タイミングが悪い時というのは、これでもかというほど積み重なるもので。とことん苦しめたいのか、と誰に問うでもなく聞きたくなってしまうものだ。
それはこの数日でよく思い知った。
「博士、新たに書類が届きました」
「ん、荒方でいいから目を通してくれ」
「かしこまりました」
久し振りに来たSPW財団からの新たなスタンド保持者の報告と、中近東での異変についての報告を整理及び詳しい調査のために相応しい人員を手配しているところに、イタリアにいるDIOの遺児であるジョルノからの報告が重なった。どうやら彼のいるイタリアに近い場所でも異変があったらしい。自身で出来る限りの対応策を打っていたらしいのだが、助力を願えないかという、彼にしては珍しい事態に陥っていた。報告書の方も彼らしくない文面で不思議に思えば、大事な右腕が巻き込まれているようだ。出来るならばあまり関わり合いにはなりたくないのだが、こうして頼ってこられているのに放置する事は出来ない。
中近東の報告とジョルノの報告を照らし合わせていると恐らくは同一事件だろうと予測できた。SPW財団へと人員要請とジョルノへの対応策を作りそれぞれに指示を出した上で、起こり得る事態も考えられるだけ伝えておいた。本当ならば自身が出向くのが一番早いのだが、海洋学の方でも仕事が重なり遠出をする事が出来なかった。このあたりは向こうも承知の上のようで、指示や対策での助言だけを求めていた。
もっと余裕があればすんなり終わっていたかもしれないのだが、報告書がリアルタイムでファックスにより送られ、書面は走り書きに近い。ゆえに届いてから一度整理をしなければ要点を掴みにくいものだった。
前ならば一人でこなしていかなくてはならなかったが、今はスタンドやSPW財団にも通じている仗助がいるのでいくらかはマシになっている。何せ徹夜はいたし方ないとしても、断食状態からは免れているからだ。
そんな想定外の事態に巻き込まれたのがこの三日間。早朝にジョルノ直々の感謝の連絡が入ってようやく解放された。事後処理があるだろうが、それらはすべて彼の方でしてくれるという。やれやれ、と一息をつく間もなく海洋学のレポートを纏める作業へと取り掛かった。この数か月間で行っていたヒトデの生態観察と実験の結果をまとめて学会に提出することになっている。こちらはあと4日以内に仕上げなくてはならない。本来ならばすでに終わっているはずだったのだが、時間を取られてしまい、これでも少し締め切りを延ばしてもらったくらいなのだ。
よって、今承太郎は鬼気迫るオーラを放ちながらレポートへと取り掛かっている。その合間にSPW財団とジョルノから届く事後報告書を確認しているのだが、一度仗助に目を通してもらい重複した内容があれば削ってもらっている。
「博士」
「ん」
呼びかけには応えるのだが、声だけで目や手は変わらず書面へと注がれ止まる気配がない。遅れた分をどうにか挽回しなくては、と躍起になるのは分かっているし、事実締切を伸ばしてもらっているのだから仕方がないだろう。
けれど、仗助の目にも承太郎の疲労の色は明らかで、その証拠に誤字脱字が増えているらしく修正に取られる時間が増えてきている。小休憩を挟んではどうか、と提案をしたいのだが呼びかけに応える彼の意識はレポートに集中したままだった。きっと何を言っても適当に返事を返されるだけだな、と安易に予想がつく。
ふぅ、とため息を吐き出す。至極真面目な彼は自分が学生の頃もこうして根を詰めて仕事に当たっていた。むしろ詰めすぎて自分の事を二の次にしてしまい、子供の自分に酷く心配をさせるのが得意だったはずだ。そんなところは現在も健在しており、仗助にしては一種の悩みの種だ。責任の重さも、彼の肩にかかる重荷も理解しているのだが、無理を押しとおしたところで己を苦しめる枷にしかなっていないことに本人は気づいていないと思う。
昔は子供だし、何か意見する事は憚られていたのだが、今は違う。彼の心身ともに守り、健全に保つのが仕事だ。この三日間は多くの人命に関わる可能性のある仕事だった故に黙ってはいたのだが、海洋学の方は承太郎一人の体が天秤にかけられている。その当人が体調を崩しそうな予感に仗助は対策を考えるべきだ、と判断した。
それに一度リフレッシュした方が捗ると思われた。レポートを始めた頃は2日もあれば終わりそうな雰囲気だったのだが、今では4日あっても終わるかどうか分からないほどになっているのだ。これはもう、早急に手を打つべきだろう。
さて、攻略しますか。決意を胸に承太郎に向き直った。
「博士」
「ん」
返ってくる返事はやはり曖昧な響きを持っている。それでも条件反射のように返してくれることに笑みが漏れた。机のすぐ傍で立っても顔は上げられず手はなおも動いては修正液に伸ばされている。
「博士、少し休まれてはいかがですか?」
「あぁ」
きちんと返ってきた返事に、本当に実行してくれるのならば仗助の考える対策は打たずに済むと思った。後々の事を考えるとその方が良いのだが……しばらく待ってもやはり中断する気配は見せない。
うん、やっぱりな。予想通りの反応に口元が笑みを浮かべる。
それでも猶予というものは必要だろう、とすぐには行動に出ず質問を重ねることにした。
「博士、聞いておられますか?」
「あぁ」
「これ以上聞き入れて頂けないようでしたら実力行使に移りますが」
「あぁ」
ちゃんと返事はしてくれるがまったく内容は理解していない。わかってはいたがここまでくるといっそ清々しい。しかしちゃんと言質は取った、と両手を握りしめた。
そっと承太郎の座るチェアの背凭れに手を置くと、文字を書き続けている手に己の手を重ねた。するとさすがに驚いたのだろう、包みこんだ手が跳ね上がり、俯いていた顔が振り返る。
「仗助?」
「申し上げた通り、実力行使に移ります」
「は?」
きょとん、とした顔にやっぱりちゃんと聞いていなかったな、と確信を得てにっこりと笑みを浮かべた。
「ドラァ!!」
「ッ!?」
承太郎の死角にそっと発現させたクレイジーダイヤモンドにチェアの背凭れと座面の接合部を破壊させた。突然の衝撃に硬直した承太郎の手を掴みあげて後ろへと倒れていく背凭れごと押し倒していく。床と並行となる位置よりも少し上で止まるよう、クレイジーダイヤモンドに仮止めをさせた。変形させることになるが後で元に直せば問題はない。
咄嗟の出来事に軽く混乱している承太郎が何か言おうと開いた唇を己のそれで塞いでしまう。寝不足で思考が鈍ってはいるが、スタープラチナを発現させられると押さえこめる自信がない。未だ混乱から立ち直れていない舌を絡め取ると、暴れそうな左手を手すりに押し付け、右手もペンを取り上げると同様に手すりへと押さえこんだ。息苦しさに呻く声を飲み込み、椅子の方向を回して正面にすると足の間に体を捩じり込ませる。
「んふっ、ん、んぅ!」
たまに唇の端から漏れ出る声は言葉になっておらず、噛み付かれそうになるが互いの歯がぶつかるくらい深く押しつける事で難を逃れる。押し出そうと蠢く舌を執拗に追い詰め撫で上げては擦りつけて弄んだ。暴れる足に意を介さず椅子に乗り上げた膝で股上を押し上けるとくぐもった悲鳴と共に、体が派手に跳ねる。
「ふぐっ、む、んぐぅッ!」
ぐりぐりと容赦なく膝を押し付けていればびくっと躯を跳ねさせ、逃げようと腰が捩られた。しかし、限られた椅子という狭いスペースでは逃げ道などあるわけもなく。酸欠に喘ぐ舌に比例するように躯が力をなくし暴れていた足も次第に大人しくなった。手すりを引っかく爪も力なく叩くだけになってきた頃、最後まで抗っていた舌も震えるばかりになってくる。離れる瞬間の反撃も視野に入れて唇を浅くしつつ念入りに舌を愛撫し、押し付けた膝の強さを徐々に弛めていった。
試しに、と片手を解放してみるがずるりとすべり落ちていくだけで拳が握られることはない。無防備にだらりと投げ出された躯にようやく唇を解放すると、互いの唾液で濡れた唇の端から飲み切れなかった分が流れ落ちる。顔を覗き込んでみると薄く開いた唇が浅く呼吸を繰り返し、頬が紅く色ついて瞳はぼんやりと瞬きを繰り返していた。
「(第一段階クリアってとこかな?)」
ひとまず脱力させることに成功して仗助はほっとした。戦うことにおいて経験豊富なこの甥っ子を押さえ込めるかどうかは五分五分の賭けだったのだ。寝不足によって思考の鈍い状態でようやっとといったこの現状に普段は絶対成功しないな、と内心苦く思う。
紅く染まる耳に口付けるとぴくっと小さく跳ねる反応はかなり可愛い。それに、朦朧としているだろうにちゃんと反応してみせるあたりよくここまで開発出来たもんだ、としみじみしてしまった。
そろりと差し出した舌でピアスが穿たれた耳たぶを弄ると緩慢な動きで顔を背ける。それでも執拗に追いかけて耳殻をなぞりピアスごと口に含むと力の入っていない手が肩を押しやってきた。ちらりと盗み見た顔は眉間にシワが寄っているものの、不機嫌なそれではなく、耐え忍ぶ様で紅く染まった頬や目もとと相まっていじらしく見える。トップスの襟ぐりに指を引っかけて開かせると無防備な首筋に舌を這わせた。
「っんぅ……」
途端に上がる悩ましげな声に満足して未だ手を拘束していた方の手を動かし始めた。薄手の布の上から胸や脇腹を撫でて身が捩られる様を愉しむと、ベルトを外しにかかる。反射的に身を縮めようとした承太郎が仗助の肩口に額を押し付ける格好になった。ベルトにかかる手を阻止しようと掴みかかる両手を一纏めにして胸元に押さえ込むとしゅるりと音を立てて引き抜いてしまう。そうして間を置かずにボタンを外してファスナーを下げると中へ手を差し込んだ。
「ゃッ!!」
小さく叫ぶ声に止まるわけもなく、膝によって与えた刺激に緩く立ち上がった肉芯を引きずり出すと指先で撫で下して根本をぎゅっと握りしめた。
「ひッあ゛ぁ!!」
ガタンっと音を立てて白い喉が反り返る。腰がひくっひくっと小さく痙攣している所から軽くイったのかもしれない。あ、あ、と小さく啼く下唇を軽く食み顎から喉仏へと舐め下りる。押さえつけた両手が震えながら固く拳を握りしめるその光景は背筋を震わせ支配欲が満たされた。喉に軽く咬みつくとひゅっと息を飲む音が通り過ぎる。
「ッじょ、すけっ」
「はい」
切れ切れに呼ばれる名前に返事をしながら手の中で震える肉芯をやわやわと握りこむ。イったばかりで敏感になっているだろうソコに新たな刺激を与えられ、耐えられないとばかりに首がゆるゆると振られた。
「やっ、やめっ」
指にきゅっと力を込める度に上体が小さく跳ねる。さらにまだ逃げようとしているらしく、膝を立てた足が椅子の淵にかかり躯をずり上げようとしていた。もちろん中心を握りこんでいる以上無意味な抵抗ではあるのだが。
戒めた手の位置を胸元から頭のすぐ上へと移すとトップスの裾へ噛み付き捲り上げる。外気に触れた肌が空気の冷たさにふるりと震えた。首のすぐ下まで上げさせると肌に穿たれた古傷へと舌を這わせる。しつこく舐り吸いついていると避けるように身を捩るようになり、握り込んだ肉芯の先端にある小さな口からは蜜がじわっと滲みだした。
「ぉいっ!じょ、すけッ!」
「はい」
「なんっ、の、つもりっ、ッ」
はっきりとしてきた思考に現状と己のすべきことを思い出したようだ。こんなことをしている時間はない、と鋭い瞳で睨みつけてきている。しかし、スタープラチナを発現させて強制的に止めにかからないところをみると、思考が半分以上快楽に持っていかれているのか、それとも仗助が聞き分けると思っているのか。まだまだ余裕があるようにも見える承太郎に仗助はにっこりと『執事の笑み』を浮かべた。
「何、とは心外ですね」
「は、ぁ??」
「先ほど申し上げた通り、実力行使に出ている次第ですよ」
「それ、は……」
「お休みになってください、と申し上げましたでしょう?」
「くっ、うぅッ!」
聞いてなかったんですか?と握りしめる手の力を強めて言外に咎めると、びくっと跳ねて唇を噛みしめた。一瞬にして走り抜けていった衝動が治まって来たのか、呼気を荒げながら閉じた瞳を再び開いて見上げてくる。その瞳は強引に詰め込まれる快楽に揺れ、ほんの少し怯えた色が浮かんでいた。
「だ、からって、こん、なっ」
「強硬手段ではありますが、博士がさきほど聞き入れていただかなかった為、致し方ない事です」
「う、っく!だとっ、して、もっ、い、いま、じゃっ」
「今でなくては、倒れられてからでは遅いじゃないですか」
「くぁあッ!!」
押し問答の間にも握った手はずりずりと扱き上げ、最後に根本を締め付けた上で先端を軽く引っかいた。そうすると腰が大きく跳ねあがり、悲鳴に近い嬌声が吐き出される。少し強すぎたかな、と引っかいた場所を指の腹で撫で回すと身を縮ませながら震える呼気を溢れさせた。とろとろと溢れる蜜の量を増やす肉芯に笑みが浮かんでくる。ちらりと見上げた表情は必死に唇を噛み締めて耐え忍ぼうとしているが、濡れた睫と震える唇、紅い頬と目元がひどく妖艶だった。
乾く唇を舐め、胸元で色濃くピンと尖る乳首に舌を添わせようと顔を近づける。
−……ヴーッ
「「!」」
もう少しで辿りつくところで空気を震わせる振動音が響き渡った。互いにびくりと躯を跳ねさせぎしりと固まる。その間にも振動音は鳴りやむことなく響き続いていた。そっと視線を絡ませ合うと、両手を戒めていた手をゆっくりと離し、ポケットの中から携帯を取り出す。ディスプレイに表示される名前を確認してちらりと承太郎の貌を見やった。すると解放された手で口元を覆いながら相手もこちらを凝視している。どうやら尚も続けられそうな責め苦から逃れられるチャンスを窺っているようだ。
その視線から目をそらすことなく携帯を操作すると耳に当てた。
「ッんぅ!」
「大変お待たせしました、お嬢様」
「!!!」
絡めたままの指で先端を押さえつけるとくぐもった声が漏れる。直後に零した名称で承太郎の顔色がさっと変わった。動揺に揺れる碧い瞳がじっと見上げてくる。それへ思わせぶりな笑みを返し、先端に添えた指をゆるゆると捏ねくり回した。
「んくッ!!」
「はい、お久し振りです」
「っふ、〜っ……」
「今ですか?」
「ッ!」
「えぇ、大丈夫ですよ。片手は、空いてますので」
「ッん〜〜〜」
わざと承太郎が動揺するだろう言葉を選び、平静な声を心がけながら会話を弾ませた。その間も蜜を溢れさせる肉芯への攻め苦は中断させることなく続け、身悶える様を目で愉しむ。涙を滲ませる瞳が鋭く睨みを利かせてくるが指の力を少し強めるだけで息を詰まらせてすぐに逸らされた。
「あぁ、『猫』の写真ですよね」
「ふ……ッ……」
「いいえ、そこまで大変ということではないんですが。警戒心が強くてなかなか撮らせてくれないんですよ」
「っ……んッ〜〜〜」
「えぇ、そうです。出来れば、あの碧い目が写せるようにしたいんですが、なかなか難しくて」
「ぅ〜〜っ……!」
除倫との少し砕けた話で出てくる『猫』というのは実は承太郎のことだ。二人で決めた隠語であり、承太郎本人は知らない。けれど特徴が本人と似ているという事は話してあるので、今じっと見つめてくる仗助の瞳と話し合っている猫が重なり、自分の事かのように錯覚しているだろう。たとえ疑われたとしても、猫の話ですよ、と言ってしまえば隠しおおせる。なにせ除倫も『猫』についての協力者なのだ。二人の他に聞ける人物も存在しないのでばれることはないのだ。
ふとした仕草が可愛くて、だの、機会があれば凛々しい姿も撮りたい、だのといった錯覚出来るような言葉を選びつつ会話を続けていた。件の『猫』を片手で弄びつつの会話は思いのほか快調に弾んでいく。けれどそろそろ切り上げなくては、一応仗助は勤務中なのだ。プライベートな電話を主が許したとしても執事としての矜持が警告を発する。
すると思いもかけない言葉が投げかけられた。
「……お父上ですか?」
「ッ!!」
思わず弄る指の動きが止まってしまったのだが、不安と動揺と焦りで染まった承太郎には気づかれなかったようだ。僅かな逡巡に間に彷徨った視線を絡めると止めてしまった指の動きを再開させる。
「ッく、ふ、ぅ!」
「えぇ、書斎におられますよ」
「ッ!」
「はい、左様でございます」
耳から聞こえてくる除倫の声に返事を返しているが、内容が承太郎のことだとすぐに分かるやり取りに緊張からか、表情が硬い。それでもとろとろと溢れ続ける蜜を絡めて先端を弄り続ける指に快感を感じないわけはなく、零れ落ちる量が増えた為に指だけでは追いつかず全体を擦り上げる動きに切り替えた。ぬるぬると滑りを良くした手に擦り上げられる承太郎の腰が小さく跳ねては淫らに揺れ動く。
「かしこまりました」
「〜ッ」
「えぇ、それでは」
扱き上げる動きを少し早めるとかたかたと震えて首をゆるゆると振りだした。声を押さえこむのが限界に近いのだろう。電話の相手に見えないことは承知だが、一度頷いて瞳を閉じた。ゆっくりと開いた目で承太郎の顔をじっと見つめる。すると視線に気づいたのか、涙の滲む瞳が困惑気味に向けられた。
「はい、少々お待ち下さい」
「!」
碧い瞳に自分の顔が映し出されたタイミングでにっこりと微笑みかける。その顔にぴくっと躯を跳ねさせた様子から次に何をされるか気づいたようだ。
そっと耳から離した携帯に声も立てず、首を横に振って必死に否定を示してくる。けれど、笑みを返すだけで紅く染まるその耳へ携帯を押し付けた。
−ツー、ツー……
「!?」
耳に届いた音にぎゅっと閉じていた目が見開かれる。用のなくなった携帯をポケットに直していると茫然としたその瞳がそろりと向けられた。
「もうすでに切れております」
「ッてめ!!」
「申し訳ありません。あまりに愛らしかったので少々悪戯をさせていただきました」
「ッ〜〜〜こ、のッ!」
思惑通りの反応をしてくれた承太郎に笑みをうんと深くして平然と言い返す。途端、かぁっと赤く染まった顔と睨み付ける瞳の鋭さ、そして握りしめられた拳にこれからの行動が手に取るように分かった。
「ぅあぁ!!」
「博士を騙すのは心苦しかったのですが、返して頂いた反応があまりに可愛らしくて調子に乗ってしまいました」
しかし、その拳が振るわれる前に携帯を持っていた方の手も肉芯へと絡ませて、扱き上げる動きとは別に蜜を零し続ける小さな口を擦り上げた。びくんっと反り返る胸を見下ろしつつ、新たに絡めた指で口を開かせるように爪を立てれば身を捩り始める。
「やッ、やめ、ろっ!」
「どうしてですか?そろそろイきそうなのでしょう?」
「だっ、からっ!」
「出して頂いて構いません。きちんと全部飲みますから」
「!?」
咄嗟に閉じようとした足を片方担ぎ上げて椅子の目の前に膝を着く。尚も暴れようと力が籠った足を押さえつけてどろどろに濡れた股上に顔を近づけた。
「……ぁ……」
「……」
「ッ〜〜〜」
唇が触れる寸前で止まり、ちらりと顔を見上げると切なげに歪められた表情で見下ろしてきていた。触れられると思った唇が止まったことに小さく啼いた声があまりに可愛くて思わず笑みが零れてしまう。その笑顔で自分の失態に気づいたのだろう、慌てて口を手で塞ぐと首まで赤く染めていった。
「ひッあぁ!」
怒りのあまり濡れた瞳が睨みつける様にまた笑みを浮かべて、すぐ近くにある先端へ息を吹きかける。びくっと身を竦ませたところに口を大きく開けてすっぽりと咥えこんだ。根本を押さえつけた手の下でガクガクと震える腰に押さえてなかったらイってたんじゃなかろうかと思われる。
口の中で小さく跳ねる肉芯へ歯を立てないように注意しながらねっとりと舌を這わせる。手すりにしがみついている指が爪を立ててガリッと音を立てるのを聞きながら、わざと音が鳴るように啜りあげて頭を前後に動かした。そっと見上げた先では反り返ったまま震える胸の向こうでやはり手も震えていて、きちんと口を塞げずに艶やかな声を上げ続けている。
「あっ、あぁっ、あッあ!」
肩に乗せた内腿が痙攣を始めている。そろそろ絶頂を迎えるようだ。散々押さえこんで焦らしたのだから、今度は思う存分吐き出してもらおうと戒めていた根本から手を離すと射精を促すように擦り上げる。震えだした腰を目に映しうわ言のように繰り返される、ダメ、という言葉を耳に染み込ませながら、じゅっと音を立ててきつく吸い上げた。
「ぃあぁぁぁ!!!」
普段よりも高く甘い響きを持つ声が叫びあげられると、椅子がギシっと音を立てて大きく跳ねた躯を受け止める。どくっと勢いよく吐き出された熱い蜜を舌で受け止めて喉の奥へと流し込んでいった。嚥下する際の動きに咥えたままの欲望が小さく跳ねている。残すことなく吐き出すように動かしていた手を止めて震えるだけになった肉芯を口から出した。濡れた唇を舐めながら様子を見ればぐったりと椅子に横たわっている。時折小さく跳ねる躯は余韻に浸っているのだろう。
「失礼します」
力の抜け切った躯を椅子から持ち上げる。学生の頃は身長の差と腕力不足から実行には移せなかった、所謂姫抱っこは、同じくらいの身長になり体重は彼よりも重くなった今ならば支障を来たすことなく出来た。この日本人離れした大きい体躯を与えてくれた父にひっそりと感謝しながら、ソファセットの前に鎮座するローテーブルにうつ伏せになる様そっと下ろす。テーブルの冷たさに一瞬体を強張らせたようだが、火照った体にはちょうどいいらしく大人しくなった。
「気持ちいいですか?」
「……ん」
問いかけに答える声が少々舌っ足らずな響きを持っている。じわじわと迫る睡魔に捕らわれかけているのだろう。その油断し切った様子に満足をすると投げ出されたままの両腕を引きよせ、先ほど抜き取ったベルトを手早く巻き付けて固定した。異常に気づいた手が跳ねるがもう遅い。
「っ?じょうすけ?」
「暴れられると危ないですから、少々手荒な手段を使わせていただきました」
「ッおい!」
交差する手に口付けを落とすと寛げたスラックスと一緒に下着をずり下ろした。露わになった臀部に手を添わせて撫でると嫌がるように腰が捩られる。日常曝されることのないその肌は他よりも幾分白く、明るい日差しの差し込む部屋の中ではいささか卑猥に映った。
「仗助ッ!」
焦ったような呼び声に応えを返さずに襟から突っ込んだ手で胸元を探った。油汚れの緊急対策としてベビーオイルを常備しているのだ。ハンドクリームでもいいのだが、潤滑剤として使うならばオイルの方が滑りがいい。目的の小さなボトルを取り出し指へと垂らす。上体を起こそうと躍起になっている承太郎に目を細めると、膝でくしゃくしゃになっているスラックスと下着のせいでそれ以上開けない足を自分の足で挟み込んだ。足が開かない分隠されたままの秘部を桃肉を割り開かせてオイルを纏った指を押し当てる。
「ッ」
「あまり抵抗なさると酷くせざるをえなくなります」
「なッ!?」
「入れますよ」
「ちょっ、くうぅッ!」
きゅっと締まった口を二、三度撫でるとすぐに指を突き立てた。入口の固さが嘘のように中はすんなりと侵入物を招き入れる。引きつるように震える腰を見つつほんの少し回してみると大げさに跳ねてしなる背筋が尻を突き出すような格好にさせた。ひくひくと震える腰がまるで揺らめいて誘っているかのようで自然と喉が鳴る。
「とても厭らしい格好ですね、博士」
「ッお、まえがッ!」
「はい。私の仕業です。ですが……」
「くッ、ふ、うぅ、うっ!」
「ここまで淫らになられるとは思いませんでした」
「ぁ、やッ!」
中にオイルを塗り広げるように回していた指をゆっくりと抜くと、入口近くでまた撫でる様に回して勢いをつけて埋め込むと背筋がびくっと跳ねて指がきゅうっと絞め付けられる。埋めた指をまたゆっくり引き出してくると内壁がゆるゆると絡み付いてきた。
「本当に厭らしい……」
「ぁ、くふっ、んん!」
「貴方をこんな風にしたのが自分だと思うと」
「ッぁは、んぅ、んッんッ!」
「とても興奮します」
オイルによって滑らかに動く指を浅く差し入れたり、気まぐれに付け根まで突き込んだりとバリエーション豊かに攻め立てると腰が合わせるようにゆるゆると振られる。まるでもっとと強請っているように見えて口から熱い吐息が吐き出された。
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