なんなんだ?!イルカが泣いてるどうしよう?

「…うっ…ぐすっ…」
「?どうした…?って!」
今日も元気一杯に暴走しているイルカの相手をして、さっきやっとこさ一緒に布団に入ったばっかりだったんだが…。
いつもは寝つきのいいイルカが、今日に限って様子がおかしい。
…そっと覗いてみたら、なんか泣きながら寝てる!
「おい…!どっか痛いのか?!」
慌てて抱き起こして聞いたが、全く起きる気配が無い。だが揺さぶったせいで、イルカの涙が頬を伝って流れていった。
…意外に長いまつげに涙が光っている。今は閉じられている瞳から、後から後から涙が零れ落ちてくる。いつもの傍若無人な感じじゃなく、 ホントに悲しそうだ…。
それに…キレイだ。
おっさんは今日任務でいないので、俺とイルカは今二人っきり…。
…ちょっと待て俺!今何考えた!冷静になれ!!!
…そうか、この頃こいつの相手で全然そういうことしてないからだな!
って…俺は暗部でちゃんとそういうのできるはずなんだが…っていうか今までは出来てた!
…深く考えるな!コレはイルカだ!俺に首輪を嵌めようとしたり、変な服を着せようとしたり、俺の口に肉をねじ込んだり、パックンをノイローゼにしたり、 毛生え薬をかってに俺の服にぬったくったりした!!!
…今思い返すとホントにとんでもないな。コイツ。ちょっと冷静になれた。
「…とおちゃん…」
俺が一人でパニックになって冷静になっていたら、イルカが泣きながら小さい声でそう言った。
そうか…コイツはまだまだ小さいのに一人なんだよな。ま、俺もなんだけど。コイツは普通…じゃないが…まあその、いわゆる子どもだしな。
俺と違って…父親がまだまだ恋しいのかもしれない。
「イルカ。…」
そっと涙を指で掬い取り、額をなでてやった。本当は起こした方がいいのかもしれないが、夢でしか会えないんだからちょっと様子を見よう。
「と、…ちゃん…うぅ…」
「大丈夫だイルカ。お前のとおちゃんはいないけど、俺がいてやるから。」
しんみりしながらそういったら、イルカが急に大声を出した。
「とおちゃんの馬鹿!…」
流石に驚いたが、ひょっとして死に別れる直前に、父親と会ったのかもしれない。それで、止めたけど行ってしまったのかも…。
…俺と同じに。
「イルカ…!」
俺がイルカを慰めてやるべく手を伸ばしたが、結局イルカに届く前に止まった。
「とおちゃんの馬鹿!もう知らないからな!…勝手に俺のアイス食って!!!」
なんて言うイルカに脱力したからだ。
…イルカ…お前ホント食い気ばっかりだな…。心配して損した…。
「悪いことしたとおちゃんなんか、後で母ちゃんに吊るしてもらっちゃうから!!!!!」
吊るす?今なんか不穏な単語を聞いたような…?コレははっきりさせておかないと!!!
「イルカ!!!起きろ!!!」
「え?アレ?とおちゃんは?」
イルカはきょろきょろと辺りを見回している。まだ瞳がぼんやりしているから、多分、目は完全に覚めていないんだろう。
「…寝ぼけてんだよお前。もう寝ろ。」
頭をなでてやったら、イルカがちょっと正気づいたようだ。
「そっか。…夢か…。そうだよな…。」
単にまた食い物関係の夢を見たからだろうと思ったら、イルカは思いのほか寂しそうにしている。
…やっぱり父親の夢を見るってことは内心つらいんだろうな…。
「さ、もう寝なさい。」
「うん。…あのさ。」
「どうした?」
「カカシのとおちゃんってどんな人だった?」
イルカは何の気なしに聞いてるってわかってるけど…どうするかな…。
「そうね…俺にそっくりだったよ。見た目がね。」
「そっか…会ってみたいな…。」
「もういないんだ。話は明日でいいだろ。もう寝なさい…。」
「うん…。」
イルカは眠いらしくて、もそもそ俺に引っ付いて瞳を閉じた。
俺の父親。強くて弱かった人。
俺はあの人の夢をみない。あの時の、もうモノに変わった姿以外では。
…やっぱり…会いたくないのかもな。俺たちは薄情者同士だから。
あの人は俺を置いていって、俺はあの人を止められなかった。どっちも自分勝手で薄情だ。そっくりって言われるのは大嫌いだったけど、 案外的を得ているのかもしれない。…何だかくだらなすぎて笑えてきた。
…こんなこと…今更だな。
「カカシ…カカシも寝よう…?」
寝ぼけ眼のイルカがそういって頭をなでてくる。小さい手が結構温かい。それにぎゅうぎゅう抱き疲れると、何だか考えるのが馬鹿らしくなってくる。
そうだな…俺も、寝よう。
「うん。寝ような。イルカ…。」
いつもならあの人のことを思い出すと眠れなくなるけど、イルカの高い体温があるから今なら眠れそう。きっと皮膚から能天気成分とかだしてるんだ…。
瞳を閉じて、温かいイルカを抱きしめる。…なんかもう嫌な夢は見ないで済みそうだ。
*****
昨日は何か変な夢を見たんだけど、とおちゃんと会えた。
で、起きたらカカシが変な顔してて、その後もっと変な顔になったけど、眠かったのでなでて寝かしつけてみた。
なんか珍しくカカシの方から抱きついてきたから、寂しかったのかも…。
最近カカシもなでてるけど、犬友たちの方もなでてるから、きっと嫉妬とかしちゃったのかもしれない。 これからは気をつけてやらないとな!!!手始めに今日は一杯なでてやろう!!!
「カカシ!今日の朝飯は豚の角煮と、わかめの味噌汁に、ひじきの煮物だぜ!!!あとおひたし!!!」
最近得た知識によると、ひじきとかわかめとかの海草は髪の毛にいいらしい。すね毛にも効くかもしれないので、絶賛増量中だ!!!もちろん肉もな!!!
「あのさ…この海草攻めは何…?一応言っとくけど、海草食うと髪の毛が伸びるって言うけど、あれウソだから。」
「えええええー!!!!!!!」
近所のおばあちゃん(いっつも自分ちで取れる果物とかくれるいい人だ!)から聞いた確かな情報だったのに…!!!
「あーお年寄りとか未だに信じてる人いるけどね…。ま、美味いからいいけど。…ソレよりすね毛とかは別に努力して伸ばそうとしてないから! それ以外に大事なことがあるだろ?」
毛に効かないって聞いてショックだったけど、それよりなにより、何だか今日のカカシはちょっとテンションが低い…。
いつもならこの辺で吼え始めるはずなのに…。心配だ!!!
「なあカカシ!この肉食え!!!」
アスマ兄ちゃんから貰った、美味い高級ばら肉だぜ!!!しっかり煮込んで味も染みてるし、やわらかく仕上げた!でも朝飯だから、 黒酢使ってさっぱり風味だ!!!
コレ食ったら元気モリモリになるはずだ!!!
「むぐっ!…ああ…どうしてこんなに美味いんだろうな…?」
「おお!美味いか!!!じゃ、もっと食え!!!」
カカシは肉をちゃんと味わえるみたいなので、がんがんねじ込んでやった。合間合間にひじきやらお浸しやらも突っ込むのを忘れない。
「んぐっ!ちょっと待て!!!自分で食うっていつも言ってんだろうが!!!」
あ!良かった!元気出たみたいだ!!!やっぱ肉は効くなぁ!!!
「そうかそうか!じゃ、どんどん食え!!!」
やっぱりモリモリ元気一杯に食ってる生き物はいいな!!!
「やっぱ昨日のは気の迷いだな…。」
カカシが何かつぶやいてたけど、気にせずどんどん食わせてやった。
*****
今日もあわただしく飯を食わされ、でも結構美味いのでいつものことだがちょっとショックをうけ、今はイルカがいそいそと後片付けをしているところだ。
俺もイルカも今日は任務もないし、手伝ってもいいんだが、イルカに断られた。
…しかも何だか今日はやたらとイルカが俺を撫で繰り回すから、やっぱり寂しかったんだろうか…?甲斐甲斐しく世話を焼くイルカは、いつもよりなんか テンションが高い気がする。
…またなんかたくらんでるんだろうか…。
「カカシー!!!片付け終わったぜ!!!遊ぼう!!!」
「あーそうね。でも今日は修行するんじゃなかったっけ?」
何だか異常に高いテンションのイルカが、俺にくっ付いてガタガタ揺すってきた。約束のことも忘れてるっぽいし。やっぱ何かあったに違いない!
「人生にはゆとりも必要だぞ?今日はたっくさん撫でてやるからな!!!」
「いらん!!!」
ただ単に遊びたいだけか…!!!しかも別に撫でて欲しいわけじゃない!昨日は…ちょっと弱ってただけだ!気の迷いだ!!!
「ふさふさつやつやだなー!!!」
「相変わらず人の話聞かないな。おまえは…。」
そして好き勝手に俺の頭をモサモサとかき回している。こうなったらイルカは飽きるまでなで続けるから、諦めるか…。
「…そうだ!」
「…なんなのよ?」
俺が今日はイルカに撫で回されると覚悟を決めた途端、イルカが何かを思いついたようだ。…何かまたとんでもないことじゃないだろうな…?
「今日は犬友なしで、キャッチボールとかしような!!!」
「…なんでもいいけどね…。」
思ったよりまともな内容だ。…父親代わりもたまにはイイか。コレも更生の第一歩になるかもしれないし。
「じゃ、行きますか。」
「おう!今日は遊び倒そうぜ!!!」 一緒に庭でキャッチボールか…結婚もしてないのにもうすっかり子持ち気分だな…。
*****
庭に出て、俺の持ってきた犬友用ボールを見てカカシが吼えて、俺の取って来いにも吼えて、犬用ジャーキーにも吼えた。
…なんでかなぁ?でも元気になったみたいだから良かった!!!やっぱ肉は偉大だな!!!
「カカシー!!!次何する?」
「ああああああ…!怒鳴ってただけでこんなに時間が!…ぅううう…!」
なんだ?カカシが何かおかしいな?それにしても、さっきから頭下げてるから良く見えるけど、やっぱりこんなにふさふさなのはなかなかいないよな!
あ、でも…。
「なあ、カカシってとおちゃんそっくりなんだってな!」
「あー。まあね…。」
そうか!昨日半分寝ながら聞いてたけど、そっくりなふさふさ…ってことは、カカシの家族はみんなふさふさだったのかな?
あ、でもじいちゃんはちっこいけど、アスマ兄ちゃんはでっかいからわかんないか。
「…ところでイルカはどっち似なのよ?」
俺がふさふさのルーツを思索していると、カカシが何だか不安そうに聞いてきた。どうしたのかな?やっぱアレかな!舞台俳優的興味とか!!! カカシのためならいつでも全開で協力するぜ!!!
「俺?俺はー、とおちゃんにそっくりだってよく言われる!」
元気一杯答えてやったけど、何だかまだまだ足りなかったみたい。
「あー、参考までに聞くが…どんな人だったのよ?」
そうかそうか、いろいろ知らないといい演技はできないんだな!きっと!流石は超一流天才演技派俳優だぜ!!!
「良く吊るされてた!かあちゃん強かったからな!!!」
その期待に応えるべく、力いっぱい分かりやすく答えてやった!
我ながら簡潔にまとめられてるぜ!!!いい答えだな!!!
「…そうか、…家庭環境にも問題があったのか…。」
おお!何だか悩んでる?それとも思索に耽ってるだけかな?…どうしよう?
ま、…取り合えず聞いてみるか!!!さりげなく!な!!!
「なんか言った?カカシ?」
「いや…。」
何だか顔色が悪いし、元気が無い…。今朝もこんなだったような…?あの時はどうしたんだっけ?
「あ!そうか!腹減ったのか?今すぐ作ってやるからな!!!」
そうだったそうだった!カカシは腹減るといつもは吼えるんだけど、今日みたいに元気がなくなることもあるんだな!!!勉強になったぜ!!!
「うん…。って違―う!!!」
何だかカカシが吼え出したし、コレは間違いなく空腹が原因だ!!!急いで何か与えないと!!!
「吼えるな吼えるな!!!美味いのがすぐできるから!!!」
急いでカカシを引っ張りながら、今日の昼飯の段取りを考える。
今朝途中まで仕込みしといてよかったな!!!今日の昼飯は牛肉たっぷりハンバーグに、さっぱり野菜スープに、ポテトサラダと牛乳ゼリーフルーツのせだぜ!!! 帰って焼くだけすぐできる!!!フルーツは出すとき切ってのせればいいしな!!!
「…もう、勝手にしてくれ…。」
俺はすっかり元気をなくしたカカシに急いで飯を食わせるべく、さっさと家へと引きずり込んだのだった。

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涙祭第2弾!!!取り合えず増量中!!!
…出来いつも通りはアレです…。
頭の煮え立ったアホを生ぬるく見守ってください…。
お祭や、コレに対するご意見・ご感想は、適当に拍手などから受付中です。
お気軽にどうぞ…。

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