涙(いじめっ子編)

涙。がテーマでいッちょイこうぜ!!!な第一弾 いじめっ子でGO!!! をひっそりお送りします…。


イルカが泣いている。一応中忍なのに、さっきからずっとぽろぽろ涙をこぼしている。ときどきぐすぐすいってるのは鼻水でもすすってるんだろうか?
「…何で泣くのよ。」
疑問に思ったことを聞いただけなのに、イルカは涙でぐちゃぐちゃの顔で怒鳴った。
「アンタなぁ!!!」
そういってベッドに横たわった俺の腹から頭を上げたイルカの顔は真っ赤だった。忍服の袖で顔を拭ったんだろう。鼻の頭は赤くなってるし、 目も真っ赤だ。真っ黒い瞳が、涙で潤んで光っている。
「たかが怪我くらいでしょ?そんなもんで泣くの?」
そうこの程度の怪我なら別に死ぬことは無い。よくあることだ。今までだって何回もこうやって病院で目を覚ましたし、もっと酷かったときもある。
…目が覚めてすぐそこに護衛以外の人間がいたのは初めてかもしれないが。
「あったり前でしょうが!」
鼻をぐすぐす言わせながら、イルカは俺の顔を睨んでくる。この顔は好きだな。泣いてる顔も良かったけど、怒ってるときの強い瞳がイイ。 それに意志の強そうなその表情も。
もちろん快感に蕩けた顔も好きだ。俺がイルカにそういう顔させてると思うとぞくぞくする。
「へえ。」
それにしても…起き抜けにそんな瞳でみられると、ソノ気になる。このままでは押さえが利かなくなりそうだ。ついつい手を伸ばしてぼさぼさになっている 髪を触ろうとしたら、怒ったイルカに叩き落された。
「…っ!なんでアンタそんなへらへらしてんだよ!…くっそ!こっちが心配してるってのに!!!」
泣きながら怒るイルカ。こういう馬鹿なところも好きだ。忍のくせに甘くてやたらと頑固で一生懸命で…。今でもイルカを閉じ込めて自分だけを見るようにしたい と思う。
イルカがあんなことを言い出さなかったら、きっとずっとあのまま閉じ込めておいただろう。今だって勝手に他の連中に笑ったりするたびに閉じ込めたくなる。
いつも俺の匂いをつけて、俺のものだと確かめたくなる。
でも…こうやって外に出しておいても、俺のことだけを見て、俺のためだけに泣く姿を見られるんなら、我慢できるかもしれない。
「なんで怒ってるかわかんないんだけど。ソノ顔はいいね。」
泣きながら怒って、その強い視線が俺だけに向けられている。それだけで電撃が走ったみたいに感じる。それに…布団ごしにも体温が伝わってきてるってことは、 多分結構長い間、寝ている俺に寄りかかってたんだろう。イルカからくっ付いてくるなんて珍しい。
「馬鹿ですか!アンタがこんな大怪我なんかするから!目、覚まさないし…。何日寝てたと思ってるんですか…。少しは塩らしいフリくらいしろってんだ…! 大体簡単に怪我するようなヤツとは一緒にいられねぇっていっただろ…!!!」
イルカが本気で怒ってるのがわかる。
…気持ちイイ。
イルカの頭の中は、今俺のことでいっぱいなんだと思うとこのままずっと怒らせたくなる。
ま、それだと色々困るんだけど。ここらで話を変えようか。
「うーん…。それより、帰ってきたんだからさ。」
大体塩らしいフリなんて…無理だな。イルカがイイ顔するから、ついにやけちゃうんだけど。それにまだ、イルカから聞いてないし。
「帰ってきたほうが先にいうもんです!」
口調はキツイままだけど、…雰囲気がやわらかくなった。うん。この顔もいいな。
「ただいま…。」
俺がイルカの頭を抱きしめながら言うと、イルカもぎゅっと抱きついてきた。
「おかえりなさい。…帰ったら常識ってもんを教えてやりますから、さっさと治すんですよ!」
そういって笑いながら俺の頭を叩くイルカはすっかりいつも通りで…ちょっともったいなかったか。
「で、いつまでかかりそうなの?」
「…あと2週間。自分で分かってんでしょうが…」
まあそんなとこだろうな。結構深かったし。
「…おあずけかぁ…」
怪我はどうでもいいけど、イルカに触れないのは困る。
「…アンタなぁ…。」
イルカはあきれてるけど、イルカに触れないんならこんなところにいられるわけが無い。昔はちょっと位放り込まれてても平気だったけど、 イルカがどっかで他のヤツと一緒にいるのかと思うと多分きっと耐えられない。
「ねぇ。毎日来てくれなかったらここから逃げるから。あと、帰ったらいちゃいちゃしよう?」
しょうがないからイルカに来てもらおう。毎日来てくれるんなら我慢できるかも。
「馬鹿か!怪我が悪化するだろうが!!!」
「イルカが毎日来ればいいだけのことでしょ?」
大体2週間もこんなところにいるつもりはないんだよね。いつも期間の半分くらいで抜け出してたし。イルカのうちに早く帰りたいから、3日くらいいれば いいかな。流石に今抜け出してもやらせてくれないだろうし。
「はぁ…来ますけどね。遅くなっても文句言わないように!」
いやそうにため息をつくイルカにダメ押しをしておく。
「いいよ。いつでも。でもあんまり遅いと迎えに行くかもね?」
コレは本気。まあイルカのことだから、気にしてるのは仕事関係だろうけど。
…誰かに誘われてフラフラついてっちゃってるかもしれないと思ったら、じっとしてんの無理だし。
「来るな!あんたどうしてそんなに馬鹿なんですか!」
「アンタから俺の匂いがしないのがイヤなんだよね。でもココでヤったら怒るでしょ?」
大体こんな怪我したのだって早く帰りたかったからだしね。ちょっとしくじったけど、予定の1/4位だったはず。入院期間入れてもこっちの方が早い。
「当たり前だ!その前にアンタ怪我人でしょうが!何馬鹿言ってんだ!!!」
「じゃ、約束ね。」
「今回はいいです。でも…いいですか!次、無茶して怪我したら、俺は!絶対に見舞いに来ません!」
「…なにそれ。」
ソレは無理だ。忍が怪我しないなんてよっぽど格差のある相手なら別だけど絶対はありえない。
「…ソレがいやなら怪我しないで帰ってきなさい!!!わかりましたね!!!」
「できるだけはね。」
「素直に返事しろよ!あんまり心配かけるとアンタんちから出てくからな!!!」
「あー…はいはい。でもそれはなし。」
そんなことするんなら今度こそ閉じ込める。
「返事は一回だ!」
ちょっと殺気出てたと思うんだけど、…イルカはこうなっちゃうと止まらないからな。
「でもさ、任務で怪我しないのは無理でしょ?」
「無茶するなっていってんだよ!アンタ相当馬鹿な真似したでしょう!」
「そう…かな?」
コレくらいいつものことだし。
「そうなんですよ!大体何一人で突っ走ってるんですか!部隊長の癖に、一人で先に戦闘始めるなんてありえないでしょう!同じ隊の人がどれだけ迷惑したと!」
「なにそれ。誰がそんなこと言ったの?」
…まだイルカに余計なこと言ったヤツ、締め上げるくらいのチャクラは残ってる。
「誰も言ってないですよ!…むしろアンタのこと自分のせいだって心配して憔悴してました…。慌ててアンタ追っかけて、そのせいでちょっとミスして、 それをアンタが庇っただけですけどね!…ちょっと頭に血が上った馬鹿が先走っただけだからっていっときましたよ!!!」
「…そうかもね。」
イルカならそう言いそうだ。…一応俺の隊だし、一応他にけが人いなかったけど。
「かばうなとはいいません!アンタにはそれができるだけの力がある。でも、アンタのせいで無駄に怪我人が出たんですよ。」
「でも怪我したの、俺だけじゃない。」
折角イルカが側にいるのに、こんな話よりやりたいことが…
「怪我すんなって俺は言ったはずです!!!」
「…ごめんなさい。」
話。早く終わらないかな。
「アンタ…ちゃんとわかってんのか?」
「分かってる。でもアンタいつまでここにいられるの?」
まだ時間ありそうならもうちょっと色々したい。
「…今日も泊まるつもりだったけど、あんたがそんな態度ならもう帰ります!」
「…それは駄目。」
イルカが本気なのは分かったけど、それは許せない。
「殺気なんか出しても無駄ですよ。…俺はそんなもん怖くない。」
「でも、駄目。」
そういってイルカの腕を掴んだら、力いっぱい振り払われて、怒鳴られた。
「いい加減にしろ!他の人の迷惑です!…いい加減な返事しないなら泊まってあげます!」
「分かった。もう怪我しない。それでいいでしょ?」
これ以上怒らせたら多分本気でイルカはココからいなくなってしまう。…それなら適当に納得してもらっといた方がいい。
「…退院したら一発殴らせろ。それでチャラにしてやる!」
イルカがそのまま立ち上がったので、今度は身体ごと捕まえた。
「どこ行くの…?」
逃げるつもりなら、このままイルカを連れて俺の家に帰ろうか。家に帰ったら結界をはって… 「落ち着けって!布団だけ借りられればいいっていったら、隣にベッド入れてくれたんですよ!」
抱きしめたイルカが胸元で暴れている。逃げる気はないみたいだけど、立ったらなおさら離れる意味が分からない。
「…いいじゃん。同じベッドで。」
当然、そうするつもりだったんだけど。
「けが人は黙れ。…ああ、それと、かってに退院しないように見張ってくれって言われてますから。」
今度はイルカの方が胸倉を掴んで、そう言った。 「なにそれ!」
2週間もここにいたら、イルカとなんにもできないじゃない!
「いいですね。抜け出したりしたら…」
「分かった。でも入院してる間はここに泊まってよね。」
せめてそれくらいしてもらわないと!
「意識戻ったんだからもういいでしょう…。」
「なら今すぐ出てく。で、アンタも一緒に俺んちに閉じ込める。」
こっちの方が俺も安心だ。…だってイルカももう俺のコト好きなはずだし、俺はイルカがいないと生きていけないんだから、一緒にいる方が 幸せに決まってると思うんだけど。
「ふざけんな!!!」
イルカがまた顔を真っ赤にしている。…どうしてココは病院なんだろう。ここじゃなければ、さっさとイルカといちゃいちゃできるのに。
「ねぇ…ごほうび、ちょうだいよ。俺頑張ったんだけど。」
イルカがいないなら、もうココにいる意味は無い。どうしても言い張るんなら俺も勝手にする。
「あーもう。しょうがねぇな…いいですか。変なことはしないように!」
「変なことはしない。ちょっとイチャイチャするだけでしょ。」
いつも気持ちよくしかしてないし、ちょっと位なら病院だって気にしないだろう。
「…アホですか…。」
「そのために早く帰ってきたんだし。」
いくらあきれられても、コレは譲れない。
こんな怪我位でどうにかなるほど柔じゃない。そんなことより、側にイルカがいないことの方が問題だ。
「分かりました。今後怪我して帰ってきたら完治するまでそういうのなしにします。」
「え!!!なにそれ!アンタだってたまるでしょ?!」
イルカだって嫌いじゃないくせに!
「…無駄に絶倫が下らんこと言うな。…分かったかって聞いてるんだよ!」
今度は怒りじゃない理由で真っ赤になったイルカが、可愛い顔をしていたので、ちょっとだけ譲歩してやる。
「分かった…。でも今回はご褒美、ちょうだい?」
「…今回だけです。次はないですから!」
テレながら怒ってるイルカにやっと口づけだけ許してもらった。
…ヤッちゃってもいいけど、無理ヤリは出来ない。…たまった分は、ココを出てから覚悟しといてもらおう。
その後もイルカに説教されて、一緒に寝ようっていってるのにイルカがどうしても許してくれないので、…今日の所は別のベッドで寝ることになった。
ちょっとイライラしたんだが、隣のベッドにイルカがいっちゃってからしばらくして、
「あーもうなんでほだされちゃうかなぁ…。」
なんて呟きを聞けた。
…逆に我慢が出来なくなりそう…。

*****
「ただいま。怪我してないよ。ご褒美。」
「何でアンタそんなに態度デカイんですか…」
アレからイルカはホントに全然、指一本触らせてくれなかった。躾だ!とか言って…。
イルカが怒った顔も好きだが、触れないなら話は別だ。…最近は出来るだけ怪我をしないようにしている。
で、当然の権利として、イルカからご褒美をせしめている。こっち方が、絶対に得だと言うことに気づいてからは、毎回ほぼ無傷だ。
今回のご褒美はどうしようかな…。
「お帰りなさい。でも…ご褒美を要求する前に、さっさと風呂入って来なさい!」
「そんなのどうでもいいじゃない。ご・ほ・う・び。ちょうだい?」
いつもの様に台所で料理中のイルカに抱きつく。うなじに首をうずめて頭を擦り付けて、次はそろそろ…と思ったところで止められた。
「あーもー!アンタ相変わらず犬みたいだな!…はいコレで我慢!きれいになったらもっと褒めてあげますから!」
イルカが力いっぱい俺の頭をかき回したので、髪がぼさぼさになった。
…子どもじゃないんだけど。でもいいな。こういうのも。イルカに触ってるとあったかくなる。単純に体温が高いんじゃなくて、 チャクラとかでもなくて…目に見えないなんかが出てる気がする。コレがいわゆる…愛ってやつ?
でも今欲しいのはコレじゃない。
「ちょっと。」
またくっ付いて耳を噛んだら本格的に怒られた。
「っ!なにすんですか!今飯作ってるんですよ!見て分かるでしょう!…さっさと風呂!入ってくる!」
追い立てられてしぶしぶながらイルカから離れた。…まだ触り足りない。
「…後で利子も貰うから。」
不満はあったが、これ以上やってまた触れなくなったら…条件付で、不承不承風呂場に向かった。
「ったく!…かわいい顔しやがって!」
風呂場に向かう途中の科白でまた墓穴を掘ってたので、後で煽ってくれた上に我慢させた分の利子はたっぷり頂こう。
閉じ込めてる間は安心だと思ったのに、結局不安だった。今も…不安だ。でも…イルカは俺といてくれると信じられる気がする。
…他所のヤツにかまうのはやっぱり許せないが。
「さーて。なにしてもらおう。」
風呂に浸かりながら、イルカの慌てふためく顔を想像する。
きっといつものようにまるでこれからSランク任務にいくんじゃないかと思うくらいの顔で待ってるだろう。
…ご褒美。しっかり貰わないとね。
俺を変えたのはイルカで、欲しかったのはイルカだけだから、責任とって貰おう。

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取り合えずココまで。 イルカ先生が頑張る編までリクありましたら、くっつけるかもしれません。 が、他の涙祭モノをあげるのが先になっちゃったりするかもです…。

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