「イルカ。」 「わあ!」 自分の天幕で、明日どうやって話そうかと悩んでいたら、背後からその悩みの本体から話しかけられたので、イルカは飛び上がって驚いた。 「今から実戦。…できるね?」 「はい!」 任務だ!思考を切り替えなくては…!そう思ったイルカの手をカカシがにぎったと思ったら、すでに自分の身体は宙に浮いていた。 「わ!わ!」 「時間が無いから途中まで担いでいく。あんたの足じゃまだちょっと厳しいから。」 「はい…。」 そっけなく告げられた言葉に、ちょっと傷ついたが、それが今のイルカの実力だ。 落ち込むよりも今後の事を考えなくては…! 「まず俺がターゲットの護衛を幻術にかけて誘導する。数は10。俺がターゲットと護衛の頭をやるからイルカは、残りをお願い。」 「はい。」 「トラップは今見える道に。で、足止め目的だけど…殺傷能力の高いヤツで。相手も多分忍だから。」 「…はい。」 「下ろすよ。…じゃ、お願いね。」 的確に下される指示に、やっぱりこの人はすごいと思った。 本当の事を知りたい。でも、今は任務が先だ。指示に従ってどんどんトラップを仕掛けていく。練習した事を思い出しながら、何とか全部仕掛け終わった。 「ふう。これでいいかな?」 「やっぱり。上手くなった。」 一息ついたとたん、すぐ側でさっき立ち去ったと思った暗部の声がして驚いた。 「あの!コレで大体…」 「うん。今から来るからお願いね。」 言い方はそっけないけど、今は経験の少ない俺を気遣ってくれたんだと分かる。 この人はいつもこうやってさりげなく俺を支えてくれる。 この間の態度の事を謝って、絶対にコレで終わりになんかしない。 …いくら他の暗部に脅されても。 「じゃ。」 緊張するイルカにそれだけ言うと、男はスッと姿を消した。すぐに朦朧とした表情の人影がゆらゆらと歩いてきた。牛車が一台と、 ソレを取り囲む様に護衛らしき男たち歩いている。だが、全員がぼんやりした顔で歩いている所を見ると、完全に幻術にかかっているようだ。忍びもいるという話だったのに流石暗部だ。 護衛の一人がトラップを踏んだのを確認し、つぎつぎと連鎖的にトラップを発動させていく。殺傷能力を高くと言われたので一応は仕掛けてあるが、この分なら使用しなくても済みそうだ。 男たちは幻に包まれたまま、次々と発動するトラップから放たれた毒で次々と眠りに落ちていく。 動きを見ながら確実に毒が効いたのか、慎重に確認した。 分身を作って一人ひとりを確認し、全員の意識が無い事を確認し、かなりの人数だったので骨が折れたが、思ったより被害を出さなくても済んだのでホッとした。 だが、さっき、あの人はターゲットと護衛の頭を引き受けると言っていた。確かに確認したら牛車の中には誰もいなかったが、この近辺で戦闘している気配も無い。 いったいどこへ…? これから何をするべきか指示されていない以上、待機するのが普通なのは分かっている。でも…不安だ。 あの人が強いのは分かってる。この幻術だって、イルカにはどうやったのかすら分からない。 それでも…危険な仕事を引き受けて、イルカには無理をさせない所が返って不安だった。 あの人は自分が真っ先に盾になってしまいそうだと思ったから。 「くそっ!どこで戦うか聞いとけば良かった…!」 「どうしたの?」 悪態をつくなり、タイミングよく探していた人の声を聞いて、思わず涙が出そうになった。 「あ、全員捕縛できた?ありがと。」 「ターゲットは!?」 確かに捕縛した敵の武器を剥がした時に、忍が混ざっていたのは分かった。ソレなのに簡単に片付いたということは…もしかしなくてもこの人が 引き受けてくれたに違いない。 「ああ、終わった。」 「怪我とかは!?」 淡々というこの人から、血の匂いはしない。だが、何だかこの人のことだから怪我をしても隠したりしそうで怖いのだ。 心配のあまり思わず腕を掴んでしまった。 だが、暗部は一瞬ビクッと身体を震わせたが、振り払われることは無かった。 「大丈夫…トラップ。まだ残ってるね。」 「え、あ、はい。撤去しますか?」 何だか話題をそらされたようだが、確かにここにトラップを残したままなのは危険かもしれない。殺傷能力が高いものは発動するのにイルカのチャクラが いるが、それでも危険なモノは残さないに越したことは無いだろう。 早速仕掛けたものを解除しようとしたら、腕を掴んで止められた。 「あのさ。ちょっとこっち向いて。」 「え?」 この人らしくない。何だか焦ったような声でそう言って、腕の力を強める。 「いたっ!」 「あ、ごめん。」 痛みに思わず声が出たら、すぐに緩めてはくれたが様子が変だ。 「やっぱりどこか怪我でも…?」 「ちがう。…ちょっとだけ、目瞑って。」 良く分からないが急いでいるみたいなので、イルカも慌てて瞳を閉じた。 次の瞬間。なんだか温かくて柔らかいものが唇に触れた。 「え…?」 びっくりしつつもまだ目を開けて良いと言われていない。 閉じた瞳はそのままだが、疑問は声に出てしまった。 「なに…?」 「ごめん。」 謝る暗部に驚いて瞳を開けると、うつむいた暗部がイルカの前に立っていた。 「あの、今の…?」 「…帰ろう。コレでまだ終わりじゃない。」 促されるままにその場を後にした。 そして…あまりにも様子がおかしいこの人のことが心配で、前回の事を聞くことが出来なかった。 ***** 自分のしでかしたことの説明もせず、なんとなく誤魔化したまま、イルカを置いて戻ってきた。 まだ任務は終わりじゃない。 でも、もうこれ以上何もできないような気がした。イルカなら自分で走れるし、そんなに強い術を使わなくてもトラップで十分なのは分かってたのに、 実戦に出るともう駄目だった。毛一筋も傷をつけさせたくなくて、とっさに幻術を使った。 護衛の頭もさっさと殺し、ターゲットも目的地に誘導できた。 本来なら次に控える本当の任務のために、イルカには経験をつませてた方がいいのが分かっていたのに、出来なかった。 しかも、急いで戻ってみれば、不安そうにイルカがカカシを待っていた。 最初は何気ない会話で誤魔化そうとしたのに、それでも心配そうに必死で俺を気遣うイルカに、我慢できなかった。 流石に怒鳴るなり殴るなりを覚悟していたが、律儀に瞳を閉じたままで不安そうな声をだしていて、いっそ…このまま…とまで思った。 何とか陣に戻ってこれたのが奇跡だ。こんな状態では任務を一緒にやるのは危険だ。だが、猿も鳥もイルカに何をするか分からない。 だからといって、自分がイルカを強引に奪ったら結局は一緒だ。何をされているか分からないという顔をしていたのを思い出すだけでこみ上げるものが あるというのに、次にあったら何をするか分からない。 もやもやする気持ちを抱えたままで、俺は天幕でくさくさしていた。 「犬。」 「隊長。」 「…何の用?」 …こんな気分の時に近づかない方がいいことなんか分かってるだろうに。 「すまん!」 「すみません!」 「へ?」 なんだ急に? 「惚れた相手間違えてたんだってな!!!中忍部隊の隊長に聞いた!」 「本当にすみません!」 ああ、なるほど。どうやら殴られた理由を調べたらしい。 「猿!お前が悪いんだぞ!花なんか勧めるから!!!」 「ソレを言うなら鳥のほうでしょう!アンタがヤレだの何だのって…」 「あーいいから。…さっきはごめん。やりすぎだった。」 このまま放っておくといつまでもじゃれあっていそうな二人を止め、さっさと頭を下げた。イルカのことになると頭に血が上って、自分でもとんでもない事を してしまう。 次の戦闘ではこの二人とも組まなくてはならないのに…。 「お前、何かいいな。」 「青春ですね!」 「あー…うん。ありがと。」 勝手に盛り上がる二人に無難な答えを返したが、二人とも俺の返事など聞いていないようだ。 「なんか、いかにもだよな!俺の女っていうか、男か。手を出すな!!!ってな!!!」 「ホント!いつもクールな隊長にこんな一面があったなんてね!!!」 「あれか?初恋ってやつだよな!!!」 「そうですよ!甘酸っぱいレモンですよ!!!」 「そりゃファーストキスだろ?」 「とにかく青春なんですよ!!!引き続き全力で応援しなきゃ!」 「そうだな!おい!次、本隊に奇襲かけたら任務終わりだろ?どうするつもりなんだよ?」 「そうですよ!とにかく相手が男なら既成事実に勝るものはありません!俺がちゃんと他の任務についてる暗部に聞いときましたから!!!」 うるさいくらいに応援してくるのが正直うっとおしい。 「もういいんだ。それより…」 「なんだ!もう手出して振られたか!?」 「一回で諦めちゃ駄目ですよ!押して押して押し捲るんです!!!」 「だから、次のときに何とかする。段取りは覚えてるよね?」 大騒ぎする二人を一瞥すると、無言で激しく頭を振ってうなずいた。一応さっき怒り狂ったカカシのことは忘れていないらしい。 「じゃ、よろしくね。」 …天幕を後にしながら、これからの事を思って憂鬱な気分になった。 任務の内容を知らせないで終わらせることも出来る。そうすればイルカはきっと初陣をつつがなく終えることが出来るだろう。 …何も知らないまま。 だが、それでは忍として必要なことは学べない。それでも、きっと何もかも隠してしまうだろう自分を知っている。 「何やってんだろ。俺。」 つぶやきに答えるものがあるわけもなく、ただ己のついた深いため息だけが耳についた。 ***** 結局。作戦決行の今まであの暗部と会うことはなかった。 いつもの様に急に現れた暗部は、イルカの前に降り立ってすぐ話しかけてきた。 「イルカ。これから最後の仕事だけど、大丈夫?」 「はい!」 こんなときでもイルカの事を気遣う暗部はすごいと思う。 一晩だけしか離れていなかったのに、ずっとあっていなかった感じがするが、それは暗部の雰囲気がいつもと違うからだと分かった。 さりげなくイルカを庇うのは変わらないのに、どこかよそよそしい。 …あれのせいかもしれない。一回目の戦闘が済んだ後、この人はイルカに触れた。後になってみると、アレは…キスだった気がする。 どんなつもりでこの人がイルカにキスをしたのかは分からないが、そうとわかっても、不快に思わない己に驚いた。 ただ戸惑いだけが先にたつ。 「ここ。場所は前回と一緒。でも仕掛ける範囲は広いけどね。で、周りに広がるような毒は駄目。」 「はい。」 コレが終わったら、この人ともお別れだ。その前に…聞きたい。あのキスの意味を。 それだけ決めたらもやもやしていたものがちょっとはスッキリした。 緊張していた前回よりも手早くトラップを設置して、更に残ったままにしておいたトラップにも手を加えた。そして、今度はずっと側にいる あの人の元に戻った。 「あの、終わりました。」 「…じゃ、足止めお願い。それと…ココで見てて。」 「はい!でも何を?」 「見本。」 それだけ言って、暗部はすっと姿を消した。 しばらくすると人影が現れた。確かに前回より人数が多い。それに女性もいる。 一瞬躊躇したが、すぐにトラップを発動させた。 今回は千本に痺れ薬を塗ったもので敵を混乱させ、次いで水遁で足元に水を呼んで動きを止める。次々に放たれる千本を避けられず、 水遁でぬかるんだ地面に足を取られ、一般人らしいのは大体それで行動不能に出来たが、忍相手はそうも行かない。 足止めできなかった敵にトラップと共に術を放ち、少しずつ指示されたとおりに作ったトラップ地帯に誘導する。 だが、それを待つまでもなく、一瞬にして追ってきた敵忍たちが倒れた。 「あ、この間はすまん!人違いだったんだよ!」 「本当に済みません!コイツの勘違いのせいなんですよ!」 「あ、テメ!俺のせいにすんなよ!」 「事実でしょう!絞めようなんて言い出したくせに!」 この間の二人だ。大分雰囲気が違う。二人でじゃれあう様子は、まるで子どもの喧嘩のようだ。 …この間の暗部の性格がこんなだったなんて知らなかった。 だが、喋りながらもその動きは正確で、まるで遊んでいるようにしか見えないのに、次々に敵を葬っていく。 恐ろしいくらい正確な戦い方。 気がつけば敵忍は全員倒されていた。 「あの!俺は…」 「戻ってくれ。」 「隊長と合流して下さい。」 二人にせかされて、引きずられるようにして、さっきのところまで連れて行かれた。 そこには、ぐったりした子どもを守るように抱きしめる女性とあの人が立っていた。 二人ともすでに事切れているのは明らかで、あの人の手に握られているのは…赤い刀。 「これが、任務なんですか…。」 「そう、これが、俺たちの任務。…いやになった?」 コレが任務。そうだ。俺たちは忍びだ。依頼の内容によっては殺しだってする。それは知っていた。…でも目の前で動かなくなった子どもはまだ幼い。 頭では分かっているのに身体が動かない。それに…この人は俺を…。 「…でも、ずっと俺はこうやって生きてきた。」 追い討ちをかけるように暗部は静かに近寄ってくる。赤い手と刀。何か言わなくてはと焦れば焦るほど頭が真っ白になった。 「俺は…!っ…!」 気がついたら駆け出していた。 ***** 「追いかけろよ!」 「そうですよ!」 「別にいい。まだ、無理だっただけでしょ。そのうち分かる。」 どうしてイルカだったんだろう。確かに先行部隊を所在不明にして、逃げ出す世継ぎを油断させるために大規模なトラップは必要だった。 現実にイルカがいなかったら作戦は上手く行かなかっただろう。情報も前回捕まえた連中から収拾して、ついでに隊からはぐれたように みせかけたターゲットは依頼人側の待ち構えている森に誘導できた。 そして、慌てて逃げ出した子連れの女を野党に襲われたように見せかけるために、適当に切り刻んで。それで終わり。 この間イルカが捕まえた先行部隊に記憶操作して放してきたから、大丈夫だろうと思っていたが、やはりこのターゲットは引っかかった。 「任務は…コレで終わりだな。」 「隊長…どうするんですか?」 コレなら全員殺せばよかった。トラップ担当なんて…イルカなんか呼ばないでいたら…。 依頼人なんてどうでもいい。 だが、コレで全部終わりだ。 「もう寝る。後お願い。」 「ああ。」 「…はい。」 流石の二人も、いつもの様に騒ぐことなく陣に帰る俺を放っておいてくれた。 ***** 「で、逃げちゃったのか。」 「はい…。」 「それで、落ち込んでたのね?」 「はい…。」 走って走って…気がついたらイルカははツバキに勧められてお茶を飲んでいた。 ボーっと陣のはずれで突っ立っていたのを拾ってくれたらしい。 細切れにイルカが吐き出す愚痴のような言葉に、ツバキはゆっくりつき合ってくれた。 「で、悩んでるのは忍のあり方?」 「いえ!違います!…驚いたのは事実です。情けないけど…。でも!それは…あの人が何だか泣いてるみたいに見えて、 今までのこととかが頭の中でぐちゃぐちゃになって…あの時、あの人に突き放されたみたいに思ったんです。だから…」 殺すのは当然だとは思えない。だがイルカは忍だ。納得がいく任務ばかりじゃないのも分かってる。あれが任務なのなら、納得はしないが受け入れる。 だが、あの子どものことも忘れることもないだろう。 それよりなにより、あの人が最初からイルカには理解出来ないと、切り捨てるようなことをされたのがショックだった。 「泣いてる…ねぇ…。イルカ君のそういうトコがきっと、あの暗部に気に入られちゃったのね。」 「へ?」 驚いているイルカに、ツバキがくすくす笑いながら何故か巻物を持ってきた。 「はっきり、させたいのよね?」 「うー…。はい。」 そうだ。あの時とっさ逃げ出してしまったが、本当はずっとあの人が何を考えてるのか知りたかった。 「だったら、果たし状でも出しちゃえば?」 「果たし、状?」 「呼び出して、納得できるまで話し合うとか、ソレが無理でも思いっきり殴るくらいはできるでしょ?」 「殴るって!?」 「だって、勝手にイルカ君のこと決め付けて、勝手に突き放して勝手に拗ねてるんでしょ?ちょっとお仕置きしてあげなさい!」 明るく言い切ったツバキはやっぱり母親みたいだと思った。 ***** 「コレを…あの人に伝えてください。あのときの場所で俺は待ってます。任務があるなら…」 イルカだ。もう二度と見ることはないと思ってたのに。 「いや、そんなコトは無いぞ!確実に向かわせる!」 「そうです!必ず引きずってでも連れてきますから!」 鳥と猿が仲良く勝手な事を言っている。 「はい!…お願いします。」 ぺ根と頭を下げて走っていくイルカを見るのはまだ辛い。 「聞いてたんだろ。降りて来いよ。」 「あの子。多分ずっと待ってますよ。」 樹上の俺を見上げて催促する二人は、面越しでも分かる位キツイ非難のまなざしを向けている。 あまりに視線がうるさいので、しぶしぶ降りてやった。 「もう終わりでしょ?イルカのことはいいから…」 「これ。読め。」 「そうです。読んでください!」 こんなときだけ仲良く行動する猿と鳥に苛立ちながら、差し出された紙を手に取った。 「…なにこれ。」 イルカらしいしっかりした字で、今日の日没に、あの場所で待っていると書かれている。 「いいから行け。」 「なんでよ。」 イルカから文句なんて聞きたくない。さっき顔を見られたからもう十分だ。これ以上イルカに関わったら多分俺は我慢できなくなる。 昨日あの顔を見せられて、諦め様と思ったのに、同じくらい逃げるイルカを追いかけて捕らえて…それから先のことまで考えた自分がいることが恐ろしい。 それなら二度と会わない方がいいに決まってる。 「何ふてくされてんだよ!さっさと言って、きっちり振られて来い!」 「けりつけて着てくださいよ!こんなにふにゃふにゃされてたんじゃ、次の任務が怖いですから!」 「ちょっと…!」 勝手な事ばかり言う。結局コイツらのアドバイスなんて役に立たなかった。 「明日の晩で撤収なんだぞ?」 「そうです!モノにしちゃいなさい!」 「…もういい。」 しつこい二人に辟易して、さっさと寝ようときびすを返した。撤収の準備など疾うに済んでいるし、あとは…イルカのことを忘れるだけだ。 「男らしくねぇぞ!」 雑音がまだ届いたが気にせず足を速めようとしたとき、猿が大声で叫んだ。 「いらないなら!俺があの子もらっちゃいますよ!」 「何いってんの…?」 自分でも驚くくらい腹のそこから黒い感情があふれ出した。殺気が真っ直ぐに猿に向かう。 ソレを見た猿が、大声で笑った。 「はは!ホラやっぱり!未練あるんじゃないですか!…いいから、行ってください!」 真っ直ぐにカカシを見据えて、半ば命令口調の猿は、凄く楽しそうに見えた。 どうやら、ハッタリかまされたらしい。こんなつまらない手に引っかかったことに自分で驚いた。つまり、自分はまだ未練たらたらなのだ。 「…行く。」 そう思ったら、ぼそっと自分でも気付かない内に返事をしていた。 「そうです!それでしっかり今後のこととか話し合うんです!」 「やっと本気出したか!ちゃんとやっちまうんだぞ!」 「鳥!下品ですよ!」 「うるせー!いいか!有無を言わさずだ!」 「待ちなさい!…口説いて、ちゃんと了承を得るんですよ!」 相変わらずごちゃごちゃ騒ぐ二人に後を任せて、カカシは約束の場所に向かった。 ********************************************************************************* 次注意!いちゃいちゃ…が入ります。一応。 |