夏休みは計画的に!
イルカは気がつくと鎖につながれていた。それもご丁寧に首と腕に枷をはめられ、寝台に仰向けに固定されている。 足は自由になっているようだが、しびれたように動かない。
…たしか自宅へ帰ってから、食事を作ろうと冷蔵庫を開けたところまでは覚えている。だが、 こんな事態になるようなことに心当たりはなかった。と、
「イルカさん。気がついた?」
聞き覚えのある声が聞こえる。妙に楽しそうな。
「あんたなんの真似ですか!」
目の前でやたら嬉しそうにニコニコと微笑んでいる銀髪の上忍は、最近しつこくイルカに付きまとっていた。
好きですとなどと抜かしながら、イルカにかまい倒し、受付所の機能を一時停止させるため、同僚たちにも 恐れられているのだ。
腕利きの上忍に意見を言えるものなどいなかった。が、もちろんイルカは意見した。ここは様々な任務をこなした 忍が、報告書を提出するためにやってくるところだ。最初は丁寧に「今日の所はお疲れでしょうからゆっくり休んでくださいね。」 などと婉曲に伝えてみた。
それでもだめだと「今いそがしいので。」などとそっけなくし始めたが、何度言っても改善が見られなかった。
最近では、「そもそも受付所に報告書を持たずにやってくるとは何事ですか!!!」ともいったし、「受付の邪魔をするのもいい加減にしろ!」 とも意見した。というか怒鳴った。しかしカカシは全く気にせず、へらへらと腹の立つ笑い方をしながらしつこくイルカの前に居座り、 話し続けるのだ。
最初は食事の誘い。断るとデートとやらの誘い。最近は、さらに何か思わせぶりな発言をしだすようになった。
もうそろそろがまんの限界ですよーとかなんとか。わけが分からない。中忍をいたぶって楽しいのだろうか。
確か昨日も、わけの分からないことを言いに受付所にやってきていたはずだ。
(こいつのせいで、俺は受付を外されそうなんだぞ!)
中忍の給料は少ない。さらに内勤ともなれば推して知るべし。
しかもイルカはアカデミー教師だ。顔を見ればラーメンをねだる不肖の元生徒などもいて、収入は多いに越したことはない。 それに卒業生や外回りの友人と接する、数少ない機会でもあるのだ。
それを邪魔したカカシをかなり腹立たしく思いながら、昨日も丁寧にきっぱりはっきりと断ってやったはずだ。
だが、そうだ昨日…やけにあっさり引き下がった。それはこういうことだったのか。
嫌がらせにしても手が込みすぎている。いい加減、説教してやるべきだろう。上忍だからといって常識はずれな行動が全て許されると思ったら 大間違いだ。
「これ、はずしてください!」
イルカはカカシの声がした方向をにらみつけながら、アカデミーで鍛えた良く通る声で怒鳴った。これでたいていのアカデミー生はおとなしくなるのだが…。 「いやでーす!」
「そうそう!せっかく素敵にしあげたのに。」
「イルカ先生、色っぽい。」
なんでカカシの声がダブって聞こえるのか。目の前の事実を認めたくない。
「あのね。イルカ先生。」
「あんまりイルカ先生がかまってくれないから。」
「強制的にかまってもらうことにしました。」
イルカは目の前で見せ付けるように服を脱いでいくカカシたち。さすが上忍だ。鍛え上げられた肉体は、うらやましいを通り越して 嫉妬さえ覚える。
(鍛錬増やそう!!!)
ひそかに決意したイルカは、いつの間にかカカシたちに取り囲まれていることに気付かなかった。 「ねぇ。イルカ先生。」
「なんどもいってるけど…。
」 「「「すきですよ。」」」
白く長い腕がイルカに向かって伸ばされ、そして…。
*****
「というのが俺の夏休みの計画です。ほらこれ、計画表!」
「アホかー!っていうかあんた上忍だろ!!!アカデミー生でもないのに夏休みなんぞあるかー!」
この変態アホ上忍は、イルカのストーカーとしてビンゴブックにのるのではないかと思うほど有名である。
顔はいいが、頭の中身はコピーした術と変態妄想だけでできているのは明白である。
この変態上忍に、イルカは今日も今日とてしつこく付きまとわれていた。
「えーでも先生こないだアカデミーで、一度立てた計画は守れって言ってたじゃない。夏休みは計画的に!って。」
カカシは口を尖らせながら駄々をこねる。
「あんたまた授業のぞいてたのか?!」
もちろんカカシにとって授業の監視はいつもの日課だ。イルカの動揺を全く気にすることなく、カカシは嬉しそうに言った。
「と、いうわけなので、先生も付き合ってください。」
イルカは変態妄想てんこもりな<カカシ&イルカのラブラブ夏休み計画表☆>なる巻物を破り捨てることにした。
ビリビリッとチャクラをこめて破り捨てる。ピンク色の紙切れがこんもりと山を作った。
「あいにく俺はアカデミー以外の仕事もあります。大体夏休みでもアカデミーには仕事があるんです。 つ・ま・り。もう夏休みの計画はたててあるので、お引取りください。」
イルカはもさもさと頭をかく、目の前の変態に言い捨て、冷たい視線を向けた。
「ちぇーじゃまたね。」
カカシは残念そうにしながらも、あっさりと受付所を出て行った。
(やけにあっさり引き下がったな。…冗談にしても悪質だが。…改めて警戒は怠らないようにしよう。)
イルカは決意を新たにし、受付所の仕事を一刻も早く片付けることにしたのだった。
一方カカシは…。
(これって明日からの計画だしねー。今日の12時まわったら決行しようっと。)
破り捨てられたはずの巻物を嬉しそうに眺めながら、あやしげな道具片手にイルカのうちへ向かっていたのだった。


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計画書には、イルカ先生と結婚。新居を構えて新婚プレイ。
最終的にはイルカ三昧の日々を送る。などと書いてあったりするかもしれません。

変なものばかりで済みません…。


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