花嫁衣裳

今日は大変なことに気が付いた。結婚するなら絶対にやってみたいと思っていたのに、あまりにも幸せな結婚生活に満足するあまり、重要なことを忘れていた。 早速今日よめにお願いしてみよう。
家に着くなり、エプロン姿のうちのよめが、美味そうな飯をならべながら、微笑んでくれた。
「おかえりなさい!今日は早かったんですね!迎えにいこうと思っていたのに。」
そんなけなげなことまで言う。かわいらしいよめにはいつだって大満足しているが、今日は、絶対にやりたいことがあるのだ。
「白無垢と、ウエディングドレス。どっちがいいですか?」
そういってみたら、うちのよめがぽかんとしている。急に言ったから、驚いて、決めかねているのだろうか?
「そうきましたか。むしろ着て欲しいのはこっちの方なんですが…。」
よめをおどろかせすぎたようだ。訳の分からないことを言っている。ここはやはり、夫として、分かりやすく説明してやるべきだろう。
「俺、結婚式で、よめさんにキレイな格好させるのが、夢だったんです。色白いから、きっとどっちでも似合うと思うけど、 やっぱり最近のはやりだと、ドレスの方がいいですか?記念写真一杯撮りたいですね!」
「あーその。うーん。」
よめはまだもごもごと何か言っているが、きっと照れているのだろう。全世界のよめの夢といえば、キレイな花嫁姿だろう。 …我慢させていたのかもしれないな。
よし!早速明日にでも三代目にも式に参加してもらえるように話さなければ。俺もよめも、家族とは死別しているし、よめの友人は上忍ばかり。 みんな忙しいだろうから、呼ぶのは参加できるほんの身内だけでいい、早速できるだけ早く式を挙げよう!
「あの。やっぱり無理がありませんか?」
不安そうにこちらをみて瞳をうるませるよめには、ぐっとくるものがある。うちのよめは奥ゆかしいので、きっとずっと我慢して、 なかなか言い出せないでいたに違いない。今も、期待しつつも遠慮しているのだろう。美人のよめさんをせっかく貰ったのに、すぐにこのことに気づかず、 可哀相なことをしてしまった。
よめの手を握りながら、そっと頭をなでてやる。最近これがよめのお気に入りなのだ。目を細めて気持ちよさそうにしている。
「明日。三代目に仲人を頼みましょう。式は身内だけでちっちゃくてもいいから。ちゃんとあげましょうね!記念写真にも一緒に写ってもらって!」
よめは感動のあまり、緊張しているのか、顔色が悪くなっている。…驚かせすぎてしまったのかもしれない。 今日の所はよめの作ってくれた美味い飯でも食って。ゆっくり寝て、明日に備えよう。
*****
イルカ先生の発想力が豊かなのは良く知っていたが、恐ろしいことになってしまった。たしかに俺は色が白い。純白のドレスも白無垢もきっと良く 似合うと笑ってくれたイルカ先生の気持ちもわからないでもない。
なにせ、おれはイルカ先生のたったひとりのよめ。そして、イルカ先生のよめという存在にかける熱意は計り知れない。
だが、いい年した男が。しかもそこそこでかい男が。…そんな服を着るのはもはや犯罪ではないだろうか。大体この間の祭りで、初夜プレイは堪能したので、 もう十分だ満足している。どうせコスプレするなら、イルカ先生に可愛い猫耳とか裸エプロンとか、他にもっと優先したいものがある。
現実逃避しながら、目の前で、顎が外れそうなほどの大口を開けて目を見開いている三代目を眺めた。
そりゃあ驚くだろう。なにせ、頼まれているのは俺とイルカ先生の仲人。…三代目も打たれ強くなったな。卒倒しないですんでいる。 …以前の三代目だったら、きっとまた入院騒ぎになっていただろう。
「イ、 イルカや。そのー。やめておかんか?」
流石の三代目も、イルカ先生のとんでもない行動を止めようと必死だ。
…だが、おそらく無駄に終わるだろう。なぜなら、俺が昨日一晩かけて、文字通り全身で説得したが、イルカ先生は、
「そんなに照れなくても、だいじょうぶですよ!」
と一蹴したのだ。思い込んだら一直線。そんなところも大好きだ!だが、それが今、ちょっと恐ろしい方向に向かっている。
「なぜですか!…まさかまたうちのよめになにかする気で…!」
「いや、そのーな。ほれ、最近忙しくての、時間も中々とれんし、写真だけとかではだめかの?」
「…せっかくじいちゃんに祝ってもらえると思ったのに…。」
 あ。イルカ先生が対三代目用説得モードに入った。…もう、あきらめるしかないのか…。三代目なら少しは歯止めになると思ったが、甘かったな…。
「いや!もちろん!そうじゃな!…いや、だが、イルカ。それは、カカシも納得しとるのか?」
じじいめ!役に立たない上に、俺に振って逃げたな!
「うちのよめはテレやさんなので、遠慮はしてましたが、きっと楽しみにしてますよ!ね!」
振り向いたイルカ先生は輝くような笑顔でそう言った。…そんな顔をされては断れない。冷や汗を流す俺に、三代目が気がついた。 ニヤリと黒い笑みを浮かべている。…まさか!
「そうじゃそうじゃ。せっかくだし、白無垢もドレスも両方用立ててやろう。なに、イルカのためならいくらでも暇を作れる! さ。どんなのを着せたいんじゃ!」
じじいが、俺への嫌がらせのために、魂を売ってしまったらしい。非常に楽しそうに、むしろさっきとはうってかわって、ウキウキと話している。 ちょっと前まで、冷や汗を垂らしていたのは、じじいだったのに…。
だが、じじいは非常に大切なことを忘れている。…しかたがないので、大喜びして跳ね回らんばかりのイルカ先生に気づかれないように、 じじいに指文字で話しかけた。
すっと、三代目から鋭い視線が向けられる。…気付いたようだ。
(女装姿の俺と、イルカ先生と三代目で一緒に写真を撮ることになりますが、いいんですか?)
耄碌したじじいにも分かりやすいように、ゆっくりと確実に送ると、じじいの顔色が、眼に見えて青白くなっていく。
…やはり、気づいていなかったか。昨日、イルカ先生がしきりに記念写真のについて話していたから、てっきり、情報源は三代目かと思ったが、 どうやら違ったようだ。
「あー、その、イルカ?」
「さすが三代目ですね!両方なんて思いつかなかった!相談してよかったです!で、白無垢はいいとして、ドレスはミニスカートもいいと思うんですが、 三代目はどう思います?」
あ、イルカ先生。それ、やりすぎ。
案の定、ぎりぎりのところで耐えていた三代目は、その姿でも想像してしまったのか、瞳が遠くを見つめ始め、そのまま気絶してしまった。
「あ、三代目も感動してくれたんですね!…でも、やっぱり本人が決めた方が思い出になるか…。ミニスカより、ロングドレスの方がいいですか? きれいな足してるのにもったいないけど。」
 期待に瞳を輝かせたイルカ先生に聞かれてしまえば、断れない。しかし、男の生足…。こんなとき位、役に立って欲しいのに、唯一頼りになりそうな 三代目は夢の世界に旅立っている。
俺がイルカ先生のおねだりに抗し切れたことがあっただろうか…。こうなったら…あきらめるしかないのか……。
*****
ナルトも、サスケも、サクラも、あと、同期の下忍と、来られる同僚と、よめの暗部時代の仲間の方とかも呼びたいと思っていたが、予定が合わないから といって断られてしまった。
俺の親代わりでもある三代目には、絶対に出席してもらわなければいけないので、他の人の予定がそれに合わなくても仕方のないことだとあきらめた。
ちょっと寂しいが、よめの晴れ姿を見られて幸せだ!
緊張からか、よめはずっとうつむいていた。木の葉神社でも、教会でもそんなようすだったので、よめのテレやさんなところと、奥ゆかしいところに とても感動した。さすがうちのよめ!ちょっとはかない感じがして、心配になるくらいだが、そんなところも返って守ってやりたくなる。どこまでも俺好みだ。
写真を撮るときにも、三代目は感動で涙が止まらないし、よめも上がってしまったのか、なかなか顔を上げないので、上手く写真を撮るのに時間がかかって しまったが、ちゃんとよめと三代目に話して落ち着かせ、最高にキレイな写真を撮ることができた。
最高の出来だ!もちろん本物のよめにはかなわないが、写真の中のよめも三国一、いや、世界一の美しさだ。
早速みんなに焼き増しして配りまくるつもりだったが、よめの顔が機密にあたるとかで、ちょっと残念だがあきらめることにした。
まあ、他の人間がよめに惚れでもして、ちょっかいをかけると困るので、結果オーライだと思うことにした。
今日という日をきっと一生忘れないだろう。本当に思い出に残る最高の一日だった!
*****
あきらめずに最後まで戦うつもりだったが、やはりミニスカからは逃れられなかった…。せめて、ロングドレスや変化ならとも思ったが、イルカ先生に 嫌がられたので、却下された。じじいはやはり全く頼りにならなかった。この孫コンめ…!
俺の結婚式決行は、三代目も何度か失神しかけるほどの破壊力だったが、イルカ先生はご満悦だったので、俺はすっぱりあきらめることにした。 まわせるだけ手を回して、結婚式の参列者=犠牲者は三代目だけにとどめることに成功したし、まあ上出来だろう。
なにより、イルカ先生がアレだけ喜んでくれたのだ。たった一人のよめのために、必死になってドレスのオーダーや、カッティングへの注文。紅にも事細かに 相談して、俺を満足させようと必死に努力してくれた。
こんなに幸せなよめはきっと火の国中、いや、世界中を探してもいないはずだ。恐ろしい格好ぐらい、なんてことはない!…はずだ…。
だが、ヴァージンロードをミニスカで闊歩する男は、たとえ自分であっても許しがたい。白無垢は何とか顔が隠せるし、骨太の女に見えないことも無いはずだ。
…身長を無視できれば。
そういうわけで、俺も一応次善の策を考え、実行に移そうと画策していた。
とにかく当日は大変だった。まず教会に到着した後、常に魂をどこかに飛ばしがちなじじいを、やむなく椅子に固定し(一応晴れの日なので縄でなく、 柔らかい紐にしておいた。…ま。一応ね…。)とにかく格好だけでも座っているように見せかけた。
それから、計画通りなら、さっさと自分で用意を済ませるはずだったのだが…。
いつの間にかアスマと手を組んだ紅の手により拘束され、事前に俺が縫い上げて、何とか摩り替えようとしていたドレス(ロングで首も肩もカバー、 勿論ベールもしっかり厚手。パッと見、女に見えなくも無い。…身長を無視できれば。)もしっかり確保されており、ニコニコ笑うイルカ先生の前で、 人生初の化粧を経験した。…そして。
しっかりミニスカをはかされた…。ヴァージンロードを歩く姿は、自分でも暴力的だった。
式を執り行った神父が全く俺の姿を気にしないので、幻術でも使ったのかと思ったが、…素、だったらしい。その職業意識に感服した。
…ちなみに三代目は泡吹いて倒れた。やはり椅子に固定しといて正解だった。
アスマ、お前目の焦点あってなかったけど大丈夫だったのか?ひょっとして紅の術で…。
その後、用意しておいた替えのドレスも、後できっちり着せられて写真撮られたし…。
「お色直しまで考えつきませんでしたよ!!!さすがおれのよめ!!!!!」
などとイルカ先生に大喜びされてしまった。…結果オーライと思い込もうと努力しておいた。
その姿のまま、街中を練り歩き(というかクマと嬉しさ全開のうわばみに拘束されたまま移動。イルカ先生は気づいてなかったけど、なんか暗部とか わさわさいたんだけど。一体なにがあったのよ…。と混乱したが、これは後で、暗部の後輩が、俺を祝おうとした結果らしいと知った。どうも ウワバミが一枚噛んでるらしい。…あと、俺の後輩の無駄に目がパッチリした奴も怪しい。)。
木の葉神社でもう一度、白無垢に着替えさせられ、(毎回イルカ先生の前なので、変なこともできないし。)神式での式も決行した。
きれいだきれいだと大喜びのイルカ先生のほうこそ可愛かった。もちろんタキシードも似合っていたが、きっちりした袴の方も、カッコよかった。この間のと 違って、すっきりしたデザインで、これを脱がすことを思えば、羞恥プレイもなんのそのだった!…なんのそのだ。うん。きっと…。
三代目は、隅っこに固定したままおいといたので詳しくは知らないが、後でやっぱり木の葉病院に運ばれたらしい。…耄碌じじいは無理すんな。と思った。
イルカ先生の喜び具合からして、式に満足してくれたらしい。(ただ、着付けのために紅が触るのは、しょうがないと言いつつもしっかりむくれていたが。 …紅もイルカ先生の気配に軽く怯えていた。)
式が終わってから、初夜はしっかり楽しんだので、色々と吹っ切ることにした。(ちゃんとイルカ先生用に用意しておいたドレスも着せてみたし! …かわいかった。ドレスも袴もタキシードもコレで制覇だ!!!)

…そんなわけで、俺たちの枕元には今、恐ろしい写真が一枚増えたのだった。

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短いですがこそっとアップ。女装ねたが苦手な方は失礼しました(> <)。

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