なれそめ


カカシ先生はいい人だ。最初は不安に思ったが、ナルトもサスケも差別せず、 面倒を見てくれている。しかも気さくな人で、何度か彼の誘いで飲みにも行っている。 話もおもしろいし、酒の勧め方がうまいので、いつもうっかり酔いつぶれてしまい、 おごってもらってばかりなので、今日は俺の方から誘うことにした。
「イルカ先生。お願いします。」
お、きたきた。
「お疲れ様です。お預かりします。」
よし、問題なし。さて、都合が合うと良いのだが。
「報告書はこれで結構です。…カカシ先生、今日これから暇ですか?」
「うれしいな。イルカ先生から誘ってくれるなんて。で、どうします? この間はなした店、予約しておきましょうか?」
よし。大丈夫だったようだ。
「いえ、いつも奢って頂いているので、今日は、その、俺んちで飲みませんか?」
上忍に宅飲みはどうかとも思ったが、上忍を招待できそうな店を俺は知らない。いつも 連れて行かれる店もお品書きを見て卒倒しそうになった。
宅飲みなら、金はそこそこで、それなりに飲める。飲むより話すのが楽しいって行ってたから 大丈夫だろう。
「えっいいんですか?」
あ、驚いてる。でも嫌じゃなさそうだよな?実はもう色々用意しちゃってるので、断られちゃうと 困る。
「あの、家は狭いし、ボロいんですが、それでも宜しければ。」
掃除はしたが、家は新しくできないので、そこは我慢してもらわないといけない。
「いえいえ、いいおうちですよね。イルカ先生の家。喜んでお邪魔させて頂きます。」
あれ?俺この人に家教えたことあったっけ?いつも酔いつぶれるとカカシ先生の家に転がってること が多いんだけど。送ってもらったことあったのか?まあ家知ってるなら話は早い。
「では、7時ごろ家に来ていただいてもいいですか?」
5時にあがってから、支度するから、あんまりすぐこられちゃうと待たせることになるし。
「はい。では7時にお邪魔します。お土産何がいいですか?」
カカシ先生にお礼するためなのに、土産は困る。
「いつもお世話になってるのに、お土産はいりませんよ。むしろお礼がつまんないものですみません。」
「いえー。じゃ、お言葉に甘えて楽しみにしてます。」
喜んでもらえてよかった。さて、もうすぐ仕事が終わる。気合入れて支度するぞ!


酒はいいものを用意した。まず、飯はカカシ先生が好きだといってた秋刀魚の塩焼きとなすの味噌汁だ。 つまみも自分の腕で限界まで使って、ちょっとした煮物と、これは絶対失敗しない、いつもは買わない 高い方のかまぼこと卵焼き。それとお浸しとたたきごぼうなんかを用意してみた。一人暮らしが長いから、 料理の腕はそこそこだと思うが、カカシ先生の高級な口に合うだろうか。
「こんばんは。」
お、カカシ先生が来たみたいだ。喜んでくれるかな。家のボロさは知ってるみたいだから、驚かないと 思うけど。
「いらっしゃい!カカシ先生。お口に合うかどうか分かりませんが、まず飯にしましょう。」
勢い良く誘ってみた。あれ?カカシ先生が震えている。今はもうだいぶあったかいと思うが、ひょっとして 風邪だろうか。
「…カカシ先生。具合悪かったんですか?」
無理に誘ってしまっただろうか。
「イ、イルカ先生その格好は…。」
「格好?」
そんなに変だっただろうか。料理する時はいつも割烹着を着ているのだが。…イイトシした男が着ていると 気持ち悪かったか。
「あの。すみません。いつも料理するときはこれ着てて。…すぐ、脱ぎますね。」
震えがくるほど不愉快にさせたのなら、今日はもうお開きにしたほうがいいかもしれない。…残念だが。
「すみません。イルカ先生。もう我慢できません。」
「えっ?」
気分まで悪くなったのか???
「っカカシ先生。無理しないでください。あの、また今度で。」
ふらふらして倒れるかと思ったカカシ先生は俺の腕をがっしりと掴んだ。そして。
「頂きます。」
意味不明な発言をした。

*****
最初からなんておいしそうな人なんだと思っていた。最初は警戒心むき出しで、こっちの様子を伺っていたが、 7班の様子に何か納得したらしく、目が合うとニコニコ笑うようになった。
何度か飲みに誘うと、そのたびに危機感なく付いてきて、酔いつぶれる。あまりの無防備さにちょっと いたずらしてみたが、全く気付く様子がなかった。
自分のものにすると決めたので、こっそり女でもいないかと生活全体を洗ってみたが、この年にしてはきれい 過ぎるほど、健全な生活を送っていた。女関係にいたっては逆に問題なのではと思うほどだ。
家からアカデミーにいって、受付所にいって、そのまままっすぐ帰る。たまにナルトや他の生徒と一楽。同僚と飲み。 …この人の楽しみって一楽と飲みしかないんだろうか。
とりあえず女の影がないことは確認できたので、じわじわと落とすことに決めた。今は単なる飲み友達だが、この無防備さ なら、意外と敵は多いかもしれない。逆にさっさと落としてしまえば、この人は決して余所見しないだろう。
順調に飲みを重ね、今度俺の家にでも誘ってみようと思っていたところに、この人から誘ってくれた。 この人のことだから、おそらく底意はないのだろう。単純に奢りが続いていたので、返そうと思ったに違いない。 だがこのチャンスを逃さず、一気に距離を縮めるべく、勢い込んでイルカ先生の家に向かった。
好印象を与えるべく、人当たりの良い笑顔を浮かべ、戸を叩いた。扉が開かれると、
…そこにいたのは、天使だった。割烹着が似合いすぎるほどに似合っていた。
三角巾からのぞく尻尾がかわいらしくゆれ、着慣れた様子の割烹着はなんともいえない色気をかもし出している。

頭の中で何かが千切れる音が聞こえ、…気がついたら残さず全部頂いていた。
チャンスは逃さないつもりだったが、こんなにすぐコトを進めるつもりはなかった。割烹着に理性を手放してしまったが、 これからどうすべきだろうか。イルカ先生はいくら金がなくても、毎回執拗に割り勘を主張するし (いつも酔い潰してしまうので払ったことはないのだが)、里長相手でも間違っていると思えば食って掛かる。 つまり、権力に屈することはありえない。このままでは…会うことすら拒絶されるかもしれない。
さて、どうするか。かといって、あきらめる気は全くないのだが。
「うぅぅ。」
うめき声さえ愛らしい。
「イルカせんせ。」
目を覚ましたのなら、とにかく謝罪しなくては。だが、受け入れてもらえるだろうか。
「くそー何してくれやがった。…ハジメテだったのに…。せきにんとれー!」
―おおこれは好都合。
「はい。もちろん。」
この機を逃してなるものか!
「いいですか!今日からあんた俺の嫁です。」
嫁?
「はぁ。」
つっこんだのは俺だけど。

そんなこんなで、気がついたら、しっかり同棲というか、きっちり入籍していた。
イルカ先生はやるとなったら早い人だと知った。
なんでも手を出したなら、結婚。がイルカ先生の中でがっちりと刷り込まれていたらしい。 イルカ先生に倫理感を仕込んだのは三代目らしいので、きっちり感謝しておく。
結婚を報告したら、卒倒していたので、届いているかは疑問だが。

*****
最近俺に嫁がきた。俺より背が高くて、俺より稼ぎが良くて、俺よりもてる。 だがしかし、俺は嫁が欲しかったので、誰がなんと言おうとカカシ先生は 俺の嫁である。
ちょっと、いやかなり、とあるコトの役割に不満があるが、それ以外は理想の嫁だ。 料理も洗濯も掃除も、嫁がやっているので、とりあえずはいいことにしている。
家の嫁は料理も上手い。他のことも上手いのだがやはり不満が残るので、そこは本人には言っていない。
結婚が決まってすぐ、三代目に報告に行ったら、倒れてしまった。そんなに喜んでもらえるとは。
何が何でも幸せになろうと思った。
「おい、イルカ。」
あ、アスマ先生だ。アスマ先生は普段家の嫁に熊、熊呼ばれているのに、いの一番にお祝いを くれたらしい。お祝いの品は見せてもらえなかった。家の嫁は照れているのだろうか。
今夜辺り見せてくれるといっていたので、楽しみだ。 お礼と感想は今度必ず言わなくては。
「アスマ先生。この度はありがとうございます。あの、まだ家の嫁に何を貰ったのか見せてもらっていないのですが、 今度また、何かお返ししますね!」
あれ、なんだか顔色が悪いな。風邪か?紅先生も似たような感じだったから、ひょっとして流行っているのかも。 嫁に気をつけるように言っておかなくては。
「あーまぁそのなんだ。気にするな。…所でイルカはもう指輪とか贈ったのか?」
指輪。式を挙げようとしたら嫁に断られたので、考えもしなかったが。家の嫁は奥ゆかしいから言い出せないのかも。
「アスマ先生。ありがとうございます。気が付きませんで。今日早速買いに行きます。」
なんだかどんどん顔色悪くなるなぁ。ますます嫁が心配だ。
「あの、顔色が優れないようですから、速く帰って休まれた方が…。」
風邪が広がったら困る。嫁にうつったらどうしてくれる。
「あ、あぁ。そうだな。帰って寝る。じゃあな。」
さて、熊は巣に帰ったようだ。風邪が治るまで巣篭もりしていて欲しいものだ。 しかしいいことを教えてくれたので、感謝をしておこう。さて、指輪だ!

******
食後のお茶を飲みながら、俺は通勤かばんの中から、今日買ったばかりのものを取り出した。 俺の湯飲みに茶を注いでいた嫁の白い手をとり、そっと薬指に指輪をはめた。 嫁は顔をピンク色に染めて、目を潤ませている。
まずこれだけは、宣言しておかなくては。
「おれは亭主関白なんで!」
「はい。」
ふるふると震えている。可愛いなぁ。
「ぜったいに俺より先に死なないように!」
嫁は上忍なので、危険な任務に付くことが多い。しかしこれだけは守ってもらわなくては。 嫁は驚いた顔をして、その後、花が咲いたような笑顔を見せた。
いつの間にか貰った嫁だが、貰ってよかった。こんなに可愛い嫁はなかなかいない。
「幾久しゅう。」
その晩、アスマ先生と紅先生のお祝いを堪能した俺は、お礼は絶対に言わないことに決めた。 熊とウワバミにはそのうちきっちり落とし前をつけてもらうつもりだ。

*******
後日

「ねぇ聞いていい?」
紅の顔には不思議な模様が描かれている。イルカ先生。家のダンナサマの復讐の結果だ。 トラップに引っかかったといっていたが、里内でわざわざ上忍引っ掛けて、あんなにくだらない ことするのはイルカ先生以外ありえない。そういえば最近熊も見ないが、どうしたんだろう。 結婚祝いと指輪の件で協力してくれた礼に、酒でも奢ろうと思っていたのだが。
「なーに。」
そういえば紅にも礼をしておくか。イルカ先生は亭主関白だが嫁は大事にするので、せっかく 貰ったから使わないとというと、使わせてくれたが、贈り主には報復したようだし。
「イルカはいい子だけど。どこがあんたのお気に召したわけ?」
お、やっぱり犯人に気付いてるか。で、俺が怖くてやり返せない、と。まあ賢明な判断だな。 イルカ先生になんかしたら、たぶん死んだ方がましな目に合わせちゃうだろうしな。 …イルカ先生のいいところなんて決まってる。
「まっすぐで、予想外なとこ。」


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あほばかりです。

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