里を救ったナルトを連れて病院へ向かって、…それからすぐにそこから飛び出した。 どこを見てもまともな建物などどこにもない。 …瓦礫の山に変わった里。 もしもの可能性が恐ろしくかった。 チャクラも残っていないから、忍犬すら出せない。それでも必死で探した。 だから…瓦礫の中にたたずむ姿を見た時、安堵と共にため息が漏れた。 「待ってて、くれたんだ。」 「まあな。…お帰り。」 そっけない挨拶も、笑顔になりきれない表情も…イルカが俺を待っていたせいだと思うと、めまいがするほど嬉しかった。 たまらなくなってその震える身体を抱きしめた。 心も、身体も…まるで全部が、しっくりと収まったようになじむ。 …戻ってきた。俺の居場所に。 イルカの身体からは血の匂いこそしないが、土の匂いとホコリだらけだ。 あの時とっさに庇うことができたが、ソレからも敵襲は続いていた。きっとイルカのことだから誰かを庇って…。 黒い思考と苛立ちは一瞬で消えた。 …乱れる呼吸で、イルカが泣いているコトに気付いたから…。 きっと、あれから俺を探して、ずっとずっと待っていたんだろう。 …一度は自分で自分を諦めた俺を。 あの時、確かにもういいと諦めた。 状況に絶望したというより、諦念で一杯になって、頭をよぎるのは、過ぎ去った過去のことばかりで、俺を捕らえたあの笑顔さえ思い出せなくて。 それなのに…。 イルカは強い。 実力は…確かに中忍の域をでないけど、根っこの部分が俺なんかよりずっと強靭で…。 俺を包み、守り、…こうして待っていてくれる。 俺なんかのためにこうやって、魂を削るように心配して、それなのに強がって涙を隠して。 その零れ落ちる涙さえ愛おしかった。 「ただいま。」 耳元にささやきを吹き込むと、イルカははじかれたようにピクンッと身を震わせた。 その仕草は夜の始まりにいつも見せる戸惑いにも似て…。 自分もボロボロだって言うのに、勝手にその気になる己の分身に苦笑が漏れる。 どんなになっても、俺が求めるのはイルカだけ。 いい加減に生きてきた自分に、こんな熱情が潜んでいたなんて想像もしていなかった。 …こうやって、この腕に愛しい人を抱きしめるなんて。 きっともう、自分の命をあきらめたりしない。 いつかがあるのなら、母の元へ急いで旅立っていった父のように…追いかけていく時だけだろう。 「…もう二度と、待たないからな。」 涙に掠れた声でそんなコトを言うくせに、きっとこの人はずっと俺を待つだろう。 …もう二度と帰らないかもしれないとしても。 その瞳が見たくて顎を掬い取って顔を上に向けさせると、苦しみと悲しみに染まっていた。 こんな顔をさせたのは。 …俺だ。 「ごめん…!」 「悪いとおもってないんだから謝るな!…ちゃんと帰ってきたから許してや…」 我慢できなかった。 強がって無理に笑顔を作って…辛いのにそんな言葉をつむぐ口なんて、ふさいでしまえばいいと。 そう思って奪った唇は、甘く俺を誘った。 思う様むさぼって、イルカが息を乱してへたり込ませるまで離れられず、これは怒られるだろうなと思いながら、勝手に動く手を押さえ切れなかった。 服をはいでいる途中で、イルカが笑い出すまでは。 「なに?どうしたの?やっぱりいや?」 いやといわれても止める気も止められる気もしなかったくせに、思わずこぼした言葉に、イルカは堪えきれないとばかりに笑いつづけている。 「…アンタ、そんなボロボロのくせに、いつもやることかわんないから…何か笑えてきた。やっぱりアンタはアンタで…生きて帰ってきたんだもんな…。おかえり。ホントに…帰ってきてくれて…っ!」 涙に輝く瞳に俺を写して、心底嬉しそうに笑うイルカは、息を呑むほどキレイだった。 同時にすぐ欲望が鎌首をもたげる。 その顔をゆがませてやりたい…溺れるほどの快楽で。 「ねぇ。分かってるんでしょ?したい。」 「ばーか!…いいから着いて来い。まず仮設でも寝るトコ何とかしないとな!」 満足したのか俺の腕から抜け出して…でも俺の手を握って離さないまま駆け出していくイルカを追いかけた。 帰ってこられたことを喜びと思えるコトに感謝して。 「テンゾウにでも家建てさせるかなー?」 ********************************************************************************* お帰りなさい記念にド短の小話を1個上げておきます! 御意見ご感想などありましたらお気軽に拍手などからどうぞ…。 |