夏、昼下がり

「あっちー…。」
普通なら、腹丸出しで寝転がってぼりぼり足なんか掻かれたら幻滅でもしとくべきなんだろうけど。
「ねぇ…しよーよー。」
そんな姿にきっちり欲情する辺りが我ながら笑えてくる。
…だってねぇ。
浴衣なんか着ちゃって、それも暑いからって肌蹴すぎるくらい肌蹴てもう色々見えてて…勿論昨日俺がつけた跡が太腿とかうなじとかに散らばってて、今はトランクスで隠されてるけど、見えそうで見えないそこにも、昨日たっぷり注ぎ込んだこととか思い出されて…。
いっそめちゃくちゃにしたくなる。
「あっちーから、いやです。」
さっきまでだらだらしてたくせに、そういう時だけきっぱり断られた。
この人のこういう潔い所も気に入ってるけど、いやは俺がいやなので、どうにかしてそっちの方へ持って行きたい。
「あっちーなら運動して汗かけばいいでしょ?涼しくなるし、気持ちよくなるし、一石二鳥!」
まるで胡散臭い通販のようにまくし立ててみたけど、イルカ先生の心には響かなかったみたい。
「えー?こんなに暑いと熱中症になりそうだからいやです。それにアンタ、昨日やりすぎだから。こんなやたら沢山あと付けやがって!」
ぷーっと頬を膨らまして文句を言われても…大胆に肌蹴た足に付けられた俺の執着の証を熱心に数えてる所なんか、どうみても誘ってるようにしか見えない。
…もういいや。我慢しない。
「誘ったのはあんたなので、後で文句言わないように!」
「は?え?こら!なにすんだ!あっ…!」
可愛い声が上がったのを皮切りに、俺はもっとイルカ先生にいい声で鳴いて貰えるよう奮闘した。
イルカ先生はあんな真面目な顔してるくせに、結構な快楽主義者…っていうか、性格と同じくらい素直な身体だから、気持ちよくなったら抵抗できないからねぇ?
「ここ、好きだよねぇ?」
イルカ先生は耳とか、意外とわき腹も弱い。それにもちろん先走りを滴らせているそこも。
俺がそれらをまさぐる度に、ひくひくと体を波立たせる姿も扇情的で、もっともっとめちゃくちゃにしたくなった。
「あっ…んぁっ!」
甘い声に勢いづけられて、イルカ先生を追い詰めるのに集中する。
隠されていた大事なところも、既に足の先に引っかかるだけになったトランクスでは隠せない。
…そろそろいいだろうか?
「ねぇ…しよう?」
出来るだけ甘い声で誘うように呟くと、ようやくイルカ先生は子どものようにこくんとうなずいてくれた。
「シテ。も、やだ。出したい…!」
今度こそ、正真正銘可愛いお誘いだ。
俺はやっとお許しが出た可愛い人の体を、我慢せずにむさぼるコトに集中した。
*****
怒られた。ソレはもうすごい勢いで。
「暑いのに!もっと暑くなったじゃないか!麦茶!」
羽織ってるって言うより引っかかってるだけの浴衣姿のまま、畳に転がって喚く姿はやっぱり俺を誘ってきたけれど…。
このままもう一回やったら、夜にやらせてくれないよね?
「はぁい。麦茶。」
「ん。」
この尖らせた唇は…飲ませろってことね?
…もう!このかわい子ちゃんめ!
細く細く…この人がくれる熱で焼ききれそうな理性を試すようなことを、軽々しくする辺りがイルカ先生らしい。
うかつで、可愛くて、でも男気溢れてて…それで美味しい身体と忍としては健全すぎる精神を持ってる人。
覚悟を決めて唇を合わせると、俺の口に含まれていた麦茶は、イルカ先生の中に消えて言った。んくんくと無心になって麦茶を飲んで、その喉の動きにさえその気になってしまいそうだ。
どうしようねぇ?こんなに好きで。欲しくて。
押し倒したくなるのを堪えて、なんとかたっぷりコップ一杯分の麦茶を飲ませることができた。
「ね。もっといる?」
ドキドキしながらそう聞いた。
…唇を合わせるだけなんて拷問だけど、できればいつだってイルカ先生に触れていた俺としては、その辺は妥協できる。
でも…。
「も、いい。…寝るから。」
眠そうな目を擦りながら、ごろんと横になってしまった。
…ちぇ!…ま、我慢するか。
寝冷えしないようにタオルケットをかけてあげて、それからとりあえずイルカ先生を見つめるのを再開しようと思ったら…。
「ん。」
とんとんと自分の横を叩いている。…これは、いつもの隣で寝ろの合図だ。
小悪魔ちゃん!そんなコトすると襲いたくなるでしょうが!
でも引き寄せられるように勝手に俺の体はイルカ先生の横に入り込んでいた。
ああ、間近で見るとさっきまで頑張ってくれちゃってたから、色事で疲れてるのが良く分かって…その気になるじゃないの!
「腕枕。して?」
しますよ!しますとも!
小首かしげて誘われて、ちょっとその気になっててもね!
「はいどーぞ。」
「…寝る。あんたも寝ろ。」
ぐいっと抱き寄せられて、頭なんか撫でられて…。
眠くないんだけど寝なきゃいけない気がしてきたから、俺もゆっくりと目を閉じた。
あー…何か手のひらで転がされてるなぁ…。
「ま、ほれた方の負けってことか?」
呟いた俺の声に、くすりと笑った声が聞こえた気がした。


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はい夏のバカップル!
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