性格の悪いカカシ注意!それと、隠さずに超微エロ(あくまで当サイト比。)がありますので、苦手な方はご注意下さい!!! いつも通り中身はあんまりありません。そして無駄に長い…orz。くれぐれもー…ご無理はなさらずー…。 「何でも聞いてあげるから、可愛くおねだりしなさいよ。」 報告書を持ってきたナルトたちに、あと数日後に迫った俺の誕生日プレゼントの希望を聞かれて幸せな気分で帰宅したら、それをぶち壊しにするわがまま上忍が憮然とした表情で待っていた。 そもそも子どもたちだけが報告書を持ってきたのも、こいつに任務が入ったからだというのにこの態度…。 威嚇するような不機嫌そうなチャクラも殺気も、いつものことだ。 当然、玄関でふんぞり返ってる態度のデカイのを無視して部屋に上がろうとした。 それなのに平然と、尊大な態度で背後にくっ付いて…しかもおねだりしろなんて…ふざけてる! 「なにもいらないから離れろ!…これから残った仕事があるから…」 クソ忙しい時期だっていうのに、コイツのわがままに付き合っている余裕なんかない。 背中に張り付いた邪魔者を引きずりながら何とか居間にたどり着くと、一際強くしがみ付かれた。 書類をカバンから取り出す余裕もない。 なんだってんだ! イライラしながら文句の一つも言ってやろうと思ってたら、そのまま押し倒された。 「つ…っ!なにしやがる!」 「ふぅん?そういう態度取るんだ?ナルトたちにはにやにやして…脂下がってたくせに?」 畳に叩きつけられるように体重をかけてのしかかられ、背中に痛みが走る。 とっさに睨みつけると、間近に迫るカカシの瞳にはほの暗い怒りが宿っていた。 するりと首筋を撫でる手からも、これからカカシが何をしようとしているか察するに十分だったが、ソレよりもカカシがあの時あそこにいたってことのほうが気に障った。 「見てたのか!?ならなんで出てこないんだ!」 任務の途中で消えたってだけでも問題なのに、任務を終えるのが間に合ったなら当然戻ってくるべきだというのに…この態度。 いい加減すぎるにも程がある! 押さえつけられた腕を振り払おうにも相手は上忍。 しかも、腰に乗られて体重をかけられ、身動きを封じられた。 …まさに手も足も出ない。 無駄に実力差を見せ付ける男はあからさまな嫉妬の視線で睨んでいるが、こんな暴挙、許してやるつもりはない! 精一杯の抵抗を示すために、手に力を込めて睨みつけた。 「なによ?その態度。」 まるで自分の方が不当な扱いを受けたとばかりに鼻を鳴らすカカシに、せめて一言言ってやろうと思ったのに…。 その表情に焦りのようなものが見て取れて、思わず怯んだ。 …何を焦っているんだろう?それに…どうしてこんなに必死になってるんだ? 普段も確かに俺様だが、ココまで強引にしてきたのは最初の頃だけだ。 任務があったと言って、コレだけ短時間で終わったのだから、恐らくカカシにとってはそれ程難易度の高い物じゃなかったはず。それが、どうしてここまで? 話を聞く必要があると思った。 抵抗を止めた俺に、相変わらずの言葉が投げつけられた。 「本当に何にもないわけ?爺婆じゃないんだから何かほしい物あるでしょ?」 どうにかして答えを得ようと必死になっているのは良く分かるが、その物言いに頭に血が上った。 「いらねぇっていってんだろ!…アンタからは何も受け取りたくない!」 …思わず頭突きをかましていた。 俺の狙い通り、額に思いっきりぶつかったせいで、流石のカカシも身を引いた。 「いったー…!なにすんのよ!」 呻きながら額を押さえ、文句を言っている。 肌が白いから、俺の頭突きで赤くなったところが良く分かる。 自分もちょっとくらくらするが、そんなこと位でこの怒りは収まらない。 「いきなりこんなコトする前に、ちゃんと聞けばいいだろ!」 まだしつこく俺の腰の上に居座るカカシは、怒鳴ってやった。 少しは反省したかと思いきや、やはりコレくらいのことでは堪えなかったらしい。 「じゃあさっさと教えなさいよ。何が欲しいのよ?着物?家?宝石なんかはいらないでしょ?」 俺の怒りなど気にもかけず、顔のすぐ横に手を着いて閉じ込めるようにして詰問してくる。 体重もチャクラも殺気も…その全部が俺にのしかかり、息苦しい。 それでも引く気はなかった。 「あったりまえだ!…何もいらないっていってるだろ?」 出てきた例が的外れすぎてため息が出る。 コイツはそんな物しかもらったことないんだろうか? 着物はまだイイとしても、何で家だの宝石だの…そんなもの貰わないといけないんだ! …モノなんかいらないのに。 必要な物があるなら自分で手に入れられるだけの甲斐性はある。 コイツが自分の身体張って里を守って…それで得た報酬を、そんなコトに使わせたくない。 「なによ?聞けって言ったのはそっちでしょ?もったいぶる気?それなら…」 業を煮やしたのか、今にも不埒なことをしでかしそうなカカシに、気がついたらこう言っていた。 「…静かな誕生日が過ごしたい。」 「ナニソレ?一人で過ごしたいってこと?」 「違う!その、宝石だの家だの要らないし、それにこういうのナシで…」 そう、静かに過ごせれば十分だ。 毎度毎度、暇さえあれば色事ばかりになりがちだが、たまにはゆっくり過ごしたい。 二人一緒に。 任務で忙しいこいつがそんな時間を取れるかどうかなんて分からないけど、できるなら。…他愛の無いことでも話して、酒でも飲みながら飯を食って、それから…俺との時間を作るために無理をする、この馬鹿でわがままな男を休ませるためにゆっくり眠って、そうやって静かに…。 だが、全て言い終わる前に、カカシはことばを遮った。 「分かった。」 憮然とした表情を隠さないままで。 「なんだよ…!」 「…それならそれでいいけど。」 その物言いに猛烈に腹が立ったが、こっちも意地がある。 それから、妙にあっさりと引き下がったカカシに不審な物を感じながら、口を聞く気にもならなかったのでその日はそのまま無言で過ごした。 あれだけ言い争っておきながら、それでも同じ寝床に潜り込んでしがみ付いてくる男に呆れながら…。 ***** カカシの中身が子どもだというのは良く知っていたが、本物の子どもの方がよっぽどマシだ。 ナルトたちは俺と誕生日を祝う予定を立ててくれてるみたいだし、もうカカシのことは放っておこうと思っていた。 …確かに自分の態度もそれほどいいもんじゃなかった自覚はあるが、今更何か言う気にはなれない。 誕生日は…両親がいた頃は、無理をしてでも帰って来て祝ってくれた。 プレゼントよりも一緒にいてくれるのが嬉しくて、だから誕生日は特別だった。 それから…両親が先立って。でも、いつも誰かが祝ってくれた。 三代目に、友人に、それから生徒たち。 イイ年して今更と思わないでもなかったけど、俺が生まれてきたことを祝ってくれる気持ちが嬉しかった。 でも、今、一番祝って欲しいのは…。 「寂しくなんか、ない。」 カカシはあれから当て付けのように文句の言葉さえ口にしなくなった。…殺気だのチャクラだので意思表示するから被害は変わらないが、静か過ぎるほど静かに、任務を片付け、無言で俺にへばりつく。いつもの減らず口は俺を苛立たせていたが、なくなってもカカシが何を考えているのか分からなくてもっとイライラした。それに、あれだけしつこかった行為もなく、代わりのように任務ばかりに出ているのだ。 …コレは絶対におかしい。 元々、カカシは俺の言ったことを基本的に気にしない。…というよりも、自分がやりたいと思ったことの邪魔になるなら平気で無視する。 任務明けなんか特にそうだ。 縋りつかれていいように流される俺の方にも問題があるのかもしれないが、カカシも俺のその甘さを読んでいる節がある。俺の怒りや感情は理解できなくても、行動は読めるあたりが上忍らしいといえばそうなのかもしれない。 それなのに、こうやって静かにしてるってコトは…絶対に何か隠しているに違いない。 …それもきっとタチの悪いことを。 今日もそろそろ迎えに…というか、攫いに来るだろう男を思って、俺は深いため息をついた。 「馬鹿野郎…。」 ***** …相手は中身はわがままな子どもでも、狡猾な上忍だってことを忘れていた。 「ええ!?」 「だって、カカシ先生が、当日は予定があるから駄目になったって言いにきたってばよ?だから俺たちのお祝いは、いちんち早いけど今日になったって!」 「あの馬鹿…!」 こういうことか! 何か企んでいると思ってはいたが、まさか子どもたちまで騙すとは思ってもみなかった。 当の本人は今日も里外任務で姿を見せず、ソレすらも計算のうちに思えてなおさら腹が立った。 「なぁなぁ!今日ならいいんだよな?イルカ先生!」 俺の怒りの形相に、祝いに夢中になってるナルトも気付いたらしい。ベストの端をつかんで不安そうに答えを強請る。 …何がどうなってるかは分からないが、コレを無視すれば子どもたちの準備が無駄にすることになる。 「ごめんな…。」 謝る俺にナルトは明るい笑顔を見せてくれた。 「しょうがないってばよ!イルカ先生はカカシ先生と違って忙しいもんな!」 …コイツが上忍の任務のことをわかるようになる日はまだ遠いから仕方がないのかもしれないが、流石にちょっと同情した。 よっぽど下忍監督任務をさぼってるんだろうか?まあ、あれだけ俺に所に来てるからおかしくはないんだが…。この態度はそれだけじゃない気がする。 折角の機会だからその辺についてもちゃんと聞いておこう。 「サクラちゃんがまってるから行こうぜ!…一応馬鹿サスケもいるけどさ。」 「コラ!仲間に馬鹿じゃねぇだろ!」 「へーんだホントのことだろ!いいから行くってばよ!」 袖を引くナルトにせかされて、憮然とした表情のサスケと、サクラの元まで連れて行かれた。 「すまんすまん!」 「いいんですよ!どうせうちの馬鹿上司のせいなんでしょ?」 「アンタも苦労してるな。」 …この態度は相当だ。 「馬鹿は駄目だぞ?一応お前たちの上司なんだから…。」 正直あの行動を知ってるだけに、どうもフォローしにくい。 「今任務中だから気を遣わなくても!実は準備は出来てたから、大丈夫なんですけどー…あのクソ上司…!これから一楽でお祝いしてくださいね!」 「ああ!」 …一瞬内なるサクラを垣間見てしまった気がするが、それだけ苦労してるんだろう。 ちょっと驚いたが、カカシの素行が伺えて苦笑するにとどめた。 「行くぞ。ドベ。」 「うるせぇ!馬鹿!」 「ほらほら!イルカ先生のお祝いなんだから早く行くわよナルト!それにサスケ君もー!」 サクラもいっぱしのクノイチになれそうだ。 そんなコトを思いながら子どもたちに引き連れられて一楽に向かった。 ***** ナルトたちは前もって準備をしていたらしく、テウチさんは快く俺のためにスペシャルラーメンを作ってくれた。 それに、プレゼントに花とお菓子と一楽のラーメン無料券までくれて…嬉しくて思わず頭をぐしゃぐしゃに撫でてやったら、皆ちょっと文句を言いながら、照れくさそうに笑ってくれた。 後は、明日…というか、既に12時を回ったから今日、カカシが何を仕掛けてくるかだ。任務終了予定は今日までだが、カカシのことだから恐らくすぐに終わらせて帰ってくるはずだ。 だが、それもどうなるかわからないと思い始めた。 …まだ帰らないカカシ。拗ねているだけならいい。でも…。 祝ってもらった時は確かに凄く嬉しくて楽しかった。コレまでのカカシの誇張されていそうな悪行を聞いて、それ以外にもナルトやサスケやサクラのコレまでの成長を間近で感じられて、祝われることを照れくさく思ったりしながらじっくり話せたから。 でも、家に帰って一人になると…。 隣にいつもいるはずの、普段はしつこすぎるとさえ思うカカシがいない。 任務で留守にすることなんか良くあるのに、最近の様子がおかしかったのも手伝って、気がつけば眠れないままこんな時間になっていた。 当日はいつも、生徒だったり、友人だったり…とにかく誰かと過ごしていたせいで、一人でいるのがこんなに寂しいなんて思わなかった。 …こんなに、不安だなんて。 任務が長引いているのかもしれない。でも帰って来なかったら…? コレも作戦かもしれなくても、湧き上がる不安で寒気さえした。 「あーもう!何やってんだ俺は…!」 帰還が遅れているのが、カカシの企みの一環ならそれでもいい。 とにかく…早く帰ってこい! 暗く沈みそうになる思考は、突然部屋の静寂を破るように鳴り響いたドアをノックする音で断ち切られた。 アカデミー関係で急な用事があるなら式を飛ばすはずだし、なによりその叩き方はドアが壊れるんじゃないかと思うほど乱暴で激しい。 カカシならこんな風にノックなんてせずに勝手に入ってきて、そのまま押し倒すかしがみ付くかだ。 …何かあったんだろうか…!? とにかく深夜にこんな音を立てるのは迷惑なのは確かだ。 俺は慌てて気配を探りながらドアの前に立った。 この気配は…! 「アスマ先生?」 扉を上げるなり、どこか切羽詰った表情で立っていたアスマ先生に何か重いものを強引に押し付けられた。 白い箱にリボンがかかっている…ケーキにしては大きくて、重い。 一体何なんだろう? 疑問符で頭を一杯にしている俺に、アスマ先生は何かにせき立てられるように言った。 「いいか!俺は確かに届けたからな!後で文句言うなよ!」 「え?は、はぁ…。」 いきなり深夜にこんな物を渡されて、文句も何もあったもんじゃないが、アスマ先生に一体ナニがあったんだろう? 「…おめぇも、苦労するよなぁ…。」 何故か急にいたわりの言葉をかけてきた。どこか悲しげで遠い目をしている。 肩をぽんぽんと叩かれてちょっと和んだが、事態はまるで飲み込めない。 「あのっ!この箱は…」 問いかけの言葉を言い切ることはできなかった。 急に、箱が暴れだしたからだ。 ガタガタと音を立て、中で何かが動き回っているのが分かる。 取り落としそうになったソレを慌てて抱えると、ようやく箱は暴れるのを止めた。 「ちっ!…わりぃが帰らせてもらうな。…気をつけろ。」 渡した本人のくせに暴れた箱に慌てたように身を引いたアスマ先生は、一瞬で隣の家の屋根まで飛ぶと、そのまま駆け出そうとしている。 「え?あの!だからこれは…!?」 「誕生日プレゼントだってよ!開けるだけ開けてやってくれ!」 慌てて掛けた声に一応答えは返ってきたが、すぐに本人は逃げるように姿を消してしまった。 これじゃ事情も聞けない。 「なんだったんだ…?」 箱が暴れるのは止まったが、だからって安全とは限らない。 アスマ先生が危険なモノを俺に渡すかっていうと、それも考えられないけど。 でも…気をつけろと言っていた。…コレはもしかして任務がらみのことなんだろうか? 開けないわけにも行かないから、中の気配が一切感じられない箱をそっと開けた。 「え…!」 そこには、一匹の白銀の猫が座っていた。 赤と青の瞳がキラキラと輝くその毛並みとあいまって、神秘的な美しさをかもし出している。こちらの驚く声など気にもせず、姿勢よくこちらを見上げる猫は、首に赤いリボンを巻いていて可愛らしい。 リボンも箱も、プレゼントらしいといえばらしいが、生き物をいきなり送りつけてくるなんて…! …と言うか、この猫は見覚えが…。 赤と青の瞳、銀色の毛、そしてよくよく見れば片目を縦に切り裂くような傷跡が…。 「アンタナニやってるんだ!」 「なぁ。」 間違いなく、コレはカカシだ。 何度か猫に変化している姿を見たことがあるから間違いない。 そのふざけた格好に怒りの声を上げたというのに、猫は短く肯定の返事らしき鳴き声をあげ、当然のように膝に乗ってきた。 「アンタなんでこんなコト…!」 俺の怒りにも尾をゆらゆらと揺らすばかりで、ソコが自分の居場所とばかりに膝の上でゆったりとくつろいでいる。 時々、ちらりとこちらを誘う様に見ては、しがみ付くように爪を立てる姿は猫というより…普段のカカシそのものだ。 「戻れよ!ふざけてないで!」 「んなぁ。」 怒鳴って、振り払おうとしても平然と俺の膝の上で伸びまでして見せる。 それもようやく自分を見た俺を楽しむかのように。 「なんだよ…!」 こっちが心配していたと言うのに、当の本人はナニが楽しいのか猫の真似事。 馬鹿にするにも程がある。 悔しくて、膝に乗ったままのカカシを無視して、そのまま立ち上がってやった。 カリカリと爪を立てたのにも構わず、台所に向かう。 こうなったら徹底的に無視してやる! わざわざナルトたちを騙したくらいだから夕方くらいには帰って来るだろうと思って…飯だって食わずに待ってたのに。 イライラしながら適当に飯を盛って、冷たいままの味噌汁をそのままぶっかけた。 食って寝てやる。猫なんか知らない。 「なぁう…。」 カカシはそれでも猫に変化したままで、ときどきちらちらとこっちを見上げながら足元にすりついてくる。 …まるで戻って欲しければ懇願しろと言っているかのように。 何かを訴えるように俺の足を尻尾で叩いて、不満そうな声で鳴いて…。 俺が強請るのを待っているに違いない。 膝に乗るのも、にゃあにゃあ鳴きながら俺を見つめてくるのも、焦れたのか、俺の手を引くように前足でちょいちょいと引っかくのも、全部…全部無視して、かき込むように飯を食ってやった。 ちっとも美味くない飯を。 「…ぅっ…く…っ」 気がついたら涙がこぼれていた。 誕生日に、それも猫に化けてまで人を馬鹿にしてくるなんて…折角帰ってきたくせに、無事な姿も見せずに変化なんかしてきやがって! 呆れる前に空しさがこみ上げてきた。 …なんでココまで意地を張らなきゃいけないんだろう。今日は俺の誕生日なのに。 カカシはそばにいるのに、コレじゃ一人で過ごしていると変わらない。 怒りも、心配も、悔しさも…どれも頭にあったけど、それよりもずっと…。 …あてつけるつもりはなかったが、涙を隠す気にさえなれず、盛大にこぼれるソレを乱暴に袖で拭った。 一度ぬぐってもすぐに溢れるソレをもう一度拭おうとして…その手を止めたのはカカシの手だった。 人に戻ったカカシの。 「なんで?なに泣いてんのよ…?」 ああもったいない!なんていいながら、俺の頬に伝う涙をしたり顔で舐め取って、我が物顔で俺をその腕に抱きこんだ。 「泣いてなんかいない…!さわんな…!」 涙でにじむ視界に、やっと人の姿に戻ったカカシが映った。 怪我はなさそうなことにほっとして、そんな自分がイヤになる。 項までされてもこいつを見捨てられないのはなんでなんだろう? 「泣くくらいならさっさと何が欲しいか言いなさいよ!」 強引に人の顔をつかんで覗き込み、いらだったカカシのチャクラのせいで肌がちくちくする。どうあってもカカシは俺に何かを強請らせたいらしい。 俺のことなんか何も分かってないくせに! 「だから何度も言っただろ!…なにもいらない。アンタが無事で、馬鹿なことしないならソレでいいのに…!」 一緒に過ごせたらいいなんて今更だ。 一緒にいても、こんなに離れてる。身体じゃなくて、心が。気持ちが。 俺の言葉に虚を突かれたように一瞬だけ驚いてみせて、カカシはすぐさまその不機嫌そうな表情を取り戻した。 「馬鹿って何よ。馬鹿はアンタでしょ?意地張って…」 俺の腕をつかむ力は強くて、振り払えそうもない。 意地張ってるのはどっちだ! 「俺は…!アンタが馬鹿なことばっかりするから…!」 「もういい。」 怒りのまま、カカシに怒鳴り返そうとしたはずなのに。 「え…?」 「アンタにはもう聞かない。」 気がついたら夜の中に飛び出していた。 ***** 見間違えじゃなければ、ここはカカシの家だ。 閉じ込められた時と大分様子が違って見えるのは、大量の料理とケーキと、それからむっつりと押し黙ったままテキパキとそれらを並べていくカカシがいるからだ。 一体何が起こってるんだ!? 「これどういうことだ!?」 さっさと食えといわんばかりに、食卓に並んだ料理を取っていくカカシは、俺の質問に極短く答えた。 「食べなさいよ。アンタが何も欲しがらないから。…コレならあんたも嫌がらないと思って。」 「なんで…?」 確かに俺は何もいらないといった。 静かにしろとも。 だがコイツのことだから俺の言いたいことぐらい判ってるんだろうと思ったのに、これはもしかして…本気で言ってるのか? 「静かにとか言うのがあてつけだってのは分かってたけどね?でも、アンタがナニを欲しいかなんて分からなかったから。」 「だからって何であんな…近寄りもしないで!」 「任務に行ってただけでしょ?金はあるけど、だからってアンタが欲しがる物思いつかないし。温泉好きだから任務まとめて片付けてそっちも予約してあったんだけど、アンタ何もいらないなんて言うから…」 不満そうにぼそぼそ話すカカシは、それでも手を動かし続け、取り皿一杯に料理を盛り付けていく。 ってことはつまり…。 「そんな、ことで…?」 俺が、怒ったから。怒ってあんなコトを言ったから…。 それでこんなコトしでかしたってことなのか…!? 「静かにしてたでしょ?ま、アイツらの予定ずらしたのは俺以外と一緒にいさせたくなかったからだけど。」 したり顔で俺に飯を差し出して、カカシがえらそうに言う。 褒めろとばかりに腕を引き、はしを押し付けて…それからついでとばかりに端を握らせた手に唇を落としていった。 「アンタって…」 子どもだと知っていたのに、ココまでするとは思わなかった。 静かにっていうのは、色事ばっかりじゃなくて、ゆっくりこいつと話したかったからなのに。 それでも…一生懸命に…自分の欲望には相変わらず忠実だが…それでも一応俺の望みを叶えようとしてくれたことが嬉しくて、それから胸が苦しくなった。 「なによ?猫になるくらいいいでしょ?静かにしてたじゃない?」 「ごめん。」 俺がもっとはっきり言っていれば…コイツが任務で無理してまで取った宿とか、一緒にゆっくり過ごせる時間を無駄にしなくて済んだのに。 「いまさらどうしたの?腹減ってるんでしょ?」 俺の隣に腰掛けて椅子がぶつかるくらいまで身体を寄せながら、カカシが不思議そうに言う。 まるで自分の努力などどうでも良かったかのように。 「俺は、ものなんかいらない。」 そうだ、最初からほしい物は決まっていた。 「ソレは聞いた。でも飯は食うでしょ?」 「…ただ、一緒に過ごせたらいいって…」 目蓋が熱くて、にじみ出る涙を止めることができなくて、…膝に落とした手をぎゅっと握ってきたカカシに顔を見せられず、うつむいた。 「そんなコトでいいの?素直じゃないったら。」 やっぱりまた涙を舐め取るカカシは、さっきと違ってうっすら笑っていて、喜んでるのがすぐ分かる。 もしかして、コイツも不安だったのかもしれない。 離れることを考えて。 「一緒にいたいってそんなこと…言われなくてもそうするつもりだったからねぇ?今更。…で、他にはナニが欲しいのよ?言って。」 強請るような囁きは、どこか必死さをにじませていて、カカシの本気が感じられた。 「そんなコトって…大事なことだろうが!アンタ無茶ばっかりするくせに…!」 その態度にやっぱり腹は立ったけど、もはや猫ではなくなったカカシから、猫のときよりずっと獣らしい表情を見せ付けられた。 「泣くなら、違うことで泣いてよ?」 分かり易い欲望をこすり付けられて、そのまま抱き上げられそうになったけど、慌てて止めた。 「飯食ってからだ!」 折角用意してくれた料理を残したくない。 食べきれないほどの豪勢な食事は、おそらくカカシのことだから金に糸目をつけずに用意したはずだ。 俺のためだけに。 ソレを無駄になんか出来ない。 …食べきれない分はちゃんと冷凍してしまって…。 色々考えてるっていうのに、カカシはにんまりと猫のように笑って見せた。 「へぇ?その気、あるんだ?」 確かに、俺は言外にこれから…食事が済んだら色事に移ることを同意したことになる。 羞恥で頭に血が上る音がしそうだ。 だがあからさまな揶揄は、ニヤついているカカシの…本当に嬉しそうな笑顔を見ると、禄に言い返すこともできなくて。 「…黙って食え!」 置いてあったはしを押し付けて、取り分けられた料理に猛然と食らいついた。 …美味い。凄く美味い。 料理が美味いのもあるけど、きっとこれは、カカシのせいだ。 「はいはい。素直じゃないねぇ?」 「アンタもな!」 憎まれ口を叩くカカシに軽口で応えてやった。 いつもの様に。 …回り道にやきもきしたけど、こうやって、一番過ごしたかった相手と今一緒にいる。 「さっさと食べてよね?したいから。」 「もったいないから断る!…アンタもゆっくり食え。」 相変わらず勝手なことばかり言っているけれど…。 ***** 散々焦らされた。 やはりカカシなりに譲歩はしたようだが、今回の俺の態度は根に持つのに十分だったらしい。 追い立てられるように服を脱がされて、すぐさま圧し掛かられて…このまま好き放題にされることを覚悟した。 それなのに、カカシはいつもの激しさと打って変わって、ゆっくりと、だが執拗に俺を弄り回した。 普段ならすぐに突っ込まれて喘がされているのに、どこか楽しげに余裕ぶったその態度を不審に思いながら、その気にさせられていく己を抑えることができなかった。 カカシと…言い合いになってから、そういうことをしていないから、自覚できない間に溜まっていたのかもしれない。 ソレすら計算していたかもしれないカカシにかすかに怒りが湧いたが、すぐさまじわじわと広がる快感の波押し流されるように意識から消えた。 …残ったのは持て余すほどの欲望。 「あっ…も…っ!」 完全に勃ちあがった肝心な所を外すような愛撫に、自分でも聞いた事の無いような甘く切なげな吐息が漏れた。後ろに入り込んだ指もただ広げるように動くだけで、いつも強引に追い立てられる時のように動いてくれない。 ソレを満足げに睥睨したカカシが、己の怒張したモノを隠そうともせずに…いや、むしろ見せ付けるかのように突き出してみせた。 「ねぇ…欲しいって言ってみなさいよ?そうしたら、これ、上げるよ?」 「馬っ…鹿野郎…っ!そ、こと、言えるか…!」 毒のように甘い声が、うずき始めた身体をそそのかす。 もっと欲しがれと。 「欲しいって、言いなさいよ。」 熱に流されてかすんだ頭でも、荒い呼吸と、足を伝う先走りが、カカシにも限界が近いことを教えてくれる。 それに、僅かに怯えたようなカカシの瞳が、熱に飲まれかけていた思考を救い上げた。 カカシは、俺から求めることを望んでいる。 「欲しいのはそっち、だろ…?」 欲しいといわせたいなら、欲しいと言って見せろ! されるがままになっていたのをやめ、勃ちあがったカカシ自身を擦り上げてやった。 その刺激に眉を寄せて耐える顔が、たまらなく欲望をそそる。 ホラみろ!アンタだって欲しいくせに! 調子に乗ってそのまま手でイかせてやろうと握りこんだ手は、あっけなく引き剥がされた。 「折角焦らした甲斐はなかったみたい?ま、お互い様ならいっか。」 「あっ!」 この口ぶりだとやはり意図的にやっていたらしい。…まあそれで不安になってたら世話もないが。 仕返しのように俺のモノを嬲り、切羽詰ったように動き出した手に応えるように、俺もカカシを抱きしめた。 「…身体は素直だしね。」 至極嬉しそうに足を開かせるカカシは相変わらずこういうコトには熱心だ。 「変なコト言うなぁ…あぁっ!」」 抗議の声を止めたのは、性急にねじ込まれた熱い肉だった。 「コレが欲しかったんでしょ?」 焦らされて、与えられたソレが与える快楽があまりに大きすぎて、思わず鼻に掛かった声を上げてしまった。 「んっ…!あ…っ!この馬鹿…!」 ニヤリと笑った顔に宿る凄みのある色気と、色悪な言葉。 …どうしてこんな馬鹿に惚れたのか自問自答してみたが、それでもコイツがイイんだから仕方がない。 「うー…!後で覚えてろ…っ!」 「いいから、もう黙って。」 そういって俺の口をふさぎ、そのまま突き上げ始めたカカシに流されるように。 …後は、言葉もなく混ざりあった。 ***** なし崩しに縺れこんだベッドで、機嫌を取り戻したようでいて、それでもまだ根に持っていたらしいカカシに好き放題された。 勝手に会話しなかったくせにその分取り返すとか言い出して…何様だ! 結局イカレた腰を抱えてぐったりと寝込む羽目になった。 それでも…。 「ご希望の静かなお誕生日ってやつでしょ?」 悪びれずにそんなコトを言うカカシが、拗ねてるのが分かったから。 「二人で過ごす。な。」 言い返したその口で、カカシの口をふさいでやった。 …どうやら、流石にこの行動は予想外だったらしい。 「うわ、アンタなにすんのよ…!」 そういって耳まで真っ赤に染めたカカシに溜飲を下げたのだった。 もごもご「後で覚えてなさいよ!」なんて言ってるのが聞こえたから、代償は高くついたかもしれないけど。 …なんだかんだで、結構いい誕生日を過ごせたと思った。 ********************************************************************************* お待たせしまくりー…。申し訳ありません…orz!!! あ、因みに、リボンを巻いたのは影分身で、決して命令されたアスマ兄ちゃんではないと言っておきます。…多分! 枳実様〜!!!どうにもアレではございますが…。 もしもご要望ご意見ご感想などがありましたら、お気軽に拍手などからどうぞ…。 ご要望に応えられていない気がする…。 |