途中イルカカ風味にみえなくもない気がしたのでご注意ください! 望んでも手に入らないものを欲しがるのに疲れたから。 …すぐ近くにいる幸せよりも一人で過ごすことを選んだ。 久しぶりの長期休暇は誰も来ないこの場所で温泉に浸かって過そう。そう思っていたのに。 「来ちゃった!」 嬉しそうな顔は俺が喜ぶことを疑ってもいない。 ああもう!かわいいじゃないか! だがしかし、その行動はどうなんだ!? 「えっと!その…!」 人里離れた山奥の秘湯だ。つまり普段なら誰も来ないから、温泉の隣に俺が建てた掘っ立て小屋のなかで適当に服を脱ぎ捨てて、そのまま温泉に浸かった。 つまり、服なんか着てるわけがなくて、俺の行動をどっかで見ていたのかしらないが、この人も既にすっかり服脱いでいそいそとかけ湯なんかしている。 ああ、いっそ叫びたい。 「あのね!イルカ先生がお休み取ったって聞いたから!俺も丁度イイから一緒に休んじゃった!」 誉めてくれといわんばかりに満面の笑顔でイタズラっぽく笑う人は、自分の身がどれだけ危機的状況にあるのかを理解していない。そんな可愛い顔してこっち来ちゃ駄目だろうが! ここは遠方を押しても尚来る価値があるほど泉質が良く、湯加減も最高だ。それに俺は元々大の温泉好きだ。 人の手のはいらない幽玄な景色に囲まれて、ゆったりと湯に浸かっていれば…本当なら浮世の辛さも己の煩悩も綺麗さっぱり洗い流してくれただろう。 「へー?結構温度高い?イルカ先生真っ赤ー!」 当たり前だが俺の気持ちなんかしらないから、この人は危機感なくそれはもう楽しそうに無邪気に笑ってざぶざぶと温泉に入って来て、俺の隣にちょこんと座った。 それだけでも俺の頭に血を上らせるには十分だって言うのに、カカシさんは楽しそうに俺の腕だのほっぺただのをなんでもない顔してぺたぺた触ってくるのだからたまらない。 俺の不埒な思いなんて知りもせずに俺を刺激するようなマネをされて、いくら一生ものの秘密にしようと思っていても我慢の限界だ。 …いっそもう襲ってもいいだろうか?万が一怒り狂ったカカシさんに返り討ちにされてここで命を失っても、それはそれでこんな生殺しよりはマシな気がした。 ちらりと隣をみれば艶かしいという言葉がぴったりの白く鍛え上げられた肌をさらして、カカシさんが寛いでいる。 濡れた肌、濡れた髪、それからうっとりと細められた瞳。 完成された美しさに酔いしれるだけで済んだらイイんだが、男として惚れた相手を鑑賞するだけで我慢するなんていうのはそう簡単じゃない。 「カカシさんも、真っ赤ですよ?ピンク色かな…?」 やっぱり襲うなんてマネはできそうにもない。色々凄いコトになってるカカシさんを妄想できても、俺にはさりげなさを装って二の腕に触れるだけで精一杯だ。 俺よりずっと鍛えられている。それに上気した肌が美しい人をぞっとするほど色っぽく見せている。 こんなに綺麗で優しくて、それなのに子どもみたいに無邪気なんてタチが悪い。 彼女はいた。…子どもを優先しがちなせいもあって長持ちしたことはなかったけれど、それでも。 こんな風に欲しくてたまらなくて狂いそうな思いは知らない。 付き合っていた相手に向ける感情はもっとずっと穏やかで、隣に寄り添う人を守っていこうといつも考えていた。 今思うのはそんな感情が自分の中にあったのかと空恐ろしく思うほどの激情だ。 側にいるだけで触れたくなるし、時々寂しげにしている姿を…その儚げな微笑みを他の誰かに向けてはいないかと嫉妬してばかりだ。 もしかして、俺はそっちの人間だったんだろうか…。 たまたま俺の家で酔いつぶれて泊まってったカカシさんと風呂に入って、襲ってきた衝動に戸惑って…。一晩かかって自分の感情に気付いてしまったときには、余りにショックで好物のラーメンも食えないほど落ち込んだ。 出会いもないし、溜まっていたからだと誤魔化しても、その衝動は強くなるばかり。むしろどんどんとそれに自分が飲み込まれていった。 気が付いたらどうやってどうすれば好きになってもらえるのかとか、どこかで上忍にも効く惚れ薬とかないだろうかとか、具体的にどうやったらこの人を自分のモノに出来るのかとか…そんなことばかり考えていた。 自分の押さえが聞かない衝動は恐ろしいほどで、距離を置こうと考えたこともあったのに、側にいてくれることが心地よくて泣きたくなるくらい幸せででも苦しくて…だからこそ、自分の気持ちに整理をつけるためにここに来たというのに。 触れた指先が熱い。もっと触れたい。 どうせ誰も見ていないとか、そんな思考がよぎって泣きそうだ。 できるだけさりげなく手を離して、濁り湯でよかったと安堵した。 …好きな人が無防備すぎる格好で気持ち良さそうに寛いでいるんだから、当然といえば当然だが、しっかりその辺りが反応してしまっている。 「んー…気持ちいいね。なんか、元気でそう」 伸びをするその姿だけで大変な騒ぎになりそうな下半身を、忍び心得を脳内で再生しながら誤魔化しつつ、それでもしっかりその姿を凝視しちゃったあたり、俺も末期だ。 アカデミー生はもとより、くの一たちにも男としてみられないことが多いから、男女問わず言い寄られることが多いこの人も、きっと俺がこんなこと考えてるなんて思いも寄らないんだろうな…。 「元気、なかったんですか?任務でお疲れなら…」 自分の気持ちから逃げることで精一杯だったから、この人の予定まで見ていない。でもいつだって最前線で高ランク任務ばかりこなしているから、ここでしっかり癒していって欲しい。 ついでにマッサージとかならできるし、邪な意図がないかと言われればウソが混じるが無理をして欲しくないのも本当だ。 「ああ、違う違う」 自炊予定の今晩の食事内容にまで思考が及んだ辺りで、カカシさんが俺の言葉を遮った。ちょっと困ったような顔もいい。眉間に寄った皺にまでドキドキするって、こんな感情、もういっそ病気として片付けてしまいたい。 …恋の病は温泉でも治らないっていうけどな…。 「何か他に悩みでも?」 水を向けながら、その悩みの中身が恋愛沙汰じゃないことを祈っていた。もしそんな相談をされたらこんな状況で平静でいられないだろう。 己の未熟さと激情には戸惑うばかりだが、力になれることならなんとかしたい。 我ながら矛盾してる。 「あのね。…イルカせんせがいないからさ、なんか調子でなくって」 そこで照れ笑いは反則だと思う。 「そ、そんなこと言ってもなんにもでませんよー?」 わざと豪快に笑って肩なんか叩きながら、嬉しくてたまらない自分が哀れだった。 これはきっと友情ってヤツだろう。なにしろこの人は寂しがり屋で、ちょっと人見知りするから、俺のことを気に入ってくれてるって言うのは奇跡だ。 欲しいのはもっと違う感情のはずなのに、それだけでもいいなんて未練がましいことを考えて、それなのにこの人が知らないところでどろどろした物を押し殺している。 きっとこの恋は叶わないのに。 同性で、格下で、しかも子どもみたいに懐いてるのも、親代わりみたいなものかもしれない。そう考えると楽観できる要素が1個もなくて、空しくなる。 俺も照れた振りしてうつむいて、こぼれそうな涙を堪えた。今は駄目だ。この人にこんな感情を欠片でも知られたくない。 なんでこんな恋をしちゃったんだろう? 「ね、イルカせんせ」 名前を呼ばれた。それだけで胸が高鳴る。 ぱちゃぱちゃと湯をかき回していた俺の手を掴んでいるのは…カカシさんだ。 「な、なんですか?」 今それはもうすごい勢いで脈拍が上がっているっていうのに、そんなとこ触られたらばれてしまう。 それに俺はちゃんと笑えているだろうか? 「あのね。だからね、えーっと…」 もじもじしてるのも可愛いじゃないか!もう! そういや、最初に酒飲みに誘われた時も、こうやってたっけなぁ。 それからなにくれとなく声を掛けてくれて、俺も声を掛けて…一緒にいるのがあたりまえになるまであっという間だった。 「ゆっくりでいいですよ?」 休暇中で時間はあるし、この人の声をずっと聞いていたいから。 悩みの中身が怖いからっていうのもあるな。我ながら後ろ向きだ…。 俺の言葉にカカシさんが酷く緊張した顔をちょっとだけ緩ませた。 この笑顔が好きだ。出回る噂は酷いものばかりで、冷酷だの非常だのうるさい限りだが本当のこの人はこうやって穏やかに笑っているのが似合う優しい人だ。 だから…。 「好きです」 あれ、今俺言っちゃった!? 「ウソ…!」 あああああ!?一生隠し通すつもりだったのに!なんでこういうコトしちゃうんだ俺は! 驚いてる。…きっとこれからののしられるか避けられるか…とにかく二度と穏やかな時間は戻ってこないだろう。 馬鹿すぎるにもほどがある。こんなに好きなのに! 「ご、ごめんなさい…」 もうこうやって触れるのも気持ち悪いだろう。…俺だって受付で男に強引に言い寄られたときに吐きそうになるくらい気持ち悪かった。ついでに冷静さを失った忍を落ち着かせるために許されている受付権限で殴ったし。しっかりグーで。 余りのショックに悲しいとかそういうコトさえ考えられなかった。 「ね、今のホント?幻術とかウソとかじゃないよね!?」 ああもう!そんなこと聞くな! 「好きです。教師としてはあれですが、そもそも幻術は得意じゃないし、俺はカカシさんにはウソをつけません」 開き直ったというか、ヤケになったというか…ドスが効いた低い声はどう考えても告白にふさわしいものじゃない。 でもしょうがないじゃないか!言っちゃった以上、その感情を疑われるのなんて辛すぎる。 「きゃー!」 いきなりアカデミーの女子生徒みたいな声を上げて、カカシさんが抱きついてきた。 この人のこういう振る舞いも良くないと思う。その辺のくの一より物腰が穏やかだし、すぐくっ付いてくるし! だが状況的に役得だ。何を勘違いしたのかはさっぱりなんだけど。 「もう!イルカ先生ったら酷いです!俺が先に言おうと思ってたのに!」 「へ?」 なんだかもう、訳が分からない。 ついでに息も出来ないし、気持ちいい…って!? 「は…っ!ちょ、なにを…!」 とりあえず、キスまでは分かる。俺も大歓迎だ。想像したのよりずっと気持ちいいし、興奮する。 だがしかし、何で今俺はしりをもまれているんだろうか? 「初めてですよね…?俺、優しくします!」 恥らう乙女のように頬を紅色に染めたカカシさんが、せっせと俺の体に触れてくる。 それはいい。やっと脳に状況が染みこんできた所によると、どうやら両思いという奇跡が起こったみたいだから。 でも。 「優しくするのは俺の方です!」 ずっと好きだったんだ。経験値は確かにこの人のほうがはるかに高いだろうけど、俺だってその手の本を…読むって言うか見てはカカシさんで想像して鼻血を吹いていたんだけど。 「うん。優しくシテ…?」 …何か握らされた。そりゃそうだ。同じ男だ。付くもんついてるのは当たり前だ。 問題はどう勘定してもそれが俺のよりずっと大きいってことだ。色々プライドとかそう言ったものがぎしぎしきしむ音がした。 イヤでも!入れるんだったらあんまりでっかいのよりそれなりサイズの方がいいはずだ!だってお互い男なんだし! とにもかくにも気持ちよくしたいのは本当だから、この際でっかいヒビが入った俺のプライドは置いておく。 「気持ち、いいですか?」 人のモノなんて触るのは初めてで、当然慣れてる訳もない。 優しく!優しく! 頭の中でそれを繰り返しながら必死で擦った。 「ん…っ気持ちイイ…。ね、もっと」 目を細めてうっとりしてる。初めて見る顔だ。 ふ…っと吐き出される吐息まで甘くて…ああもう!この状況でおねだりなんかされたらどうなるかなんて分かってるだろうに! 「じゃ、じゃあ!がんばります!」 自分でもなんか違うと思ったが、他に言い様が思いつかなかった。 どうしよう?とりあえずこすって出して…それから色々するはずなんだけど、相手は男。 股間の事情的には自分も限界が近いし、鼻血も出そうだし、だからって強引なのは危険だと本にあった。 相手が怪我するし、自分も痛い。らしい。 擦りながらこれからの色々で頭を一杯にしてたら、耳元にふぅっと甘い溜息を吹き込まれた。 それだけで背筋がぞくっとしたのに、追い討ちをかけるようにカカシさんが囁いた。 「イルカ先生」 吹き込まれる甘さに骨が溶けそうだ。 今後の手順には大分不安が残るが、いっそのこと…! 思い余って太腿辺りまで触ってみた。それでもカカシさんは嬉しそうにしている。むしろ次を誘うように唇をぺろりと舐めて挑発までされた。だからそれに気を良くしてもっと色々触ってしまおうとしてたのに…ひっくり返された。 「積極的ですっごく嬉しい…!でもゴメンなさい!もう我慢できない…!」 「え?え?」 ソコからの手際は正に上忍で業師だった。 がばっと足を開かされて抵抗する間もあればこそ、ぐっととんでもない所に押し込まれた異物に悲鳴もあげられなかった。 「まだ指だけだから。息吸って、吐いて…そ、そんな感じ」 涙目の俺を励ますように、カカシさんが囁いてくれる。正直入れられているところは、お湯が入ってきてるし広げられてる感じが気持ち悪いんだけど、背中を撫でる手は気持ちいいし、気遣いが嬉しい。カカシさんだって苦しそうなのに。あれだけの状態になっていれば絶対にキツイはずなのに。 「ん、あっ…!?」 カカシさん耐えてるんだから俺もと頑張ってたら、変な声が出た。 中を弄ってる指が、そこを擦ると訳が分からなくなるくらい気持ちいい。感じたことがないその激しさに目を白黒させながら、カカシさんに縋った。 カカシさんならこの事態を何とかしてくれる。そう思ったから。 結果的に悪化したっていうか、とんでもない目に合わされたんだけど。 「かわいい…!すっごく我慢したんです!だから…も、無理…!」 ぐいぐい突っ込まれてた指が抜けて、ほっと一息つく間もなくねじ込まれた。 「やっ…あぁ…!」 痛い。それに苦しい。それなのにさっきのところを擦られるのが気持ちいい。 それなのに言葉どおり余裕なんてものは欠片もないらしいカカシさんにがんがん腰を使われて、色々したいと考えていたことは全部吹っ飛んでしまった。 余裕なんて当然俺にもない。カカシさんを突き放したいのかしがみ付きたいのかも分からなくなって、見も世もなく喘ぐので精一杯だった。 …なんかおかしいと気付いたのは、カカシさんのが中ではじけて一杯になって、自分も訳が分からないうちに射精して、カカシさんが満足げに「ああも、サイコー…!」なんていわれたときだった。 ていっても、すぐに意識が飛んじゃったからろくに覚えてないんだけど。 ***** 一生懸命口説いてたのに、脈がない所か一人で旅行なんかいっちゃうからいっそのことどうこうしちゃおうと思ってたと聞いたのは、しっかりどうこうされてからのことだった。 「えへへー!すっごい幸せ!」 掘っ立て小屋で意識を取り戻してからも挑まれて疲労困憊だけど、カカシさんが嬉しそうなので俺も嬉しい。 立場的なことには完全には納得できないんだけど! 「えーっと…」 色々言いたいことはあるんだが、何を言ったらいいか分からないでいると。 「好きです!やっと言えた!」 飛びつくみたいにして俺にそう言ってくれたから。 「俺も好きです!」 他のことはどうでもいいことにしておいた。 ********************************************************************************* 適当小話。 なんにもふやせないので腹塞ぎに。 休止とかそういう単語がよぎる今日この頃…。 ではではー!ご感想つっこみなどお気軽にどうぞー!!! |