ふさふさの綺麗な生き物拾ったぞ!

イルカは、畑仕事の手伝いという、重要な下忍の任務を終えて、自宅へと急いでいた。
自宅の鍵をふりまわしながら、夕飯の算段をしていると、扉の前に、血の臭いをプンプン漂わせた物体が落ちていた。
邪魔だな。家には入れない…。
じゃなくて!
どうも物は物でも生き物のようだ。ごくわずかに呼吸している音がする。
と、いうことは…。
これは…噂に聞く死にかけたペットの不法投棄だろうか!?
暗いのでわかりにくいが、どうも黒っぽい様に見える。匂いからして怪我をしているようだし、顔色も青いとかいうレベルでなく、真っ白だ。
すぐに手当をしてやらなければ!!
怪我した生き物を捨てるなんて…。
ヒドいことをする元飼い主に怒りを感じながら、イルカはあわててその生き物を担ぎ上げようとしたが、この捨て…犬か、何かよくわからないが、 とにかくそれがイルカと同じくらいの大きさなのでなかなか持ち上がらない。
何度か担ぎ方を工夫してみたが、どうしようもないので、仕方がなく、血の匂いがしない足首をつかみ、引きずって家の中にいれようとした。 そのとき、今までピクリともしなかった生き物が、突然鳴いた。
…というか、しゃべった。
「…おい、なにすんだよ。」
「おお!しゃべった!!!」
しゃべるということは、忍獣なのかもしれない。賢そうだし。
…そういえば、ちょうど番犬が欲しかったのだ。
行く所がないようだし、この犬だかなんだかを、うちの子にしてしまおう!
…そうと決まれば名前をつけなければ。
「よし!おまえの名前は今日からポチだ!!!」
うみの家では、番犬といえばポチと決まっているのだ。
「まてまてまて。何の話だ!」
怪我をして弱っているのかと思ったが、どうも思ったよりは元気なようだ。
「うん。そんだけ元気なら飯、食えるよな!で、お前何食うんだポチ!」
「お前暗部なめてんのか…。」
どうもポチでは不満らしい。動けないくせに、ぴんぴん跳ねた毛がいっそう逆立ちそうな位、気配がやたらと剣呑だ。
「よし、あんぶっていうのか、お前。」
名前は…しょうがないので譲歩してやろう。どうも怪我でイライラしているようなので、銀色でふさふさした頭をうりうりして、 機嫌をとってみた。顔面は妙に硬いが、毛並みのさわり心地はなかなかだ。疲れもとれるし、心が和む。やはり生き物がいる生活はいい。
頭がぐしゃぐしゃになるまでかきぜていると、うちのあんぶくんが怒りだした。
「…クソっ!チャクラ切れだからって、バカにしてんのか!」
おお!チャクラ切れだったのか…。ならしばらく寝せとけば元気になるな!良かった良かった!じゃあ、この血なまぐささは鼻血か何かなんだろう。 キレイに洗ってから、何か食わせて…。
「おい!だからお前何食うんだ?今うちにあるのは…肉!!!そういや肉があったぞ!良かったなポチ!じゃ無くてあんぶ! 生は俺的に嫌だから、湯で豚でどうだ!!!」
昨日アスマ兄ちゃんにたかっておいて良かった。犬?かなんかだろうから塩とか駄目だよな、たしか。
「だから人の話を聞いてくれ…。」
がっくりと力尽きたらしいうちのあんぶは、完全に脱力してしまった。どうやら完全に意識を失ったようだ。しょうがない、改めてあんぶを引きずって、 風呂場に移動した。
*****
風呂場に入れて驚いた!明るい光の元で見たあんぶはどうみても人間だったのだ!!!…そういや触り心地からして人間くさかったなぁ。 …それならそうと言ってくれれば良かったのに。まあ、チャクラ切れなら人も犬もあんまり処置は変わんないけどな!
白っぽい胸当てみたいなのや、犬に見えた面などを剥がすだけでも一苦労だったが、なんとかあんぶ君(仮)を裸に剥くことに成功した!やったぜ!!!
 なんだかそれだけで達成感を感じてしまったが、このまま裸でほっといてもキレイにはならない。適当に洗い場に寝かせ、泡立てた石鹸で全身を洗ってやった。 …毛、生えてるよコイツ…。俺だってちょっとは…でもこんなには…でもいつかは…!
…なんとなく腹が立ったので、きれいに剃ってしまいたくなったが、白くて珍しいので、1本抜くだけで許してやった。あとで、宝物箱に入れとこう。
つんつん頭を洗うのが、一番楽しかった!ところどころ血がついていたので洗いにくかったが、激しい逆立ち具合の割には、あんぶ君(仮)の毛並みは やわらかく、洗い甲斐があった。それにしてもどうやったらあんなとこまで鼻血飛ばせるんだろう。
…だれかの鼻血を一心にうけちゃったとか???変わった趣味だなあ…。
まあ洗うのが楽しかったからどうでもいい。
…洗っちゃってから気づいたが、こいつに合う服は俺のうちに無いような気がする。…あ!そういえば… この間アスマ兄ちゃんから巻き上げた女物の浴衣があったような…。
商店街でおまけしてもらうために、良く変化しているのだが、最近どうもマンネリ感を感じていたのだ。そこに、それを打ち破る衣装として最適な、 きれいな浴衣を所持しているアスマ兄ちゃんがいたので、早速罠に嵌めて巻き上げたんだった。
…相変わらずひとがいいよなー。ちょっと生活に困ってる風を装ったら(実際カツカツだけど。)簡単にくれちゃったもんなー。
…俺が言うのもなんだけどさ。
まあどうせ捕獲した地点から考えても、花街のおねえさんたちへのプレゼントくさいから俺がもらっても大丈夫だろう。
…いつか真実の愛にめざめたときに、花街の女に貢いだなんて過去はあんまり多くない方がイイよ。うん。
*****
…完璧だ!なんかその手の本にでてきそうだよ!いい感じ!!!あんぶ君(雄)はやたらめったかきれいな顔をしていたので、めちゃくちゃ浴衣 (チョイスバイアスマ兄ちゃん)が似合っていた。
女もんの服着ても似合うんだから、有り余る男性ホルモンを俺に譲って欲しいものだ。もうその道で生きていけるよ。これなら。っても その道についてそんなに良く知らないけどな!
おおそうだ!化粧!化粧しておこう!!!そのまんまでもいいけど、絶対化粧もにあう。せっかくだしな!!!で、写真撮っとけば自慢もできる! うちの子自慢は、生き物を飼ったことのある人なら絶対やることだが、こんなにキレイなのを飼ってる奴はなかなかいないはずだ。…超自慢できそう。
早速いつも使っている化粧道具を持ってきた。肉などをおまけしてもらうために、ずっと修行してきた腕前を、やっと披露できる日が来た…! いつもは言っちゃうとばれちゃうから誰にもいえなかったんだよなー。おお、肌のきめも細かいぜ!化粧のノリも最高だ!!!
*****
「…。」
思わず言葉を失う。…まさに究極の美!!!さっすが俺!!!最高の出来だ!!!写真もこのアングルだけじゃもったいないなー。 うん。おきたらちょっと協力してもらって、椅子の上で小指とかかんでもらうのはどうだろう。じいちゃんの大好きな本にそんな写真があって、 食い入るように見つめてたし、きっとうらやましがるよな!
さて、これだけやっても起きないということは、飯、どうしよう。
作ってる内に起きなかったら、冷蔵庫に入れればいいよな。人間なら俺とおんなじもんで大丈夫だし。
*****
野菜と肉をいためて、味噌汁だの飯だのもできた頃、ものすごい悲鳴が上がった。…誰だよ。近所迷惑だな!…ん?そういやこの声って…。
「おい、さっきのガキ!!!お前だろ!!!どういうことだよ!何なんだよコレ!!!」
俺の最高傑作が、凄い形相でわめいている。声は出せても身体は動かないらしく、見てるとちょっと面白い。
「おー。しゃべるとまた、いいな。うん。怒ってる顔もステキ!!!」
早速褒めてやったのに、ご機嫌は下降しまくりのようだ。なんか視線で殺されそう。
「お前…。俺の面はどこだ?!」
はて?麺、綿、…面か!さっきの犬みたいなやつ。ああそれなら。
「洗って、外に干しといたよ!」
「馬鹿かお前アホかお前正気かお前!!!っていうかもう頼むからさっさと火影様に連絡入れていくれ…!!!」
大層とりみだしている美女(見た目)が布団の上で一生懸命に訴えてきた。…なかなかいい感じだな。
「あーお嬢さん。じゃなくてあんぶ?君。ここは安全なので、とりあえず飯を食え。」
いそいそと飯と味噌汁などをよそって、布団の横に持ってきた。あんぶ君(仮)は不審そうな表情から、虚脱しきった表情になっている。 うん。美人はどんな表情でもきれいだから得だな。今度あんぶ君(仮)に変化して買い物に行ってみよう。きっと沢山オマケしてもらえるはずだ!
「もう、いい。さっさと治して帰る。…帰してくれるよな…?」
不安そうな表情で、あんぶ君(仮)が言うが、え?なに?もしかして帰る気だったの???
「でも、もううちの子だし。別にうちにいればいいじゃん。」
「な・ん・で・だー!!!!!」
怒りのあまり、大口を開けているあんぶ君(仮)の口に、飯と野菜炒めをねじ込む。
「もが!う!」
「どう?美味い???人に食ってもらうのって久しぶりだからなー。どうかなー?」
「う、美味い。なんでだ…?」
「あー下忍のお仕事だけじゃ食ってけないからちょっと厨房とかでバイトを…ね。」
色々大変なんだよなー。あの時よりはだいぶマシになったと言っても、里もまだまだ厳しい状況にあるし、もう下忍になっちゃって収入のある 孤児への支援とかまで手がまわらないんだろう。…じいちゃんは心配して時々珍しいお菓子とかをくれるから、助かってるけど。…でも肉とか奢って くれるアスマ兄ちゃんの方が正直ありがたいんだよなー。
「お前も…大変なんだな…。親、は?」
さっきまでぷりぷりしていたのは、やはり腹が減っていたからのようだ急におとなしくなって、こっちを気遣う様子をみせてくれた。
信頼関係構築の第一歩はこういうところからだよな!!!
「親は、あの時に両方…。でも、もう下忍だしな!…ところであんぶ君、は?」
「あーそれで、こんな性格に…。」
「え?」
妙に納得した様子だ。うんうん。やっぱ食い物て大事だな!
「もう顔見られちゃったし、いいよな…。俺はカカシ。暗部ってのは部隊の名前。」
舞台。ということは、やっぱりそっち系の華やかな職場にいるんだな。で、その艶姿で興奮した客の鼻血を食らい、チャクラ切れで倒れた、 と。あれ?何かおかしかったような?
ま、いいか。
「もっと食う?」
「食う。でも、起こしてくれ。気管に入る。」
「わかった!」
クッションなんてしゃれたもんはうちにないので、布団を丸めて背中に突っ込んだ。
「ありがと。」
「さあ!どんどん食え!!!」
嬉しくなった俺は、あんぶ君(仮)改め、カカシ君にモリモリ飯を食わせたのだった。…一生懸命なんか食ってる生き物はやっぱいいな!!!

…そんな訳で、俺んちに新しい仲間が加わった。
「というわけなんだよアスマ兄ちゃん!」
「そうか、で、なんだ。あー、そいつ。まだお前んちにいるのか?」
なぜかアスマ兄ちゃんが脂汗を流しながら聞いてきた。顔色真っ青だし、昨日遅くまで起きてたんじゃないのかなー。早寝早起き三文の徳なのになー。 不摂生はよくないぞ!
「うん。よく本とか買ってきてくれるよ!えーと人のそんげん?とか、モラルとは?とか、変わったやつ。あ、あと料理の本も!」
「そうかそうか。…ちょっと用事が出来ちまったから、悪いが今日は帰るな。…そいつのこと、あんまり他所で話すなよ。」
「うん!」
そうだよなー。舞台俳優が一般家庭に住んでるとかって問題だもんなー。騒ぎになったら困るし。
ものすごい勢いで帰るアスマ兄ちゃんを見送りながら、俺は今日の晩飯の献立に思いを馳せたのだった。

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アホ話再び。ブログの続きをほっといたので、ちょっと手を入れておいておきます。
…前回のアホ行為の贖罪も兼ねまして…。←なってねぇ…orz。
ご要望を頂けたので、続きが出来るんではないかと思います。

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