誕生日にはリボンを巻いて

その話を聞いたのは偶然だった。
「えー!!!カカシ先生の誕生日って来週なの!?」
「なんにも用意してないってばよ!」
「ふん。別にいらないだろ?アイツは上忍だし金は余ってるはずだ。」
「あらほんとに知らなかったのね?」
紅先生と7班の子どもたちが、受付所の前で話している…というか叫んでいる。その内容にこれから受付所で勤務だというのに、ついつい話に聞き入ってしまった。
「あら!イルカ先生じゃない!」
「あー!ホントだ!イルカせんせー!!!」
「おわっ!」
だが、紅先生に発見され、その声で俺に気付き、いつもの様に目を輝かせたナルトに全力でぶつかってこられて倒れそうになったが、美しい女性の前ということもあって 根性で耐えた。
「何やってんのよナルト!」
「ウスラトンカチ…」
「サスケはうるせーってばよ!!!」
「コラ!何やってんだ!…全くアカデミー卒業してから少しは成長したと思ってたらこれか…。」
相変わらず一斉に話し出す元生徒たちに囲まれて、懐かしいやら嬉しいやらちょっと情けないやら…。
「ナルト!毎回言うが往来で飛びつかない!危ないだろ?」
「えーっとゴメンってばよ。イルカ先生もうおっさんだから危ないよな!」
「お前な…!」
「わーごめんなさい!いてっ!」
ナルトは相変わらずのどたばた振りだ。何度拳骨を食らっても覚えない。飛びつくのはまだイイとしても…おっさんって…俺まだ20代なんだが。 子どもから見るとおっさんなのか…地味にショックを受けていると、サスケがいつもの人を馬鹿にしたような目でぼそっと余計な一言を言った。
「馬鹿が…。」
ナルトだけじゃ無くて、サスケも相変わらずか…。
「…サスケ。お前も。」
「…っつ!」
勿論両成敗だ。何回おんなじことやったかなぁ…今まで。
「チームメイトを馬鹿呼ばわりとは何事だ!チームプレイの大切さ…もう一回アカデミーで学びなおすか?」
「ごめんなさい…」
「へへーざま…」
「ナルトも調子に乗らない!」
「わーちょっと待った!…いってぇ!」
「全く…。」
ちょっとは成長したかと思ったが、相変わらずだったか。カカシ先生も苦労してるんだろうな…。まあ、最初はどうなることかと思ったが、こいつらを 引き受けてもらえてよかった!
…いつかちゃんと挨拶したいと思ってるんだがなかなか機会がないからなぁ…。受付所でもほとんど話さない人だし…。
さっきもカカシ先生の話をしてたみたいだが…確か誕生日がどうとか?
「大変ね。」
「紅先生…いえその…いつものことといいますか…。ところでカカシ先生は…?」
この美しさと幻術の腕で木の葉の里のみならず、他国にまで名を知られている上忍師は、第8班の担当上忍師だったはずだ。
「今日はカカシに任務が入っちゃって、私が代わり。うちの子達は休みだったしね。それで…もうすぐ誕生日なのにちょっと可哀相かもって話してたの。」
「へー…そうだったんですか。」
誕生日か…あのちょっとミステリアスな上忍師の…いい機会だから飲みに誘って…いや彼女とかと一緒に過ごすのかな…?モテるって聞いてるし。
うらやましいなー。あ!でも任務だったんだっけ。可哀相に…。
「でも、当日の夕方には帰ってくるらしいから。お祝いでもしてあげたらって言ったんだけど。」
何だ帰ってくるんじゃないか。お祝い…今度受付とかで飲みに…って駄目かな?彼女とか友達とかと一緒に過ごすのかもしれないしな…。
でも一度はきちんと会って話しておきたいし…誘うだけ誘ってみるかなぁ…。
「だって…どうしたらいいんだってばよ?カカシ先生って自分のこと教えてくんないし!エロ本好きってことしか知らな…」
「そーなんですよ!イルカ先生!カカシ先生ってこっちには自己紹介させといて、自分のことは全然教えてくれなかったんです!お前らに教える つもりは無いとか言っちゃって!」
「上忍だから機密ってヤツだろ。こっちも馴れ合いは御免だ。…放っておけばいいだけの話だろ。」
俺がどうやってカカシ先生と話す機会を作るか悩んでいる間に、子どもたちは自分の上司の愚痴を言い始めた。
あんまり褒められたコトじゃないが…なるほど…たしかにそんなんじゃ何を贈ったらいいか分からないよなー。
ってことはやっぱり機密なのか…?元暗部だと色々大変なんだなぁ。でもこれじゃ子どもたちも可哀相だ。
…何とかできないだろうか?
そう考えている間にも、子どもたちはわいわい話している。
「でもさ!でもさ!俺は…誕生日にお祝いしてもらって嬉しかったってばよ…。な!イルカ先生!ケーキとか、ラーメンとか!」
「あんた誕生日にラーメン要求したの…?」
「一楽のラーメンは超ウマイってばよ!!!サクラちゃんだって食ったことあるじゃん!」
「今度もうちょっとマシなもの食べさせてあげるわ…。」
そうか…何食いたいか聞いて決めたんだが、やっぱりまずかったか…。流石にあの日に外に出すのは危ないから俺の家に出前とってケーキとかも買っといたんだが、 今度はマシなものなんていわれちまったよ…。子どもは正直だなー。俺が子どもの頃なんてお祝いって言ったらケーキと好きな食い物だったけどなー…。
「ウザイ…。」
「ムキー!サスケ!お前ムカつくってばよ!」
「ふん…。」
そしてまたか…コイツら本当にちゃんと任務やってるんだろうな…?
「お前ら!ココは受付所の前だぞ!静かにしろ!」
「先生の声のが大きいってばよ。」
「馬鹿!ナルト!く、紅先生!じゃ、私たちはこれで!プレゼントは今度あったときに考えときます!」
サクラはそういうと、さっさと二人を連れて去っていった。…説教は今度だな。
「行っちゃったわね。…ま、カカシはそういうの知らないだろうから、いい機会だとおもったんだけど。」
「知らないって?」
「ほら、カカシって小さいときから外回りばっかりでしょ?誕生日祝いとかって知らないと思うのよね。何か欲しいものないかって聞いても…あ!そうだ!」
「なんですか?」
任務でも思い出したんだろうか?
「イルカ先生!明日カカシのところに行ってやってくれないかしら?」
「はあ?」
明日は確かに俺も休みだが、一体何故?
「カカシに何が欲しいって聞いたらね、イルカ先生が欲しいって言ってたのよ。」
「誕生日プレゼントに人間はちょっと…。」
第一冗談に決まってるのに…。
任務から疲れて帰ってきて、自分の家の前とかにプレゼントとか言い出す野郎が待ってたら俺なら全速力で元来た道を引き返すな。目的が分からんし、 好意であってもちょっときついものがある。
上忍だからって冗談のセンスがいいとは限らないんだなー…。ちょっと親近感持っちゃうかも。
「だ・か・ら。私からの誕生日プレゼントってことにしてくれないかしら?」
きれいな女性に間近からそういわれると、ついつい安請け合いしてしまいそうになるが、そこは俺も忍!簡単にはうなずけない。
「ですから…いきなり自分の家にプレゼントを名乗る野郎が待ってたら、普通気分悪いでしょう?仕事でもないのに…。」
それに上忍の家なんてトラップだらけだろうし、先にカカシ先生帰ってたら、敵と思われていきなり殺されかかることだってありうる。 それに運よく殺されずに、つかまって暗部とかに連れてかれたとしても、拷問・尋問部のイビキさんに俺はプレゼントです!とか言ったら… とんでもない目に合うこと請け合いだ。
そんなコトで寿命縮めたくないよ…。
「あのね。多分イルカ先生みたいな人に、普通の里での生活を教えて欲しいんだと思うのよ。家事とかちゃんとしてなさそうだし…。教えてあげてくれない? きっと困ってるんじゃないかしら…。欲しいものって聞かれて答えちゃうくらい…。」
それは…確かにありそうだ。何だか受付所で見る姿も浮世離れした感じ出し、ちょっと普通の生活とは縁遠そうだ。何か見た目からしてひょろひょろしてるし、 健康的な生活を送っているようには見えない。俺も見るたびにちょっと心配してたんだよな…。この人ちゃんと食ってるのかなって。
でも、上忍相手に教えるって…それに、彼女とかがいればその人が…。
「あの、失礼ですがそういうことは女性の方がいいんじゃないでしょうか?その…彼女とか。俺は中忍で上忍の方に何か教えられるほど家事ができるわけでは…」
「アイツ…噂は凄いけど、彼女とか作らないのよ。自分が危険な任務ばっかりについてたからでしょうね…。だから花町に遊びにいったりはしてるかも しれないけど、ちゃんと生活できてるのか心配なのよ。アスマも私も。」
「そうですか…。」
エリートはエリートなりに大変なんだな…!今まで一生懸命里のために働いてきたんだもんな…!
俺なんかで役に立つんだったら…頑張ってみるのもいいかもしれないな。コレをきっかけにちょっとナルトたちのこととかも話せるようになるかもしれないし!
「イルカ先生には申し訳ないけど…私たちより里の空気を伝えられると思うの。おねがい!」
ココまで言われて男がひけるわけが無い!それに…カカシ先生はこんなにいい友達を持って幸せだな!親身になって心配してくれるなんてなかなかないことだ。
「わかりました!お引き受けします。家事はちょっと心配なんですが…。」
「ありがとう!細かいことはココのお仕事が終わったら相談しましょ?」
「はい!」
って…そうだ!俺これから仕事だったんだ!
「じゃ、また。」
「はい!」
その後、俺は慌てて受付所に飛び込んだが勿論、待ちくたびれた同僚にどやされたのだった。
*****
目の前で扉がゆっくりと開いていく…緊張するがこれはむしろ人助け!俺は…頑張るぞ!
「あれ?え?どうして?」
「カカシ先生!お誕生日おめでとうございます!!!」
よし!掴みはオッケーだな!取り合えずいきなり殺されかけたりはしなかった!ここに入るのも、アスマ先生と紅先生がカカシ先生の忍犬たちと相談してくれた から割とすんなりは入れたし!それにしても任務帰りにしては汚れていない。上忍って凄いんだな!…いつかは俺も…!
「あ…ありがとうございます。でも誕生日…そのリボンは?」
「俺がプレゼントです!さあ!何でも言って下さい!掃除でも洗濯でも忍犬洗うんでも!」
テレが出そうなところを必死に押さえ、一気に堂々と男らしく宣言できた!計画通りだ!
だが…そこはスルーして欲しかった…!でも紅先生から、プレゼントならリボンが必要でしょって言われたら断れないし。ちょっとアスマ先生も微妙な顔してたから 断りたかったんだけど、迫力がありすぎたんだよな…。
まあつまり…流石に全身っていう提案は断ったけど俺の頭には今真っ赤なリボンがくくられている。
「何でも…?」
流石にこの格好には呆れられるかと思ったが、カカシ先生は任務で疲れてるんだろうに意外に冷静に返してくれた。流石生きながらにして伝説になった上忍だ! 懐が深い!
…出来ることならこんな格好じゃなくて、ちゃんと話したかったが、今日はめでたい誕生日!俺の全力を持ってして祝うと決めたのだ!
「はい!料理はちょっと自信ない…ですが!ちゃんと教わってきましたし!」
「…誰に?」
…眉間に皺キレイな人が怒ってると酷薄そうに見えて恐ろしい。チャクラも何だか黒っぽいような…。やっぱり俺って不審人物…?それとも、 毒殺を警戒してるとか?早く誤解を解かないと!
「アカデミー教師独身男性友の会の面々からです!独身長いから皆凝り性で…」
そう、彼らは非常に熱心に教えてくれた。もっとも、最初は大騒ぎだったが…。
…俺が料理を教えて欲しいと、アカデミーで一番料理が上手い同僚(だが男。しかも独身。)に言ったのがきっかけだった。
いつの間にか周囲を取り囲まれるようにして、尋問が始まってしまったのだ。
「彼女か!?」
「いつの間に!?」
「彼女の友達にフリーな娘いないかなー?」
「いたら紹介しろ!」
蜂の巣をつついたような騒ぎに、慌てて俺は「だから違うって!」と否定したが…。
「どこで知り合ったんだ!俺は…俺は…!」
「何歳!身長は!体重は!むしろ顔は!」
「ずりーよー…うらぎりものー…」
「紹介!!!」
…ざわざわと落ち着かないので、とにかく事情説明してやることになった。
何とか事情を説明し終えると、さっきまで怨念の篭った視線の集中砲火を浴びていたのに、手のひらを返したように感動の嵐が吹き荒れた。
「女より友情を取るとは…イルカ!それでこそお前だ!」
「男いやむしろ漢だ!」
「感動した!」
「そういうことなら…俺たちに任せろ!伊達に独身生活長くねぇ!!!」
熱くそう宣言してくれる同僚たちに俺もついつい感動しそうになったが、はたと重要な事実に思い当たった。
「自慢。できねーよな…。」
何せここにいるのは全員独身、彼女なし。…アカデミー教師の中で一番モテていたミズキが捕縛されて以来、女性と知り合うチャンスが極端に減ったのだ。
アイツが裁かれるべきなのは当然だ!だが、その女性を引っ掛けるテクニックが失われたことは、アカデミー独身男性にとって大きな事件だったのだ。
…合コンの帝王の不在による弊害に喘いだ独身教師で、アカデミー教師独身男性友の会などという怪しい集まりが組織されてしまうほどに…。
「まあな…。」
「それをいうな!」
「彼女ほしいな…」
「それも言うなよ…。」
そして…その暗い雰囲気を払拭するためか、何故かみんな異常なテンションで料理を熱心にそれはもう真剣に教えてくれたのだ。
お前らひょっとして料理の神とか目指してんのかって言うくらいに…。
結果として…散々な目に合ってしまったわけだが…。みんなイイヤツなんだけどなー…。
俺が思い出して暗い顔をしているのを見たカカシ先生が、頭をかきながら聞いてきた。
「えーと…なんかあったんですか?」
「ちょっと…ちょっと徹夜が三日続いたってだけで…」
今日誕生日だという人に心配をかけたくなかったが、ついぽろっと口をついてしまったことに気付き、俺は慌てた。
「…じゃ、食事は後で作ってもらおうかな。」
だが、カカシ先生はそう言って肩に手を置いて微笑んでくれた。
…俺の努力を認めてくれたのかもしれない。
元々単純な性格だと自負している自分にそんなことをされれば、やる気になるのは当然だ。
「はい!じゃあ今は何がいいですか?」
そう、カカシ先生は後でといったのだ。今はきっと他の用事を頼みたいに違いない。
「こっち。」
そういって連れて行かれたのはベッドの上だった。
「はい?」
これを洗えってことかな?変わった柄だなぁ…。手裏剣か…。彼女いないってホントかも。俺ならこんなベッド彼女に見せたくない。
あまりにも変わった柄のベッドカバーだったので、ついつい失礼な感想を持ってしまったが、その間にカカシ先生が俺の背後から肩を叩いてきた。
「俺はさっき風呂入ったから。」
「はあ…?」
風呂に入ることが重要で、ベッドですること…?何だ一体?掃除じゃなさそうだなぁ?これから汚れるのに風呂に入るバカはいないだろう。
「誕生日プレゼントはイルカ先生なんだよね?」
「はい。そうですね。」
家事を教えて里での生活をサポートして…あと、ナルトたちのことで感謝したってのもあるかな?とにかく俺のできることがあれば何でもやる覚悟を 決めてきている!ドンとこいだ!でも…凄い修行とかだとちょっと最近なまってるしどうかなー…?ちょっと不安かもだなー…。
「じゃ、謹んで拝領致します。末永く大切にしますから…。」
「へ?おお?」
はいりょう?ってなんだ?
俺がきょとんとしている内に、いつの間にやらさっき見たありえない柄のベッドの上に乗っていた。
…なぜかカカシ先生ごと。
*****
何だ?何なんだ?コレ?修行?修行なのか?そうなのか????
「イルカ先生…リボン良く似合ってますね…。でも、折角もらったプレゼントだから開けてもイイよね?」
俺の上に乗っかってるカカシ先生は顔を隠していた布をスルリとはずした。
カカシ先生って…カッコイイ顔してるんだなぁ!ミズキも結構モテてたけど、これならきっとありえないくらいモテるな!隠してるなんてもったいないよ!
…ちょっと待て。つまり俺は今、素顔を…!?
「わー!わー!見てません!見てません!!!俺は全然全く知りませんよ!男前だなんて!!!」
「あ、気に入ってくれた?それはよかった。一生付き合ってもらうのに嫌いな顔ってのもなんですし。…ああ、俺は勿論イルカ先生の顔大好きですから 問題ないですよ?顔以外も当然好きですけどね。」
顔…一生…好き…すき!?えええええええ!!!!
「ちょっと待って頂けますか!今ちょっと理解不能な単語っていうか!重要な事実っていうか!…どうなってんだ!」
なんだ!?なんか話が違わないか!?俺は家事とかを通して里の空気を伝えちゃうと言う使命を帯びてたんじゃなかったのか!?
「もう受け取っちゃったから、返品はできないなぁ…ね、イルカ先生。開けてもいい?」
「は?え?う?」
俺がパニックに陥っている間に、カカシ先生は俺の頭にくくってあったリボンをちょっと冷たそうに見える薄い唇で銜えてほどいた。 その空気が…なんかありえないんですけど?
…えーと?なんですか?この状況?俺ここにいちゃいけないんじゃないかな?こんな空気は俺の周りに漂っちゃいけないはずだ!
カカシ先生がリボンを取ってしまったので、まとめてあった髪が下りてしまった。これでは家事が出来ない。準備を手伝ってくれた紅先生にリボン結わくのに 邪魔だって、髪紐没収されちゃったし、どうしよう?
っていうか誰か説明してください!今俺に何が起こってるんだー!!!…コレって変わった修行なのか!?
「ん。くくってるのもいいけど、下ろしてるのも似合うね…。」
銜えてる赤いリボンがやたらと似合うなぁ。いい男は得だよなー。
それにしても…何か顔近いんだけど!
「イルカ先生…」
「はい、なんですか?」
「ちょっと万歳してくれる?」
「あ、はい。」
ニコニコ笑って言われたので、つい素直に従ってみたが、なんだろうと不思議に思っている間に、ベストもアンダーも首から引っこ抜かれていた。
「わ!」
「結構鍛えてるね…。」
「一応鍛錬欠かしてませんよ!内勤中心なんでちょっと複雑な術とかは不安ですけど…。」
なるほどやっぱり修行だったのか!最前線でバリバリやってきた上忍に褒められると嬉しいな!俺の鍛錬も無駄じゃなかった!
…でもなんで脱がすんだ?俺の肉質ってそんなに重要?ひょっとして…鍛錬の相手とかなのか???
「キレイ…。」
「カカシ先生の方が鍛えてるでしょう?」
感触とか重みからして、相当鍛えてるはずだ。それに、何かそこまで褒められるとテレるっていうか…なんかドキドキするな。なんでだろう?
「ん、じゃ見てみる?」
そういうとカカシ先生は俺と同じように服を脱ぎ捨てた。
「わ!」
…なんだよ!ひょろっとしてるかと思ってたけど俺より鍛えてるじゃないか!しかもバランスよくて…そっちこそキレイな筋肉ついてるし!
…当たり前か…上忍だしなー…。俺、鍛錬のメニュー増やそう…!
「合格?」
「へ?合格って言うか…流石ですね!…俺も鍛錬法を教えてもらいたいくらいですよ!」
そんなことより早いトコ服着て隠したい。何か内勤だからって甘えてちゃ駄目だ!精進あるのみ!諦めたらそこで終わりだって、いつも生徒たちに言ってる 俺が諦めるわけにはいかないよな!
「じゃあ、いいですよね?」
「はあ…?なにが?」
「イルカ先生。目閉じて、口ちょっと開けてて?」
身体検査?修行に取り掛かる前のチェックとかなのかな?自慢じゃないが俺は頑丈なのが取得だから健康ですよ!
「では失礼して…あー…むぐ!」
あれ?温かいなー?やわらかいし、それに気持ちイイ…。
「んっ…んん…」
コレなんだ?…どうしよう…なんか熱くなってきたし、色々とその…ヤバイ…!こんなに密着されると、俺の下半身事情がカカシ先生に伝わってしまう!あと! 俺は牛じゃないし、男なので揉んでも乳は出ません!さーわーるーなー!!!何か変な感じがするから止めてくれ!
「んー!んー!!!」
慌ててもがいてみたがさっき見た筋肉は伊達じゃなかった。
動けないし、力入らないし、気がついたらカカシ先生の手が俺の危険地帯に近づいてるし!!!
「あ、よかった。こっちも今のところは合格かな?」
「はっ、あっ…あのー、もうお家に帰りたいので帰らせてください!」
もう無理!俺が教えるはずだった里の生活ってこんなじゃないと思う!それに教えるっていうより、むしろ俺が新たなる世界開けちゃうから!
だって今…勘違いじゃなければこの上忍と…濃厚なキスを交わしちゃった気がする…!ありえねぇ!!!
「駄目。プレゼントなんだよね?」
「あ、はい。それはそうなんです。でも…」
「じゃ、続行ということで。」
「え?ちょっ…タンマ!!!そこはまずいですって!」
「何が?」
さらっと聞き返さないでくれ!大体どこ触ってんですかさっきから!
「やだっていってんでしょうが!」
ちょっと本気で膝蹴りをかまそうとしたのに、足首を掴まれてしまったので、むしろ状況的には悪化した。
「イルカ先生…約束破るの?俺に何でもしてくれるんだよね。誕生日だから…。」
「はい!誕生日でしたね!」
そうだった!そうだった!お祝いだよな!誕生日の人に悲しい顔させちまった…。でも!お祝い会の準備は一応してきたんだよな!まあ、サクラには駄目だし されそうだけど。こんな良く分からんコトは止めて、さっさとお祝い会を開くべきだよな!
「ケーキは買ってきました!でも料理はちょっとまだ好みを聞いていなかったので…どんなものが食べたいですか?」
「イルカ先生。」
「…食べられませんよ?」
脂身はこの人より多いかもしれないけど。人肉は食べないだろう普通。病気とか毒とか危険な可能性があるしな。そもそも…俺は絶対に人肉は食べたくない! 忍が倫理を語るのもどうかとは思うが、やっぱりイヤなもんはイヤだ。
そんなもんより、俺が同僚たちに仕込んでもらった料理の方が絶対に美味いはずだ!
「じゃ、食べられるんならいいんだ。」
「ですから、ちょ…な…なにを…?どこ触って…あッ…」
「うん。イルカ先生はかわいく鳴いててね。俺は美味しくいただきますから。」
「おいしく…?や、あっあっ…」
にっこりと天使のような笑顔を浮かべて、カカシ先生は俺の急所に手を潜り込ませた。
…食べるって!こっちのことか!でも、俺男だって!!!
「カ、カシせんせぇ…お、俺男です!」
触るなー!にぎるなー!揉むなー!出ちゃったらどうするんだ!!!なんでそんなにうまいんですか!!!
「はいそうですね。こっちも元気そうです。」
淡々と手際よく俺のズボンを引っこ抜いたカカシ先生は、その後もテキパキことを進めた…。
で、気がついたら俺の中にしっかり入り込んだカカシ先生が、ものすごく嬉しそうに一生懸命に運動なさってました。
可愛いとか、今まで貰ったプレゼントの中で一番嬉しいとか、気持ちイイねとかいわれて…確かに気持ちイイんだけど
…何でこうなったのかさっぱり分からん!!!
とにかく…誕生日プレゼントが喜んでもらえたらしいと言うことだけは分かった。
*****
「あれ?」
「おはようございます。まだ寝てていいですよ?」
「え、あれ、なんで?」
「ちゃんとアカデミーには連絡済です。婚姻届とか転居届けとかは、近い内に一緒に出しに行きましょう。」
「こんいん?てんきょ?いっしょ?」
イルカ先生はまだよく分かっていないみたいだが、既成事実もできたので絶対に逃がさない。このまま良く分かってない内に、打てる手は打っておく。
昨日報告書を提出してさっさと自宅に帰ったら、式が届いた。なぜか俺の別宅の地図と風呂に入っておくことと書いてあり、しかもアスマと紅の連名。
…確か俺の誕生日がどうとか言ってたから、飲み会でも開くつもりなのかと、誕生日だってのに本人の家使うこと無いだろうと思いながらさっさと風呂に 入って別宅に向かった。
…家に着いたら中の気配に驚いたが。まさかと疑いつつ、扉を開けたらしっかりプレゼント仕様のイルカ先生がいた。
勿論最初は驚いたし、他所の女に料理を習ったのかと思っていらだったりもしたが、疑惑は晴れたし、俺が誕生日プレゼントと本人も言っていたので、 ありがたく頂くことにした。
アスマはおそらくここまで考えてなかっただろうから、巻き込まれた口だろう。アイツは結構人がいいし、紅に弱いから。
紅は…確信犯だな。ま、礼はする。惚れてるくせにグダグダしり込みしてるあのヒゲのケツを蹴り飛ばして、さっさとプロポーズさせるくらいの ことはしてもいい。
「カカシせんせぇ…俺一旦家に帰って頭冷やしたいんですけど…。ちょっとありえない夢を見ちゃったので…。」
イルカ先生がおずおずと帰宅願望を訴えたが、勿論却下だ。
「でもイルカ先生はまだ歩けないと思いますよ?」
「え、あ…いってぇ!」
イルカ先生は血相変えて立ち上がろうとしたが、速攻ベッドに倒れこんでいた。逃がしたくなかったからちょっと頑張ってもらっちゃったのと、積年の 思いが暴走したってことで許してもらおう。
…何せ一生一緒にいるんだから、お詫びはいつだって出来る。
「あと、もうイルカ先生は丸ごと全部俺が貰っちゃったので、もうココがイルカ先生のうちですよ。」
「え?え?え???」
「末永く宜しくお願いします。」
「は、はい?」
よし、これで完全に俺のモノ。あとは…甘やかして外で生きていけないようにして…外堀も埋めてしまおう。
「あ、あのー。それでその…」
「…イルカ先生は?男に二言はあったりする?」
「いえ!宜しくお願いします…。」
「ありがとうございます。大切にしますね…!」
こうして俺は人生最大の誕生日プレゼントを手に入れたのだった。
*****
「…というのが、俺の結婚の経緯だ。」
「参考にならねー!」
「なんだそれ!おかしいだろ!?」
「おまえ…前から思ってたけど天然って言うよりそれ…」
「彼女が欲しいんだ!彼氏はいらねぇ!」
同僚たちが口々に叫ぶとおり、自分でもこの流され具合はどうなんだと思うが…新婚生活は幸せだ。カカシさんはまめだし、家事も俺が教える必要が無いくらい やってくれ、下へも置かない扱いを受けている。紅先生の心配はちょっと的外れだった様だ。
料理だけは俺の担当だが、たぶんカカシ先生のほうが付け焼刃の俺よりうまいんじゃないかなぁ…。喜んでくれてるからいいけど。
それにしても久しぶりに同僚たちに攫われる様にして飲みにきたが、たまにはいいな!こういうのも!カカシさんが悲しそうな顔するから行けなかったんだけど。
まあコイツらは俺が独身友の会に欠席しまくるから不審に思って尋問するつもりだったみたいだが。
「まあその、あれだ。幸せだよ俺。」
何せ何だか俺のやってること言えば料理のみ。それも外食とかにも結構行くので一人暮らしのときよりもかなり楽になった。
最初は男に二言なんていわれて、ついそれに乗っちゃったのを後悔してたけど、家に帰ってくるカカシさんが毎回幸せそうに「ただいま。」 って言うあの表情見せられるとなぁ…。かわいいっつーかなんつーか…抱きしめたくなっちゃうよな!
まあ…そんなコトをすれば結果として気持ちイイが後が辛い目に合うんだが。でも幸せだ。
「そうか…。のろわれてしまえ。」
「そうか…。このモテっこ!」
「そうか…。ノロケは死刑だぞ?」
「そうか…。だからお迎えが…。」
前半部分は独身友の会の面々が、酔っ払ったときにカップルに向けるいつものしょっぱいセリフだが、…お迎え?
「イルカせんせ。帰りが遅いから探しちゃいましたよ?」
「え!だって今日任務だって!」
「帰りましょうか。…うちのイルカがいつもお世話になってすみませんねぇ…。この通り可愛いんで心配なんですよ。…気をつけてやっていただけますか?」
「「「「ははは…はい!」」」」
いい返事だなー…この間は俺を迎えに来るカカシ先生をみて、モテ男の乱心とかいってたくせに…。
そんな事を思っているうちに、気がつけばすっかり自宅となってしまった、元カカシ先生の家についていた。
「えーっと。おそくなってごめんなさい。」
まず謝る。コレは俺の経験上かなりの確率で効果がある。カカシ先生は怒っていても、俺が反省してるって分かるとそれ以上は怒鳴ったりしない。
まあ俺が怪我とかすると、すごい勢いで怒られて、お仕置きと称したとんでもない目に合うんだが。
「いいんですよー!ちゃんと皆さんに分かってもらえたみたいだし!」
…よしよし…機嫌よさそうだ。なんだかわからないが無断で飲みに行ったことに関しては許してもらえそう。
「でも、俺になんの断りも無くどっか行っちゃ駄目ですよ?」
あ、笑ってるってことは…お仕置きコース決定か…!?
「はい!ご、ご飯作りますね!!!」
「それは明日ね。じゃ、こっち。」
…そして俺は、その日も例の変な柄のベッドでそれはもう天国(後、プチ地獄)をみたのだった。

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カカシ先生お誕生日おめでとう!!!…に、なってるのかなってないのか…。
お祝いなのでいい目を見せようとしてみましたが…。
ラブラブってことで。

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