拾ったら、ちゃんと面倒みないとな!

「おはよう!!!カカシ!!!で、今日は何食う?」
ここは?何だこの変なエプロンつけたガキは?…そうだ、昨日コイツに拾われたんだった…。
  「…おはよ。…動けないから何でもいいけど、食べやすいの。」
「おっし!!!すぐ用意してやるから!ちょっと待てろ!腹減ったからって吼えるなよ!!!」
未だに捨て犬扱いか…どうしたらいいもんだか…。この家は、俺が見る範囲内では、コイツ以外の生活の痕跡がみられない。
つまり…どうやらコイツは、親どころか生活や教育に責任を持つ者がいない状態で野放図に育ったために、ここまで変化球な性格になったようなのだ。
…何とかしてまともな道に戻してやりたい。あの日里を守るために散った4代目から、里を頼むといわれている身としては、あの大禍の被害者がこんな所で 道を踏み外してるのを見過ごせない。
「あ、そういえば。」
「お!どうした?トイレか?尿瓶はないからまたひきずっちゃうけど。」
「ちがう!なあ、お前名前は?」
昨日はコイツが一方的に屈辱的な名前をつけようとした記憶があるが、コイツ自身が名乗った記憶はない。
「あれ?言わなかったっけ?ごめんごめん!おれ、うみのイルカ!!!元気印の下忍だぜ!!!これから末永くよろしくな!!!カカシ!!!」
さらっと永久飼い犬宣言を聞いた気がしたが、それは置いといて、…何で朝からこんなにテンションが高いんだ…。
…昨日の任務では傷は受けなかったが、術の使いすぎで身体ががたがたなのだ。騒がしいのは勘弁して欲しい。
「あ、で、首輪はやっぱまずいの???舞台俳優って、他に気ぃつけることある?」
首輪を人間につけようとするとは…どんなプレイだ…っていっても、コイツはどうも俺より三つか四つ年下のようだし、いくらなんでもその手の知識は まだないだろう。
…それともどっかのヒヒ爺に騙されて…。
「首輪は人間につけるもんじゃありません!…あー、で、その知識の源は…」
さっそく教育を始めようとした俺に、イルカはさらっと言った。
「えー?じいちゃんの持ってる本に載ってた女の人、首輪つけてたよ?なんで駄目なの?可愛いじゃん。心配しなくてもちゃんとカカシ似あうの 見つけてくるからさー。」
ちょっとまて、俺の想像はストライクか?!
「そのじいちゃん…どこの誰か知らないけど、もうそんな爺さんとつきあっちゃいけません。それに俺は舞台俳優じゃ…」
「えー?!だってお菓子くれるんだぞ!!!貴重なエネルギー源なのに!!!」
…!完全に変質者だな。こんな幼い子どもを菓子でつって、怪しい書物を読ませようなんて…。
最終目的はコイツにいかがわしい行為をすることなのは間違いないだろう。
…俺も外見のせいかその手の男に狙われやすいから、行動パターンは把握している。俺はそんなアホはサクッと返り討ちだが、イルカはいくら傍若無人 といえどもまだ下忍。危険だ…!
「俺のチャクラが戻ったら、いくらでも食わせてやるから!!!そんなひとのとこには、絶対行かないこと。…今度行くときに俺も絶対ついていくから、 その時まで禁止!!!」
「…美味いのに、じいちゃんのくれる菓子…。」
どうもイルカは不満そうだ。変にフリフリなエプロン姿のままで唇を尖らせ、こっちをにらんでくる。
「美味くても駄目!…そうだ!今度一緒に行こう。」
その時にそいつを捕縛して、性犯罪者として火影様につきだしてやる!!!いたいけな子どもに何てこと考えてるんだか!そんな変態には暗部の恐ろしさを 思い知らせてやらないと…。それにしても、菓子に釣られてホイホイその辺の変質者についていくなんて…ほんとにコイツ下忍か???
「わかった。俺ばっかり食うの、ずるいもんな!!!そうだ!!!」
…その反応だと、ちゃんと理解しているとは思えないのだが…。相変わらず元気良いな…確かに元気印であることは認めるよ…。
「どうした。」
「やっぱ首輪は青な!!!」
「だから首輪はいらないっつってんだろ!!!!!」
何なんだコイツは!!!…コイツといつか分かり合える日が来るんだろうか…。ものすごく不安だ…。
でも、コイツを守ることが、里を守る第一歩のはず。天国の四代目!見ていてください…俺、頑張ります!!!!!
*****
カカシは良く吼えるということを俺は学んだ。
化粧してたことに怒るし(昨日、浴衣が女物なのには気づいてたけど、化粧は気づかなかったらしい。きれいなのにな…)、服が乾いたからってとりこんだら、 泡吹きそうになるし(いいじゃん。汚れてた面も変な服もキレイに洗ってさっぱりなのに…)、エプロンがじいちゃんからもらった奴だっていったらあわてて 捨てろなんていうし(新妻風味エプロンっていって、じいちゃんが買い込んでた。…肉を手に入れるときにいいなと思って、ちょっと頼んでもらっただけなのに。)。
新しい仲間は気難しいようだが、まあ、それはそれ、昨日からなんとなくそうかと思ってたし、これから信頼関係を築いていけばいいことだ。
昨日みたいに布団の上で飯を食わせて、まずトイレかと思ったが、本人が固辞するのでおもらしするなと言い置いて、俺は今日の任務に向かった。
…肉。今日はどうやって手に入れよう。そうそうカカシの服と首輪も買って帰らないと…。昨日は結局、寝てる写真しか撮れなかったからなー。 もったいなかったよ。今日はやっぱり首輪姿で写真を撮りたい。先立つものがちょっと厳しいが、今日の俺には秘策がある…カカシ君(女装バージョン) に化けて、買い物に行けばいいのだ!!!客が鼻血を吹くほどなのだ、きっと沢山おまけしてもらえるぞ!!!
先生がもらった今日の任務が、また畑仕事だったらいいなー。任務終わった後収穫した野菜もらえるから助かるんだよな!そしたら…焼肉だって夢じゃない!!!
ああ、後これでアスマ兄ちゃんがうろついてたら完璧だよなー。また肉たかって、一緒に飯食ってもらえばいいし。そしたら、カカシも自慢できるしな!!!
…後でアスマ兄ちゃんに任務がはいってるかどうか探りを入れてみよう。
*****
意気揚々と任務に向かったイルカが、ちゃんと俺の話しを理解しているか不安に思ったので、やっと回復したなけなしのチャクラを使って、 パックンを呼び出した。トイレにいってからだからいいようなものの、流石にキツイ。もう今日は動けないかもしれない。
「…カカシ。まーた無茶しよって…。」
相変わらず小さいサイズに見合わぬおっさん臭い口調で、あきれたようにこっちをねめつける。…迫力あるよなぁ。だがそんなのは後だ。後!
「あーいいから、それは後、…この家に住んでる子ども、イルカっていうんだけど、そいつの匂い、追える?」
俺は動けないが、絶対にアイツが何かするのは目に見えている。これ以上何かとんでもないことをしでかす前に、何とかして止めなければならない。
「そりゃ簡単じゃが…。一体何の任務じゃ?」
「だから、話は後、いい?そいつが妙なまねしようとしたら、すぐに止めて!」
「妙なマネとは?」
「あー…とにかく突拍子もないことやらかすと思うから、その辺はパックンの経験でなんとかしてよ。今…俺、動けないし…。」
「だから無茶しすぎなんじゃ!…拙者が出来る範囲のことはするが、そいつが手練だとちときついぞ。援軍を呼んでもよいか?」
パックンが思案顔でそう言った。いつもの眉間のしわが、より一層深くなる。パックンの心配ももっともだが、説明している時間が惜しい。
「ああそれはない。そいつ下忍だから。」
「…?話は後じゃったな…。…後できっちり説明してもらうぞ。」
パックンが、自称ぷりてぃな尻尾を振り振りしながら、煙の中に消えた。
これで何とかなるはずだ。…ならなかったらどうしよう…。アイツとんでもないことするし…。
 ものすごく心配で不安だったが、チャクラを再び使い果たしてしまったので、どうしようもない。俺は天井を見つめながら、ため息をついた。
*****
  今日は大当たりだったな!!!残念ながら、肉の供給源であるアスマ兄ちゃんは、遠くの任務でいなかったけど、任務は畑仕事だったのだ!!! 今は農繁期だからな!!!
ほくほくしながら、もらった野菜を一旦家へ運ぶ。さて、家のカカシはどうしてるかなー?
「たっだいまー!!!ちゃんとおとなしくしてたかー?」
布団を見ると、何故か今朝よりもぐったりしているカカシがいた。
「あー…。お帰り。」
俺の顔を見るとホッとしたようだ。やっぱり一人は心細いよな!!!良く頑張ったから、頭なでてやろう。つんつんの銀髪をうりうりしていると、 やっぱり幸せがこみ上げてくる。最高の手触りだ!任務で疲労した俺を癒してくれるな!!!
でも、俺、これから買い物いかなきゃいけないんだよなー。どうしよう。おいてくのかわいそうかなー。でも、引きずっていくのもなあ。
「…で。どうだったの。」
「あー。まあ、大方未遂に終わったのでそのまま見ておった。…お前はどうしてそう色々背負い込みたがるんじゃか…。」
いつの間にか深く悩んでいる俺の肩に、ブサ可愛いちっこい犬が乗っていた。脊髄反射で捕まえて撫でまくる。この口元のモッタリ感がたまらん…。 肉球もぷにぷにだ!!!後でカカシにもさわらせてやろう。でも…大分揉んでから言うのもなんだけど…どっからきたんだこの犬。しゃべったし。
「ぎゃあああ!!!放せ!放さんか!!!カカシ!!!さっさと何とかしろ!!!」
おお、カカシの友達か。犬友。…他にもいるのかな…俺はでっかい犬も好きだから、でっかいのがいるといいな…!期待に満ち満ちた目でカカシを 見つめていると、手の中の犬が煙を出して消えた。あ、まだ尻尾ぷにぷにしてなかったのに…!
「イルカ、今日何したか、何しようとしたのか、…話しなさい。」
いつの間にか、犬が布団の上で寝てるカカシの側に移動している。ああ忍犬だったのか。顔が広いなカカシ!
「カカシ!そいつなんて名前?尻尾触らせて!!!あと、首輪は赤でいい?」
「イルカ…ちょっとそこ座りなさい。」
あ、懐かしい。かあちゃんがとおちゃんを説教するときとか、かあちゃんが俺を説教するときとか、こんな感じだったよ。
やっぱりコイツに男性ホルモンはもったいないよな。すっげえかあちゃんって感じだ。
「どうした、カカシ。飯ならまだだぞ。昼飯に握り飯おいてったけど、無理だった?」
また腹が減ってるんだろう。昼に帰ってこようか迷ったんだけど、結局任務が終わる前に途中で抜けるのはよくないよなと思ってやめたのだ。
…かわいそうなことしちゃったな…。それにしても空腹でこんなに凶暴になるなんて、舞台じゃどうしてたんだろう?
「いいから、座れ!!!」
カカシが本気で怒っているので、しょうがなく俺はきちんと座って、カカシの状態観察をすることにした。
顔色はまあ今朝も白かったし、拾ったときからいっつも綿菓子みたいに白いから良く分からない。目の下にはクマがある。 これは今朝なかったから、心労のあまりできたのかもしれない。…動けないのは変わってないみたいだし、放って置かれて不安で怒ってるんだな、きっと。
「カカシ、俺が悪かったよ。な。」
そういってふわふわの毛をまたしっかりなでてやる。うん。やっぱり首輪は青がいいよな。売り切れじゃなかったら買って来たんだけど。
赤いのと、黄色と、あと緑色のはあったけどやっぱりカカシには青が似合う!!!
「…。パックン、後で説明して…。」
「了解…。」
ご機嫌を取り戻すことに成功したようだ!さっすが俺!!!さ、今のうちに飯を食わせて、機嫌が悪かったことなんて忘れさせてしまおう。
肉は昨日予定外の消費増大であんまり残ってないけど、今日は買い物に行かないで何とかしよう!!!
「すぐできるから!!!」
俺は手早くエプロンを身につけ、カカシを一撫でし、今ある食材を最大限に活かす夕食の献立を考え始めた。
*****
イルカ相手では埒が明かないので、パックンからの報告を聞くことにした。
「で、…なにやらかしたのよ…?」
本当は聞くのも怖い。…絶対何かとんでもないことしやがったんだ…!体調が万全なら、何とかできるが、今はこの有様。アレを止めることなどできない。 歯がゆい…。
「…あー。」
…それからぽつりぽつりとパックンが語ったところによると、
…あのクソガキはまず、どっかの忍の任務予定表を盗み見て(犯罪だ!)、ため息をつくと、そのまま任務へ向かった(これは別に問題ない。)。 その後、任務先でもらった野菜を持ったまま、商店街を回ってペットショップに入った青色の大型犬用の首輪が売り切れなのにしょげて、 (まだ諦めてなかったのか…)店を出て、荷物多いから一旦帰るか…とつぶやき、帰宅。という流れだったらしい。
首輪、売り切れてて良かった…!
…じゃなくて、なんなんだ!?どうして一日でこれだけとんでもないことをしでかそうとするんだ!!!常識はどこに捨ててきたんだ!!!
…まさか!最初から、無い、とか…!?
「パックン…。」
俺は思わず忠実な忍犬に助けを求める視線を送ってしまった。
「わしゃしらんぞ。…悪いことは言わん。今から火影の元まで伝令に行ってやる。そのまま拾ってもらった方が良いぞ?」
パックンの言うことはもっともだ。ここにいること自体、俺も規定違反だし、なによりあのトマホーク馬鹿は矯正できるレベルではないように思う。
…少なくとも俺の手には余る。
「なあ、パックン…」
「あー!!!犬!!!さっきのまだいたんだ!!!…どうしよう。俺、肉全部つかっちゃった…。ごめんな。…アスマ兄ちゃんもいないし…。 …今から買ってくる!!!」
「…。おい子ども。イルカといったか。…拙者は別にここで食わんでも大丈夫じゃ。それより、カカシに何か食わせてやってくれ。この通り、 すっかり弱っとるからな。」
「うん!でもほんとにだいじょぶ???」
「ワシには自分の家があるからな。…カカシ、良く考えておけよ…。」
賢い俺の忍犬は、事態を察して姿を隠した。…流石たよりになるな。
…でもコイツ、今、パックンのこともちゃんと気遣ってたな…。きっと、もともとはそんなに悪い奴じゃないんだ…。ただちょっと躾がなってないだけで。
「なあ!カカシ!!!犬消えちゃったよ!!!…ほんとに何も食わさなくて大丈夫?お前の友達だろ???」
イルカが心配そうに言う。
やっぱり…俺はコイツを見捨てられない!!!
「イルカ、頑張ろうな…!」
決意をこめた俺の言葉に、イルカはうなずいた。
「飯、そんなに食いたかったのか!今もってくるな!!!」
アレ?もしかして哀れまれてるの俺?
呆然としている間に、テキパキと給仕をするイルカに今日も何でか美味い飯をたらふく食わせてもらった。
腹がいっぱいになると、心配していた分疲れが出て、眠気が襲ってくる。…暗部失格だな…。
「眠いのか…。今日は風呂…ま、いいか…。……お休みカカシ。」
また頭をもしゃもしゃとかき回されたが、怒鳴って振り払う気力もなく、俺は引きずり込まれるように眠ってしまった。
*****
「ねちゃったなぁ。」
犬友が他にいるのかも確認しそこなったし、せっかく機嫌とって置こうと思ったのに、あのブサ可愛い犬、帰っちゃったし…。
あーあ。尻尾を触りそこなっちゃったなー…。きっとぷにぷにでこりこりだったはずなのに…。ちょっと凹む。
…まあこれで諦める俺ではない!カカシの友達ならまたいつか尻尾をふにふにするチャンスがあるはず!!!あと、犬歯もみせてもらうんだ!!!
いい犬、じゃなくて俳優か。とにかく、いいもん拾ったよ俺!
明日からの幸せ犬まみれ生活に思いを馳せながら、俺はカカシのぴんぴん跳ねる髪の毛をなで続けたのだった。

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感動してるけど、犬の尻尾が目的ですよ。カカシさん…。
…こんなんでましたけど…。だいじょぶでしょうか…?
次回、アスマ兄ちゃんと出会うまで編とか、三代目の疑いが晴れるまで編とかを予定しております…。
懲りないな…自分。

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