先輩‐捕らえられた獲物‐

熱い。…それに気持ちイイ。
ああ…もう、触らないで欲しい。訳が分からなくて…怖い。
「あ、あ、…ぃヤダ…っ!」
首筋を這い回る少し冷たい唇と、下肢を暴いていく指が、僕の思考を散らしていく。
このままじゃ駄目だ!だって…!ああ…でも、どうして駄目なんだっけ…?
散乱する思考に確かに焦りを感じるのに、何だかどうでもいいような気がする。
そんなコトより、気持ちイイこの熱に溺れたい。
「ふふ…ちょっとずつ脱がすのって興奮しますね。」
脱がす…そういえば、僕どうして服が…?
こんなトコで脱いだら危ないのに、どうしよう?
でもスースーして、熱いのがちょっとだけ楽になった気がする。
冷たい手にもっと触って欲しい。
「…ああ…こんなになって…ここも。」
「あぁっ!な、なに…?」
ひんやりする手の感触が気持ちよくて、うっとりしてたら、胸にぬるっとしたものが触れた。熱くて湿ったソレは、熱を持った胸の突起を押しつぶすように執拗に這いまわって…。
ただそれだけのことなのに、うずくような快感が僕の呼吸を上げていく。
「気持ちイイでしょう?ほら…」
僕の反応に気を良くしたのか、耳元でサイのくすくす笑う声がして、吹き込まれるその低く甘いその声と吐息にもゾクゾクした。
そのままついばむように唇が落とされて、指でも弄られて、逃がしきれない熱に浮かされて身体が勝手に震える。
それだけでもう腰の辺りにわだかまった熱を吐き出してしまえそうだったのに、冷たい手にソレをせき止められてしまった。
「あ、やだ…っ!も、でる…っ!」
「まだ、駄目です。我慢して…?」
足の間からちゅくちゅくと湿った音がする。
熱はせき止められた…サイに弄られてるところから全身に広がって、じわじわとあぶられるような快感に、思考が焼ききれそうだ。
もう、耐えられない。
「い、やだ…ぁっ…イルカさん…先輩…!」
気が付いたら、僕はそう叫んでいた。
そのとたん、刺すような怒りのチャクラが僕に向かって放たれた。
「…僕以外のことなんか考えられないようにしてあげます。」
静かなその声の中に確かに激しい怒りを感じて、それが怖くて逃げたくて…僕はもがいた。
でも、急にせわしなくなったサイの手に僕は動くことさえ出来なくなった。
「…っ!」
もう出したくてたまらないのに、ぎゅっと握られたままのソコとは対照的に、いつの間にか僕の後ろに入り込んだ指がもたらす違和感に声の無い悲鳴が漏れる。
苦しい。一杯入ってる…。コレはもしかして…サイの指…!?
「ああ…その顔…もっと見たい。声も…。」
めったに感情を露にすることの無いサイの興奮した声。
そのちょっと上ずった声にふさわしく、僕に突き立てられた指の動きも激しさを増した。
「…っ!ぅっ…んっ!」
声は出したら駄目だ。敵が調子に乗る。…でもなんで声出しちゃいけないんだっけ…?
怖い、熱い。もっと…!
ああでも駄目だ!この子は…!
自分が混乱してるのは分かるのに、何が駄目で何がいいのかが分からない。
どうしたら、いいんだっけ…?
「ああ、そうでしたね。コレ、拷問じゃないから…そんなに我慢しなくていいんですよ?」
「え、あ…?」
指の動きが一旦止まって、苦しいのがちょっと楽になった。
絶対に声を漏らさないように食いしばってた唇を慰めるように、サイが舐める。
コレ、拷問じゃないんだよね…?じゃあ…もう、我慢しなくていいのかな…?
僕が食いしばっていた口から力を抜くと、誘うように口の間を舐めていた舌が、中まで入り込んできた。
僕の全てを絡め取るように激しいそれに応えるように、僕も追いかけた。
気持ちイイ。
僕を見つめるサイがふっと微笑んだ。その瞳に移り込んでるのは、僕だ。
なんだか幸せそうに笑ってる。

「本当の名前じゃなくてもいい。あなたが僕を呼ぶのなら。」

その言葉と同時に、いきなり全部の動きが再開された。
「あっんぁああ…っ!」
「サイって、呼んでください。僕はあなたを一番…愛してる。他の奴らの事なんか考えさせない。」
「やっうあ…っ!あ、あ…」
「ほら。呼んでください。…僕を。」
うなじに当たる吐息と、熱っぽい言葉に急き立てられて、僕は…。
「あ、…サ、イ…サ…イ……っ!」
こぼれる声が何を言ってるかも分かってなかったけど、必死でソレを繰り返した。
「あなたの本当の名も知らないけど…僕は、ヤマト隊長が好きです。」
「あ…あ…ッ」
「そう。そうやってかわいい顔、僕だけに見せて。」
そういうと、サイは僕の中を抉っていた指で、ソコを抉った。
「いぁっ!なに…?」
押し広げられてるだけで、ぞくぞくしたのに、意識が一瞬飛ぶくらい強烈な感覚。
サイの服をぎゅっとつかんで、その激しすぎる刺激をやり過ごそうとしたけど、僕の震える手をぺろりと舐めたサイは、ソレを許してはくれなかった。
「もっと、気持ちよくなりたいでしょう?」
力の入らない僕のソコをこすり上げ、サイが笑う。
「あぁっ!あっ…んっ!」
「その声も、誰にも聞かせないで。」
はっきりと欲望を湛えた瞳が、僕を食いつくそうとでも言うように真っ直ぐに僕だけに向けられている。
「僕、は…っ」
僕は何を言おうとしてるんだ?何を言えばいい?
この僕の中で暴れまわる凶悪な欲望をどうすればいい…!?
「もう、いいみたいかな…?息はいてください。」
サイが、淡々とそう言うのに、何故か抗えなくて…僕は息をゆっくり吐いた。
散々弄られたところから抜かれた指の替わりに押し当てられたモノが何だか分かる前に、ずっと大きくて熱いモノが押し込まれた。
「―!!!」
その衝撃に悲鳴もあげられずにいる僕に、サイが囁いた。
「…これで、あなたは僕のものだ。」
ああ、サイが笑ってる。
「動きますよ。…ああ、こっちも、もう出させて上げます。」
「い…っ!ああぁあっ!」
突き上げる動きとやっと開放された戒めに、すぐに限界が来た。
「くっ…!ああ、出しちゃいましたね…。そんなに締めないで?」
「あ…サイ…っ!」
吐き出してそれでも萎えないモノに怯え、縋りついた僕に応えるように、サイがゆるゆると腰を動かす。
「そう。そうやって僕だけを見ててください。」
それから…激しくなる動きに、ほぼ同時に達して、中ではじける熱を感じて…。
もう…何を言ったのか、何をしたのかも…覚えていない。
*****
「あー…えー…ここ…任務!?任務は!?つっ…っ」
横たわっていた地面には、僕の服が敷かれている。
確か僕は昨日演習場で…それから…そうだ!サイ!?
甦ってきた記憶に慌てたけど、サイの気配を探るまでもなかった。
だって…サイは…。
「…っ!いきなり動かないで下さい。く…っ締まる…!」
「ああっ!えっ!?…な、に…!?」
まだ、中に入ってる。これ…もしかしなくても…!?
怖くなってもがいても後ろから腰と胸に腕が回されてて、動けない。
息をつめる声が近くて、背中にぴったりくっ付いてるのが誰なのかすぐに分かった。
「薬のせいだけだって言われたら困りますから、僕の技量を照明しておかないと。」
「え、ぃやだ…っ!抜きなさ…!」
「いやです。」
あっさりと僕の抵抗をいなされ、泣きそうなのに、サイは腰を揺り動かしながら顔を舐める。
くちゅくちゅ音がするのがどうしてなのかって考えたら、叫びだしたいくらいなのに、あっさり快感に流された僕の体からは、甘くかすれた喘ぎ声しか出てこなかった。
「や…っ!あ…あ…っ!」
どうして!?なんでこんな…っ!?
僕が暴れるからか、時々背中に当たるサイの髪の毛ちくちくして、それにさえ煽られてしまう。
結果的に…「乳首、感じるんですよね。」なんて卑猥なセリフを臆面もなく吐きながら笑うサイにもう一回中に出されるまで、僕は揺さぶられる羽目になった。
*****
こんな…安全とも言えない所で服脱がされて、身体はぐちゃぐちゃで汚れてて、痛くて、それなのにサイは満足そうな顔で笑いながら僕をだきしめてて…。
もう、めちゃくちゃだ…!
「うー…!なんで…こんな!」
自分の不甲斐なさに吐き気がする。
薬のせいにして逃げたって、僕がやらかしてしまったことは消えてなくならない。
子どもだと思っていたサイは、確かに大人の…雄だった。ソレも立ちの悪いことに獲物を狩るのに躊躇いの無いタイプの。
でも、それでも…やっぱりこの子はまだ子どもだ。
それなのに…僕はこんな子どもに泣いて縋って、欲望を徒に煽った。
僕みたいなのに構ってないで、ちゃんと…根の教育で損なわれてたものに気付いていけるようにしてあげなきゃいけなかったのに…!
自省と羞恥とで涙がでそうだ。ぐちゃぐちゃになってる自分が情けないし、こんなことになってしまったことが信じられない。
でも…だってもう、コトは起こってしまった。
情けないと思ってもこみ上げるものを押さえられなくて、ぐすぐすとこぼれる涙を堪えてたら、サイが背中から僕の顔を覗き込んできた。
「自分が最近どんな顔してるか知ってますか?」
「え…?」
どんな顔って…別に顔を変える任務でもないから、普段どおりだったと思うけど。
確かにサイのことで悩んでたけど、だからたって表情に出さないようにしてたつもりだ。
でも…サイに気付かれてたのか…!?
焦る僕に、こっちが苦しくなるくらい真剣な声が…。
「あんなに…辛そうな顔してるから我慢できなくなったんです。あんな顔されたら誰でもあなたが欲しくなる。泣くなら僕に泣かされてください。僕だけに。」
ぎゅっと腕の力が強まって、…僕は、その真剣さが怖くなった。
「馬鹿なことを…!僕は…っ!」
早く逃げよう。なかったことにできる。今なら。
記憶を消してもいい。こんなコトは…起こっちゃいけなかったんだ。
振り払おうとしてるのに、サイの腕は僕を捕らえて離さない。
「何ですか?もっと欲しい…?」
くすくす笑いながら僕の耳に囁いてくるサイは、雄の気配を濃厚に漂わせながら唇を滑らせる。
「…帰る。んっ!…離せ!」
「無駄ですよ。歩けないでしょう?」
呆れたような声でそう言うと、しぶしぶサイは僕を腕から解放した。
駄々を捏ねて暴れている子どもみたいな扱い方だ。
それでも僕は…!
「もう、近寄るな!…僕は…今日のコトは忘れる、君も早く忘れなさい。」
かき集めた服で身体を隠して、急いで距離をとった。
思うように動けない身体がどうしてそうなったのか考えないようにしながら、なんでもないように帰る準備をし始めた。
足の間を伝うものに怯えながら、よろめきながら慌てて服を着て、サイを振り切る方法を必死で考えた。術は使えそうだけどココから逃げるとなると術だけだと厳しい。
そんな僕を眺めて笑いながら、サイは自信たっぷりに言い放った。
「…無理ですよ。あなたも、僕も。…だってもう身体に染み付いちゃったでしょう?…僕のが。」
「なっ!?」
その視線を向けられただけで、背筋がぞくっとした。
…卑猥な言動といい、態度といい…絶対に誰か…もしかしなくても先輩の悪影響か…!?それとも根の者はこういう手管を教え込んでるのか…!?
混乱する僕に、サイは躊躇いなく近づいてきた。そして…。
「行きましょう?僕のせいだし送っていきます。」
「いらない!…!?」
にっこり笑って伸ばされた手を振り払おうとしたのに、立ち上がることすら出来なかった。
この程度の痛み。なんてことないと思ったのに、どうして…!?
力が入らないことが理解できなくて、何度も身体を動かそうとしたのに、それでも上手くいかなかった。
「ほら。無理するから!」
「ぅ…!」
ちょっと焦った様子のサイに抱きとめられて、倒れるのは免れたけど…!
くそっ!なんで僕の身体のくせにいうコト聞かないんだ!
「超獣偽画!」
打ちひしがれる僕をゆっくりと座らせると、サイがいつも乗ってるのよりちょっと大きな鳥を作って洞の外に放った。
その隙にと、じりじりと距離をとったのに、ちょっとでも結局捕まってしまった。…しかもひょいっと軽く、どこかのお姫様みたいに抱き上げられて。
「捕まっててください。ほら。」
「下ろしなさい!?んむっ!?」
暴れるのをなだめるように口付けられた。…しかもしつこくくちゅくちゅ音を立てながら。
あまりのことに呆然とする僕に、サイは当然のように微笑んだ。
「帰ったら風呂に入れてあげます。」
「何勝手に決めてるんだ!僕は自分で!」
「駄目ですよ。…もうあなたは僕のものです。」
そのまっすぐな視線と、今まで見たことがないくらいきれいな…自信に満ちた笑顔に呆然としてるうちに、僕は鳥に乗って里まで送られてしまった。
…サイに腕に抱きこまれたままで…。


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狼が獲物を狩る編続き。
突っ走る狼と、狩られる哀れすぎるほど哀れな羊。
…年下の狼暴走編…無駄にこってり風味にて失礼致しました…。
うっかり読んで気分を害された方は、すぐさま記憶から消去されることをお勧めします…。
ああでも、ご意見ご感想突っ込み等は大歓迎!!!

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