真夏だぜ!輝く汗は勲章だ!(あくまで子イルカ)

イルカと一緒に川に来たのは修行のためのはずだ。間違ってもこんな…!
「カカシー!アンニュイな表情もせくしーだぜ!!!さっすがどんな舞台にも動じない超絶舞台俳優カカシ!」
「なんで川辺にビーチセットなんかあるんだ…!?」
ビーチパラソルにデッキチェア。そして木製のテーブルには何処から持ってきたのかが謎過ぎる澄み切った青い空そっくりのカクテル…に見える飲み物まで用意されている。
普通の川辺に現れた南国風味なその空間は、ものすごい違和感をかもし出している。
「いい感じに夏を満喫しちゃうぜ!!!さあ!カカシも一緒に夏色に染まろうな!!!準備も後ちょっとで…」
「トロピカルフルーツとかハイビスカスとかどっからもってきたんだ!?」
思わずそう叫んだ俺に、イルカは力強く微笑んで肩を叩いてきやがった!
「安心しろ!ちゃんとカクテルはノンアルコールだぜ!焼きそばとおこのみやきとラムネは…」
「ちがうだろうがー!!!」
…今日は、修行のはずだったのに…!
俺は、むしろこの状況こそが修行なんじゃないかと思いながら、サクサクバーベキューセットまで組み立てて行くイルカにそれ以上何もいうコトができず、ただただ呆然と楽しそうなイルカを眺めていた。
ある意味予想通りの展開にため息を着きながら。
*****
青い空…それにココは結構里からも離れてるせいで、誰もいないから思う様泳ぎ倒せる川!
夏!満喫だな!
カカシと犬友と一緒に遊び…じゃなくて、修行に来たのはやっぱり正解だった!
ホントは海に行きたかったけど、川も中々いいよな!
でも、ここんとこカカシがちょっと夏ばて気味って言うか…怒りっぽくなってきたから避暑も兼ねて連れてきてやろうと思ってたんだけど、どうやらまだまだ癒しが足りないみたいだ。
首輪(夏仕様きらきらラメ入りクリアピンク!)は辞退されたけど…カカシに良く似合うぴっちぴちの水着(花柄ビキニは断られた…。トロピカルでカラフルでかわいいのに!でもちゃんと危険なまでにその白い肌を露出させ、限界までその美しいボディラインを際立たせる…!黒いのは着せるコトに成功したぜ!黒が大好きだよな!カカシは!)も着せてやったっていうのに、当の本人はブツブツ言いながらデッキチェアで膝を抱えてるんだよなー。
ま、いいか!暑いからちょっとご機嫌斜めなんだろう。…もしかすると新たな役柄が引きこもりとかなのかもしれないし!カカシは役に熱心すぎてはまり込んじゃうからな!そこがきっとすばらしいまでの演技力を培ってるんだろうし!さっすがカカシだぜ!
…だがしかし!犬友と戯れる俺を見ていれば、きっと自分から遊びたくなるはずだ!
そのためにも!さっきからキラキラした目で俺を見つめる可愛い犬友たちと全力で水遊びしちゃうぜ!引っ込み思案なカカシでも思わず川に飛び込みたくなるくらいにな!
「じゃ!ちょっと川で遊んでるから!カカシもいつでも来るんだぞー!」
ちらちらとビーチボールをちらつかせ、夏の輝く日差しの下での楽しいひと時を予感させてみたけど、カカシは死んだ魚みたいな目でこっちを見てるだけだった。
「あー…。」
うめき声みたいな鳴き方だ。…なんだかぐだぐだだなぁ?今度の役はそんなに難しいんだろうか?
こういうときは、ちゃんと元気付けてやるのが飼い主…もとい!同居人の役目だよな!
「イルカー!遊ぼうぜ!カカシはほっといていいからさ!」
まあでも…犬友たちもそろそろ限界みたいだし、準備体操もがっつりしたし…なにより!輝く水面が俺を呼んでるし!
「おうとも!後でいっしょに遊んでやろうな!」
「そうだな!」
犬友たちと手に手を…とりあうのはちょっと難しいから、皆の頭をもふもふしてやって、それから一緒に川に飛び込んだ。
川!満喫だぜ!あとで俺特製のバーベキューも振舞ってやるぞ!あとカカシにはやきそばも!
ブサ可愛いちっこい犬友がカカシの肩を叩いてやってるから、きっとそのうち我慢できなくなって遊びに来るよな!
楽しい計画で頭を一杯にしつつ、俺は暑さと輝ける夏を満喫すべく、全力で犬友と川で戯れるコトにしたのだった。
*****
「カカシ。アレを放っておいてよいのか。」
「んー…。」
パックンが疲れきった声でぼそぼそと俺に話しかけてくるけど、抱えた膝を崩す気に慣れなかった。
待ってる間に飲んどけと勧められて、疲労感にせき立てられるようについ飲んでしまったカクテルもどきはやっぱりやたら美味かった。
だが、飲んでからこれにまたなんか入ってるんじゃないかという疑心暗鬼に狩られて、しかもあからさまに遊ぶ気全開のイルカを見てたら、もうすっかりヤル気が溶けて消えてしまったからだ。
川…この地形を活かした修行を考えていたというのに、水辺で俺の犬たちと戯れるイルカを見ているとナニをしたって無駄だと思えてくる。
本来ならイルカの得意な水遁をベースに、攻撃だけでなく、防御や足止め、逆に足場として術を利用する方法なんかを、実体験を交えながら教えてやるつもりだった。
もちろん。ソレを通じて、イルカの道徳的な部分を伸ばしてやるのも目的だ。
いかにして仲間を守るか。そして自分のみを守るか。勝手な行動がどれだけ仲間を危険に晒すかということを、徹底的に叩き込む…はずだったのに。
それはもう楽しそうに遊んでいるイルカは、無邪気で、見た目は普通の子どもだ。…つまり、そんな修行なんか頭に入りそうに見えない。
…というか、まあ、一応イルカはまだ子どものはずなんだ!行動力とその内容が異常なだけで…!
ソレもこれも周りにまともな大人がいなかったせいだ…!
水がキラキラと光をはじき、イルカの髪を飾っている。犬たちもイルカと遊んでもらえるのがよっぽど嬉しいのか、普段よりずっとすばやく動いている。
そんな犬たちと、水の中で追いかけっこをしてるみたいだから、あれもそれなりに修行になるかもしれない。じゃれ付いてくるの器用に避けてるしな。
もう、疲れた。…俺だって普通に休暇を味わってもいいはずだ!こんなにバカンス準備万端なら、多少満喫したって許されるに違いない。
「もーいいや。今日は。」
我ながらヤル気の欠片も感じられないだらけた声だ。
暑くて、チャクラでも使わないと黙ってたって汗が噴出してくるし、イルカは勝手気ままだし、パックン以外の犬たちは主人である俺そっちのけでイルカに夢中だし。
やけになって、新たに用意されていたトロピカルジュースをすすった。甘ったるい味が口の中に広がる。…だが、やはり何故か美味い。
どうして、イルカは忍の里なんかに生まれたんだろう?どう考えてもあいつの正確は忍むきじゃないのに。
鬱々と己の思考に沈みかけた時、パックンが俺の側で聞こえよがしに深いため息をついた。
「ふぅ…。知らんぞ。わしは。アヤツがおとなしくしておるとは思えぬ。…気持ちは分かるがの。」
ぽんと背中を叩くパックンの肉球に、共感してくれる存在がいるありがたさを感じてほっとして…おかげでで前半部分がじわじわと脳にしみこんでくれた。
…そう。イルカがおとなしく遊んでいるだけですむわけがないのだ。ソレを忘れちゃいけなかったのに…!
慌てて視線を川に向けると、何処から取り出したのか分からないビーチボールで犬たちと遊んでいる。
そこまではまだいい。だが…!
「わー!?何やってんだイルカ!」
「え?ビーチボールとか?」
「ビーチボールに術なんか使うんじゃない!あと俺の忍犬たちを投げるな!」
ビーチボールが水遁にあわせて乱れ飛び、ついでに犬が水遁のうねりに乗りながら波乗りを楽しんでいる。
そういえば、前も庭で波乗りごっことか言うのをやってたような…!?あれだけ叱ったのに懲りてなかったのか…!?
こういう時のチャクラコントロールは中々だが、どうして遊びにばかり全力を注ぎ込むんだイルカは!
「はぁ…」
思わずため息を零した俺に、イルカは何故か満面の笑みを浮かべて背中を叩いてきた。
「やっぱり夏は波乗りだぜ!お前もやっとヤル気になったんだな!」
「なるかー!!!」
怒鳴り声にも動じずに、イルカは能天気に笑っている。
「まあまあ!そう照れるな!ホラ、犬友たちだって、ちゃんとお前に順番譲ってくれただろ?」
イルカが指差す方向に視線を移すと、きちんと整列して律儀に並んでいる犬たちが、さもしょうがないとでもいいたげな視線で俺を見ていた。
…人一人分の隙間を空けて。
「だから!俺は波乗りなんかしない!」
忍犬たちにそういってやると、何故か軽く哀れみの視線を向けられた。…なんだこの屈辱!
「おおそうか!じゃあビーチボールだな!」
そんな俺に気付くわけもなく、すかさずビーチボールを取り出してキラキラした瞳で俺を見るイルカ。
一瞬脳が沸騰しそうになったが、そんな俺を心配そうに見つめるパックンの視線が、俺を冷静にさせてくれた。
イルカはまだ幼い。年齢以上に。まだまだ遊びたい盛りなのは確かだ。
…そして放っておけば危険な遊び方をするのも。
それに、なによりイルカから目を離した俺にも落ち度はある。
「術は…使うなよ…!?」
それでも声はドスが利いたものになったが、イルカには届かなかったようだ。
「よーっし!早速チーム分けするぞ!カカシと俺は別のチームで!犬友たちはじゃんけん…は、できないから適当に!」
「はぁ…。」
ため息をついても、イルカの笑顔は曇りもせず、忍犬たちは嬉々としてチーム分けを相談し始め…俺のことなんかみちゃいなかった。
デッキチェアの上で、パックンだけが、俺に優しい視線を投げかけてきていたけど…。
「あ!ブサ可愛いちっこいの!遊ぼうぜ!…って!逃げた!ちぇー!」
イルカのあからさまな興奮具合に、速攻逃げを打っていた。
…これで、味方はいないに等しくなったってことだ。
だが、これはある意味チャンスだ。遊びってコトにしておけば、イルカもヤル気を出すだろう。…要は上手いことこれを修行に持っていけばいいだけの話。それに、一度ビーチボールに付き合えば、満足して修行に移れるかもしれない。
「イルカ…負けないからな…!」
気合を入れた俺に、イルカは嬉しそうに笑っている。
「おうとも!勿論俺も負けないぞ!…ひとたび俺と戦えば、俺と犬友たちとの息の合った連係プレイに度肝を抜かれちゃうぜ!!!」
気合いは、十分だ。
負けるな俺…!
相変らず明後日なイルカとまともな会話は不可能だ。しかも今回は俺が目を話した隙に、すっかりテンションが上がっているからなおさらだ。
…とにかく修行だ!ソレが一番の目的なんだから、今回はもう色々諦めるコトにする。
「さて、始めるか…!」
忍犬たちもチーム分けし終わったようだし、後は…絶対にイルカを修行させてやる!
気合い十分な俺に、嬉しそうな忍犬たちの生ぬるい微笑が向けられたが、俺の気合いは今度は何とか保ってくれたのだった。
*****
「食らえ!」
イルカのすばやさを生かしたサーブが叩き込まれ、ビーチボールらしからぬ音を立てて、俺たちの陣地に飛び込んでくる。
「行け!ビスケ!」
「おう!」
すかさず指示を出し、難なくサーブを返すことができた。…だが、油断は出来ない。
「ちっ!さっすがカカシだぜ…!隙がない!」
「イルカ!俺が行く!」
「おう!犬友!頼んだぜ!」
「てい!」
「ちっ…!」
戦いは白熱していた。
イルカの指示は、…野生の勘かなにかしらないが、非常に的確で、それにイルカチームの俺の忍犬たちも異常に息の合った応戦ぶりを見せ付けてくるからだ。
俺のチームの方の忍犬たちも、勿論俺の意図を正確につかみ、確実にボールを返しているのだが、なんだかんだとイルカたちにしっかりボールを拾われてしまうので中々点が入らない。
じりじりと焼け付く太陽の下、白熱するラリーは長く続き、いまだ一度もボールが地にふれていない。
俺とイルカと忍犬たちがボールを打ち込み、はじき返し、ただひたすらに勝負は続く。
…俺が本気を出せばまた別だろうが、イルカも真剣ではあるが、おそらくまだ全力じゃない。いくらなんでも大人気ない気がしてソレは出来なかった。
正直、ここまでやるとは思っていなかった。
小さな体を利用して犬たちをフェイントに使う辺り、さすがイルカだ。正攻法で真正面から向かってくるならこっちもあっさり勝ててだろうが、普段のたちの悪いトラップからも感じてはいたが、イルカ作戦は巧妙だ。…そう簡単には勝たせてもらえないだろう。
自分のすばしっこさを戦法に活かしているし、ちょっとヒヤッとするボールが来たときにうっかり俺が返した結構きっちり狙った攻撃にも良く耐えている。これまでの修行の成果が現れていると言ってもいいだろう。
…このビーチボールもある意味体術面での修行になるだろうからいいんだけど…。
流石に長い。長すぎる。これじゃ他の…一般常識というか、俺のしたいような修行には移れない。
「ちょっと、本気出すかな…!」
思わずそう呟くと、傍らの忍犬たちからすっと冷たい瞳を向けられた。
「イルカが楽しそうにしてるのに!」
「大人気ないぞ!」
「そうだそうだ!ご主人の方が大人だろう!」
息の合いすぎるほどあった俺への反論は、正にチームプレイとしては完璧だ。
…俺が主人なのに…!
「お前ら…!どっちの味方なんだ!」
思わず、そう口をついていた。
大体俺のチームのはずなのに!それにハンデつけてイルカのチームの方が一匹多いのに!
…それでも、忍犬たちはボールを見つめながら、狙ったように返事を重ねてきた。
「「「イルカ。」」」
「…お前らなぁ…!」
うすうすわかってたけど、どうしてイルカはこんなにもコイツらに好かれてるんだ…!
「へへ!余所見は禁物だぜ!」
そして、俺が脱力した隙を見逃さず、イルカが狙い済ました攻撃を俺に向けた。
「…ったく!いいか!昼飯までだからな!」
怒りに任せて威力を上げすぎないように注意しながら、俺も危なげなくボールを返す。
こうなったら意地だ!
「ちぇっ!さっすがカカシだぜ…!でも!絶対負けないぞ!…てい!」
「まだまだ!はっ!」
「うりゃあ!」
気合いの篭った一撃の応酬は…結局パックンが体を張って仲裁に入るまで続いた。
…その結果、パックンが揉みまくられたのは言うまでもない。
すまないパックン…!
*****
真夏の太陽の下、カカシと俺と犬友との熱き戦いは、ブサ可愛いちっこい犬友が止めるまで続いた。
かっこよくひらりと俺達の真ん中に飛び込んだブサ可愛いちっこい犬友が、ビーチボールを華麗にキャッチし、渋い声で中止を宣言したのだ。
「貴様らいい加減にせんか!…修行にきたんじゃろう!それに、飯はどうするんじゃ!あれだけの荷物持ってきおって!無駄にする気か!ここらで一旦…」
やっぱりブサ可愛い!しっぽがぷにぷにだから触りまくりたいのに、このブサ可愛い犬友だけはシャイで中々レアだからなぁ!
当然。俺はすかさず後ろから捕獲するコトに成功した。
「うぎゃあ!離せ!離さんかこの!…ひいいいいい!」
声がまた面白いよな!ブサ可愛いのに結構なおっさん声!しかも渋い!いい感じだぜ!
「わー!?何やってんだイルカ!」
カカシが大慌てで俺の手の中のブサ可愛いちっこい犬友を奪おうとしてきたけど…何でそんなに怒ってるんだ?
「え?ブサ可愛いちっこい犬友を思う様揉んでるけど?」
やっぱりぷにぷにのしっぽが最高だ!それに意外と口元のもったりした所も揉み甲斐があることが判明したので、入念に揉んで見た。
他の犬友も何だかうらやましそうに見てるから、ちゃんと後で撫で回そうっと!勿論カカシもな!
そっか!カカシも寂しかったんだな!それにそろそろ腹も空かせているはず!
「そうじゃないだろうが!」
怒鳴りかかってきたあたり、やっぱり空腹でイライラしていること間違いなし!ソレ鈍さ可愛いのだけ可愛がったから、きっと拗ねてるんだな!
「安心しろ!すぐに飯にするから!」
カカシの腕の中に、何でかちょっとでろんってなってしまったブサ可愛いちっこい犬友を託し、俺は急いで鉄板の下に向かった。
焼そばもお好み焼きも具材の準備は完璧だ!犬友とカカシの毛のために、すかさずバーベキューも用意済み!
これでこそ夏!だよな!
いそいそと仕度をする俺の視界に、でろんってしたブサ可愛いちっこい犬友が、なんでかカカシと話してるのが入ったけど、…多分ブサ可愛いちっこい犬友話してる間に飯の仕度が終わるだろう。
空腹拗ねカカシの相手をブサ可愛い犬友たちに任せ、俺はとにかく美味い飯を作るコトに集中した。
*****
「パックン…!」
「お主まで夢中になってどうするんじゃ…!」
パックンが、体を張ってとめてくれなかったら…俺は未だにイルカと意味もなく必死でビーチバレーをやっていたことだろう。パックン…お前こそ忍犬の鑑だ…!!!
「すまんパックン…!つい夢中に…!」
「詫びはいい。…後で肉の一塊もよこしてくれればな。」
ぐったりしつつも、声だけはきりっと答える相変らずパックンは男前だ。
…他のイルカの味方ばっかりする浮ついた奴らとは格が違う。
きっと、熱中する俺を見ていられなかったに違いない。興奮したイルカの前に出て行けばどうなるか分かっていて、俺のために…!
元はといえば、イルカの行動があまりのも予想外すぎたとはいえ、途中で監督を放棄した俺に原因がある。
それを…パックンが食い止めてくれたのだ。
おりしも香ばしい香りが漂ってきていて、イルカがデカイ串刺し肉をさくさく焼いているのが目に入った。あれならパックンも食べられるはず!
「ちゃんと用意する。ありがとう。パックン…!」
小さな英雄の耳の後ろを書いてやると、気持ち良さそうに目を細め、それから再びきりっとした声で俺にアドバイスをくれた。
「あの子どもの暴走を止められるとも思えんが…。あれを放置するのは危険なのは確かじゃ。頑張れとしか言えんが…」
「大丈夫!…目が覚めたから。ゆっくり休んでてくれ。」
他に忍犬たちもちょっとは思う所があるのか、パックンを気遣うそぶりを見せいている。
これから、そう、イルカの更生はこれからなんだ…!
逃げるなんて、もうしない!
「おーい!出来たぞー!ホラ食え!」
焼きたて肉片手に俺に駆け寄り、すかさず口の中に肉を突っ込んでくるイルカは確かに更生が困難な育ち方をしている。
だが!それでも俺だけは絶対に見棄てない!他の爺さんや不甲斐なくも任務に逃げたクマ男と俺は違う!
「あふぃっ!…美味いけど!自分で食うから!…あ、後もう一本頂戴。パックンの分。」
「おうとも!」
ちょっと冷静になれた俺は、満面の笑顔でどんどん料理を仕上げて行くイルカを、決意を新たに見つめたのだった。
*****
珍しく食欲が出てきたカカシと、一杯遊んだ犬友たちのお陰で、用意してきた食材は全部綺麗になくなった。
やっぱり川に来てよかったな!カカシのリフレッシュ度が違うぜ!
それに…カカシのボール捌きともすばらしかった!俺も中々イけてる方だと思ってたけど、さっすが超絶熱中舞台俳優カカシ!スポコン物までこなすなんて…!演技の幅が広すぎるな!!!
俺は改めてカカシを尊敬しながらも、せっせと毛の充実のために肉を与えたし、カカシもせっせと食って、ついでに膝の上のブサ可愛いちっこい犬友にも肉を与えてたからいい感じにマッタリと食事を楽しめたぜ!他の犬友にも、俺特製バーベキュー(犬友には味つけなしの美味い肉!)は好評だったし、いい感じだ!
とにかく、カカシは何だか本当に久しぶりに良く食ってくれたから、きっと今度の舞台も大成功に違いない!
「カカシ!がんばろうな!」
「イルカ…俺は絶対にお前を見棄てないからな…!」
手と手を取り合って、俺たちは力強く頷きあった。
言ってるコトは良くわかんないけど、元気が出たのはイイコトだよな!
満足感と共に、俺はこの夏のバカンスが大成功の内に幕を下ろしたことを実感した。
…これから、元気が出た汗みずくのカカシを綺麗に洗って、髪をもさもさしてやろう!
夏のスペシャルイベント…!カカシのために来年もがんばるぜ!
後片付けをさくさくこなしながら、俺はこれからもカカシのために頑張ることを誓ったのだった。

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子イルカ夏休み編?大遅刻…!
とりあえず、夏を満喫した子イルカでございましたとさ!
パックンは常に犠牲者…。
そしてカカシの努力は実るのか…!?←無理そう。
ではではー!御意見ご感想などありましたらお気軽に拍手などからどうぞ…!

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