部下たちの忍耐力を鍛えるために、いつも通りゆっくりと集合場所に到着しようとしていた時のことだった。自分の部下の元気のいい、だが、非常に重要な情報を含んだ話し声が聞こえたのは。 「そんでさ!イルカ先生ってば慌てて股にティッシュ沢山!」 「なんの話だ!?」 …イルカ先生。 ソレは俺の部下でもあるこいつらの元担任で、笑顔の愛らしい俺のただ一人の人。 階級と性別という大きな壁を乗り越えていずれ必ず手に入れると決めているが、今のところこれは決め手に欠け、攻めあぐねていたところだ。 自分なりに情報は集めている。 だが、なにせ部下を出汁にしても、この時期忙しいらしい俺の愛しい人は中々誘いに乗ってくれない。そして、俺は長いこと里の外にばかりいたから、どうにも里内の常識に疎く、どういったアプローチが適切か良く分からないのだ。 …戦場では勝手に相手からよってきたし、一回寝たらそれで終わり。 でも、イルカ先生に求めているのはそんな関係じゃない。 全てを手に入れて、毎日永遠の愛を誓いたい。 愛読書のように日がな一日いちゃいちゃして過ごすのが理想だ。 まあ、つまり俺は愛しい人の情報に飢えていた。 …自分の部下をつかみ上げて思わず詰問してしまうほどに。 別に股間だけに反応したわけじゃない! 「わあ!?なにすんだってばよ!カカシ先生!」 「ナルト!危ないからかかわらない方がいいわよ!」 「遅刻して来た上にナニ目ぇ血走らせてんだカカシ?」 部下たちは、普段は欠片も協調性を見出せないのにこういう時だけ一致団結して抗議の声を上げてくる。 だが、今はそんなコトに構っていられる余裕はない。 「重要なことだ!…情報をきちんと伝達するのも忍に必要な能力だぞ!」 真剣な顔で適当なことを言うと、ナルトはふん捕まえられているにもかかわらず、キラキラした目を俺に向けた。 …部下の中でも一番騙されやすいなやっぱり。 「ホントか!カカシ先生!あのさ!昨日イルカ先生んちに遊びに行ったら…」 「ポイントを押さえて話すのも重要だ!股間についてもっと詳しく!」 重要なポイントを強調してみただけだったのに、部下たちからは可愛げの無いコメントが返ってきた。 「エロ本ばっかり読んでると思ってたら…やっぱり変態だったのね…。」 「こんな上忍師で…これから大丈夫なのか…?」 だが、俺のもっともらしい話を真に受けたナルトは、一生懸命状況説明をしてくれた。 「だから!慌てて股ティッシュだらけにして!」 「おおおおおおおおお!!!…で、どんな、その手つきって言うか…格好で?」 清純そうなあのイルカ先生がまさか…!?いや、コイツにそういった方面の知識を教えるような人っていえば確かに他に思い当たらないけど!それとも…コイツが覗いたとか…!? そして、更に驚愕の事実がどんどんと…! 「え?もちろん全裸だったってばよ!」 「うおおおおおおおおおおお!!!…で、見たのか?」 「勿論だってばよ!すっげーでかくて黒くてつやつや…」 「なにぃ!?…サイズで負けるなんてことは…!?いや、しかしナルト基準なら…!」 イルカ先生は裸派。そして、デカイ。 確かに風呂場だと後が楽だし!…イルカ先生はそんなところでも工夫するんだなぁ…! 貴重な情報だ!ぜひとも…今すぐ真偽を確かめなくては! 「なあなあ!俺の話どうだった?カカシ先生!」 「…ちょっと用事を思い出した。お前らは頑張って任務をこなすように。サスケ、コレ依頼書。サクラ、ちゃんとコイツら監督してね? 」 部下たちの適正にあわせた指示をだし、全速力で目的地に向かって瞬身をつかった。 …喚く部下たちの声は遠く、俺の心はイルカ先生のことで一杯だった。 「あー!ずりーってばよ!どこ行くんだよカカシ先生!」 「…また草むしりか…。」 「監督しろっていわれても…。」 「風呂場でゴキブリでたってだけであんなに…カカシ先生もゴキブリ嫌いなのか?」 「まあ普通、いきなり天井からおっこってきたら慌てるわよね。」 「ナニ勘違いしたんだか。最悪だな。」 ***** 「イルカ先生!ナルトだけずるいですよ!」 アカデミーで机仕事をしていたイルカ先生を早速捕捉した。 「へ?あれ?カカシ先生?今任務中じゃ…?」 驚き戸惑うその表情さえ俺の心を鷲づかみにするが、こんなに清純そうな顔してすごいことを…!そう思うと、我慢できなかった。 「誤魔化さないで…!俺は…ナルトだけなんて…!」 「ああ、とりあえず落ち着いてください!ナルトがどうかしたんですか?」 言いたいことは上手くまとまらなかったけど、イルカ先生は教師の顔で優しく聞き返してくれたから、俺は言葉を続けた。 「昨日!ナルトが!」 …断片的過ぎて自分でも意味がわからないモノになったけど。 それでも、イルカ先生はすぐに分かってくれた。 「あ!カカシ先生もお好きでしたか!耳が早いなぁ!今晩でもどうぞ!」 「え!好き!?いや、大好きですけど!今すぐ見たいくらい!」 …なんだこの朗らかな笑顔!?昼下がりの学び舎であんなコトについて話してるっていうのにこの爽やかさ…!さすがイルカ先生だ…! 俺は、驚けばいいのか興奮すればいいのか分からなかった。 それでも、イルカ先生は俺の熱意を分かってくれた。 「今はちょっと…仕事中ですし。」 ちょっと困ったような顔で、イルカ先生が手元の書類に視線を落としてるけど…これは、今じゃなければイイってことだ! 「な、ならいつ!?」 どさくさにまぎれて手を握ったりなんかしながら、一心不乱に俺がどれだけイルカ先生を愛しているかも視線に練りこみつつ問いかけると、イルカ先生はなんでもないことのようにサラッと誘ってくれた。 「カカシ先生の都合が宜しければ今晩どうですか?ちゃんと準備しときますから!あ、でも下着は自分のヤツのほうがいいですかね?」 「し、下着…!は、はい!新品の持って行きます!!!」 …これは…!この展開は…! もしかしなくて、俺の気のせいじゃなくて、イルカ先生もヤル気だ! ってことは…もしかしなくても、イルカ先生も俺のことを…!? そ、それともイルカ先生はこういうコトにあんまり抵抗がない人なんだろうか!? いや、イルカ先生に限ってそんなことは…! 喜びと恐ろしい想像で頭を一杯にしている俺に、イルカ先生がちょっと照れたように鼻傷をかきながら微笑んでくれた。 「じゃ、お待ちしてますね!」 この笑顔…!一番最初に会った時もこの笑顔にやられたんだ…! 「勿論!今から凄く楽しみです!では準備があるので失礼しますねー!」 舞い上がる心のままに、とにかく今夜の成功を目指して色々と準備するコトにした。 「はい!またあとでー!」 イルカ先生のお見送りもあって、駆け出す足は羽でも生えてるんじゃないかってくらい軽かった。 「すごい勢いだったな。」 「知らなかったなぁ!カカシさんも温泉好きか!あー…温泉の素直接分けてあげればよかったか。あんなに喜ぶなら。」 「まあ珍しいからな。氷の国のだったか?」 「そうそう!芯から温まって気持ちイイんだ!ナルトも喜んでたし!」 「さすが上忍だよな。昨日貰ったばっかりなのに。」 「俺もなんか用意しとくか!」 ***** 下着は勿論、歯ブラシに、手土産の酒に、…ソレ相応の道具も勿論用意した。 震える手で毎日ひっそり通ったイルカ先生の家の扉をノックすると、すぐに笑顔のイルカ先生が顔を覗かせた。 「イ、イルカ先生っ!おおおおおおおおお邪魔します!」 ああ…家にいる時は額宛外してるんだよなぁ…! 間近で見るとその優しげな中にも厳しさを秘めたその顔が、より一層俺の鼓動を早めてくれる。 それなのに…。 「あ、いらっしゃい!丁度良かった!今準備し始めた所です!」 ダメ押しのようにさらっととんでもないことを言ってきたので、俺は、自分の心臓が爆発したんじゃないかって言うくらい驚いた。 「えぇ!?そ、その…見ててもいいんですか!?」 「ああまあどちらでも。たいしたモノは作れませんけど。味噌汁と魚くらいですし…」 何だそっちか。 ああでも…ちょっと申し訳なさそうに微笑むイルカ先生。 その爽やかで優しげな笑顔がこれからどんな風に変わるのかと思うと…! それに、純粋にイルカ先生の手料理が凄く嬉しいしね! 「え!あ、その!…イルカ先生が作ってくださるならなんでも…!!!」 期待…というより欲望のにじみ出た視線でうっかりイルカ先生を舐めるように見つめてしまったのに、イルカ先生はあくまでも爽やかに男らしく、俺の背をばんと叩いた。 「はは!そうですね!これからのこと考えると食いすぎるのもなんですし。」 「そっそんな大胆な…!」 その豪快さが…これからの展開を想像させてついつい股間に血液が集中する。 …いかん!まだ本番には程遠いというのに…! いうコトを聞かない息子にもうちょっとだけ我慢するように言聞かせ、俺のほうも出来るだけ爽やかな振る舞いを心がけようと気合を入れた。 「さ、どうぞ!そこ座って待ってて下さい!」 俺を魅了するだけ魅了しておいて、台所に行ってしまったイルカ先生は罪作りだけど…俺はいくらでも待てる! 「はい!!!」 勧められた座布団に腰掛けて、ちょっとちゃぶ台の前で前傾姿勢になったのはご愛嬌ってことにしておいた。 イルカ先生はそれからすぐにご飯を用意してくれて、美味しいしかわいいし…もう色々大変な状態になりながら食事を済ませた。 なにせ、いつのも居酒屋よりもずっとイルカ先生の態度が砕けている。 そ、そりゃこれからそういうことするんだし…! ま、とにかく飯は済んだ。…これからが勝負の見せ所! 「美味しかったです!」 打ち合わせた両手がぱちんと大きな音を立てたけど、ちょっと目がうろうろしちゃったのにイルカ先生は気づいてしまった。 「はは!そんなにそわそわしなくても!逃げませんよ?」 その余裕タップリの笑顔がたまらなく眩しい。 任務だって、シミュレーションどおりに行かないのが普通だけど、イルカ先生は俺の予想を一回りどころか百周りぐらい上回ってるような気がしてきた。 「そ、そうですか!わー…下着とローションだけじゃなくて精力剤とか飲んでくればよかったか…?」 「え?なんですか?」 焦りのあまりこぼした小さな独り言に、イルカ先生が笑顔で聞き返してくれたけど、流石に挙動不審になってしまった。 「い、いえなんでも!」 …修行が足りない…!俺は…俺は一応上忍なのに! ああでも、ソレもイルカ先生のせいだ。 だって、任務の時ならこんなに焦ったりしたコトはないんだから…! 「おなかも落ち着きましたよね?」 イルカ先生のなんでもない笑顔さえ、俺を誘っているように見えてくる。 「はい!すぐにでも!いてっ!?」 思わず立ち上がってちゃぶ台に膝をぶつけてしまった。 焦りすぎだ! 自分でもそう思うのに、イルカ先生は笑って俺の腕を引く。 「あはは!じゃ、早速風呂場にどうぞ!」 「あ、そうですよねー?綺麗にしてからじゃないと!」 焦らされてるのか? そう思わないでもなかったけど、イルカ先生は慌てたように続けてきた。 「そうだった!?…温泉気分を味わうんなら一緒に入る人が欲しいと思って、ナルトに付き合ってもらったんですけど…カカシさんはどうしますか?一人でゆっくりの方がお好きなら…」 イルカ先生が寂しそうにしょぼんとしてる。 いつもは元気で、豪快で、一生懸命で…その笑顔だけでも幸せになれるのに。 俺は慌てて否定した。 「いえ!もちろんイルカ先生と一緒の方が!!!…そうか、一緒って風呂だったのか。…もしかして風呂場で見せた!?」 イルカ先生とのお風呂タイムなんて貴重なチャンス、逃すわけには行かない。 …一緒だったのは風呂。…ってことは、その時そういう方面でのアドバイスを求められたのか…? それとも、この人いつも長湯だから、ナルトを先に上がらせて、それから始めたのを目撃されたとか!? 驚いて真っ赤になって、でもああいう時だから手を止められなくて、きっと…! そんなイルカ先生…想像するだけで頭やらなにやらに血が上る。 ついでにナルトへのちょっとした怒りも。 「どうしました?」 心配したイルカ先生が問いかけてくれたけど、俺の脳内にはもうそのことだけで一杯で。 「いや、楽しみだなぁって!」 俺は多分フニャけた顔してたんだろうけど、イルカ先生も嬉しそうに笑ってくれた。 「そうですか!へへ!俺も楽しみです!」 「はい…!!もうめちゃくちゃ!」 どっちを楽しみにしてるのか、まだ分からない。 もしかすると俺との夜を楽しみにしてた可能性だってある! 「嬉しいなぁ!カカシさんと趣味があって!」 「俺もです!」 手を握って、笑いあって。 それからいそいそと俺は…いや、俺たちは風呂場に向かったのだった。 ***** かけ湯もそこそこに、俺たちはすぐに風呂に入ることになった。 「あー…気持ちイイなぁ…!やっぱり違いますね!ココの温泉の素は!」 「はい…!サイコーですね…!」 これは、さっきから幾度となく繰り返されている会話だ。 サイコーなのは本当だ。…但し、イルカ先生の方だけど。 どうやら、本当にイルカ先生は温泉が大好きらしくて、脱衣所の棚にも、ものすごい量の温泉の素がきちんと整理されてしまいこまれていた。 いつも覗く時は、風呂場で徐々に露になっていく素肌にばかり視線が行って、きちんと観察で来ていなかったようだ。 今度から任務先で出来るだけ温泉の素を探してこようと心に決めながら、じっくりとイルカ先生の上気した顔を見つめる。 イルカ先生の家の風呂は、この趣味のせいか独身男性にしては広く、深い。期待したような密着度はないけど、それでもちょっと足が触れるくらいの広さだから、ソレがまたもどかしくて、ドキドキする。 そして、…残念なコトに今回の温泉の素は半透明で、イルカ先生の肝心な所をしっかり見ることが出来ないでいる。 写輪眼を使えば出来ないことはないけど、流石にイルカ先生に不審がられそうだし…。 それに、見えないからこそ色々と想像して爆発寸前の己の下半身も気付かれずに済んでいるので涙を飲んで諦めるコトにした。 …それにしても、例の黒くて大きいって言うのはウソだと思う。天井裏からじゃないイルカ先生に興奮しながら、それでもしっかり洗面所の鏡を利用してチェックしたら、どっちかって言うと生唾ものの桃色で…サイズも普通だったと…。 ってことは、ナルトは何を勘違いしたんだろう? アイツの下半身はひょっとして相当可哀相なコトになってるんだろうか…!?でも、先生はそんなに小さくなかったしなぁ…。 戦場で水浴びした時、股間をぶらつかせながら「ほーらぞうさんだよー!」なんてベタなこと言った先生に、絶対零度の視線を向けたときだから結構昔の記憶だけど…。 「いやぁ。ほんとに気持ちイイですねぇ!それに、こうして誰かと一緒に風呂に入ると、本物みたいだし!」 「そ、そうですねぇ!」 だんだん熱くなってきた。暗部なんかやってたから、ゆっくりお湯に浸かる習慣なんかなくて、殆どカラスの行水だった俺には、こんな長湯はちょっと厳しい。 でも、イルカ先生と…今正に裸の付き合いをしてると思うと、あと100年でも入っていられるような気さえする。 もったいなくて自分から出るなんていい出せない! それにしても、相当な時間浸かってるけど、イルカ先生は涼しい顔をしている。 流石にちょっと不安になってたら、イルカ先生から想定外の発言があった。 「さて、ちょっとお湯が冷めてきたから追い炊きしますか!」 「こ、これから?」 確かにかれこれもう1時間近く入ってるから、少しお湯の温度が下がった気がする。 でも、これ以上熱くしたら、流石に…! 「え?ああ、熱すぎますか?カカシさんが温目のほうが好きならそのままでも!」 驚いた俺に気兼ねしたのか、イルカ先生が慌てて言ってくれたけど、一瞬ちょっと残念そうな顔をしたのを見逃さなかった。 「いえ!丁度いいです!」 そう…今、俺は桃源郷にいるんだ! こんな物、修行だと思えばなんでもない! 「あ、良かった!じゃ、ちょっとだけ追い炊きしますからー!」 湯煙の中微笑むイルカ先生を見てたら、その色っぽさのせいだけでなく眩暈を感じたけど俺はチャクラを練りながら耐えるコトにしたのだった。 ***** 「あー!いい湯でしたね!」 「そ、そうですねぇ! 赤い。自分の足も、手も、顔も、体中が。 イルカ先生も赤く染まってて美味しそうだけど、今は襲い掛かる程の力が残っているかどうか…。現在の反応速度だと、イルカ先生に逃げられていしまいそうな気がする。…ああ…でも我慢も出来そうにないんだけど…! イルカ先生のしどけない姿ににドキドキながら結局2時間くらいお湯に浸かったままだった俺は、すっかりいい感じに茹で上がってしまった。途中で術を使って熱を遮断することを思いつかなかったら、多分そのまま倒れてたんじゃないだろうか? でも、その間イルカ先生ののんびりとくつろぐ姿や、楽しそうな笑顔、それに他愛の無い世間話と温泉についてなんかをじっくり聞けたからソレはそれでよかったんだけど…。 肝心の…その、アレがまだだ。やっぱり偶発的な事故だっただけで、イルカ先生がお誘いしたわけじゃなかったんだろうか? パジャマを着る時にきわどい所まで露になって、そこに視線を釘づけにされながら今後の展開を期待していたら、イルカ先生が上半身裸のままで嬉しそうに言った。 「この間は邪魔が入って途中で中止になっちゃったから、今日はその分も浸かり倒しちゃいました!」 「邪魔…?」 邪魔の話なんかナルトはしてなかったけど…?もしかして俺のほかにもイルカ先生に恋焦がれる不埒な輩が!? にわかに殺気立った俺に、照れくさそうに鼻傷をかきながらポツリポツリと話してくれた。 「あれ?ナルトから聞いてないですか?ちょっとその、かっこ悪い話なんですけどね…」 「な、何があったんんですか!?」 「うち、古いでしょう?それに、ちょっと前に近所の人が引っ越して。それ以来…出るんですよ。アレが。」 「ア、アレって…?」 「ゴキブリ。…大して危険じゃない、ただ走り回るだけの虫なのに、どうしてあんなに気持ち悪いんでしょうね!カカシさんは平気な方ですか?俺、いまだにアレがダメで…」 ゴキブリ。 そういえば、アレは特に毒があるわけでもないのに、あのすばやくて気持ち悪い動きだけで異常に不愉快になる所が不思議な生き物だよな…。突然飛び出してきたアレを目撃して不覚にも驚いて、術まで使って抹殺したことだってある。 「いや、俺も苦手っていうか、好きじゃないですけど!」 何だかアレ好きみたいに思われるのがいやで、ついついちょっと語調が強くなったら、イルカ先生がぱあっと顔を明るくした。 「カカシさんもですか!俺、情けないコトにアレがでるとどうしても取り乱すんですよ!それなのに、やたら黒くてでかくててかてかした可愛げの無いのがよりによって風呂場に出まして。…ナルトが大声上げるもんだから驚いたのか、わざわざ俺の上に落っこってきたんですよ!」 「それは…確かに驚きますね…。」 最悪だ。 そんな目に合ったら俺だって驚く。 不潔な環境なら、忍の俺にとってはたいしたことないはずなんだけど…耐えられる自信はない。即刻、容赦なく叩き潰すと思う。 いやまて…今なんかすごいこと言ったよな?でかくて、黒くて、てかてか…ナルトが言ってたのはアレのことだったのか! 「そうなんですよ!俺すっかり慌てちゃって、ナルトも慌ててなんでかティッシュ持ってきたから大量に風呂場にティッシュばら撒いちゃって…。」 「あー…なるほど…。」 理解できた事実に脱力を禁じえない。 …一緒に裸の付き合いは出来たんだ!これからの進展のために第一歩と思えばいい…! そう言聞かせても、のぼせ気味の身体がさらにふにゃふにゃしてきた気がする。 そんな中でも、イルカ先生の無邪気な微笑みは俺を癒してくれたけど。 「でも、良かったです!」 …ついでに何だか分からないけど喜ばれた。 一体なんでだろう? 「え?どうして?」 思わず聞き返すと、イルカ先生はちょっともじもじしながら、もそもそ小さな声で答えてくれた。 「…その、こんなコトがないとカカシさんが同じ趣味って分からなかったし…。」 「あ、え?」 「ご迷惑でなければ、これからも、誘わせていただけませんか…?」 自信がなさそうな…でも、期待を込めた声。 心臓がまた大きな音を立てて暴れだした。 「勿論!俺も任務先で色々探してきますね!」 「ホントですか…!嬉しいです…!」 「任せてください!」 手を握って喜んでくれた風呂上りのイルカ先生に、俺も嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。 よっしゃ!めるへんげーっと! ***** …それから。俺とイルカ先生の温泉タイムは続いている。今度の休暇には一緒に温泉に行く計画だって立てている。 ただ、ひとつだけ問題が…。 「カカシさん…先にでちゃうんですか…?」 「え!ああ、まだ出ませんよー!イルカ先生が喉乾いたかなって!」 「あ、俺なら大丈夫ですから!どうぞゆっくり入ってて下さい!」 俺が風呂から出ようとすると、ものすごく寂しそうな顔をするイルカ先生のお陰で、俺は日々、長湯に耐えられる術の開発を余儀なくされている。愛故の試練…俺は耐えて見せます! …いつか、この腕にイルカ先生を抱きしめることを夢見ながら…! ********************************************************************************* はい!変な小話! …股間マスターにささげたくなり書き始めましたが、流石にこれは…と思ったのでそっとアップ。 ご意見ご感想などがございましたらお気軽に拍手などからどうぞ! |