温泉旅行…過去の経験からして、相当の対策をしていかないといけないことは分かっていた。 なにせ俺は最恐の中間管理職である中忍…そしてアカデミー教師と受付という事務系でもハードな部署に配属されているのだ。 かわいいよめを喜ばせたい。だが、中忍として、大人として、男として…仕事を中途半端にするわけには行かない! なにせ俺はかわいいよめの旦那さま!よめに恥をかかせるようなことができる訳がない! …そんな訳で、俺は自分の持てる限りの力を出し切って、じい…三代目にもおねだりして、きっちり休みを取るコトに成功した。 あとは、当日によめが暴走しすぎないように、でもちゃんと楽しめるように心を砕けばいい。 …それにしてもかわいいよめがある日突然できて、それからもう1年。 料理も洗濯も掃除も完璧で、優しくて俺を愛してくれて、俺も愛していて…あっちの方をがんばりすぎるのが玉に瑕だが、俺にはもったいないくらいのよめだ。 俺のことを可愛がってくれすぎたせいで心配性なじい…三代目や、あまりにもよめが可愛らしいコトに嫉妬した性格の悪い奴らなどの横槍が入っても、いつだってよめは健気に頑張ってくれた。 …俺への愛のために…! そんなかわいいかわいい…うちのよめとの結婚記念日。これはもう、全身全霊を持ってして祝うしかないだろう! この日のために貯金も頑張った。…といっても、うちのよめはやりくり上手だから、給料は殆どよめに渡していて、今回の宿もよめの希望で決めたからちょっとその辺は微妙なんだけどな…。 でも、一応俺の給料から出てる!…はずだ!だってそう言ってたし! よめはあんまりにも仕事が出来るから、多分俺より稼ぎはいい。…正直その辺はちょっと凹む。…美人だし、階級も上だし、気立てもいいし。 いつだって、誰かに取られるんじゃないかって不安はある。 だからこそ…俺は今回の旅行で色々よめに喜んでもらうべく、作戦を練った。 まず行き先はよめと相談して色々考えた結果、温泉にした。 前にも一度温泉旅行に行ったことがあるけど、今回はよめの希望を全面的に取り入れた、人があまり来ない隠れ家みたいな宿にした。 これまで過酷な人生を送ってきたよめだからこそ、温泉ではゆっくりとくつろいで欲しい。 温泉に入っている間にも顔を隠さないといけないのはやっぱり負担だし…。 いつかは、もっとよめの不安を取り除いて、いろんな温泉でゆったりすごせるようにしたいけど、今回は折角の結婚記念日だからな! それから…お泊りになるとはしゃぎ過ぎてしまうよめに着いていけるように、体力を付けるべく修行も増やした。…よめの暴走のきっかけはいまいちつかめないし、そもそも今回は結婚記念日の旅行だから、我慢させるのはいやだ。 …なんだか最近残業が減ったから、その時間を鍛錬に当てただけだが、それなりに成果が上がった気がしている。なにせ、昨日夜通しよめに挑まれても、翌日まで意識があったし! そして…よめに内緒で、プレゼントも用意した。 …俺たちが結婚してもう1年。俺もよめもまだまだ新婚気分だけど、1年も経てばマンネリじゃいけないっていう話も良く聞く。…夜のほうはよめの努力が遺憾なく発揮されているから常に新しい世界を発見させられているけど、一方的に努力をさせているのはよくないからな! だから俺なりにその…普段は積極的なよめに流されがちなそっちの方も盛り上げるべく、俺としては火影岩の上からよめを抱きしめたまま飛び降りるくらいの勇気で頑張った! よめを守りながら火影岩から飛び降りるなんて想像だけでぞっとしたけど、よめを守りつつ厳しい現状と戦い抜く気合いが入ったのでよしとする。 このプレゼント…気に入ってくれるといいなぁ…。 「行きましょう!とってもステキなお宿なんですよー!」 それはもう輝くような笑顔で俺の手を握っているよめに、俺も微笑み返した。 1年も一緒にいるけど、いつだってこの笑顔にはドキドキする。 よめとの時間は、俺の人生を変えてくれた。 あの時…両親を、守ってくれる腕を失って、一人ぼっちになって…それから、生徒たちや仲間には恵まれたけど、やっぱり家に帰ると寂しくて…でも、もう俺は一人じゃない。 かわいいよめを守る旦那様になったんだ! よめの白く可憐な手をぎゅっと握り返して、俺はこの幸せを守り通すことを改めて誓ったのだった。 ***** 結婚記念日…!なんてすばらしい日なんだろう!この日のために色々頑張った甲斐があった…! まずはイルカ先生の残業を減らしてちゃんと体力を温存してもらう所から始め、休暇も色々と手を打って(主にクマを利用)自分の分を確保。そしてイルカ先生にもちゃんと休みをもぎ取ってきてもらった。 恐らく爺に甘えたんだろう。…あのジジイに可愛いイルカ先生の笑顔を見せてやるのは癪だが、大切な大切な…愛しいイルカ先生と過ごせるチャンスを得られるのなら多少のコトには目を瞑る。 どっちかというと、そっちより、夜をセーブする方が辛かった。 …無意識に煽るのだ。 お帰りなさいと迎えれば、輝くような笑顔で俺に微笑み、食事を食べている最中も可愛らしい顔でほっぺたに米粒つけてたりして、それから風呂に入ったり何かしたら上気した肌が…! まあとにかく、イルカ先生はふとしたことで俺を誘惑しまくるから、その都度やりすぎるのを堪えるのが、修行よりずっと辛かった。…なんだか旅行がよっぽど楽しみなのか普段よりいっそう笑顔が輝いてたし…! やりすぎる前にやらないでおこうという意思はあるんだけど、あんまりにもかわいいから理性がねぇ…。気が付いたらもう俺の下であんあん鳴いてるんだよね…。 そんな可愛い可愛い…俺だけのイルカ先生を喜ばせるために選んだ宿は…秘湯とさえ言われる質の高い温泉と、客は一度に一組しかとらないという徹底したこだわりを持った、俺の知る中ではそこそこの所だ。 食事もそこそこ美味いし、なにより絶対に他の客が来ないのだ! 温泉も広く、イルカ先生にいろいろするには十分だから、凄くすごく楽しみにしていた。 宿代は結構いい値段なので俺のポケットマネーから出した。 …ただ、イルカ先生が気にするから、適当に言いくるめて出してもらったコトにしてるけどね。 気になるところといえば…最近のイルカ先生の動向だろうか? 隠れてコソコソ悩んでたと思ったら、最近は普段より3割り増しくらいキラキラした目で俺を見つめてくるのだ。 イルカ先生のことだから、恐らく俺へのプレゼントだろう。凄く楽しみだ!…ちょっと不安もあるけど…! めくるめく結婚記念日にしなくては…!俺の夢と希望と下半身は膨らむ一方だ! ぎゅっと握った手を一生懸命に引いてくれるイルカ先生に、後でもっと違う物を握らせることを思いながら、俺もわくわくと足を速めたのだった。 ***** 温泉は本当に小さい宿だった。 ただ、その佇まいは趣があって、どちらかと言うと忍の隠れ宿にも似て静かで、でもさりげなく高級品が使われている。 女将も大声で歓迎の声を上げたりはしない。 ただ、さりげなく俺たちに気を配り、挨拶も案内も静かな物だった。 やっぱりよめは趣味がいい。こんな風に…落ち着ける宿は確かによめの儚げな雰囲気に良く似合っている。 …似合いすぎてちょっと心配になるくらいに。 静かな宿の中を流れるの穏やかな時間。 こういう暮らしが…本当はよめにはあっている。だって、強いけど繊細で懐が深くて…そんなよめは本当ならもっとゆったりとした暮らしの方が幸せだと思うから…。 それなのに、激務続きの生活を笑顔でこなし、俺の食事も部屋の掃除もなにもかもを完璧にやり遂げて、ついでに夜の生活まで頑張ってくれているよめ。…頑張りすぎるくらいでちょっと困る時もあるけど、全てに愛が篭っている。 俺は中忍で、仕事に誇りは持ってるけど薄給で、結構忙しいから休みもあんまりなくて、強さだって中忍の中ではそこそこといった程度で、よめの足元にも及ばない自覚がある…でも、それでも…よめは…俺を選んでくれた。 ソレを思うと湧き上がる幸福感でくらくらした。温泉どころかまだ部屋にも入っていないのに、足元がちょっとふらつく。 そんな俺を心配そうに見つめ、よめが手を引いてくれた。 「大丈夫?つかれちゃいましたか?温泉入ってゆっくりしましょうね…?」 この気遣いといい、優しい声といい、さりげなく俺を支えてくれるところといい…!やはりうちのよめは最高だ!美人だしな! …ああ心配だ…!こんなに魅力的なよめが出来ると、始終気が抜けない。どこによめを狙ったり、後は嫉妬のあまり傷つけようなんて輩が潜んでいるか分からないからな! でも、ここが小さな宿でよかった!女将の話だと客は俺たちだけらしいから、こんなに色っぽいよめを他のヤツに見せなくて済む! 最近富に色っぽくなったよめのせいで心配はつきない。旅行が決まってからどうしてか、普段よりいっそう色っぽくなって、そんなよめに切なげな表情で迫られるとついつい、その…よろめくというか、可愛くおねだりされたら拒めるわけがないというか…!それに、この魅力にひっかかる間男がでやしないかというのも勿論だ。 今日だって、出かけるときに素顔を見せちゃうのがいやだから、ココに来る時も忍服姿にしてもらってたくらいだ。 …たが、温泉となるとそうは行かない。 浴衣を着るのは温泉では絶対の掟!…それに、よめの浴衣姿はいい目の保養になる。 でも、今のよめが着たらきっとものすごい色気だから、その辺が心配すぎて思わず目潰しとか目くらましのトラップを量産しちゃったくらいだ。 ああ…楽しみだ…! 俺が思わずにやけると、心なしか腰を抱き寄せるよめも頬を赤く染めて、ぎゅっと抱き寄せてくれたような気がした。 ***** ちょっと最近無理をさせていたからなのか、イルカ先生がよろめいていたので、慌てて手を引いて、ついでに邪な欲望を隠しつつ、腰とかお尻とかさりげなくなでまわしながら部屋に急いだ。 …それにしても、どうしてこんなに色っぽいんだ! 俺をうっとりと見つめて、甘い吐息を零して…目なんか潤んでるし!ここが廊下じゃなかったら思わず襲いかかっている所だった! とにかく部屋までいっちゃえばこっちの物。本当は最初はゆっくりさせてあげたかったけど、我慢できないからもういいかな! なんてことを考えながら部屋までイルカ先生を連れ込んだ。 「わぁ!凄い…!」 …部屋に付いた途端、イルカ先生が急に復活した。 この部屋は、渡り廊下でつながってはいるけど別の建物になっている。 庭も仕切られていて、露天風呂が付いてて、しかもしっかり受付とも離れているから見られたり聞かれたりする心配がはまずない。盗聴や術も勿論ない…元々大名だの忍だのがお忍びで利用する宿だからその辺はきっちりしている。一応事前に影分身でチェックしてるしね。 つまり、イルカ先生がどんなに大きな声をだしても、鳴いて縋ってきても、やりたい放題できるってことだ。折角の温泉なんだし、また浴衣のままで色々するのも楽しそうだ。それに…ココの庭なら色々…! そんな俺の計算なんかしらないから、イルカ先生は部屋中を見て回り、風呂の広さや調度やお茶なんかもチェックしてはしゃいでいる。そのかわいらしさに目を細めてる間に、窓から覗ける庭にも気付いたのか迷わず庭に下りていった。 「露天風呂―!!!」 歓声がしっかり聞こえた。すっかり夢中になっているイルカ先生はすごくかわいくて…これからのことを思うともう笑みが押さえられない。 でも、あのはしゃぎっぷりだと足でも滑らせないか心配だ。忍としての実力はそこそこなのに、けっこうそそっかしいからなー。ナルトかばう時なんか背中に大怪我したって言うから心配すぎておかしくなりそうだ。俺が気をつけてあげないと…! 「イルカせんせ。危ないから走っちゃ駄目ですよ?」 追いかけると、露天風呂の周りを嬉しそうにぐるぐる見て回っていたから、そっと背後から抱きしめた。 温かい体を腕の中に閉じ込めて、しばし幸福感に浸る。 「あ…ごめんなさい!」 慌ててすまなそうな声を上げた所も、真っ赤に染まったうなじも、すかさず腕を握り返してくれる所も…なにもかもが理性を削り、本能をガツガツ刺激してくれる。 …今なら隙だらけだ。 そんな声が脳内に響いて、その声に逆らう気なんかあるはずもなくて、そのままうなじに顔をうずめようとしたら…急にイルカ先生がぐるっと体を回して抱きついてきた。 「庭、いっしょに散歩しましょう!」 期待に満ち溢れた声で、俺の手をぎゅっと握った様子からすると…多分、俺を置いてっちゃったのを気にしてるんだろう。 「はい…!」 健全すぎるほど健全な笑顔に、俺はそう答えることしか出来なかった。 …チャンスはまだある。 そんなコトを何度も己に言い聞かせながら…。 ***** よめと一緒に庭を見て回った。 三代目のお屋敷ほどじゃないけど、結構な広さで、綺麗に整えられた木々を二人で一緒に楽しんだ。小さな池にはアメンボなんかもいて、それに山の上にあるから結構珍しい草花があって、その中に混じってゆりの花も咲いていた。その凛とした美しさがまるでよめみたいだったから思わずみつめてたら、よめがちょっとむくれて、「ねぇ。イルカせんせ。俺のこともちゃんと見て下さいね?」なんて可愛いこと言ってくれて…その場でちょっとその…キスとかしちゃったりした。 やっぱり旅先だと開放的になったよめがより一層可愛らしく見えて困る。こんな姿他の誰にも見せたくない。 ただ、まだ忍服のままだったから、その辺が残念だった。まあ、よめが浴衣姿だったら、勢いあまってその場で…なんてことになってたかもしれないからそれはそれだ。外だと特によめも…それに、俺もついつい開放的になってしまうから気をつけないと。 それに「夜になったらイイ物が見られるから後で散歩しましょう?」って、キスしたあとによめが言ってくれたから、ソレを楽しみにしておこう! 二人でずっとくっついて庭を回り終わったから、とりあえず、まずは温泉だ! ずーっと一緒に引っ付いていられるのも旅行中だけだと思うとちょっと切ないけど、この時間を大切にしないと! よめの手をぎゅっと握り締めて、俺たちは部屋へ急いだ。…なんだかよめも足が速かったから待ちわびてたんだろう。背中とか流して一緒にくつろごう! 後で、俺もがんばらないといけないし! ***** イルカ先生を何とか襲わずに済んだ。 庭でも可愛い姿を惜しげなく俺だけに晒してくれるイルカ先生に、もうめろめろだった。途中で百合なんかに見とれてたから、ちょっと拗ねて見せたら、蕩けるような笑顔で「かわいいなぁ!うちのよめさんは!」とかなんとかいって、イルカ先生の方から積極的にキスしてくれた。 …もちろんその場で美味しく頂こうと思ったんだけど、幸せそうにしてるイルカ先生を見てたら、まだ早いと思いとどまることが出来た。 だって、浴衣着てないし!それにココは夜にこそ来るべきだからな。 イルカ先生にも夜の散歩の予約をしておいたから、これから色々用意しておこう! まずは…イルカ先生と温泉でしっぽりと…!にやけながら、俺たちはそろって露天風呂まで急いだ。 脱衣所について、まずはイルカ先生の肢体をしっかり凝視しようと思ってたんだけど…なぜか今回はイルカ先生が積極的だった。 「さ、誰もいないから、安心して脱いでいいんですよ…?」 穏やかな笑みで俺の忍服に手をかけるイルカ先生。…それはもう美味しそうで…! そんなセリフを言っている当の本人はすでに全裸って言うのも味噌だ。 こんなコトされたら俺を安心させるためなんだろうけど、そのまま風呂なんか後にして脱衣所で始めたくなる。屈みこんでズボンに手なんかかけられたらもう…! …堪えきれずに伸ばした手は空を切った。 「温泉…!気持ち良さそう…!」 露天風呂好きのイルカ先生は我慢できなかったみたいだ。いつのまにか全部脱がされていた服を適当に寄せた後、俺の手をぐいぐい引いて露天風呂まで連れて行ってくれた。 「行きますよー!背中流してあげます!」 …ちょっと悔しいが、美味しい状況であることには変わりがないと思いなおした。 大胆にも大股開きでいそいそと歩くイルカ先生に手を引かれるまま、シャワーの前に座らされて、それから甲斐甲斐しく体を流してもらった。 「背中かゆい所ないですか?」 「はい!ありません!」 して言うならイルカ先生が一生懸命に俺の背中を流すあまりこぼれる吐息が背中を伝い、思わずその気になっちゃったりしたくらいだがソレはまだいい。 やるなら最初は部屋か外だ。温泉でやっちゃうと、後が続かない。 計画を実行するために何とかして堪え、お返しに流そうとしたら既にイルカ先生が石鹸水をかぶって適当に体を流していた。 「さあ入りましょう!疲れてるでしょう?」 温泉、凄く楽しみだったんだろうな…!その笑顔が眩しい…!それと、しなやかな裸体も…!!! 腰に来た。が、イルカ先生は健全すぎるほど健全な笑顔を浮かべて湯船に突入したので黙っておく。 「ふぅ…!気持ちいいなぁ…!」 美味しそうでたまらないイルカ先生が俺の手を握ったまま目を細めている。その表情に昨日の夜の媚態を思い出して、興奮が治まらない。 だが、まずは確認だ。普通の会話だ。俺の理性!耐えてくれ…! 俺のいちゃいちゃ温泉計画のために…!!! 「イルカせんせ…。ここ、気に入ってくれましたか…?」 そっと目を伏せて、心配そうな声を作って…これならきっとイルカ先生もイイリアクションをくれるはず! 「勿論!お部屋も凄く素敵だし、このお湯も気持ちイイし!…でも…!」 あれ?意外と駄目だった!?しまった…!イルカ先生はひょっとしてもっとわいわいざわざわした所が好きだったんだろうか…!?そういえば前に行った所も結構人が多い宿だったけど…!? 焦る俺にイルカ先生がそっと寄りかかってきた。 並んで風呂に入ってたから、湯煙ですごいコトになってる下半身はばれなかったと思うけど…! 何ですかそのかわいさは!?今すぐめちゃくちゃにしていいんですか!? 興奮はピークに達し、理性はすでに擦り切れる寸前だ。 そんな俺に、さらにイルカ先生がダメ押しをした。 「俺は、よめと一緒にいられればどこでも幸せですから…!」 言った後照れた。それに顔が真っ赤で潤んでて、しかも声がちょっと震えてて緊張してるの丸分かりで…! 「イルカ先生…!!!」 気が付いたらイルカ先生を抱き上げて、部屋に連れ込んでいた。ベッドのある部屋でよかった…!そんなコトを思いながら。 ***** 「わー!まだ濡れてるから!ベッドが…!」 何だか分からないが、感動屋のよめを驚かせてしまったらしい。温泉でその…あんまりにも色っぽくてかわいいよめにドキドキして、思いの丈をぶちまけてしまったら、いきなり抱き上げられて、びしょぬれのまま部屋に持っていかれてしまった。 ベッドに落とされてすぐよめが上に覆いかぶさってきて、湿って熱い肌が俺に触れる。 「イルカ先生…!嬉しい…!」 濡れたベッドは気になるが、それはもう嬉しそうに涙まで零しそうなよめを見ていると、もっと普段から愛を実感させてあげないとと思った。不安にさせていたんだとしたら、夫失格だ! ああそれにしても…!なんてうちのよめはかわいんだろう! 俺の言葉にこんなに感動して…あとちょっと…いや、大分興奮もしてるみたいだけど、こんなに熱烈に愛を表現してくれるなんて、俺のほうこそ感動した。 ぎゅうぎゅう抱きついてくるよめを抱き返して、密着したことでわかったよめの高ぶりが相当せっぱつまってること驚いて…それから、覚悟を決めた。 よめは外ではこうなりやすいって知ってたからな。これくらいじゃ驚かないぞ! そりゃ、付き合い始めた頃は驚いたけど、今は俺だけに向けられる欲望の視線が心地いいと感じている。 ちょっと…いや多分凄く体は大変なことになるだろうけど、それもまた旅の醍醐味。 普段すごく頑張ってくれているよめを満足させるのが、夫の務めだ! 「イルカせんせ、イルカせんせ…!」 性急に体中を…特に足の間をまさぐり、食いつきそうなくらい激しくキスを落として、何かを堪えるように苦しそうな顔をしているよめを楽にしてあげたい。 「大丈夫。逃げたりしないから。」 そう思って濡れた髪を書き上げて、俺からそっとキスをしたんだが…。それが火に油を注いでしまったらしい。 「好き。大好き…!」 「うぁ…っんっ!」 すごい勢いで足を掴まれて、性急に突っ込まれていた。 衝撃で腰が震えて、歯の根が合わない。よめは元々元気一杯な下半身を持っているが、今回はまた相当な状態だ。 腹を一杯に満たすその熱い杭に押し広げられて、一瞬息が止まった。 苦しいような切ないような…でも、確かな充実感が俺を満たしていく。 「気持ちイイ…!」 よめがぴったりと胸元に顔を寄せて、悩ましい表情で甘い吐息を吐いている。その姿にも煽られて、こうなったら徹底的に付き合おうと思った。 「ん、も、大丈夫だから…っ!」 乱れる呼吸でそう言うと、よめが蕩けそうな笑顔でキスしてくれる。何度も何度も。 「イルカせんせ。好き。好き過ぎてどうしよう?」 におい立つような色気とともに、その秀麗な顔をゆがめるよめは、信じられないくらい美しい。その表情を引き出しているのが俺だと思うと、たまらなく嬉しい。 「あ、俺も、好き。愛してる…!」 堪えきれない熱い息が肌を撫で、激しく出し入れされて、俺の口からこぼれるのは嬌声だけ。でも本当はもっと愛を伝えたい。こんな時じゃないと、俺はこういうことを言えないから。煌く雫がよめの肌を伝って俺に落ちて、その刺激にすら感じて…。俺も縋りつくようにして腰を押し付けた。 「あ、だめ…っ!」 よめが可愛らしい声で切羽詰ったことを告げてくる。そんな声だされたら、俺だって駄目に決まってる! 思わず中で暴れまわる肉を締め付けてしまった。 「く…っ!」 「あぁっ!」 熱いものが俺の中を一杯にしていく。力が入らない。 「出しちゃった…っ!でも、イルカせんせもイっちゃったね…?」 出したのに出て行かず、ゆるゆると腰を揺らすよめは、俺の感じる場所を刺激し続けている。出したはずなのに、すぐに硬さを取り戻して。 「あ…?」 言われて見れば、よめの白くて、でも鍛え上げられた腹筋に、白く粘ついた物が飛び散っている。出したとそんなことも分からないくらい、よめの顔と声と与えられる熱に溺れていたから気付かなかった。 そうして、今も。 「全然足りない。もっと…!」 甘えるようにすがり付いてきて、その声の弱弱しさとは正反対に激しく叩きつけられる腰に翻弄されて、俺は意識を失った。 ***** やってしまった。だってあんなにかわいいから…! 「ん…。」 イルカ先生がぐったりしている。そりゃそうだ。温泉に入ったのが昼前で、でももう今は夕方。やりすぎだ。昼ごはんも食べないで淫行に及んでしまった…。 「ごめんなさい…!」 体はもちろん綺麗にした。抱き上げてちょっとだけだけど温泉にもつかった。…ちょっと勢いあまって触っちゃったり、意識がないのに反応してくれる律儀な体に思わず入れそうになったけど堪えたりはあったけど。 でも、イルカ先生にはもっと楽しんでもらうはずだったのに…! 「ああ。泣かないで…?」 反応があるなんて思ってもみなかったイルカ先生が、ゆっくりと瞳を開けて俺の頬を撫でてくれた。 その漆黒に輝く瞳に見つめられると、俺はいつだって嬉しくて切なくて…暴走しそうになる。この瞳に映るのが俺だけならいいのにと。 その瞳の深い黒に溺れそうになって忘れてたけど、イルカ先生に水分を取らせないと!」 「大丈夫ですか…?すぐお茶を…!」 さっき冷たいお茶を用意してもらったから、すぐに飲んでもらおう。 立ち上がろうとした俺の腕を、イルカ先生が掴んだ。 「ん。いいから。ちょっとこっちきなさい。」 引き寄せられる。腕の力は無理をさせた成果やっぱり弱くて、簡単に振り払えるはずなのに。ふらふらと誘われるように抱き寄せられて、頭をゆっくりと撫でられた。 「イルカ先生…?」 「そんな顔しないで?まあちょっと…ちょっと寝すぎちゃいましたけど、大丈夫だから。」 相変わらず男前に微笑んで、優しく甘く俺に囁く。その声に溶けてしまいそうだ。 「でも…!」 食事もさせて上げなかったから、きっと疲れてるしおなかも減ってるはずだ。今すぐに何とかしてあげたい。 俺の焦燥を見て取ったのか、イルカ先生がくすくす笑って言ってくれた。 「しょうがないなぁ。じゃあ、一緒にお茶飲んで、それから、もう一回お散歩と…後何か食べましょう!」 ふらふらしてるくせにそんなコトを言って、俺の手を引いて立ち上がろうとしているイルカ先生は、いつだって俺のことを大事に大事にしてくれる。 だまし討ちみたいに手に入れて、結婚までした俺のことを。 優しくて可愛くてちょっと天然で、でも男前で器が大きすぎるくらい大きくて…でも俺だけの物になってくれたイルカ先生。 絶対誰にも、渡さない。 「大好きです…!」 ぎゅっと抱きついた俺の背中を優しくなでてくれるのに甘えて、結局しばらくくっ付いたままでいた。 ***** よめが出してくれた冷たいお茶を飲んで、それからすぐ宿の人が食事を用意してくれた。 時計を見たら結構な時間なのに、そういうところまで融通が利くらしい。さすがよめが選んだだけあって、すごい宿だ! かわいくすがりついてきたよめは、あれからずっと俺にくっついててくれて、やっぱり可愛くて顔がにやけっぱなしだ。 俺は最高のよめをもらった!日々そう思っているが、今日はまた格別にそう思う。 「はい、あーん!」 「あーん!」 食べさせあいっこしながら、食事をするのも楽しいし、よめが一生懸命に俺を求めてくれたのが嬉しいし、かわいいし! …まあ、ちょっと体は辛いが、その辺は織り込み済みだ。よめのためなら何でもできる! 持ってきたプレゼントを渡すタイミングを計りつつ、俺とよめは仲良く食事を済ませた。よめの手料理より落ちるが、美味くてかったが、それよりなにより、引っ付いてくるよめを眺めるのに夢中になってたから、ちょっともったいなかったかもしれない。 二人でじゃれながら食事をしていたせいで、気が付いたらすっかり辺りが暗くなっていた。 「あ、土産物とか買ってない。」 思わずそう呟いた俺に、よめがにっこり笑ってくれた。 「それならもう用意してありますから!大丈夫です!」 さすがうちのよめ!至れり尽くせりだ!でもなぁ…。 「旅行先なんだから、ゆっくりしてていいんですよ?」 こういう時でもしっかり気をまわせてしまうよめが、心配でならない。誰かに利用されたりしてないだろうか…!?かわいいし、優しいから、そこに漬け込む不埒な輩もいるかもしれない。 …もちろん、そんな奴らはうみの家直伝トラップの餌食にしてやるつもりだ。 復讐を決意している俺に、よめが慌てたように教えてくれた。 「ああ、違うんです!この宿の人に頼んでおいたんです。…だって、イルカ先生とずーっといちゃいちゃしてたかったから…!だめ、でしたか…?」 なんて…かわいいんだ!申し訳なさそうな顔で、でも俺の浴衣の裾をぎゅっと握ってて、上目遣いで…!!! 「そんなことない!ただ、俺がもうちょっと考えればよかったなって!」 「いいんです!だって、俺が宿決めたから…!」 健気なことを言うよめに、さっき散々ヤッて疲れたはずなのに、ついついキュンとした。 キスして、頭撫でて、それからぎゅっと抱きしめたい。 …でも、それじゃさっきと同じになる。まだプレゼントを渡してないからだめだ! 「今度は一緒に俺も考えるから…一人で頑張りすぎたら駄目です!」 それだけ言って、頭を撫で撫でして、湧き上がる衝動を誤魔化した。 「はい…!」 キラキラした瞳で俺を見るよめを見ていると、うっかりしてしまいそうだったので、今すぐ渡してしまおう。 そう思った俺の手を、よめが引いた。 「お散歩、行きましょう?」 そういえば、さっき約束した。何かきれいなモノが見られるとか…!楽しみだ! 「行こう!」 よめと一緒なら何を見ても楽しいけど、よめがこんなに楽しみにしてるんなら、きっとすごいモノが見られるんだろう。 わくわくしながら、庭に出た。 …もちろん二人一緒に手を繋いで。 ***** 「どこまで行くんですか?」 よめに連れられるままに、庭を歩く。暗くても忍だ。別に歩くのに問題はないが、よめの足は凄く速いのでちょっと引きずられそうだ。 「さっき、川があったでしょう?そこが綺麗なんです!」 「ああ、そういえば。」 小さなせせらぎみたいになってるところがあった。あそこならもうすぐ着くだろう。ただ、普通の川だったと思うけど。 でもよめがわくわくしてるのがかわいかったので、その辺は口にしないで置いた。よめの顔を見てるだけでも楽しいしな! 「ほら。見えてきた!」 よめが一際強く俺の腕を引いたせいで、よめの懐に飛びついたみたいになっちゃったが、底から見た景色は…すばらしかった。 「蛍…!」 辺りを明るく照らすのは無数の淡い光。さっき来たときはアメンボに夢中になって宝気がつかなかった。 「すごいでしょ?」 にっこり笑うよめは、やっぱりすごい!こんな所まで考えてくれたなんて…! 「凄く、綺麗だ…!ありがとう!」 輝く蛍に照らされて、銀色の髪が、白い肌が、淡く光をはじいて、まるで輝いているみたいに見える。 そう、まるでそのまま光に溶けてしまいそうな…。 …ぞっとした。さっきまで確かに美しいと思っていたのに。 「イルカせんせ?」 よめが驚いている。そりゃそうだ。こんなに綺麗なのに、よめの手を握ってぐいぐい部屋に引っ張っていこうとしてるんだから。 「駄目です。…あんなに綺麗だけど、そのまま消えちゃいそうだ。そんなのイヤだ…!」 自分でも何を言ってるんだと思ったけど、よめは分かってくれたみたいだ。 「イルカ先生ったら…!俺は、ちゃんとここにいますよ。」 ふわっと笑ったその顔がまた儚げで、俺は胸が締め付けられたように苦しくなる。もう失うのに耐えられない。こんなに大事なのに、失ったら俺も生きていけない。 「外は…あそこはいやだ。部屋で、ゆっくりしたい。」 俺の子どもみたいなわがままを、よめは笑って許してくれた。 「いいですよ。さ、帰りましょう?」 その手の暖かさに、確かによめがいるってことがわかって、それを確かめるためにぎゅっと握り締めた。すぐに握り返された手のぬくもりに、甘えてしまったことが恥ずかしくなったけれど。 ***** 「温泉、入りましょうね?」 イルカ先生と蛍の光に照らされた幻想的な空間でエッチという野望は費えた。 だって!あんなに不安そうな顔されたら、勃つもんも勃たない! 良く分からないが、イルカ先生にとっては蛍は綺麗だけど鬼門ってことらしい。俺が消えそうにみえるなんて言ってくれるのはイルカ先生だけだから、その辺は褒め言葉と受け取っておいた。 クマなんか何度消しても甦ってきそうだとかいいやがるからな。爺に至っては俺のこと害虫扱いだし。…報復はそれなりにしてあるからいいけど。 さっきやりすぎちゃったし、その辺は諦める。…本当はかなり悔しいけど、イルカ先生に喜んでもらうのが一番だから。 「…うん。」 俺に手を引かれて、ちょっと泣きそうな顔のまま素直にコクリとうなずいて、イルカ先生がもたもたと浴衣を脱いだ。まだ、不安なんだろう。ちらちら俺の方を見ては、手をおぼつかなげに動かしている。 あんまりにも不安そうだから、今度はさっきと逆に俺が服を脱がせてあげた。この分だと温泉でも不安がりそうだから、ちょっとゆっくりしてから、本番に移ろう。 不安をまとわりつかせたイルカ先生を安心させて上げたい。…それに、不謹慎だと思うけど、こんなイルカ先生も凄くかわいい。 「さあ、入りましょう?」 「…一緒に…。」 ぴとっとくっ付いてきたイルカ先生に理性やその他もろもろが色々と危険な状態になったが、さっきのことで気合を入れなおしてあったので何とか耐えた。 「ええ。一緒にゆっくりしましょうね?」 「うん。」 やっと、笑ってくれた。 イチャイチャするのも好きだけど、この笑顔を見るのも大好きだ。イルカ先生にはいつだって笑って欲しいから、俺は頑張れる!…欲望の方も捨てきれないのは大目に見て欲しいけどね! 適当に身体をながしてから、温泉に入った。 俺から離れたらしんじゃうっていう勢いでくっ付いてくれるイルカ先生と、キスとか、ちょっと触りあいっことかして、安心したみたいにふわふわ笑うイルカ先生を楽しんだ。なんだかわからないけど、取り合えず落ち着いてくれたみたい。 長湯は苦手だけど、イルカ先生がくっついててくれるから、余裕で耐えられた。 …今度はじっくり楽しまないと! 高まる期待を胸に温泉で美味しそうに赤く色づいたイルカ先生を連れて部屋に戻ると、食事の仕度が出来ているという知らせがあった。この辺は流石だ。勝手に入ってこないし、タイミングなんかをきっちりはかってくるから、前回みたいにイルカ先生をみられないように気遣う必要もない。 「ご飯。食べましょう!」 温泉でいちゃいちゃして、復活したのと同時に空腹も甦ってきたらしい。 起きてから食べたのは本当にちょこっとだけだったし、俺もそこそこ腹が減ったし、イルカ先生にしっかり食べさせないといけないから、すぐに電話して用意させた。 「じゃ、酒も宜しくー!」 …きっちり小道具も準備済みだ。一服盛ったりしなくても、旅先のイルカ先生は程良くゆるんでるから、多分酒だけでイける!飲みやすいのを用意して渡してあるから、準備はこれで大丈夫のはず…。 後は、イルカ先生次第なんだけど…。 ちらりと視線をやると、やっぱりさっきから荷物をごそごそやってる。イルカ先生にしては荷物が多いなぁと思ってたけど、何かあるんだろうか? 「イルカ先生?ご飯はすぐにきますからねー?」 そっと声を掛けたら、イルカ先生が思いつめたような表情ですっと何かを差し出した。 とっさに受け取ったプレゼント用に綺麗に包装された箱はそれなりに大きいが軽かった。 でも、これってもしかしなくても…やっぱり俺にだよね!何か用意してるのは知ってたけど、いざ渡されるとなると嬉しいし、照れくさい。 もじもじしながら鼻傷を掻いて照れている様子からして、まず間違いないだろう。 ドキドキしてる俺に、もっと緊張した面持ちのイルカ先生が口を開いた。 「俺と結婚してくれてありがとう。」 「イルカ先生…そんな!俺の方こそ…!」 俺は酒と宿とそれなりのシチュエーションは用意したけど、プレゼントまでは用意しなかった。 …イルカ先生が凄く気を使うのがわかってたから。 「…開けてみて。」 慌てふためきながらも、イルカ先生がそんなコトを言うので、慌てて包装をあけた。 ちゃんと破れないように丁寧にあけて、それから出てきた箱の中身に驚愕するはめになったけど。 「それ…趣味が合うかどうか分からないけど、似合うと思って…!」 やはり…こう来たか…!? 実はちょっとは予想していた。 イルカ先生は俺を可愛らしいと思っている。俺からしてみれば数億倍所かイルカ先生以外にかわいいという言葉を使っていい存在はないといえるくらい可愛いと思うんだが、イルカ先生にとっては、俺=イルカ先生のよめ=世界一かわいいだ。 …よめ冥利に尽きるとは思うが、問題が…。 何故かイベントごとになるとせっせと俺を装わせようとするのだ。 結婚式のドレスと白無垢は…面倒な爺と一蓮托生だったからまだイイとして、今回は…ネグリジェ。 白くてふわふわで、でもサイズはきっちり俺でも着られる大きなもの。勿論イルカ先生の趣味に合わせてミニ。 …ハードルは高く、ダメージは大きい。 むしろイルカ先生が着てくれたら似合うと思うんだが、今目の前で瞳を不安と期待でキラキラと輝かせながら、美味しそうに微笑んでいるイルカ先生にそんなコトは言えない。 それにしても、湯上りでより一層色気が…!1年仕込んできた成果だろう。うなじも、足首も…全身で俺を誘っている。昼間中ヤッてたからより一層だ。 スペシャルな夜にしたいのは俺も一緒。だが、これはキツイ。一年に一回の記念日にこれは…! 「あ、ありがとうございます…。」 とりあえず受け取ったが、これからどうしたらイイんだ!? 箱のふたを一旦閉めても、プレゼントはなくならない。 「あ。食事!」 女将のお食事を置いていきますという声に反応して、食事を取りに出たイルカ先生の後を追う気力もなくて、強烈な存在感を放つ箱を見つめていた。 ***** 「あーん!」 「あーん!…美味しいですね!」 食事を持ってきたら、よめが何だかプレゼントに放心していた。渡した時も震えながら喜んでくれたみたいだから、プレゼントをした甲斐があった! …風呂入ったばっかりだけど、着替えてくれないかなぁ?きっと似合う! そんな淡い期待を抱きながら食事をした。 よめがせっせと俺に飯を食わせてくれて、俺も負けじとせっせとよめに食わせて、それから酒も一緒に飲んだ。 飲みやすくて凄く美味い酒。それにかわいいよめの酌があったら、ついつい飲みすぎてしまうのも無理はないと思う。 そんな訳で、食事が済んでからも酒が回った俺は、ちょっとふらふらしながらよめに膝枕してもらっているわけだ。 幸せだなぁ…!美味い飯に美味い酒に、かわいいよめ! …結婚記念日なのに、俺ばっかり得してる気がしてくる。 さっきだって、散歩中にわがままいっちゃったしなぁ…。 急に心配になって、思わず俺の頭をなでてくれるよめの袖を引いて聞いていた。 「楽しかった?旅行…。俺ばっかり楽しくて…。」 「ええ、もちろん!」 酒のせいで語尾がふにゃふにゃ崩れてしまっても、よめはやっぱりちゃんと俺の言葉を理解してくれた。さすがよめ! 優しいまなざしになんだかこのまま眠り込みたくなってきた。 でもなぁ…よめにさっきのきてもらって、それから俺が頑張る予定だったのに…! 「うー…!」 何とかおきようと頑張ってもがく俺を、よめがスッと抱き上げてくれた。なんだろう?どこにいくんだ? 「お布団ですよー?…ちょっと寝てからにしましょうね?」 何だか良く分からないけど、よめが添い寝してくれるってコトは分かった。寂しがり屋のよめを置いて一人で寝るわけにはいかないと思ってたから、よめも眠いなら丁度いい。 「ほら、こっち。」 「はい。」 よめをしっかりと抱き寄せて、一緒に夢の国へ旅立った。 幸せなぬくもりを手土産に。 ***** 「ねちゃったかなー?」 酒を飲みながら船をこいでたから、寝ちゃうだろうとは思ってた。ソレを分かってて酒飲ませたのは俺だしね。 …このプレゼントは…せめて旅行中は封印しておこう。 そのために酒を飲ませて寝てもらった。起きたらプレゼントだから大事にしたいって言えば大丈夫だろう。 ちょっと寝てもらって、それから…またいちゃいちゃしよう。 温泉ならではのプレイは出来なかったけど、一日中ひっついてくれるイルカ先生は堪能できたからソレで良しとしなくては。 俺を大事に大事に…宝物みたいに胸にしまいこんで眠るイルカ先生の寝息に誘われるように、俺も一旦瞳を閉じた。 ***** 目を開けると、俺の腕の中でぐっすり眠るよめがいた。俺と一緒に寝てしまったから、当然プレゼントは着ていない。 でも、間近で見てもやっぱりうちのよめは美人でかわいい。 ソレを再確認すると同時に、俺の今回の目的を達成していないコトに気がついた。 よめからばかりでなく、俺からもがんばっていちゃいちゃすること。 普段から頑張り屋さんで健気なよめの努力に、俺からも感謝の気持ちを返したいと、この旅行が決まってから色々頑張ってきたんだ! そして今、よめはぐっすり眠っている。 …普段この状況なら俺もくっついて一緒に寝ちゃうんだけど、ここはむしろ今よめを誘うべきではないだろうか? 疲れてそうなら無理はさせたくないけど、うちのよめはいつももっとこうガツガツと俺に飛びついてくるから、多分まだ全然足りていないはずだ。 ちらりとよめを見れば、浴衣なんか着てるせいで胸元が大きく開いてて色っぽいし、ちょっとだけ俺より体温の低い身体がくっついてきてて…。 …思わず息を呑んだ。ゴクリと響いた音でよめがおきちゃうんじゃないかと心配になったけど、大丈夫みたいだ。 普段、よめが夜遅く帰ってきていきなり襲い掛かってくることがあるけど、その気持ちがちょっとわかった気がする。 無防備に眠るよめの可愛らしさは、普段とまた違った意味ですごくそそられるから。ぎゅっと抱きしめて守ってあげたくなる。 だが、今回はそれだけじゃ駄目だ。積極的に…でも、どうしたらいいんだろう? とりあえずネグリジェ着てもらうことしか考えてなかったから、これからのことを全然考えていない。ちょっと所でなくあわてた。このままぼーっとよめを見つめたままでいたら、何度見ても飽きないから朝になってしまうかもしれない。 それででも目を離せなくて、良く眠るよめを見ていたら、顔が自然と引き寄せられて…気がついたらキスしていた。 「ん…。」 柔らかくて薄い唇は、何度も味わっているけど、こんな風に自分から盗むみたいにすることはあんまりないし、今回みたいに全然意識がない時なんて一度もない。 でも、触れているだけで気持ちよくて、うっとりしてたら、ぬるっと熱いモノが入り込んできた。 「んん!?」 驚いて目を開けると、よめがイタズラっぽい表情で微笑んでいた。 起きてたのか!…いつからだろう? でも、よめが気持ち良さそうにしてるから、俺も一生懸命がんばった!…絡みつく舌を追いかけて、つたないながらも出来るだけ思いを返せるように…。 ゆっくりと味わうみたいなキスだった。穏やかでまた眠ってしまいそうなくらい気持ちイイ。でも、ぞくぞくするような…。矛盾する気持ちを持て余しながら、よめに問いかけた。 「ふ…。…いつから、目、覚めてた?」 俺がよめをじっと見てたのに気付かれたなら、それはちょっと恥ずかしい。でも美人だからついついみちゃうんだよなぁ…! 「イルカ先生がかわいいことしてくれるから、起きてるっていえなくて…!」 こんなこといってくるし!かわいいのはよめの方に決まってる! …まあとにかく、よめがおきてくれたんだから、俺は当初の目的どおり…えーっと、積極的に…だから、どうしたらいいんだ!? いつも本当によめ任せにしていたんだなということに、今更ながら気付かされる。手を握ってデートして、それからキスまでは出来るけど、そこから先は全然全くどうやったらいいのか分からない。ソレでも俺は必死で考えた。 …大抵よめは体をあちこち触ってきて、それが気持ちイイからその辺からやってみたらいんじゃないだろうか? 何とか導き出された答えはそれなりに妥当そうだ。…ということで、方針は決まった。早速実行に移そう! 「…俺、頑張るから!」 宣言して、とりあえずめくれた浴衣の隙間からよめの腕をもんでみた。細いのにしっかり筋肉がついてて、肌も肌理細かくて、触ってるだけでも楽しくなってきた。 これなら、俺でも出来るはず! 腕をもんででもそこばっかりじゃ多分駄目だから、それから、…そういえば、よめはいつも俺の胸を揉んでくる気がしたので、そっちに手を伸ばそうとした。 …でも、その前によめの手がすばやく俺の浴衣の隙間に入り込んできた。 「イルカ先生から誘ってくれるなんて…!俺、凄く嬉しい…!」 この顔。興奮で白い肌を赤く染めて、瞳に欲情を宿したこの表情は…! またよめが暴走しかかっている! 予想はしていたが、思っていたより早い。このままじゃ、結局何も出来ないで終わっちゃうかもしれない。 俺なりに何かできることを必死で考えてる間にも、すでに指が中につっこまれていた。 「んっ!」 さっき散々したからちょっと強引に押し込まれたそれを、俺の体は簡単に飲み込んでしまう。そして、勿論快感も。 音を立てて俺のうなじにキスを落とし、じわじわと上がる熱にすっかり流されてしまいそうだ。 俺に出来ることを探さないと…! そう考えても思考はすぐに散ってしまう。…残るのはかわいいよめの必死で気持ち良さそうな表情だけ。 「入れるから、力抜いて…?」 ぐっと押し付けられて、よめが入ってきたのが分かった。 「ふっぅ…っ!」 体はまだきついけど、でも何度だっていつだってよめとするのは気持ちイイ。嫁のこんな顔も声も体も、全部俺だけのものに出来るから。 気持ちよくて力が入らなくてもできること。そんなコトは一つしか思いつかなかった。 「好きだから。…ずっとずっと…!」 よめみたいにかわいいことは言えないけど、俺だってよめのことが好きだ。愛してる。 …俺のよめは唯一人。今熱心に俺をむさぼる美人で強くてしかもかわいい最高のよめ、カカシだけ。 言葉に出来たのは一言だけだったけど、それだけでよめがぽろっと涙を零した。 いつもよめからの言葉を返すばかりだったことを後悔した。こんなに嬉しそうに笑って、泣いてくれるんなら、俺はいつだって愛を囁くのに! 今度から、できるだけよめのために言葉で表現しようと改めて思った。 「イルカ先生と結婚してよかった…!」 感動しながらがつがつゆさぶってくるよめを抱きしめて、俺はずっとよめに愛の言葉とよめの名前を囁き続けた。 声がかれて意識が途切れるまで。 温泉は凄く楽しかった。食事も美味かったし、よめもかわいかった。 …まあやっぱりやりすぎて、歩けなくなっちゃったけど。 「お待たせしました!イルカ先生!ご飯です!」 「くっ…ありがとう。」 「無理させちゃってごめんなさい…!あーん!」 「あーん!」 でも、一生懸命謝ってきたよめが、甲斐甲斐しく俺の世話をしてくれるから、それはそれでありだと思っている。 でも、心配をかけちゃったのは、夫として問題だ。鍛えてたつもりだったけど、やはり旅先のよめをまだまだ甘く見ていたんだろう。これじゃよめが温泉を堪能できたとは言い難い。 …折角の結婚記念日だったのに! それに、プレゼントも着てもらいたいしな! 今後は、もっともっとよめをしっかり受け止められて、不安にさせない男になろうと改めて決意したのだった。 ********************************************************************************* お久しぶりすぎるよめ。結婚記念日ネタ! がっつり甘い(意訳)のというご希望を頂戴しましたので頑張ってみましたが、どうなんだろうか…そこまで甘くない様な気が…! 無駄に長いんだそして…orz。 そして、隠さずに微エロを含んでおりますゆえ、その辺は生ぬるく見守ってやってください…。 追加は…いるんだろうか…? ご意見ご感想等ございましたら、お気軽にどうぞ! |