「じゃ、頼むな…。」 「おお!…がんばれよ…!」 「ああ…」 昨日変態による今までで最悪の襲撃を受け…俺は決意した。 変態から逃れる手段はもはや呪いの指輪の解術以外残されていない…。だがそれには莫大な時間と、知識が必要だ。そして何より精神力が。 …俺にはそのうちのどれも足りていないという自覚があるが、何より精神力が限界に近づいている…! そう感じた俺は任務に出ることを決めた。少しでもアレから離れる時間をつくり、冷静さを取り戻すために…。 三代目にも人生を見つめ直したいと言ったら、都合してくれた。「まりっじぶるーかのう…」などといっていたので、ちょっと解釈が違うようだがこの際 その辺はどうでもいい。とにかくあの変態から距離をとらなくては!!! 幸いあの変態はコスプレ道を追求するとか言って以来、俺の家に出現していないので、久しぶりにゆっくり自宅で準備できた。だがこの家では駄目なのだ。 いつヤツが湧いて出るか分からない。 …出掛けにゴミ捨て場を見たが、そこに昨日廃棄したはずのベッドが回収時間前に無くなっていた理由は考えない。 …それにしても…肝心の本体はいまだ姿を見せないのが恐ろしい…。いつもならどこからともなく湧いて出るんだが…。 とにかく、俺はくじけそうになる己を踏みとどまらせながら、任務へ向かった。 ***** 「くそっ…いってぇ…」 どうして変態から逃れようと思ってもうまくいかないんだろうな…。 今回の任務は書簡を届けるという簡単なもので…中忍に割り当てられたのは急ぎだったって理由だけで、それこそ襲われることなどまずありえないものだった はずなのに、帰り道に抜け忍と思しき集団に襲われた。 俺も中忍。…何とか片付けようと、トラップを駆使して半分以上はしとめたが、今一歩の所で敵の首領をしとめ損ね、かなりの打撃を受けてしまった。 足をやられて走ることもままならないし、わき腹にざっくり刺さってるのはクナイだが、どうも毒が塗られていたらしく、さっきから視界がかすむし血が止まらない。 毒消しを飲んでも効かない所を見ると、新種の毒かもしれないな…。情けないことに、他の所にも細かい傷を受けてしまい、貧血スレスレだ。 今潜んでいる茂みも、いつまで気付かれないか分からない。 …だが、だんだんと意識が遠のいていくのが自分でも良く分かる。任務終了の式は飛ばしたが…期間が遅いのに気付いて救援が来た頃には俺はもう…。 まだまだ遣り残したことはある。まだアイツが火影になる所だって見てないし、今俺が見てる生徒たちがちゃんと一人前になるところも見たかった…。 …だが、コレであの変態からは開放… されないんだった!!!死んでる場合か俺!解術しないと永遠にあの変態が…!!! 「…っは、く…そっ…」 まだ痛みがあるってことは、もうちょっとはもつ。今まで何回か死に掛けたときも、寸前になると痛みさえ感じなくなったのを覚えてる。 だがそろそろ本気でヤバイ。 何か目の前に可愛い犬の幻まで見える。 幻にしちゃ…はっきり見えるな…。それにお迎えってのは普通先に死んだ…俺の場合はかあちゃんとかとおちゃんとかじゃないのか…? それにしても… 「…かわ、いいな。どこの…犬だ?」 「え、アナタのカカシですよ?」 今犬がしゃべった。…信じたくない事を!!! 「ぎゃああああああ!!!っくっ…っ…いってぇ…」 何でここにいるんだ!コイツは確かコスプレ道を極めるとかでどっかに出かけてたんじゃなかったのか!? 「ああ!動いちゃ駄目です!!!コレ…飲んでください!!!」 犬の口から変態の声が聞こえるが、犬の外見なのでちょっと殴りにくい。ふさふさもこもこの白い犬が器用に肉球に丸薬みたいなものをのせている。 「へんなモノ入ってないだろうな…?」 コイツの用意するものは信用できない。俺が弱ってる所につけこんでどうこうされる可能性だったあるのだ! 俺が鋭い視線を向けると、犬の口からとんでもない言葉が…。 「愛と秘密のエキス入り…」 「この間のか!!!…断る!」 以前やたら効果の高い丸薬を飲まされたことがあったが、その時も同じ事を言っていた。…そんな気色悪いもん飲むくらいなら、こんなもん気合でなんとかしてやる! 大丈夫だ俺!今までだって何度も死に掛けたけど、結局生きて帰ってきたじゃないか!!! だが、俺が傷ついた足を引きずって、なんとか立ち上がろうとするのを、目の前の白くてデカイ犬が前足で肩を押さえて止めた。 「駄目です。この傷じゃ里まで持たない。」 真剣な顔…はじめてみたなぁ…。…犬の方がまともに見えるってどういうわけだ? そう思っていたら目の前の犬が消えて変態が湧いた。 「究極のコスプレ…それは変化だと思ったんです!!!でも…そんなことより…!!!俺はイルカ先生のためならなんでもやります…!!! だからこの薬飲んでください!絶対効きますから…。」 顔中涙でぐしゃぐしゃにしながら、真剣な瞳をしている変態…。信じてもいいんだろうか? だがちょっと待て、冷静に整理してみよう。 死ぬ→変態に魂が吸い寄せられる。→何されるか分からん上にひょっとすると永遠に…。 薬を飲む→おそらく助かるが、何されるか分からん→だが解術の可能性がまだ残る。 答えは当然後者だ!俺は…万が一の可能性にかける!!! 「くすり…よこせ…」 早速薬を飲もうとしたが…ヤバイ…力が入らない…痛みが遠く…。俺は…ここまでなのか…? 「イルカ先生。ごめんね。」 変態がそういうと、ぬるついた感触の何かが口の中入り込み、同時に苦味が広がった。 「水も。あと造血丸も飲んで。」 動けない俺にせっせと変態が薬を飲ませていく。 いつもの変態なら、口移しなんて事をするなら、無駄にエロい行為をしかけてきそうなものだが、変態は真剣そのものだ。飲み込むのを的確に確認し、次々と俺に 薬を飲ませていく。 「あ、うご…く?」 急に身体が楽になった。視界のふちが白くなり始めてたのに、今はかなりはっきり見える。薬が効いてきたらしい。 「駄目。動かないで。里まで俺が連れて行きます。」 よく見えるようになった視界に、見たことのない表情を浮かべた変態がいた。不安そうで、悲しそうで…必死だ。 いつもいつも…ヘラヘラと笑ってる顔しか見てなかったから気付かなかったが、真剣な顔してるとそれなりに賢そうな顔をしている。 それにやっぱり無駄に整った顔だ。 「イルカ先生…?イルカ先生!?」 貧血による死はどうやら免れたようだが、今度は急激に眠気が襲ってきた。目を開いていられない…眠い…もう駄目だ…。 「犬。俺は寝る。あとは…頼んだ…。」 俺はそう言うのが精一杯だった。 ***** 「イルカ先生!」 重い。眠いのに何だ一体。うるさいな。 「イルカ先生イルカ先生イルカ先生!!!」 「うるせー!!!」 あ、変態が泣いてる。何だ一体。何があったんだ? 俺が目を開けると、視界に変態の泣き顔が広がっていた。重みの正体はこの変態だったらしい。 「良かった…!!!」 涙輝くその笑顔はかなりの美しさだが、その前に…! 「何がだこの変態!服を着ろ!!!」 取り合えず全裸で人の上にくっ付いていた変態を殴り飛ばしたが、冷静になって周りを見回してみるとどうやらここは病院…? 「だって…だってイルカ先生が動かないから!死んじゃってるんじゃないかって!」 確かに殴った感触があったのに、変態は俺の足元にまたくっ付いてきやがった!でも顔が腫れてるとこみると、今の…初のヒットか! かなり嬉しいが、まあそれはおいといて、なぜにこの変態は…。 「…ならなぜ服を脱ぐ!」 「すっごく冷たかったから、素肌で温めれば目覚ますかもって…!良かった!ほんとに良かった!!!もう三日も眠ったまんまだったから…!!!」 ぐずぐずと泣き崩れる変態は、いつもの様な余裕が見られない。 ここは病院で戦場じゃないんだから、普通の手段をとればいいものを、この変態は上忍の癖に冷静さを失っていたらしい。 あのときの様子からして、不埒なマネ目的でもなさそうだ。…今回は不問に処すことにする。だが、もう1個の疑問の方は解決しておかなければ! 「…そういえばなんでお前俺の任務先にいたんだ?」 「イルカ先生が里を出たので、うちの子たちに張り付いてもらってたんです!でも…俺はまだ犬コスが完璧とは言いがたかったのでちょっと遅れてしまったら …イルカ先生が!ごめんなさい!…また守れないかと思った…!!!」 まあ要するに忍犬まで使ってストーカー行為を行うのが日常だったことが判明したが、今更だ。それよりさっきからやたらと取り乱しているのが気にかかる。 「おい。何でさっきからそんなに泣いてるんだお前は?」 上忍ともなれば仲間が傷つき倒れることなんてしょっちゅうだろう。俺も…取り乱すかもしれないが、ここまで泣き叫ぶなんて上忍じゃありえない。 「だって…だってイルカ先生…大怪我してるし!また置いていかれちゃうかと思った…!!!イルカ先生の匂いがどんどん消えてくから…。」 発言の内容の端々から変態さが伝わってくるが、コイツもトラウマ持ちらしい。 こうもめそめそ泣かれると、調子が狂う。 …慰めてやら無いといけないと思っちまうじゃないか…。 「犬。ちょっとこっち来い。」 俺の足元でぐすんぐすんと泣きながら膝を抱えて丸くなってる変態を呼び寄せた。今さっき気付いたが点滴がつながってるので、足元までは手が届かないのだ。 「はい!」 俺の身体の上にちょこんと座った変態は、まだ涙を流している。 今回ばかりはしょうがない…。 「…よくやった。助かったのはお前のおかげだ。…だからもう泣くな。」 ぐりぐりといつもより入念に頭をなでてやると、変態がだんだんと身体をゆらゆらゆらし始めた。そしてそのままパタンと俺の上で横になってしまった。 寝ている…? 「あ!イルカ先生!」 「おお!?どうしたナルト!」 「それはこっちのセリフだってばよ!!!すっげぇみんなで心配してたんだぞ!!!」 そうだった。俺大怪我したんだったな。にしては随分と痛みがない…? 「あ、カカシ先生寝ちゃったんだ。」 は!そういえばコイツ全裸!!! 慌てて布団で覆ったが、点滴がつながった手では、上手く全てを隠すことが出来ず、微妙に半ケツ気味だ…。 だが肝心な顔は隠せた!でも半ケツの上忍師って…明らかにマズイだろう!!! 「ナルト!その、これはだな!」 流石にお前の上忍師は変態だとはいえん…!!!どうすれば…!? 「…カカシ先生、イルカ先生が心配だからって、ずっと起きてたもんな…。」 そうか、この変態がそこまで…コイツの格好が全裸じゃなければイイ話なんだが…。 それとナルト…今はありがたいが、お前の観察眼にはでっかい問題があるな…。今度補習でもしてやらないと…。 だがその前に。 「あーすまん。ナルト。コイツに何か毛布とか持ってきてくれないか?」 コイツは重度の変態だが、命の恩人であることは確かだ。それに…流石に教え子に微妙にナマ尻さらしたままってのもまずいだろう。 「おう!任せとけってばよ!ずっとイルカ先生に付きっ切りだったから、隣のベッドに毛布あるしな!」 「そうか…」 付きっ切りで面倒みさせちまったのか…。何だか俺のほうが悪いことしちまった気になるな…。 しんみりしている間にも、ナルトが変態に毛布をかけてやっている。…思いやりのあるいい子にそだったよなぁ…! 「カカシ先生ってば俺たちにらぶはにー?が危険だからって言って任務に来なかったんだけどさ、いつものウソかと思ったけど違ったんだな!」 「…ナルト…今なんつった…?」 今信じられない単語が聞こえたような…? 「だから、イルカ先生ってば、カカシ先生のらぶはにーなんだろ?」 なんてこと教え子に広めてやがる!!!ちょっとは待遇変えてやろうかと思ったが…帳消しだ帳消し!!! 「ナルト…それはな…」 「でもさでもさ!らぶはにーってなんだってばよ?」 良かった!お前がちょっとおばかさんでホントーに良かった!!! 「まあその、友達ってヤツだな。多分。異国の言葉だからちょっとわかんねぇけど!」 「へー!カカシ先生ってすっげぇな!」 「はははっ…はは…そう、だな!」 …いろんな意味でそうかもな…。 「じゃ!今日はもう帰るってばよ!今サクラちゃんとかとサスケの馬鹿と交代で任務やってるからさ!今度みんなでお見舞いに来るってばよ!」 「…そうか…ナルト。ちょっとこっち来い。」 変態のとばっちりを受けてもこうやって任務をこなせるようになったんだな…!成長してて先生は嬉しいぞ!…もうちょっと頭の中身は… 補習してやった方がよさそうだが…。 とにかく、とてとてと寄ってきたナルトの頭をぐりぐりと撫でてやった。嬉しさと誇らしさで、自然と顔がほころぶ。 「ありがとな。」 「なんか…テレるってばよ!…じゃな!イルカ先生!また来るってばよ!」 ぷにぷにの頬を赤く染めたナルトが鉄砲玉のように飛び出していった。うんうん。何か感動したな! それに…何とかナルトを誤魔化すことには成功した。 だが、変態は…今までナルトといえどもなでようとすれば怒り狂ったものだが、今日は完全に沈黙してる。 …本気で疲れきってるんだな…。 素っ裸なのはどうも許容しがたいが、今回だけは多めに見てやることにして、俺も本調子ではない身体を休ませてやることにした。。 ***** 「イルカ先生!ご飯です!あーん!」 今日も今日とて変態の作った飯を食う。 …なぜならこの変態が病院の飯にケチをつけ、院長を恫喝して、この変態が作った飯を持ち込む事を許可させたからだ。 つまり、この変態の飯を断れば、俺の分の飯はないということ。…癪に障るが、この変態が俺の事を本気で心配しているのが分かってしまったので、 抵抗しづらい…。 結局、今のところはこの変態の暴走を許してやっている。 俺が完全にへばっているせいか、変態行為もなりを潜め… 「イルカ先生の使ったスプーン…な、なめたい…!!!」 切れていないがかなり被害は減った。 「イルカ先生!次はこの肉団子とかどうですか!元気になる薬草入りです!」 それに、こうやって飯の中身に色々と工夫をこらしてあるので、その点は評価してやってもイイ。 「おい、犬。俺はそっちの肉が食いたい。」 「はい!どうぞ!…あーん!」 「…んむ。…うまいな…。」 「えへへ!!!頑張ったんです!喜んでもらえてよかった!」 「で、コレには何が入ってるんだ?」 「溢れんばかりの愛情と!…秘密の…」 「分かった。それ以上の情報はいらん。…飯。」 「はい!!!」 ちょっとうっとおしいが、飯はうまいし、入院で面倒なパジャマの洗濯などもこの変態が勝手にやっているので、重宝している。 「イルカ先生!次のお弁当のリクエスト!何かありますか?」 「ラーメン。」 「はい!わかりました!!!」 …こうして変態にリクエストをしてやると、必ず次回もって来るところも便利な点だ …パジャマに関しては毎回みたことのない柄であるところを見ると、おそらく使用済みのものがヤツのコレクションに加えられている可能性が高いが…。 とにかく、飯を食い終わった。…今のところ入院中なのでやることと言えば寝ることぐらいだ。 「イルカ先生。もう休みます?」 「ああ、そうだな。」 「じゃ、子守唄を…」 「いらん。」 最初言われたときも歌は周りの入院患者に迷惑なので断ったが…結界張ってあるから大丈夫です!とか言われて無理やり聞かされた。 …変態自作の俺を讃える歌で、どうやって安らげと言うんだ!…しかも結構な美声で歌い上げるから、返って対応に困った。 …結果、今は断固拒否している。 「じゃ、本でも読みましょうか?」 「いらん。」 これも最初言われたとき不審なものを感じて断ったが…変態は、絶対楽しいですから!などと言い張り、無理やり聞かされた。 …変態の美声で読み上げられるエロ小説で、どうやって和めと言うんだ!!!…しかも途中で変態自身が興奮し始めるし…。 …結果、今は断固拒否している。 「じゃ、添い寝…」 「いらん…毎日やってて飽きないのか?」 コレに関しては言わずもがなだ。…けが人と一緒に寝ようって言うのが分からん。まあ、変態の薬の効果のせいか、傷はほとんどふさがってるんだが。 「なら…側にいてもいいですか…?」 「…好きにしろ。」 結局毎回、こうなる。 …つまり変態がベッド横の椅子に腰掛けて、ずっとくっ付いてるわけだ。 …俺が目を覚ますと、変態は大抵俺の腹の上に頭を乗っけて寝こけているので、それを眺めるもの日課になりつつある。 「イルカせんせ…愛してますー…大好きですー…なめたい…」 ちょっと寝言が不穏なのはご愛嬌だ。 寝ている変態の頭をゴリゴリと撫でてやり、ヨダレもふき取ってやる。 …一応俺の犬だしな。 ちょっと可愛く見えるようになった犬との入院生活は、2週間にも及んだ。 ***** …そんなこんなで、結構平和な入院生活だった。 やっとこさ今日!退院してきて、俺は今三代目のところにご挨拶に向かうところだ。 「三代目!うみのイルカ、本日無事退院いたしました!ご迷惑をおかけしました!」 「おお!イルカ!…よかったのぉ!」 久しぶりに見る三代目は涙目になって喜んでくれた。…こういう里長だから、木の葉の里の忍はみんな火影を尊敬してるんだよな! 「ご心配をおかけしてしまいまして…申し訳ありません。」 そんな里長に心配をかけてしまったのだから、責任を取らなければならない。 「よいよい。…ところでの。」 「はい…任務のことですね。俺は…」 書簡は無事届けられたけど、任務は完全に終わってなかったから、どうなったのか気になってたんだよな。 …変態に聞くと、俺が大怪我したのを思い出して子どもみたいにびーびー泣きわめくから良く分からなかったし。…アレはホントに上忍なんだろうか…? 「そのことなんじゃが…。」 三代目が珍しく歯切れが悪い。…よっぽど被害が大きかったんだろうか…!? 「…覚悟はできております。はっきり…おっしゃって下さい。」 里に損害を与えたのなら、俺の身を捨ててでも償う覚悟は決めてある。三代目は俺の事を責めないだろうが、もし、被害が大きかったのなら…俺が俺を許せない! 瞳を真っ直ぐに三代目に向けて、俺は処断のときを待った。 「その、な…。」 その後三代目の口から吐き出された言葉は…恐るべきものだった。 俺の入院が怪我の割りに長引いた理由…それは…変態の投与した各種薬物のせいだったらしい…。 ヤツは俺を心配するあまり、とんでもなく強い薬をたっぷり与えてくれたらしい。そのおかげで命が助かったのかもしれんのだが…例の弁当に盛ってあった薬…。 アレは…ひょっとして…。 しかも、俺があんなに簡単な任務で狙われたのも、あの変態の…情夫だという噂が流れたかららしい…。 頭が真っ白になった俺は、気がついたら俺の家にいた。 俺の家でにこやかに微笑む変態は、礼によって例の如くしゃもじ片手に耳にたこができて海に向かって旅立つくらい聞き飽きたせりふを言った。 「お帰りなさいイルカせんせ!!!しわくちゃじじいと話して疲れたでしょう…?ここは!まず俺?それともご飯?やっぱり俺?風呂?風呂と見せかけて俺? やっぱりここは俺ですね!!!」 とりあえず…怒りのあまり鉄拳制裁を加えた。が、俺の繰り出したこぶしをヤツは難なく交わし…舐めた。 「…おい。犬。…はいつくばって許しを請え!!!」 当然俺は変態に向かって謝罪を要求した。ちょっと過激かもしれないが、コイツにはちょうどいいはずだ! 「はーい!!!」 だが…喜んで腹を見せる変態を踏みつけながら、…俺は戻ってきた日常を感じて……ちょっとホッとしたのだった。 ********************************************************************************* もうすっかり毒されたことに気付かないイルカ先生…。 しかもうっかり可愛いとか思い始めて居ります…。 因みに今回の副題:かかちのいぬれべるがあっぷした! でした…。 このカップル?は、もうちょっとで…えらいことになるはずですので、生ぬるく見守ってやってください…。 |