リサイクル

イルカ先生がとってもやんでるので注意ー!それとカカチはまたストーカー!!!

要するにろくでもない話ですが湧いたのでおいておきます。





まるで自分がくずになったような気分だ。
どろどろで、傷だらけの身体。

…元から傷だらけではあったから今更だが、さらにずたぼろになって血に濡れた地面に横たわる自分は、正にゴミだろう。

「死ね」

そうだな。死にたいよ。死ねるものならもうとっくに。
ずっとずっと…そう思ってきたさ。

それでも、僅かな希望を胸に、自分に迫る刃を見つめた。

「ダメ。アンタ、これが何なのか知っててまだやるの?」

今度も、やっぱりだめだった。

「貴様…っ!…そ、その刺青…!…木の葉の暗部…っ!?」
「だから、ダメ。…死にたい?」
「くっ!」

逃げていく。俺に安寧をくれるはずだったものが…命惜しさに。

ああ、まただ。また死に損なってしまった。
銀髪の死神などという異名を持ちながら、コレは俺を決して死なせてはくれない。

「あーあ。馬鹿じゃないの?そんなにやられて…」

「…」

言葉も出ない。

馬鹿、といわれればそうなのかもしれない。
実力はないが任務は与えられる。そして、監視も。

そうして、終わりは与えられないのだ。
この、目の前の男に奪われて。

*****

最初に任務でしくじって死にかけたとき、これで、やっと楽になれると安堵した。
生きていることが嫌いなわけじゃなかったけど、生きていたいと思えなかった。

どうせ失うのだ。…だからこそ、誰も欲しくなかった。
ずっと、一人で…終わるときもこうやってゴミみたいに死ぬのがいい。

自分でも驚くほど簡単に死を受け入れた。
こんなに自分が死にたがりだなんて、それまで気付かなかった。

知らぬ間に、ここまで生に倦んでいたなんて。

遠のく感覚が、薄れ行く意識が、己の終わりが…限りない安らぎに思える。

でも、それを止めるものがあった。

「ダメでしょ。あんた弱いのに無理しちゃって」

随分な言い草だ。確かに強くはないけれど…それでも、任務を達成するために努力した。
…自分の命と引き換えにしろ、達成したことを認めるくらいはして欲しい。

まあ、でも、もう全部終わるから、いいか。

そう思って閉じかけた目蓋を声の主が乱暴に押し上げた。

「ああ、瞳孔はやばそうだけど、脳の出血はなさそう?…腹に開いた大穴だけか。…なら、まだ間に合う。あんた助かるよ」

折角…苦しいのも分からなくなってきた所なのに。

男の言葉にもそんなことしか思えなかった。

「いらない。もういいんだ。…任務終わったって伝えてくれ」

それで終わり。報告書を書く人間はいないけど、男に伝えることが出来たから大丈夫だろう。
これで、全部終わりに出来る。

その甘い夢に浸って、流れ出す血と共に、四肢から抜けていく力を心地よく受け入れた。

「ああ、ダメな生き物だねぇ?…まあいいや。もったいないし、別にいうコト聞く義理なんてないし」

傷口に触れると、まだ僅かに痛みの感覚が戻ってくる。
ちくちくと神経を逆撫でするそれに、もう放っておいてくれと叫べたのかどうか…曖昧な記憶の中には残っていない。

*****

目が覚めたら病院だった。…俺は、助かってしまったのだ。

甲斐甲斐しく世話を焼かれ、いらないんだというコトも出来ず、しばらく身動きさえとれず痛み続ける身体に耐えた。

…今度は、一撃で終われるようにしよう。
痛みのしつこさにそう決めて…そのチャンスは意外と早くやってきた。

味方は逃がした。そうして目の前には俺が絶対に敵わないと確信できる敵…恐らく、上忍。

すばやく組まれる印を、うっとりと見つめた。
練られているチャクラも、印の複雑さも申し分ない。
執拗に敵陣をひっかきまわしてやった甲斐があった。ムキになって強力な術を使ってくれている。
きっとこれなら骨も残さずに死ねるだろう。

…今度こそ。

逃げようともしない俺が観念したとでも思ったのか、敵が馬鹿みたいに笑いながら突っ込んでくる。

あと、もうちょっとで、目前に迫った敵が、俺をその炎で燃やし尽くしてくれるはずだった。

「アンタまたやってる。わざとだったのね」

銀髪の男が俺に終わりを与えてくれるはずだった敵忍をただの肉の塊に変えていた。
まだぱちぱちと輝いている手は、敵の心臓を貫いて、きっと一瞬で終わったのだと理解る。

「何で…っ…終れるはずだったのに…!」

「なっさけない顔。…世の中そんなに甘くないって思い知りなさいよ」

ふふんと鼻で笑う声が、愕然としている俺を更に惨めな気分にさせる。

「なんだよ…なんでなんだよ…!」

俺はただ、楽になりたいだけなのに…放っといてくれても、いいじゃないか!

「だーめ。…そんなの、ゆるさない」

そうして…もう力が入らないくらいボロボロの俺を担いで、男はまた病院に放り込んだのだ。

…俺が頼んでもいないのに。

*****

それから何度も試した。

場所も違う。任務の内容も多岐に渡り、なにより緊急で入った任務だってあったのに。
男はいつでも現れた。…俺に訪れるはずの安息を邪魔しに。

「馬鹿ばっかりやってさぁ…いい加減飽きない?」

「そっち、こそ…なぁ…!もう、いいだろ?…諦めてくれよ…!」

もう、いやなんだ。もういらない。
失う痛みばかりの日々も、何も出来ない自分も。

「ダメだっていったじゃない」

「なんで…ぇ…!」

涙がこぼれていくのを止められなかった。
ぐすぐすと鼻を鳴らして子どものように泣いて…俺を止める男に懇願した。

「いらない…もういらないから、許して…」

相手がどうやっているのか知らないが、こうも執拗に止められるのだ。
きっと…俺がどうやっても無駄に違いない。
だからこそ、もう諦めてほしかった。

泣いて泣いて…馬鹿みたいに泣いて…。
泣きすぎて頭が痛み始めた頃になってからやっと、男が動揺しているらしいコトに気がついた。

どこか焦ったような気配を垂れ流して、そのなかに…確かに喜びか期待か…とにかく、高揚しているのが良く分かった。

暗部のくせに妙なチャクラ垂れ流しやがって…!

文句の一つも言ってやろうとした俺にの手を、男が握り締めた。

「じゃあさ。…それならさ、ちょうだい?」

焦ったような口調は要領を得ない。…まあ、もともとコイツの言葉は意味が分からないんだけど。

「何を…?あげたら、もう邪魔しない…?」

「あーそうね。邪魔って言うか…もうそんなことしなくてもいいようにしてあげる」

そうか。何だか知らないが、これで開放されるなら、もうどうせ何もいらないんだし、くれてやる物が何かなんてどうでもいい。
「あげる。だからもう邪魔しないで…!」

俺は静かに終わりたいだけ。邪魔して欲しくないだけだ。
他にはもう、何も要らないから。

「うん。…ずっとさ、欲しかったんだよねぇ!最初っからこうすればよかった。見てるだけなんて性に合わないのにね?」

馬鹿は俺もだったかなー?なんていいながら、男が俺を担ぎ上げる。
今回は…まあ、もう俺を殺してくれそうな敵…残党すらもいないから、諦めよう。
またしばらく病院だろう。でも…次は、きっと次にはもう終れるはずだ。

希望の光を見出して、なんとなくふわふわした気分になりながら目を閉じた。
…目覚めたらきっと…また医者の小言でも聞いて、それからどんな風に終るか考えればいい。

ぎゅっと…普段よりやたら強く抱きしめられたことに、やっと許された終わりへの手順を考えるのに夢中になっていた俺は気付かなかった。

*****

目が覚めたのは、病院…ではなく、見知らぬ家だった。

「あれぇ…?なんで?」

「頂戴って言ったじゃない。くれるって。だから、アンタもう俺のね?」

笑う男の髪には見覚えがあった。
執拗に俺の邪魔をし続けた元凶だ。
…面を外すと、意外と俺と同い年くらいに見えて、思ったより若いコトに驚いた。

それと、意味の分からない言葉にも。

「なんか、いま、言った…?」

「今したら傷口開いちゃうから、治ったら全部頂戴ね?それまで、一杯甘やかしてあげるよ?勿論治ってからもはもっとね!」
さらさらと髪を弄び、男が楽しそうに話しているのは今後の予定らしい。
…それも、どうやら俺の。

「え?あ?」

「寂しかったんでしょ?それに、自分のことが嫌いだよね。…でもさ、俺はアンタが欲しいわけ。だから、アンタ俺のことだけ考えてればいいよ」

「なに、言って…!?」

訳が分からない。俺が欲しいのは終わりで、永遠の安らぎだ。
それがどうして?

俺が男の物になるって話になるんだろう?

「わかんないだろうなぁ?…アンタのことが好きってこと。図体でっかいのに、アンタ情緒全然なんだもん。子どもみたい」

「なんで!知らない!そんなの知らない!」

好きだなんて分からなかった。
でも、欲しいといわれて胸が高鳴る。
嬉しい。でも怖い。分からない。

不安で一杯の目をした自分が、男の色違いの瞳に映っている。
ガラス玉みたいに綺麗な瞳に、壊れたみたいにボロボロ涙を零す自分が。

「いいから、おいで。そんでずっと側にいてよ」

ぎゅっと抱きしめられて、怪我だらけの身体がきしむのに、跳ね除けることも出来なかった。

その温かい手を離せない。

「息ができなくなるくらい、ずっとくっ付いててあげるから…もう、いらないなんていわないで」

瞳を悲しみで染めて、必死に懇願する男の言葉が耳にしみこんで…要らないはずの自分がとても尊い物に思えた。

*****

俺は男の物になった。
俺もいらなかった俺を、欲しいって言ってくれたから、上げることにしたのだ。
ある意味最高のリサイクル。…ただそれが俺だっただけのこと。

男の物になってから、怪我が治るなり毎晩結構な重労働を強いられて、温かくて気持ちよくて、それから…何だか世界が違って見える。

「ねぇ。もう終わりなんて要らないでしょ?ここにいたほうが絶対に楽しいんだから!」

ぎゅうぎゅうと俺に抱きついて、男がしきりにそう囁く。…毎日のように。
だから、きっとそれが脳にしみこんでしまったに違いない。

男と一緒に見る世界が輝いて、それから腕の中にいるのが心地よくて…だから、俺は終わりを探すのを止めてしまった。

「晩御飯は、らーめんがいい」

「んー?ま、しばらくらーめん我慢してたから解禁かな?でもらーめんばっかりはだめよー?」

終わりよりもずっと、欲しい物があるって白状するのはまだ癪だから…俺は、いつも通り甘えてやった。

途端に脂下がる男には、きっと全部ばれてるんだろうなと思いながら。


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ド粗品予定が長すぎるのでこっちに。
意味もなく病んだ話?
えー…一応!ご意見ご感想などお気軽にどうぞー!!!

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