わしの可愛いイルカがあの畜生の毒牙にかかってずいぶんたつ。わしとしたことがショックで寝込んでしまった。 そのスキにも奴はイルカを…。何とかせねばと、アスマを呼びつければ、不肖の息子はこの件についてはあきらめろなどと言い出す始末。 ナルトならばと、呼び出して話をきいてみれば、どうやら丸め込まれてしまった様じゃ。カカシ先生ってば愛されてるってばよ!!! などと言いよる。 こうなったら、わし自らがあの畜生の手からイルカを救い出し、目を覚まさせてやらなければ!!! ***** 「イルカ先生。どうしたのその格好?」 イルカ先生が普段の忍服ではなく、なぜかスーツを着ている。任務だろうか? イルカ先生の服は、ここに住み始めてから全て俺が見立てているが、こんな服を買った覚えがない。 以前からあった服も全て入念に手入れしているが、こんな服はなかったはずだ。いつの間に? 「三代目から頂いたんですよ。これを着て、えーと木の葉何とか、プリン?とか何とかってとこに、今日の12時に来いって。」 「木の葉山の上プリンスホテルですね。」 三代目の意図は分かった。それで、今日急に俺に任務が入ったのか。 よめはきちんと旦那さんの言うことを聞くものだという言いつけに従って、膝枕をねだって甘えるイルカ先生と戯れていたら、 うっかり任務に遅れてしまったが、大正解だった。 「なにか?」 イルカ先生が不思議そうに聞いてくる。イルカ先生は何を着ても似合うから、今日のスーツもかわいく着こなせている。 だが、じじいの選んだ服よりも、俺が作ったスーツの方がよほど似合う。 なにしろ採寸の精度が違う。 以前、任務でスーツを着た俺を見つめるイルカ先生がかわいかったので、俺もスーツをイルカ先生に作ってあげることにした。 他人にイルカ先生を触らせるのはいやだったので、某国の有名スーツ職人を捕獲、暗示をかけて作り方をコピーした。 生地はもちろん、最高級のものをイルカ先生のイメージに合わせて作らせた。 そこまで準備ができたら、イルカ先生にスーツを作ってあげたいといって、喜ぶ姿を十分に堪能してから、裸に剥いて、 隅から隅まで1ミリの誤差なく測った後、巻尺プレイを楽しんだ。 巻尺といろんなものにまみれたイルカ先生は最高だった。 出来上がったスーツは俺の愛と汗と汁の結晶だ。イルカ先生のすばらしさを120%引き出してくれる。 …何も着ていないのがいちばんかわいいが。 ここは、じじいのよこしたブランドスーツなどではなく、俺お手製スーツを着せるべきだ。 可愛いイルカ先生を見せるのは腹立たしいが、やはりイルカ先生には最高のものを身に付けて欲しい。 「イルカせんせ。ねぇこの間俺の作ったスーツを着てってほしいなー。」 イルカ先生は俺のおねだりに弱い。よめのわがままを聞いてやるのも夫の甲斐性だと思っているらしいし、ちょっと甘えて見せると、 「しょうがないなぁ」といって、たいていのことは聞いてくれる。 今日ももちろん。 「ああもう。うちのよめはかわいいなぁ。…おれのスーツとってください、着替えさせて。」 イルカ先生は俺に優しい。うっかり色々とヤりすぎてもいつも許してくれる。 よめの心得を厳しく教えているつもりらしいが、俺にはむしろ愛を囁かれている様にしか感じられない。 いい機会だ、今日、じじいにはイルカ先生と俺の絆をしっかりと見せつけてやろう。 ***** 「おいヒゲ!お前の親父に用があるから、任務代われ。」 気配もなく、いつの間にか首筋に食い込んだクナイから、鉄さびくさい匂いがする。 いい加減こいつら、俺を巻き込むのやめて欲しいんだが…。 「どうしたんだよ。っつーかまずこの物騒なの引っ込めろ。」 脅しっつーのは普通切る前にやるもんじゃないだろうか? …こいつと会えばいつでも殺気か怒気かそれとものろけか、そんなもんばっかり撒き散らしやがる。ろくでもねぇ。 …イルカとセットでどっかに捨ててきた方が木の葉のためになると思うときもある。 「いいから、任務代われ。どうせここにいるんだから待機だろ。今すぐ行って来い。」 嫌だというのもめんどくせぇが、こいつらまたどっかで迷惑かけてんじゃねぇだろうな…。 「任務は分かった。だが説明ぐらいしろ。いったい何があった?」 最近一楽のおやじが妙に暗い顔してるから、ラーメン食いにくいし、イルカの同僚からは妙におびえた目で見られるし、 カカシんとこのガキどもも狐っこ以外は、元気ねぇしな…。 こいつかイルカのどっちかがまた何かやらかしたにちがいねぇ。被害をここで食い止められるといいんだが。 「ハイ、任務依頼書。じゃ!」 「おい!まて!」 相当焦っているらしい。何たくらんでるのか聞きそこなった。 カカシが人の話を聞かないのはいつものことだが、俺にいちゃもんの一つもつけずに去っていくなんてよほどのことだ。 ため息をつきつつ、依頼書を確認した。 集合時間9:00。 今何時だと思ってるんだよ…。とっくに11時を回ってる。むしろあと少しで12時だ。 なにしてやがったんだあいつは! 「バカヤロー!!!」 俺には、叫びながら任務先に急ぐことしかできなかった。 ***** イルカが遅刻するなど珍しい。やはりあのような奴と暮らしているからじゃろう。 朱に交われば赤くなる。とにかく、即刻!奴から引き離してやらねばなるまい。 「お相手の方は、まだですの?」 心配そうな親御さんに、すぐ来ると申し伝え、イルカの到着を待つ。 イルカにぴったりの清楚なお嬢さんとの見合い―。 イルカは昔からいたずらっ子でも、わしの言うことは良く聞く子じゃったから、きっと上手くいくじゃろう。 「遅くなって申し訳ありません。三代目。」 おお、きたようじゃ。 「遅くなってすみませんねぇ。さ・ん・だ・い・め。」 気のせいでなければ、目の前にわしの悪夢の元凶が居座っておる。 しかもイルカの腰を抱いて。心なしかイルカの瞳もとろんとしておるような…。 「貴様!イルカに何をした!!!!!」 ***** 三代目怒ってるねぇ。思わず笑いがこみ上げてくる。 …まあ当然か。可愛いイルカ先生を俺に奪われたと思ってるはずだし。 だが、俺とイルカ先生を引き離そうとするなんて、里長相手でなければ抹殺ものだ。精々思い知ってもらおう。 「うちのイルカに御用があるとか。…見ての通りうちのイルカは疲れておりますので、できるだけ早くお願いしますね。」 スーツ姿のイルカ先生のかわいらしさに我慢できず、うっかり襲い掛かってしまい、ヒゲに任務を押し付けるのが遅くなってしまった。 今度は礼に、ウワバミの好きそうな酒でも差し入れてやろう。一緒に飲ませて、ウワバミに慰めてもらえばいい。 おそろいのスーツ(イルカ先生がおねだりしてくれたので俺の分も作った。測るのはもちろんイルカ先生にお願いして、 十分にかわいいイルカ先生を堪能した。)で、ヤリたてつやつやのイルカ先生。腰も支えて密着状態だ。 いくら三代目が取り繕っても誤魔化しようがないだろう。 「これは、どういうことですの!!!」 厚化粧の女が怒り狂っている。この女には悪いが、勝手なまねをした三代目をうらんでもらおう。 それに、イルカ先生との見合いを承諾した時点で、この女に地獄を見せる権利が俺にはある。 大方三代目の薦めだからと、イルカ先生の良さも知らずにのこのこやってきたのだろう。 …やはり、記憶を消すだけでは手ぬるいか?どうしてくれようか。 「三代目?これはどういうことでしょうか?」 イルカ先生が不思議そうに聞いている。赤らんだ顔と潤んだ瞳がかわいらしい。 これが終わったらここのホテルで一泊するのもいいかもしれない。家まで待てる気がしないし。 「イルカ!このお嬢さんはお前の嫁御にどうかと思うてな。さぁ、そんな奴からさっさと離れなさい。 ここで今からこのお嬢さんとよく話すのじゃ。木の葉病院の院長の娘さんでな、なかなかの才女じゃ。 性格も優しくて、顔もほれかわいいじゃろう。」 必死に三代目が言い募る。女の方も「いやですわ。三代目ー。」などとまんざらでもなさそうだ。 あーあ、無駄なのにねぇ。 「三代目?私はすでに結婚していますが。三代目もご存知でしょう。俺のよめさん。」 イルカ先生は当然のように俺のほうを見る。もちろん俺はイルカ先生に微笑みを返して、三代目出方を待った。 「イルカ!いいから言うことを聞きなさい!大体わしはみとめんぞ!!!そんな奴にやるために、 これまで育ててきたわけではないわ!さあ早くこっちに来なさい!!!」 三代目も必死だ。完全に、孫を心配するおじいちゃんになっている。イルカ先生は三代目のことを尊敬してるし、 とっても素直だから、ちょっと心配になってきた。…でもイルカ先生は絶対に俺を選んでくれるはず。 「三代目。俺はカカシさんをよめに貰ってとても幸せです。…育てていただいた恩を忘れたわけではありません。 ですが、俺のよめをこれ以上悪くいうなら、今後一切三代目とは口利きません。 …じいちゃんの馬鹿!カカシさんは最高のよめなんだぞ!」 だんだん三代目に釣られてイルカ先生も子ども返りをしているようだ。 イルカ先生は俺に甘いので、怒っているイルカ先生は中々見られない。 せっかくなので、しっかりコピーして堪能しておく。 「三代目、これで失礼させていただきます!」 三代目とイルカ先生の言い争いに痺れを切らして、見合い相手の女がぷりぷり怒りながら帰っていった。 付き添いの親も慌てて後を追ったようだ。 あんな女イルカ先生にふさわしくない。優しい?どこが優しいんだか。 本当にイルカ先生のことが好きなら、勝負してやっても良かったが、あんな女なら、構ってやる必要もないな。 大体、性格だって、顔だって俺のほうがかわいいってイルカ先生は言ってくれるはずだ。 まあ、俺はイルカ先生の方がかわいいと思うのだが。 「カカシさん。いやな思いをさせてしまいましたね。今日は帰りましょう。」 イルカ先生がおぼつかない足で俺に歩み寄り、優しく頭をなでてくれた。すごく心配そうだ。 「イルカよ…。」 情けない声で三代目がイルカ先生を呼んでいる。イルカ先生は怒った目をして、三代目を一瞥すると、俺に話しかけた。 「カカシさん。三代目にいじめられたらすぐに俺に言いなさい。ちゃんと責任取らせますから。 …今までも我慢してたんじゃないんですか?」 本当に心から心配そうにイルカ先生が言う。イルカ先生は、俺と舅との仲を心配しているらしい。 無視が堪えたのか、三代目が涙ながらに語り始めた。 「わしはおぬしの花婿姿を見るのが楽しみで、これまで生きてきたのに…。ひ孫の顔だって楽しみだったんじゃよ…。 イルカ!頼むから考え直すのじゃ!!!今からなら間に合う。ほれ、今のお嬢さん以外にもたくさん見合いの相手がおるんじゃ。」 まだあきらめていないらしい。こういうところはイルカ先生に似ている。というか、イルカ先生が三代目に似たのか。 …なんか腹が立つな。 「失礼します三代目。さようなら。」 イルカ先生が迫力ある笑顔で言い捨てると、三代目の方を振り返らずに、俺の手を握った。 「さ!帰りますよ。」 ホテルでのめくるめく一夜はふいになったが、イルカ先生の口から最高のよめと言われるという非常に嬉しい経験をしたので、 今日の所はあきらめて、今度別のホテルでヤろうと決めた。 ***** 三代目がうちのよめにひどいことをいった。俺が上手く歩けないからとわざわざ付き添ってくれた心優しいよめに対して、貴様呼ばわり。 挙句にそんな奴とまで。 …認めてくれていると思っていたから、すごくショックだった。 うちのよめは上忍なので、何かあったらと心配になったのかもしれないが、いくら三代目でもうちのよめの悪口を言うなんて許せない。 ぜったいにしばらく口をきいてやらないことに決めた。 あの感じだと、今後もうちのよめをいびるかもしれない。姑によるよめいびりは良く聞くが、うちには無縁の話だと思っていた。 悲しいが、分かってもらえないようなら、何か手を考えなくてはならない。 もし、泣かせたりしたら、三代目が相手でも、断固戦う。三代目の家には小さい頃からよく行っていたし、一時期すんできたこともある。 三代目の弱点や火影屋敷の構造は熟知している分、十分勝機はある。場合によっては、俺の本気を思い知らせることになるかもしれない。 …そのときは、アスマ先生にも手伝わせよう。 火影様の額に肉と書くとか、秘蔵のいちゃぱらを全部燃やすとか…。手は色々ある。 大恩ある身だが、よめの方が大切だ。三代目もこんなに良いよめは中々いないことを早くわかってくれるといいのだが。 そんなことを考えていると、よめがほほを染めてこちらを見上げていた。 「イルカ先生。ありがとう。かっこよかったです。」 そういうよめは、今日もかわいらしい。こんなにかわいいよめなので、いつか必ず分かってくれる日が来ると信じて、今日の所は休むことにした。 腰も痛むし。 いじめられてもけなげなよめは耐えようとするだろう。これからは気をつけてやらなければ。 よめの手を握り締めて、俺は決意を新たにしたのだった。 ********************************************************************************* イルカ先生はカカシ先生を守るつもりのようですよ。 …こんな話の続きにニーズはあるのでしょうか? 書いてて石でも飛んできたらどうしようかと思う今日この頃です。 |