「さて、始めるか!」 無駄に衰えを知らない股間をちらつかせる全裸の変態がせっせと給仕する朝飯を食い終わってすぐ、とりあえず入念に踏みつけて忍服(但し恐らく変態のもの)を奪取するコトに成功した。…ベストだけは所在不明だったが、多分渡されたとしても元々変態の私物だし、ソレはもう諦めよう…。 お預けを命じた変態が「ああんもう…照れちゃって…!!!」等ともだえている隙に、さっさと水浴びも兼ねて滝に飛び込み、身体も流した。…目覚めた段階ですでに妙に身奇麗になっていた理由は、深く考えないコトにする。 変態に打ち勝つんだ!揺らがない精神力こそ今の俺に必要なモノ…! 準備は出来た!あとは、修行を再開するのみ! 要は、変態をどうやって制御するかを学べばいいんだ! 気合いを入れてチャクラを練る。 春はまだ遠く雪解け水は氷のようにつめたいはずなのに、何故か寒くなかったのもこのヤル気のせいだろう。 …といっても、滝行は変態が視界に入って不快なので、もうしばらく水中で心の準備をしてからにしよう。 そう思った俺の肩に、いつのまにか忍服を纏った変態の手が…! 「ひっ!?」 思わずこぼれた悲鳴に、変態がにっこりと微笑んだ。 「水、ちゃんと温かかったですか…!?結界とかでちょっと頑張ってみたんですけど…!!!それにぃ!イルカ先生をもし泥棒猫とか間男が…」 「貴様の仕業か!!!」 折角ヤル気になったのに…!やっぱりダメだ!コイツがいると修行にならん!!! 萎えそうになる己の気力を奮い立たせ、何とか変態を振り切ってどこか他所で修行しなくてはと考え始めていた俺に、変態が意外な提案をしてきた。 「俺と、一緒にしましょう?」 「変態行為にはもう十分付き合ってやっただろうが!離せ!」 まるで母親のように慈愛の瞳で見つめられても、その奥底には俺への邪な欲望が隠されているに違いない! 何だか急にチャクラも穏やかになったが、信用できるわけが無い! きっと修行と称して変態行為を強いられるに決まってる! 肩にかけられた手を振り払うべく、脛を狙って思いっきりけりを放ったが、スルッと逃げられた。 いつもながらイラつくが、コレで一応距離が取れた。三十六系逃げるに如かず! そう思った。 すぐさま駆け出そうとした俺の足に、変態がしがみ付くまでは…。 「俺、こんなに愛されてるって実感できたの初めてなんです…っ!!!もう嬉しくて嬉しくて股間が…!!!」 「しまえー!!!」 もそもそとズボンの前を弄り始めた変態に怒声で対抗したが、変態は更によどみなく妙に甘さを宿した声で続けた。 「だから…俺が愛する魂の片割れ永遠の番であるイルカ先生にできることってなんだろうって夕べも一生懸命考えて…!」 「考えた結果がアレなのか…!?」 …この里一番という触れ込みのモサモサ頭の上忍の脳みそには、ろくでもないことしか詰まっていないんだというコトを改めで実感した。 「ご飯とか、それ以外にも出来ることがあるって思いついたんです!!!」 もはや叫ぶような大声は、爽やかな朝の森の平穏を乱し捲くっている。 それ以外…これはもう間違いなくコイツの成人指定の愛読書の中身のようなことに違いない…! どうやってコイツから逃げればいいんだ…!?イヤ、むしろコレこそが実践的修行になるのか!? 焦燥感だけが募り、その間も変態の股間と語り口調は勢いを増し、どんどん盛り上がっていく。 「だから…!俺だからこそできる修行をしましょう!」 「いらん!自力でやってこそ修行だ!」 俺だからって言うのが一番怖い。 普通の修行なら別にコイツだからこそなんていう必要はないはず! 何するつもりなのか想像するだけで鳥肌が立った。 「大丈夫…!手取り足取り腰取り勿論可愛くて魅惑的なおしりも…!!!」 「やっぱりそっちかー!!!」 決定的だ。コレは絶対にそっち関係の…! 無駄な経験値をこれ以上ふやすつもりなんて無いぞ!!!俺は!!! 突っぱねようと声を荒げた俺に、変態は真摯な声で訴えてきた。 「だって、ナルトとサスケとサクラも俺と修行してるんです!ちゃんと教えられます!」 「ソレは…そうだが…!」 そうなんだよなぁ…コイツ変態なのに、子どもたちは一応どんどん強くなってるんだよな…。 実力差か…。いや。でもコイツ変態だし! こみ上げる敗北感…打ちひしがれそうな心を必死で立て直そうと努力した。 だが、収入、経歴、何より階級が物語る実力。 その全てにおいてコイツより俺は…! そもそもどうしてこんなに修行しようと思ったかって言うのも、コイツに養われているという状況が我慢なら無かったからだ。 「だから、修行しましょう?イルカ先生の体術の切れは、もうその辺の上忍より上だと思いますから、まずは術からにしましょうね!」 変態が、俺を褒めた。 俺の、尻と身体以外のことを。 驚き固まる俺に、変態は普段の変態くさい口調でなく、なんだか賢そうな…信頼できそうな口調で離し続けている。 「ま、ガイほどじゃないにしても、アレは異常なので。型は先生だけあってきれいですし、速度もかなりのもの!それに、フェイントとかも上手ですよー!敵を倒すだけじゃなくて、誘い込んだりするのにも使えそうです!あとは…ま、夜の対術の方も…!!!」 「最後がなきゃ信用できるのに…!!!」 やっぱりコイツは変態だ。 …だが、やっぱりコイツは上忍だ。ただ無造作によけてるようでいて、分析しながら戦っている。もしかすると…本気で修行してくれるんだろうか…!? 「騙されたと思って…ね?」 小首をかしげる変態は、普段より大分上忍らしく見える。 もっと言うなら舐めるとか何とか…変態的なことを言わなければ、コイツは多分凄くできる上忍のはずだ。 「…いいか。妙な真似したら…即、中断だからな?」 信用したわけじゃない。…利用してやってもイイと思っただけだ。 「はい!がんばります…!!!」 即座に俺の股間に伸ばしかけた手を引っ込めた変態を信用するコトはまだできないが、コレは敵を知る最大のチャンス。 大分懐疑的ではあったが、俺は一応しばらくだけ付き合ってやるコトにした。 ***** 「さすがイルカ先生!覚えが早いなぁ!…あっちの方も…!」 「余計なコトは言うな!…それにしても…こんなに変わるものなんだな…!」 チャクラコントロールには自信があったつもりだ。 そうでなくちゃ教師になんてなれないし。 だが、変態の教えるとおり、印の組み方から術の発動まで、一から見直した結果…今までの自分が、どれだけ無駄なチャクラを使っていたのかが良く分かった。 押さえる所を押さえ、開放するときは一気に。 それだけで術の威力は目に見えて変わった。…今までチャクラ量の心配から上手く使いこなせなかった術も、これならきっと…! 「俺って、コレ、あるでしょ?だから省エネ上手いんですよー!」 …妙に爽やかな口調で、俺の股間をもむと言う欠片も爽やかじゃない行為をした変態は、それでもやはりすさまじい経験で培った確かな実力があった。 最初は本当に警戒した。 だが…変態修行と思いきや、それなりに実力がつき、半日で今まで遣ったことの無い術が使えるようになったのだ。 …まあ卑猥な単語をしょっちゅう吐き出す変態に、ケツと股間には触られたが。 「一応、礼は言っておく。」 普段の変態の行動と被害を考えれば、この程度のセクハラ、授業料と思えばなんてことはない。 若いころならまだしも、今更上忍に昇格したいと思ったコトはない。ずっと教師でいたいと思っているから。 …だが、密かに、内勤を続けていくせいで衰えていくだろう実力を憂えていたのは事実だった。 だが、これなら…! メキメキと伸びる己の力を実感し、変態を見る目が少しだけ変わった気さえする。 「お、お礼なんて…!か、身体で…!?いやんもう!!!」 「…コレさえなきゃいいのになぁ…。」 どうしてコイツはココまで変態なんだろうなぁ…。 くねくねと身をよじらせ、もじもじしながらも、食い入るように俺の股間に視線を一点集中させる変態を蹴り上げ、褒美として十分に踏んでやる。 「褒美だ。…嬉しいだろ?」 「ああん!!!も、もっとっ…!!!もっと強く…っ!」 普段の怒りの篭った踏み方でなく、ちょっとだけ哀れみの視線が混じる踏み方は変態のお気に召さなかったらしい。 やけになってしっかり踏んでやると身もだえして喜んだ。 「あぁっ…やっぱりイルカ先生の踏みつけられると…もう…っ!」 …これ以上は危険だな。 「…ここまでだ。そろそろ飯にする。」 携帯食は無くても、自分で調達すればイイし、もしかしなくても多分変態がどこからともなく飯を取り出してくるだろう。 俺の予想通り、飯という単語に変態は激しく反応した。 「はあい!勿論お弁当ですよー!!!出来立て!ホカホカ!俺の愛情と秘密の…!」 「食うか。」 すかさず変態から飯をむしりとると、変態はねっとりとした視線で俺を凝視しながら、相変わらず変態丸出しの発言を繰り返した。 「えへへ!お外でご飯ってステキですね!昨日はお外でもっとおいしい物食べちゃいましたけど!」 …どうして、コイツはこうなんだ!実力といい、顔といい、性格さえ…重度の変態じゃなければきっと普通に尊敬できただろうに…。 「黙れ。」 とりあえず怪しく腰をくねくねさせて身もだえしている変態を無視して、さっさと弁当を広げた。 差し出された弁当は、それは見事なものだった。 重箱にきっちりつまったおかずとおにぎり。おかずはどれも食欲をそそるイイ香りが漂っている。 例の変な成分入りだが、この際その辺はもう諦めた。毎日摂取してて身体に特に変調はないから、気にしないのが精神衛生上一番いい選択肢だろう。 おにぎりを口に運ぶ俺を凝視する変態を無視し、がつがつと平らげた。 時々食わせて欲しそうにしてる変態の口にも無造作に食い物を押し付けながら…。 ***** 腹もくちくなったし、休憩も十分だ。 今にも襲い掛かってきそうな変態は、昨日の変態行為に満足したのかそれなりに我慢していたので、ゆっくり飯を堪能できた。 まあ、ケツと股間は触られたが。 …もはやコレは日課と化している気がする…。その辺はおいおい何とかしていくとして、修行が先決だ! 今日は大分いい感じだ。 あとは、変態行為に移行する瞬間を何とか抑えきることが出来れば…! 「新しい術は明日にするか。…次は、どうするかな?」 今日は徹底的に術を修行するか、それとも普段通りの筋トレを兼ねた体術修行をやってしまうか。 悩む俺の前に、いつの間にか消えうせたお重の変わりに、変態が立っていた。 …なぜか上半身裸だ。 「おい…俺は修行中だ。余計なちょっかいかけるなら…!」 威嚇も兼ねて殺気を放つと、変態は嬉しそうに微笑んだ。こちらが思わず怯むくらいとびっきりの笑顔で。 「もぉ!イルカ先生ったらぁ!これでも、しゅ・ぎょ・う・!!!筋肉の動きとかも見たほうが参考になるでしょー?」 「そ、そうか?」 …体動かしてる時にソコまで見るだろうか?俺は今までチャクラの動きと大まかな筋肉の動きは追ってたが。 九割方変態のプレイの一環のような気がするが、ココまで教わってきた中で、コイツの腕が確かなのは明白だ。 …試すだけなら大丈夫だろうか? さっきまでの修行の手腕が、俺の警戒心を薄くした。 「ほら!こうやって動かすと、ちゃんとわかるでしょ?イルカ先生も!」 「…まあ、な…。」 どうも胡散臭い。だが確かに素肌を見たほうが分かり易い。 一応里の中だし、襲撃を受けたとしてもそれ程大規模なものじゃないはずだ。 …そもそもこの変態の結界がそんなコトを許すほどもろい物じゃないだろうし。 なにせ、コイツは俺に関する執着心だけは異常だからな。 しぶしぶ同意したとたん、変態はものすごい速さで俺の上半身の服を剥いた。 「ぎゃあ!?」 やっぱり…やっぱりなのか…!? 「さ!始めましょー!!!」 だが、威勢よく服をひん剥いた割には下半身は無事だ。 何だか目の光は怪しいが、とりあえずいきなりこのままってコトはないだろう。 寒さもチャクラコントロールの修行と思えばなんとかなる! 「なら…こっちから行くぞ!!!」 今日こそ…一矢報いてやる! ***** 「くそっ!」 変態はやはり上忍だった。ソレも腕のいい。 毎朝の日課となっていた格闘の頃から、コイツに攻撃があたったことなどない。 …トラウマ狙えばそれなりにいけるが、その後結局襲われるから結果はそれ程変わらないからだ。 交わす速度、時折俺に向かって伸ばされる手、その全てが俺より明らかに上位であることを見せ付けてくる。 それに…。 「イルカ先生…ああんもうサイコー!!!」 コイツはやはり変態だというコトも改めて実感した。 まず、触る。やはり、触る。…俺の股間とケツと、今度は胸も。それはもう嬉しそうに。 そして…何故か脱いでいくのだ。変態が。 興奮したそぶりで何故かズボンを脱ぎ捨てた時は逃げようかと思ったが、襲い掛かって繰る出なく、その実用的な筋肉を晒しながら、痴漢行為に勤しむ姿はいっそ見事だった。 今はもうすでに、パンツ一丁という破廉恥極まりない姿だ。 だが…これこそ、まさに俺が求めていた修行なんじゃないだろうか。 実践的過ぎるほど実践的で、敵…変態のことを間近で観察できるのだ。 …多大なる精神的ダメージと引き換えに…。 こうやって戦い始めて何時間たつだろう。 さっき食った飯の効果で大分元気になっていた身体も、だんだん息が切れてきて、でも変態の業のキレは落ちておらず、ソコまた俺の気に触る。 だが、確実に腕は上がった。 10回本に1回くらいの確率で、変態に攻撃を当てる…というか、かすらせることが出来るようになったのだ! ヤツの狙いは、俺のケツ、若しくは胸、若しくは股間だ。ソコを狙ってきた瞬間、フェイントを交えつつ蹴り、殴り、交わす。 変態の攻撃回数…というか、ボディタッチ狙いの方がはるかに多いから、こちらの被害の方が大きいのは確かだが、だんだんと…俺は、今回の修行に手ごたえを感じ始めてきた。 そろそろ限界だと知りつつやめることが出来ないくらいに。 「…イルカ、せんせ。そろそろ、おっと、休憩しましょうよー?」 「断る!…はっ!食らえ!てやぁ!」 「きゃー!こわーい!でも…ステキ!!!…そんなに俺のことを…!!!」 「くっそー!!!」 …よけ方にものすごくイラつかされるが、せめてまともに一発入れてやりたい。 だが、そんな俺の思いとは裏腹に、鈍り始めた拳は変態に掠りさえしなくなってきた。 「ちっ!」 思わず舌打ちしながら、それでも次の攻撃に向けて構えたときだった。 「…そろそろいいかなぁ!すっごく我慢したし!美味しそうなイルカ先生との痴漢プレイも堪能できたし…!!!」 不穏すぎるほど不穏な発言。 コレは間違いなく…変態の大技が来る! 「来るなら…きやがれ!!!」 気合いとともになけなしのチャクラを練り上げて備えた。 ヤツが近づいてくる…。 ニコニコ微笑む変態の次の攻撃は…恐らく股間! 手つきといい、視線といい、間違いないだろう。フェイントの可能性もあるが、やつも相当煮詰まっているはずだ。 勝負は、きっと一瞬…! だが、スッと距離をつめた変態が、一瞬姿を消した。 後ろか…!? 振り返った瞬間、俺のズボンが宙を舞うのが見えた。 慌ててみてみると、スースーする俺の足元は、いつの間にか綺麗さっぱり服がない。 何故か残されたサンダルだけが足を守る唯一の防具となっていた。 「なっ!?」 とっさに股間を覆い隠しては見たが。 もしかしてもしかしなくてもコレは…!? 「ああ…汗ばむ肌!それに赤く色づいた頬!そして…こぼれる熱呼吸!!!匂い立つような色気ですね…!!!」 振り返った先の光景など思い出したくもない。 夕日を背に、その輪郭をぼやかせながら、筋肉の陰影も見事な変態は股間から色々…!というか、すでに何も着てねぇし!!! 「服返せ!!!」 いつものことと思えばイイんだ! そう思いながら必死忍服の返還を要求したが、そんなものは耳に届いてさえいないようだ。 「夕日に照らされて輝くイルカ先生…!!!そんなアナタにはやっぱり…コレが似合う!」 どこからともなく変態が取り出したのは、今朝奪還し損ねたベストだった。 昨日は変態のベストで…その、色々酷い目にあったんだが、今変態が手にしているのは俺のベストだ。 巻物ホルダーのトコに小さい傷があるから間違いない! もしかして…コレを狙ってたのか!?俺が体力を消耗した頃を見計らって、このタイミングで…!!! 昨日のだけじゃ満足してなかったのか!? 逃げようにもおれ自身も破廉恥極まりない格好だ。変化してでも逃げたいが、恐らくその隙を変態が逃さないだろう。 じわじわと後ずさる俺に、満面の笑みを湛えてにじり寄ってくる変態。 「待て!…いいか、これ以上俺に近づいてみろ…?」 踏むか?いやむしろ離婚…はききすぎて襲われる可能性のほうが高いな。このテンションだと。 「寒いでしょ?ほら、コレを着てください…!!!」 労わりに満ちた声、そのセリフだけなら信じたかもしれないが、隠されもせず反り返っていく股間のせいで、欠片も信用できない。 「来るなぁ!」 後ずさる俺の背中に、回りを取り囲んでいた木が当たった。これ以上逃げるなら、木々の間を縫って走るしかない。…この格好で。 瞳を刺す夕日が、真っ赤に空を染め上げ、ソレを背に立つ変態の髪が萌えているようにさえ見える。細く見えても鍛え上げられた体は確かに鑑賞に堪えるかもしれないが、俺にはただの変態にしか見えない。 …一瞬、風が吹いた気がした。 そして、俺の肩に何か温かい物が…! 「汗、美味しいです…!!!」 「うぎゃあああああああ!!!」 今正に沈まんとしている夕日が地平線を金色に輝かせ昼の終わりを告げようとしている。それなのに、森に響き渡る場違いな俺の悲鳴に揺らぎもせず、変態は俺の肩に舌を滑らせ、ハァハァと荒い息を吐く。 ベストはフェイントか!? 「こんなに汗かいたらやっぱり冷えちゃいますからね!!!」 変態が爽やかな笑みを浮かべ、その笑顔に恐怖しながらこの際何でもいいから逃げようとした俺の肩に手をかけた。 …だが、変態の手は直接俺に触れていない。そして、さっきより数段温かいのは…!? 「あぁ…やっぱり似合いますね…!!!」 変態が何故か袖口から手を突っ込んでいるのは…俺のベスト!? いつのまに着せやがったコイツ!? 「離せっ!何しやがる!」 「ささ、そろそろ…よ・る!のお楽しみタイムですよー!!!」 ただでさえほとんど体力を使い果たしていたのに、叫ぶことで更に消耗した俺は、勝手に盛り上がっていく変態をとめられもせず。 情けなくもじわじわと伸ばされる手に恐怖の視線を向けることしかできなかった。 ***** 「今日は…駅弁とかどうでしょう!?」 「爽やかにナニ言い出してやがる!」 正直、腹は減っている。なにせ、コイツと暮らし始めてから…いや、コイツが付きまとい始めてから飯時になるとどこからともなく湧いてくるコイツのせいで、已む無く規則正しい食生活を送っていたからだ。まあ、それはそれで健康にいいからと割り切っていたんだが…。 だが、コイツの様子からして、この駅弁は食い物じゃない。絶対違う! 「ひっ!?」 身構えた俺のケツをぎゅっともまれた。 とっさに蹴り上げようにも、変態は一気に距離をつめて俺の足の間に自分の膝を入れてきて、しかも背後の木に押し付けられた状態では…! 「汗ばんでて…興奮しますね!!!」 ぴったりと俺に張り付く変態と俺を隔てるのは、ベスト一枚のみ。 つまりこう不快な感触がぬるぬると内股をすべり、うなじに生暖かいぬるついたものが這う。 最悪だ。この上なく危険だ…!!! 「おい駄犬!お預けだ!俺は腹が減った!修行の邪魔だ!離れろ!」 焦りながら畳み掛けるように叫ぶと、変態がくすりと耳元で笑った。 「俺も…早くイルカ先生が食べたいです!!!」 熱い吐息と共に無駄に力いっぱい叫ばれて、眩暈がしそうだ。 おかしい。普段と違う。いつもならコレだけ脅せば何とかなってたのに! やはりこの格好がまずいのか!? 興奮しきった変態はせわしなく手を動かすばかりで、俺の制止を聞いているように見えない。 「いいから離せ!話はそれからだ!」 ぐいぐいと押し付けられる変態の腰から逃れようと身をよじり、肩を押し返しても、やはり力負けしてしまう。 焦燥感が募るが、蹴り上げようにも背後には木。コイツの手があらぬところをさっきから撫でているのも恐ろしい。 …言葉で何とかできないなんて…もしかしてこのままコイツに…!? 「俺ね。すっごく嬉しいんです…!だって、イルカ先生が俺のために強くなってくれるなんて…!!!」 うっとりした口調。 だがその内容はさっぱり検討が着かない。 「なんだそれ!?俺は…まあ確かにお前のせいといえばお前のせいだが…。」 俺が強くなりたいのは…コイツにいいようにされている現状を打破するためであって、コイツを守ろうなんて気は毛頭ない。欠片もない。ホントにない。 …なにせ、俺がいるならコイツはあらゆる意味で最強で最恐だ。 大怪我してもすぐ治るし、蹴っても踏んでも殴ってもすぐに復活して飛びついてくる。 俺に向かって。 「だからぁ…もう俺…あ、愛が溢れて止まらないんです…っ!!!」 「溢れてるのは…貴様の変態性欲だけだろうが!!!」 だらだらと俺の太腿を伝う変態の先走りがソレを物語っている。 どうしてこんな変な格好の…しかも男相手に、ここまで発情できるんだこの駄犬は! それはもう一生懸命になって、弁当なんか作って、痴漢行為するためだけに術まで教えて油断させて、罠にかけて…。 その熱意は全て俺だけに向かっている。 最初は驚いたが、いきなり襲い掛かられたらひとたまりもないのに、一応お預けにしたがっているのも、俺に怒られたくないからだろう。 こうしてみると…変態に勝てるのはある意味俺だけだ。 コイツは、俺が里を出たとしても、どこまでもどこまでも…ソレこそ地の果てまで追ってきて、俺のためだけに生きようとするだろう。 …まあ、その方向は大分的外れだが。 「イ、イルカ先生…っ!」 涙と鼻水と、下半身までぐちゃぐちゃにして、俺だけを乞う哀れなこの変態に、わずかばかりだが同情した。 なにかの病か、若しくは術のように俺に縛られているこの駄犬。 今までの境遇はすさまじいものなのに、どうしてココまで変態なんだろうなぁ…。ソレも多分生来の、真性の、ホンモノの。 「分かった。…だが、まずは飯…」 とりあえず、興奮しきったこの駄犬を、少しでも正気に戻す必要がある。 それに腹も減った。 そう思って押し返す手の力を緩めたとたん、変態は歓声を上げた。 「わぁい!やったー!!!早速!!!」 「うぎゃあ!コラ待て!?」 ほぼ同じ体格なのに、軽々と持ち上げられた。 それも、尻を抱えるようにして。 「ああ…この密着感がたまりません…!!!」 抱え上げられた瞬間思わず変態にしがみ付いてバランスをとったのがまずかった。 しっかり足の間に入り込まれ、かくかくと腰をゆする変態の危険物がしっかり当たる。 そして尻を揉みまくっていた手がぐいっと中に…! 何だこの状況!? 「この駄犬が…っ!あぁ…っ!なに、しやがるっ!?」 木に押し付けた膝の上に俺を乗せ、これ見よがしに指をしゃぶって見せた変態は、その指を躊躇いなく俺につきたてた。 「美味しく一杯食べてください!下の口で!」 なんていいながら。 「ことわ…んあっ!」 拒絶の声を上げるのさえ衝撃になる。 あらぬ所からぐちゅぐちゅと湿った音がして、そんなコトをされているのに、身体が勝手に反応する。 …変態がちゃくちゃくと行為を進めているのに何も出来ないなんて…!しかも、こんな妙な格好のまま…! 「ああ…イルカ先生の声が響いて…!!!」 焦る俺とは裏腹に、変態はうっとりとした表情で、すっかり勃ち上がったものをこすりつけいてる。 「やっめろ…っ…!」 「こっちのベストにもしっかり俺たちの愛を染み渡らせましょうねー!!!」 そうか…そういう魂胆か!なら少しは可能性がある! コイツがベストに出すまでは、俺の…尻のほうは大丈夫なはず! 「うっ…ベストは…くれてやる!だから…!」 ベストを脱ぎすてて餌にしようと、震える手で前を開くと、変態は興奮しきった声でまくし立ててきた。 「勿論!記念品として大事に大事に大事に大事に大事に…!!!それはもう大事に保存しておきますよー!!!でもぉ!それにはやっぱり愛の体液交換っていうか!ソコ重要ですよね!」 「んっ!どこがだー!!!」 なんで、こんなヤツが里一番の上忍で…俺の…伴…いや考えるな! それに大事にっていってるときの目がやばかった。しかもその間の指の動きが妙にツボに…!いやだから考えちゃダメだ! 「あ、でも、昨日はベストが先だったから、今日はイルカ先生に出したいです!」 変態宣言だけは元気よく、しかも曇りの無い笑顔で吐き出す変態目掛けてとりあえず怒鳴ってやった。 「爽やかにとんでもない宣言かますな!離せ!まずは飯だといってるだろうが!」 無駄と知りつつ、とにかくこんな変態行為からどうにかして逃れたい。 なんで…森の中で、誰も来ないとはいえほぼ全裸で、変態に変態行為を強いられなきゃならないんだ! 折角修行が出来たと思ったのに、役に立たなかったのか…!? 気が遠くなったが、ココで失神でもしようものなら翌日の俺はきっと恐ろしい状態で目覚める羽目になるだろう。 ギッと睨みつけて、変態に更なる躾を観光しようとした時だった。 「はぁい!もちろん!ちゃーんと美味しいご飯も用意してありますから!」 嬉しそうに。それだけ聞くとまるで新妻のような発言を変態が放った。 「な、ならこっちは中断だ!早く飯に…」 さっきと違ってやや理性が戻ってきてるみたいだ。やはり会話は人がわかりあうための基本だな!…コイツは…なんかちょっと人間じゃない気がするけどな…。 「ご飯はぁ!こっちの修行が済んでからにしましょうねー!!!」 「はぁ!?」 これ、修行のつもりだったのか!?いや最初に思い浮かべたのは確かにコイツならこっち方向だろうって思ってたけど…。まさか…こっちも込みの修行フルコースのつもりで!? 「力抜いて…?」 「え?あぁああぁっ!」 俺が呆然としている間に、変態はすばやくコトを進めた。 力を抜くも何も、脱力した瞬間を狙って、熱く猛る杭を打ち込まれていたのだ。 「はぁ…っ!気持ちイイです…っ!やっぱりサイコーです!イルカせんせぇ…!!!」 「あ…あ…っ!」 激しく揺さぶられてベストが木の幹に擦れる。 あまりの激しさに変態の背中に爪を立てて堪えても、変態は返って興奮したように瞳を輝かせた。 「もっと…欲しいんですね…!!!」 変態の動きは激しさを増し、しがみ付いていてろくに抵抗できないのをいいコトに、ガツガツと打ちつけながら、うなじを齧り、開かれたベストの前に頭を突っ込んで嘗め回す。 はぁはぁ言ってるのは自分なのか変態なのか、もうソレすら分からないくらい翻弄されて。 …すぐに限界はやってきた。 「っんーっ!」 押し寄せる快楽の波に流されるように吐き出すと、すぐに俺の中にもたっぷりと熱い液体が満たされた。 まだ寒いはずなのに、熱さでくらくらする。 吐き出したのにまだ己の内に凝っている熱を持て余していると、変態がにんまりと笑って俺が変態に叩きつけたソレをベストに擦り付けてみせた。 「気持ちよかった…!イルカ先生の…しっかり染みこませましょうね…!!!」 …精神的にも肉体的にも激しく疲労した俺は、そのまま変態の声が遠くなっていくのを感じた。 ***** 「イルカせんせ?」 「ひっ!?」 目覚めたら、全部夢であることを期待してたのに、変態はまだそこにいた。 …さっきの俺のベストだけを身に着けている変態が。 すっかり暗くなっているが、ココはまだ森の中。そして、背中が何故かふかふかしているのは多分布団だろう。…どうして森の中に布団なんか持ち込んでるのかは考えないコトにする。…これから待ち受けているだろう変態の猛攻についても。 だが、この後頭部に当たっている感触は…!? 「イルカ先生…修行だからって、無理しちゃだめですよ…?」 ちょんと額を指で突いてきた変態の膝には、俺の頭が載せられている。 「貴様が無理させたんだろうが…!!!うぅ…っ!」 修行二日目にして、確かに自分確かに上がったという実感があるのに、コイツに勝てないという実感もひしひしと感じてしまう羽目になった。 衝動的に飛び出してきたとはいえ、精神力を培うことと、変態を制御するという目的は絶対に達成したい。 だが、…コイツが変態的な行動をとろうとしたら、それを止めるコトはほぼ不可能だ。実力では…悔しいが確実に負ける。隙を突くコトは万全の体調であってもできるかできないか微妙な所だ。一日中つきっ切りで修行して、そのことを痛感した。 そして言動による制止も十分に効果を上げているとは言い難い。 根本的な問題は、なぜそうまでしてこんな行為に執着するかというコトだ。 だからこそ、残された手段である、コイツの変態的な思考を変えるコトに望みを託したい。だが、それも難しい。というか、恐らく不可能だ。俺の想像を絶する変態行為への情熱が、コイツは奇行に駆り立てているのだから。 つまり、今日分かったのはコイツは真性の変態であるということだけ。…つまり改めて確認するまでもないことだった。 それでも…希望はある。コイツの、俺だけに向けられる異常な執着だ。 ソコを狙えばせめて…もう少し変態を制御できるようになるはずだ…! 「あ、そうだ!ちょっと待ってて下さいね!」 「あ?」 ぐったりしている俺をそっと…それはもう大切そうに抱き起こした変態が、すっと差し出してきたのは…。 「はい!お待ちかねの俺の愛情と秘密のエキスたっぷりのご飯ですよー!あーんして?きゃ!言っちゃった!えへへ!」 炊き立ての飯、但し変態がこれ見よがしに目のまで舐って見せた箸でつかまれている。 腹が減った。この布団からして、まだ今日の戦いが終わっていないことを示している。 それなのに、俺の腕は上がりさえせず、突きつけられる飯だけでなく、側に置かれているお盆に載っているおかずからも、美味そうな匂いが漂ってきていて…。 だから、コレはしょうがないんだ! 「あーん。」 「はいどうぞー!」 案の定変態の飯はすきっ腹に染み入るほど美味かった。 「…次は、そっちの焼き魚よこせ。」 「はぁい!」 先は長い。恐らく飯を食い終わってからも。 希望は薄く、勝算も薄く、俺の精神力も大分薄くなってきている…だが、 …俺は口の中に突っ込まれた焼き魚と飯をほおばりながら、今後の戦いに備えて英気を養い、どうあってもコイツを躾して見せることを心に誓ったのだった。 ********************************************************************************* 誰も待ってないかもしれない変態さん修行編続き! あとは…最終日!で、今回はもう開き直って隠さずにマニアック気味な微エロつきでございます…。 ご意見ご感想などがございましたらお気軽に拍手などからどうぞ! |