして腰を揺らし、抱えた体を揺らせばうねる内壁の最奥まで突き上げる事が出来る。あまりの快感に仰け反った体を盗み見れば月明かりを受けて白く輝いていた。
蛮のポイントを正確に突き上げると限界が訪れる。
「蛮ちゃん……」
「っぎん……っあぁぁぁぁぁッ!!」
蛮のポイントを深く抉り、まず蛮が達してしまう。蛮が達した事により、蕾が引き締まる。その快感に銀次が蛮の中へと欲望を吐き出した。
気を失ってしまった蛮を抱きとめ、その両腕を開放する。間も無く訪れた睡魔に意識を委ね、抱きとめた体を守りながら眠りについた。
帝王としての久々の夜は『雷帝』の欲を満たすには十分であった。
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