かぼちゃのてんぷら

今日のハロウィンパーティーは本当に楽しかった!俺特製かぼちゃクラッカーは生徒たちに大好評だったし、俺手作りのかぼちゃクッキーは その形状のすばらしさに泣き出す子もでるくらいだった!
満足感に浸りながら、夜道を歩いていると、急に背後からぽんと肩を叩かれた。
…成人男子に見える。しかも暗部。
「変化の術か!良くできてるぞ!でもなぁ、その格好はおばけじゃないぞ?」
さっき貰い損ねた子かな?頑張ったんだなぁ!そっくりだ!
嬉しくなった俺は、その暗部姿の子の頭をぐしゃぐしゃになでてやった。
それから懐を探って、残りのお菓子を探した。…お!一個だけ残ってた!
「運がいいな!これでお菓子は最後だ!さ。暗いから早くうちへ帰るんだぞ?」
俺特製かぼちゃクッキーを手渡しながら、俺が帰宅を促すと、何故か腕組みした暗部もどき君が手の上のクッキーを凝視している。なんだろう? やっぱりそっくりすぎたかなぁ…いいアイデアだとおもったんだけど。魔女クッキー。因みにモデルは大蛇丸だ!
「ふうん?」
しげしげとクッキーを眺めたソイツは、いきなり俺の腕を掴んだ。
「なにすんだ!」
振り払ってはみたものの…俺のクッキーになんか文句でもあるのか!?
「え、襲おうかなって。」
「は?お前…お菓子やっただろうが!イタズラは禁止だ禁止!お菓子はそれで最後!」
なんだ?お菓子足りなかったか?でもなぁ…他のものははけちゃったしなぁ?どうしよう?それにしても態度でっかいなコイツ。
「くくく…」
「?なんだ?どうした?それにしてもお前お化けのフリ上手いなぁ!」
悪人っぽい笑い方とか、凄く上手い。でも何の用だかさっぱりわからん。
「だったらさあ…俺がお菓子上げる。だからヤラセテ?」
「はあ?お前!…本物!?」
このでっかい態度は…子どもじゃない!!!
「今頃気付いたの?」
「…大変失礼しました。お詫びにお菓子は…それで最後だしなあ…」
俺は急な上司の出現に、速攻頭を下げてお詫びをした。それと、誤魔化せそうなものはすでに渡してしまったので、とっとと逃げる準備をする。 退路は…道のど真ん中だしなんとかなるよな!
「だから、アンタ頂戴。」
「いえ、そのー…中忍ですんで、暗部に混じって戦えるほど強くは…あ!でもトラップはちょっと自信あります!…ちょっとだけ…」
俺は普通の中忍程度の戦闘しかできない。トラップは得意だけど…スカウトに来たって感じじゃなさそうだし、何の用なんだろう?
俺が愛想笑いで誤魔化しながら、手に汗握っていると、そいつは俺をひょいっと担ぎ上げた。
「ま、いいや。勝手に貰う。」
「へ?」
「いこっか。」
「わあ!」
気付いたら、自分を照らしていた電灯がどんどん遠ざかっていった。
*****
アカデミー近くの森に、荷物の様にどさっと下ろされて流石に腹が立った。
コイツはもしかして…!?
「ふざけんな!アンタもあの子狙いか!?」
「あの子?」
「とぼけんな!ナルトは…」
「ああ、アンタがあれの担任で…狐憑き?」
「アレっていうな!ナルトはナルトだ!」
俺がその態度にイライラしているというのに、変な暗部は俺の腕を掴んで放してくれない。しかも何だか木に背中を押し付けられてるせいで、 背中痛いんだけど!
「そ。で、ココがいいの?」
「だから何の用なんだよ!」
「さっき言ったじゃない。ホント鈍いなあ。」
「なにやらやらせるつもりなんだ!!!」
「俺疲れてるんだよね。おとなしくヤられててよ」
「私刑か…?誰がおとなしくやられるか!!!」
ぐだぐだ長いこと訳の分からん話しやがって!
でもやっと目的が分かったぞ!ナルトがらみじゃなさそうだけど、なんかが気に障ったんだろう。とにかく何かされそうなのは確かだ。
さて、それならどうやって目に物見せてやろうか…?
「ま、イキがいいのも好きだからいいけどね。」
「暗部がなんだ!俺だって戦えるぞ!」
…自信はあんまりないけど…こんなやつに負けるか!
「で、どうするの?」
真正面から戦ったって勝ち目はない。それなら…
「三十六系逃げるに敷かず!」
俺は変わり身の術で軽いジャブをかますと、一目散に駆け出した。もちろん暗部もついてきている。
「足速いねぇ」
のんきな話し方が気に触るが…思う壺だ!
「かかったな!」
誰がおとなしく逃げるか馬鹿野郎!
俺は思いっきり暗部の頭目掛けて俺特製のマル秘兵器を投げつけてやった。
「おっと。」
「俺特製煙玉だ!」
辺りに漂う煙は、中々消えない。しかも…色々しっかり仕込み済み!
「そんなの喋っちゃっていいの?」
「…」
息を殺しては相手の出方をみるが、どうやらまだこちらの意図に気付かれていない…!俺はすばやく印を組んだ。
「コレ…なるほど。」
ばれたか?だが…もう逃げ切れないはず!
「火遁!業火球!」
俺のはなった術に反応して、辺りを漂ってた粉末が爆発した。
これで…多分見回りの誰かが、交戦中だってことに気付くはず…!
「あっぶないなぁ…」
「チッ!」
背後に回りこまれたか!だが…これでどうだ!
俺は次なる秘密兵器を投げつけた。
バチバチと派手な音を放ちながら、ソレは暗部の足元に飛んでいった。
「わっ!…爆竹?」
「3、2、1…0!!!」
カウントが終わると同時に、ぽしゅんと間抜けな音がして細い煙がでている。
…不発っぽくみえるけど…。
「なあにこれ?おもちゃ?」
よし!いい感じに足元だ!
「かぼちゃ爆弾!食らいやがれ!」
次の瞬間、激しくはぜた爆竹から、かぼちゃが丸ごと飛び出してきた。もちろん沢山。
…本当は生徒が喜ぶ顔が見たくて作ったんだけど…かぼちゃが振ってくるのは、危険だって後で気づいたんだよなー…。
だが、失敗は成功の母!これを糧に頑張るぞ!!!っていうか現在進行形で役立ってるしな!
「おっと!なんで…かぼちゃ?」
よし!びっくりしてるびっくりしてる!…で、次どうしよう?そろそろ誰か来てくれないかなー?やばいよなー?
俺が焦っている間にも、暗部はじわじわと近づいてくる。あ!かぼちゃ!クナイで刺した!もったいない!!!
「遊んでる暇はないんだよね?」
「だったら諦めろ!まだまだあるぞ!!!」
自作のハロウィングッズ実際に使えたのって、でかいクラッカーだけだったからまだまだハロウィン用の…兵器になっちゃった仕掛けがいっぱいある!
まあ…全部かぼちゃっぽいのはご愛嬌だ!多分後少しはもつ!それに…いざとなったら漫才でも何でもやって誤魔化してやるぞ!
俺が密かに気合を入れていると、変な暗部の前に新しい暗部が降り立った。
…助かった!!!
「あ、来ちゃったか。」
「ああ!暗部の人!この人変なんです!持って帰ってください!」
俺は必死で変質者の排除をお願いした。同じ部隊なら、何とかしてくれるはずだ!だってこんなの木の葉じゃ許されてないはずだし!
「なるほどね?ソレ狙い?」
今頃気付いたか!この変質者!ガチで暗部に勝てるわけ無いだろ!俺は中忍だ!…何か情けなくなってきたけど、コレでケリがつくはず…。
「隊長!何事ですか?」
「遊んでた。のかな?」
「時間です。」
「そ。…じゃ、またね?」
あ、あれ?何で仲よさそうなんだ?でも一緒にいなくなってくれた…。
「…えーっと。助かったみたいだな…。」
やっぱり失敗作、捨てないでとっといて正解だった!
でも…このかぼちゃどうするかな…?こんなトコにかぼちゃだらけって怒られるよな?もったいないし。
「持って、帰るか…。」
俺は四方八方に飛び散ったかぼちゃを、やむなく一個一個回収したのだった。
*****
「おはよう。」
「あ?なんだ?だれだ?」
「昨日はどーも。」
「昨日…昨日はかぼちゃが…。」
「で、いいよね?」
「なにが?かぼちゃ希望の方ですか?」
「アンタそれ天然だったのね。」
「は?」
「ま、いーや。」
「良くねぇ!!!良く考えたら何で勝手にひとんちに入り込んでやがる!出てけ!昨日かぼちゃ運びで疲れてんのに…!」
あれから調子こいて20個も仕込んどいたかぼちゃを、一回じゃ運びきれなくて結局何回か往復したから寝るの遅くなったんだぞ! 1個はあの変な暗部がクナイ刺しちゃったから持って帰りにくかったし!!!
「それで玄関に山盛りかぼちゃが置いてあったのか。あれから全部回収したの?」
「おうとも!重かったんだぞ!」
普段書類とか持って歩いてるけど、ああいうバランス感覚が必要なモノを沢山持って帰るのは大変だったんだ!まあ、全部運んでからどっかでカゴとか 借りて来ればよかったって気付いたんだけどな…。
「ふーん?」
「で、アンタ誰だ?」
「昨日あったでしょ?」
「昨日…昨日はかぼちゃが…」
重かったんだよな?で、何だコイツ?
「ソレはさっき言ってたでしょ?」
「それから…暗部風味な変質者が…」
そうだそうだ…変質者がかぼちゃにクナイを…。
「暗部だけど、変質者はないでしょ?」
「変質者…アンタか!?」
「思い出した?」
「さ、三代目―!!!」
今すぐコイツを持って帰ってもらわないと!
慌てふためいた俺は必死で印を組んで式を飛ばそうとしたが、暗部に阻まれた。
「落ち着きなさいよ。」
「かぼちゃか?目的はかぼちゃなのか?そもそもどうやってここに!?」
かぼちゃは…どうせならいいものをと思って、最高級のほっくほくのかぼちゃだけど、高給取りなんじゃないのか暗部って!?
「かぼちゃはいらない。目的はアンタ。チャクラ追ってきただけ。」
「…かぼちゃじゃない?俺?チャクラ?…あ、腹減った。」
悩んでたら腹減ってきた。ぐうぐういってる。何か食わなきゃ。
「落ち着き無いなぁ。」
「腹へって幻覚見えてるんだ。飯食わなきゃ。」
そうだ。俺んちに暗部なんかいるわけが無い。飯食ってるうちにきっと消える。
「幻覚ねぇ?」
「幻覚が喋るな!朝飯何にしよう?」
リアルに昨日のとそっくりな幻覚だなまったく!腹減ったし…。
「おもしろいなあ。」
「かぼちゃ…沢山あるから蒸かして食うか。」
茹でるより美味いよな。電子レンジより甘くなるし。
「俺も食おうかなー?」
「かぼちゃ…」
台所にかぼちゃ1個持ってって皮剥いて…。
「かぼちゃに逃避ってホント珍しいね。」
幻覚はスルーして、俺はさっそくつやつやで美味そうなかぼちゃを捌きにかかったのだった。
*****
俺の前にはホクホクのかぼちゃ!そしてバターもたっぷりだ!ついでに蜂蜜もセットした。だがまずはそのまま思いっきりほおばってみた。
口いっぱいにかぼちゃの自然な甘みが広がる。
「かぼちゃは美味いなぁ!」
「アンタほんとに幸せそうに食うね?」
隣でなんか行ってるのがいるけど気にしない。幻覚だ。
「美味いなー!!!昼飯はてんぷらにしようかな?」
蒸かしたのも美味いけど、まだ残りが19個もあるんだ。いろんな調理法を試したいよな!
「あ、ソレ駄目。俺てんぷら嫌い。」
「幻覚は…喋るなっていってんだろうが!俺はかぼちゃのてんぷらが好きなんだよ!!!」
てんぷら…ほっくほくでさっくさくのてんぷら…!何かヨダレ出てきた。
「いい加減さぁ…現実認めてみない?」
「聞こえん!俺は何も聞いてない!…寝よう。寝ぼけてるんだ。」
俺が美味いてんぷらを求めるがあまり幻覚が五月蝿くなってきたみたいだから、一旦睡眠をとってみようかな?
「じゃ、いっしょに…」
「幻覚が…!」
いっしょにだと?眠りの世界まで幻覚が…!?
「だから。」
「うるさい!…目的が俺って…家賃だって滞納してないし、公共料金はちゃんと支払ってるぞ!」
俺は普通にまじめにまともに生きてるいたって平均的な中忍だ!いきなり見知らぬ暗部にこんにちはされる覚えは無い!
「ちがうちがう。」
「だったら…何の用だ!折角の休日を!!!」
久しぶりにお休みだから馬鹿みたいに寝まくってごろごろして怠惰に過ごそうと決めていたのに!!!
「んー?ま、いいや。じゃあさ、ここに引っ越してくるから。」
「宣言すんな!認めてねぇ!毎日てんぷらにすんぞ!」
さっき幻覚のくせに俺の大好きなかぼちゃのてんぷらを嫌いとか言いやがったからな!こいつ!
「ソレは困るなぁ。」
「だったら!帰れ!玄関はあっちだ!」
そうすれば俺はかぼちゃのてんぷらを楽しめるし、安眠できる!一石二鳥だ!
「うん。ソレは入ってきたから知ってる。」
「お前…不法侵入者のくせに律儀だな。」
玄関から入る忍び込む忍って珍しい気がする。
しかも、ソレを認めるか?普通?
「お褒めに預かり光栄です?」
「褒めてねぇ!…で、何でこんなトコにいるんだ暗部のくせに!」
暗部は…任務してろ!俺んちでかぼちゃほおばってる暗部なんて認めねぇ!
「昨日変な格好して能天気にふらふら歩いてる中忍見っけて、しばらく見てたら楽しかったから。」
「あ?」
能天気?そりゃ確かに幸せな気分であるいてたが、能天気は無いだろう能天気は!?
「近くで見たらもっと楽しいんじゃないかって。だからここに住むね。で、ヤラセテ?」
「は?何で住む?何をやる気だ?」
住んでどうするんだ?俺の力作が気に入ったのか?弟子入り希望は受け入れてねぇぞ?
「だから、住む理由を作ろうっていってんでしょ?」
「ルームシェアか?俺んちは自慢じゃないがかなりの狭さだぞ?」
暗部って家ないのかなぁ?その辺で寝てるのか?いつも?
「そうね。ルームシェアか。それでもいいかな。」
「しかも風呂とトイレはかろうじてついてるけど、洗濯機は外だぞ?」
冬場は寒いんだ!しかも、遅くに帰って来たら近所迷惑だから洗濯できないし…だからうっかりするとすごい量たまっちゃうんだよなぁ…。
「じゃ、今日から宜しく!」
「そうか!帰ってくれるか!」
うんうん!確かにこの劣悪な環境で生き抜けるのは、苦労しがちな中忍だけだよな!
「アンタホント面白いね。」
「てんぷらの材料買ってこないとなー。」
さて、話は終わったみたいだから、早いトコてんぷらの用意しないと。海老の掻き揚げも食いたいし、たまねぎとかきのこも。あとは…イカもいいよなぁ!
「お昼は俺が買ってくるからあんた寝てれば?」
「そうだな…寝よう。疲れたし。」
てんぷらはあとでもいいや。折角邪魔なのがいなくなるんだから寝よう。しっかり寝て頭はっきりさせてから、何食うか考えよう。
「じゃあね。」
「おやすみー…。」
やっと、眠れる。
*****
「で、だからお前んち行ったら不審人物がでっかい態度で飯食ってたのか。」
「出て行かないんだ。どうしよう?」
どうして勝手に俺んちに暗部が住み着くんだろう?あんまり自然にいついちゃったから、最近は1匹見たらあと30匹潜んでるんじゃないかとか 考えちゃうんだよなー…。天井裏びっしりの暗部…なんておそろしい…!!!
「あきらめれば?」
サラッと言いやがって!この暗部!
「いやだから、俺はかぼちゃのてんぷらが食いたいんだ!もうかぼちゃがなくなっちゃうだろ!」
もう残りのかぼちゃはあと1個。今日の夕飯でおわっちゃうかもしれない。意外に居候っていうか、勝手にいついちゃったのが良く食うから減りが早くて困る。
「ソコまでこだわる理由が分からん!その前にお前背中にくっ付いてるの…!?」
「今日はかぼちゃの煮物にしようよ。」
背中にくっ付いて顎で俺の頭ぐりぐりするんじゃない!痛いだろまったく!それに俺は…
「だから俺はてんぷらが食いたいんだ!」
「帰ろっか?」
抵抗むなしく、俺はいつもどおり変な暗部に担ぎ上げられた。
「なんだったんだ…?」
同僚に唖然とした表情で見送られながら、俺は今日こそてんぷらを食うべく、戦い抜く事を決めたのだった。
まあ、いつもそう思ってるんだけどな!

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意思の疎通が無い二人。
ハロウィンなので不条理な話を増やしてみました。
…ちょっと脳が疲れてるのかもしれません…。
笑って流してやってください…。

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