今日は任務が無駄に複雑で、折角イルカ先生が早く帰れる日だったのに、俺の方がすっかり遅くなってしまった。 ご飯は冷凍のストックを用意しておいたが、心配だ…! イルカ先生のことだから、寂しくなってやけ食いしてるかもしれないし、何よりイルカ先生にじじいの魔手が迫っていたり、イルカ先生の魅力に惑う輩が 密かに無体なマネを企てているかもしれない…!!!帰ったら泣いてたりしたら…俺は…!!! 心配でしょうがなかったので、報告書の作成をさっさと部下に押し付け、全力でうちに帰った。 「ただいまー!遅くなってごめんなさい!すぐにご飯つくりますけど、もう食べちゃった…」 …何故か部屋が暗い。しかも居間の方にイルカ先生の気配がするのに、いつもみたいに迎えに来てくれない。 「うっぅっ…ぐすっ」 慌てて駆け込んだ真っ暗な居間で、イルカ先生が座り込んでいる…。漏れ聞こえる呼吸は途切れ途切れで、嗚咽交じり…。 どうして…?!イルカ先生が…泣いている…?! 「イルカ先生!誰に何されたんですか?!またあのジジイの仕業ですか?!」 やっぱりお腹減ってるのか…それとも…俺が遅かったからか?いや!もしかするとやっぱり不埒な輩が…?! 大慌てで涙を流しているイルカ先生を抱き起こし、問い詰めた。が、帰ってきた返事は… 「え?あ!おかえりなさい!!!」 というのんきなものだった。 …どうやら別に何かあったわけではなさそうだ。確認のために、イルカ先生の身体をさりげなく触りまくったが、怪我などもない。いつも通り最高のさわり心地だ。 「…どうしたんですか一体…?」 不思議に思ってそう聞くと、イルカ先生が得意げに見せてくれた。 「コレ。同僚から借りたDVD…今一番のお勧めを見てて…そうだ!結構まだ最初の方だから、今から一緒に!」 「でもその前にご飯…」 それにイルカ先生はそういうけど、明らかにクライマックスだから泣いてるように見えるし、時間表示からしてもおそらくそろそろエンディングだろう。 コレはきっと…一緒に見たいって思ってくれたに違いない!…それならもちろん嬉しいに決まってる! でも…俺はそれよりも今すぐ輝く涙が美しいイルカ先生を別の意味で鳴かせたいです!!! …すっかりいろんな部分に血が上った俺だったが、イルカ先生が更にダメ押しをしてくれた。 「あ、だったらそこに俺が作ったチャーハンの残りあっためて食べればいいから!」 イルカ先生は、輝く笑顔でラップをかけた皿を持ってきてくれた。ちょっと大味そうだけど、おいしそうだ! 「あ、ありがとうございます!!!」 イルカ先生の手料理が食べられるなんて…!!!嬉しすぎて別のものを食べたくなったが、最近イルカ先生が俺の手料理があるのに、 自分でご飯作ってくれるようになったんだけど、ひょっとして俺の料理に飽きたのか…?! …よし。今週はイルカ先生を満足させるべく、多国籍料理とかちょっと変わったのにも挑戦してみよう!!! ちょっと悲しい現実に直面したおかげで冷静になれたので、イルカ先生の好きそうな料理を研究する事を決め、イルカ先生があっためてくれた チャーハンを食べることにした。 食い終わってから今後の戦略を考えよう…。 ***** よめと一緒に映画…!!!ちょっとドキドキだ!!! 昔からよめさんができたら、一緒に映画館にいって、暗い中で一緒に感動モノとかを見て、ちょっと手なんかもにぎっちゃったりして、後でご飯食べながら 感想を言い合ったりしかったんだ!!!あと、怖い映画だったらキャーとか言われたり…! …これはうちのよめじゃ無理かもしれないが、映画の感想をいったり、一緒に見たりはできるはずだ! よめが異常に有名で、なおかつ忙しすぎるので、一緒に映画館は厳しいが今日のようにレンタルなら大丈夫だ!!! もっと早く気付けばよかったな…。そしたらもっと色んな映画を一緒に見られたのに。 「イルカ先生…」 「さ、これでいいかな!見ましょうか!」 よめに俺が作ったチャーハンを食べてもらってる間に、しっかり映画鑑賞セットを用意した!どうせなら映画館じゃ出来ないことをしようと、 ちょっと行儀悪いけど、布団を敷いてクッション代わりの座布団も積んでおいた。コレでねっころがってごろごろしながら映画を楽しめる! 勿論お菓子も持ってきた。よめは甘いものが苦手なので、せんべいにしてみたが、どうだろう?あと飲み物はほうじ茶を入れた。 せんべいにはやっぱりほうじ茶が一番だ! 「あ、いいですね!この感じ!!!」 よめもかわいく喜んでくれている! …よし!今日はココで映画鑑賞デートだ!!! ***** 一生懸命何かやっているイルカ先生にそそられるものを感じ、ちょっとそわそわしながらチャーハンを味わった。 …ついでに今日のイルカ先生の味わい方も検討した。 …どうやらイルカ先生は布団を敷いてくれているし、クッション代わりの座布団もある!これはもう、ココでイルカ先生を美味しく頂けということに 間違いない!!!映画の内容次第では、雰囲気が盛り上がってきたところを狙ってもいいかもしれないな!あとは…さりげなく抱き寄せて…若しくは 怖がってるフリでもして抱きついてそのままとか…!夢は膨らむばかりだ!!! 「こっちこっち!」 俺が今後の展開を計画してひっそりにやけていると、イルカ先生がかわいく俺の手を引いて、コロンと横になった。 …イルカ先生…もう食っちゃってもいいですか?!いいですよね!!! 「…イルカせんせ…」 「そうだ!コレ、最初からにしないと!」 さっと抱き寄せようとした俺を交わし、ちょっとお行儀悪く、プレイヤーに四つんばいで這って行くイルカ先生。…もちろん俺におしりを向けてだ。 …そんなに俺に襲われたいんですか?!もうすっかり準備万端ですよ?! 思わず背後から気配を消して近づいてしまったが、振り返ったイルカ先生があんまりにも楽しそうだったので、機会を逸した。 「さ、見よう!!!」 イルカ先生がまた布団に戻ってきてコロンと横になった。しかも固まる俺の手を引っぱったので、俺はイルカ先生に覆いかぶさってしまった。 俺の下にはかわいく微笑むイルカ先生が…! 「ほら!カカシも!」 なんですか?誘ってますか!ソノ天然ぶりは俺には…!!! 「絶対楽しいから!」 勢いに乗ってこのまま…と思いつめた俺だったが、イルカ先生の期待に満ちた瞳でちょっと我に返った。 …やっぱり途中まで見たんですね…。そして楽しみにしてるんですね…。 覆いかぶさった身体を気合で横にずらし、何とか自分の理性を勝利に導くことに成功した。 まだ…まだだ…!!!もっとイルカ先生が最後まで映画を見て、十分に盛り上がってからが勝負だ!!!我慢だ俺!!! 「楽しみですね…!」 いろんな意味で! …最後までもってくれ…俺の理性…!!! ***** 俺は今、かわいいよめを抱っこして映画を見ている…。コレは!もしかして今までで一番雰囲気あるデートなんじゃないだろうか?! 俺たちが今見ているのは恋愛感動大作だから、ちょっと…その、アレだ。そんなシーンもあるが、よめと一緒なら楽しめるに違いない。 …ちょっとよめのタガが外れる可能性もあるが。 とにかく!途中まで見ていたが、紆余曲折を経て今まで単なるの同僚同士だった2人が、困難をともに乗り越える内に恋人になるというストーリーだ! 途中ライバルが登場したり、相手が怪我をしたりとちょっとドキドキ時々ぽろりで、盛り上がること請け合いの感動大作。 今もよめがライバル登場にドキドキしているのか、早まった鼓動が伝わってくる。 「…大丈夫!これから…」 って!コレ言っちゃったら詰まんなくなるな…。危ない危ない!よめがあんまりにもドキドキしているから、安心させてあげたくなってしまった。 …これはむしろ抱きしめてあげるべきだよな…でも、もうちょっとでライバルのウソがばれて誤解が解けるシーンだから、集中させてあげた方が… 中途半端に伸ばした手をそっと下ろしたら、なぜかよめがホッと息をついた。…よめは頭がいいから、さっきの伏線に気付いたのか!流石うちのよめだ!!! 俺は二度目だからわかったが、最初はこの辺りではまだドキドキしていたのだ。 嬉しくて映画を見ながらニコニコしている間に、誤解が解けた二人が、ついに…! さっきもココで泣いちゃったんだよなぁ…。昔から俺は感動モノに弱くて、ついつい泣いてしまう。今も涙がこぼれそうになってるのが自分で分かる。 それにしてもよめの呼吸が荒いな。…感動しすぎて泣きそうなのに、我慢してるのかもしれない。 …ちょうど画面の中の恋人たちもイチャイチャしだしたことだし、ここらでそっとよめを抱きしめてもいいよな!ちょっと泣いちゃってるのがばれそう で恥ずかしいが、ここは夫の俺が、よめにも我慢しないで泣いてもイイんだと言うべきだろう!!! 「…ほら、大丈夫!!!」 よめを慰めるべく、そっと抱きしめようとしたが、…視界が反転した。 ***** イルカ先生が側に寝ころがっている…それだけでもすっかりヤル気になってしまうのに、背中からぴったりくっ付いて、しかもさっきは俺の事を抱きしめよう と…!イルカ先生がためらってくれたおかげで、何とか我慢できたが…危険すぎる!!! 興奮しすぎて映画の内容はあまり頭に入ってこなかったが、イルカ先生の匂いとか体温とか鼓動とか…あとキラキラ光る涙とか…そんなものばかりが 俺の脳裏に焼きついた。 相当我慢している間に、気がつけばテレビの中では恋人たちがいちゃいちゃの真っ最中だった。 …我慢しすぎて、ヒロインをついついイルカ先生に当てはめてしまう。オフィスの中でいちゃいちゃなんて…!!! イルカ先生なら…深夜の受付所とかで…いや!いっそのこと空き教室とか…!!! だんだんそんなイルカ先生とのめくるめく想像に息が荒くなるのが自分で分かる。すっかり臨戦態勢になってしまった自分が悲しくて、涙が出そうだ。 …それなのに…イルカ先生が俺のことを抱きしめて… もう我慢できない!!! なにしろ…俺の下に、桃色ほっぺで涙目という非常に美味しそうな状態のイルカ先生がいるのだ!!! …気がついたらテレビ画面は真っ黒で、イルカ先生は真っ赤な顔で色っぽい声で鳴いてて…すっかりタガが外れた俺は、予定通りイルカ先生をかわいらしく 鳴かせることに集中した。 ***** まあ何だかよくわからないが、よめが興奮して俺も感動していたので、何だか盛り上がってしまった。多分映画に感動しすぎて俺がよめにくっ付きたく なったように、よめも俺にくっ付きたくなったんだろう。 気がついたら布団はぐちゃぐちゃだし、テレビ画面は真っ黒だった…。 ぐったりしていたら、よめがいそいそと俺を風呂に抱き上げて連れて行ってくれて、更にそこでも色々されてしまった。 映画で感動しすぎたらしく、風呂場でも主人公がライバルのウソでピンチに陥ったシーンでも思い出したのか、「俺はイルカ先生がいないと生きていけない…!」などと言いながら、 それはもう一生懸命になって頑張ってくれた。 …俺の腰がガタガタになるくらいに。 …結果、俺は明日の出勤が危ぶまれる事態になったが、不安そうに俺に抱きついてくるよめもかわいかったし、涙目のよめがそれはもうかわいかった!!!ので、 今度また一緒に映画を見たいと思う。 「イルカ先生…大丈夫ですか?ごめんなさい…!!!」 よめが俺と一緒に寝ているベッドから身体を起し、ぎゅっと抱きついてきた。 よめが落ち込んでいる!!!早く慰めないと!!!俺は不安そうにしがみ付いてくるよめを、しっかりと抱きしめた。 「大丈夫。楽しかったから、また映画見たい!」 結末は見損なったというか…それ所ではなくなったが、よめと一緒に映画を見ると、くっ付いていられるのがいい。今度は並んで座って、 よめのかわいらしい顔を眺めるのもいいかもしれない!でも、よめはどうだったのかな…? 心配になってよめの顔を覗き込んだ。 「…映画、また見ましょうね!!!」 きれいな笑顔…どうやらよめも楽しめたようだ!!! 「今度は俺も借りてきますね?」 そういって今度は俺をやわらかく抱きしめてくれた。 「うん…。」 温かいなぁ…だんだん眠くなってきた…。 「おやすみなさい…。」 「おやすみ…。」 ちょっと予想とは違った楽しみ方になったが、かわいらしいよめとの映画鑑賞は思い出に残るものになった。 …今度はもうちょっと笑えるのとかにして、休みの前日に見ることにしよう。 うちのよめはやっぱりかわいいな…そう思いながら、俺はゆっくりと目蓋を閉じた。 ********************************************************************************* 涙祭第3弾!!!こそっと増量中!!! 映画でイチャイチャを目指して中途半端という…出来は常にアレです…。 まだまだ頭が煮え立っております…。 お祭や、コレに対するご意見・ご感想は、適当に拍手などから受付中です。 お気軽にどうぞ…。 |