怪しい紙切れ


“お仕事紹介いたします!簡単な内容で、特別な資格や技術はいりません!!!初心者歓迎!!!懇切丁寧に指導します!!!”
ショッキングピンクの紙切れに、金色の文字が躍っている。最初は単なるアルバイトの募集だと思ったが、よくよく見てみると、 …どうも水商売で働くことを勧める内容のようだ。何をするといくら貰えるかの値段表まで載っている。そんなことまで商売になるのかと思うような 内容に驚きながらも、イルカはその怪しい紙切れを眺めた。
それにしても…このアパートは一般人も住んでいるとはいえ、ほとんどが忍、しかも、野郎ばかりなのに…。
無作為に投げ込んでいるにしても運の悪いことだ。けしからん内容なので、同情はしない。
小さい子どものいる家だったらどうするつもりなんだか…。
イルカは生徒たちのことを思い出しながら、その紙切れをゴミ箱に放り込んだ。
まあいい…明日の笑い話のねたができた。
…その時はそう思っていた。
*****
アカデミーで一仕事終え、イルカは飲み屋で同僚たちと飲んでいた。一仕事終えたことで気が抜けたのか、全員ほろ酔いどころか、かなり酒が入っている。
一部にいたっては、すでに畳の上で酒瓶抱えて寝転がっている奴さえいる。イルカも結構な量の酒を飲んで、いい気分になっていた。
その時、そういえば、と、昨日のことを隣に座っている同僚に話すことした。コイツも同じアパートの住人なので、きっと同じものを見たはずだ。 酔っ払ってぼんやりとした頭のままで、苦笑いしながら、イルカは話し始めた。
「なあ、昨日変な紙切れ、ポストに入ってなかったか?ピンク色の…。野郎ばっかりのアパートの馬鹿な奴もいたもんだよなー。」
当然、同意の返事が返ってくることを、イルカは予想していた。が。
「へ?なんだそりゃ?紙切れ???入ってなかったぞ?」
同僚は、口から串揚げをはみ出させながら、不思議そうに答えた。
「え?いや、そうか???」
てっきりアパート全室に配ったのかと思ったのだが、配る人間がよほど適当だったか、イルカのところで紙切れが切れたのか、 同僚の家には配られなかったようだ。
まあ、いい。そんなものを配っている奴の事情など、どうせイルカには関係のないことだ。
「それがな、昨日、変な内容の紙切れがうちに入っててなー。なんか、ピンク産業っていうのか?そこで働きませんかーっつー内容でな…で、 アホなんだよ、配った奴。うちにそんなとこに勤めるような奴、いないのになー。っていうか、まず女の子いねぇしな。」
「そりゃーアホだなー。うちのアパート、野郎で忍がほとんどだつーのに…。ある意味可哀相っつーか。女なんて…ああ!大家さん!女じゃねーか!」
「…80超えてっけどな。」
「わっかんねーぞー?そういうのが好きな奴もいるかもだぞ?」
「おまえそれ大家さんにいったら殺されるぞ。…元上忍らしいからな。」
「えええ!?マジで!ヤバイ。今月滞納してんのに…。」
「またかよ!!こんなとこで飲んでねぇで、さっさと払いに行けよ!!!」
イルカと隣の同僚が、ぎゃあぎゃあ騒いでいると、さっきまで、熱心に漬物をむさぼっていた別の同僚が、のそのそと近づいてきた。
「えーなになに、こいつまた払ってねーのー?」
大分酒が回っているようだ。目も顔も真っ赤でやたらテンションが高い。
「渡すの忘れちゃったんだよ!!!」
滞納している同僚も釣られてテンションが高くなってしまったようだ。大げさな動きをつけて答えている。だが、その内容はいただけない。 思わずイルカも突っ込んだ。
「何度目だよ!!!」
「…今年に入って3回目…。」
滞納している同僚は、しょんぼりしながらも、結構な回数であることを白状した。イルカももう一人の同僚と顔を見合わせ、うなずきあう。
「…絞められるなー。」
「消されちゃうかもなー?」
普段温和な大家さんだが、怒らせたら恐ろしいことになるらしいと、以前から入居している人に聞いている。
「うわああ!!!だから、上忍だってしらなかったんだよー。」
滞納している同僚が頭を抱え込んで叫びだした。
「上忍じゃなくてもちゃんと払えよ!!!大家さんが優しいからって、それに甘えてるから、こういうことになるんだぞ!!!」
イルカも酒が入って沸点が低くなっていたため、教師モードで怒ってしまった。そこに、先ほどの同僚がいつの間にか、にごった液体の入って コップをもって、戻ってきた。
「そーだそーだー!!!罰としてコレをのめ!!!」
勢い良く滞納犯の首根っこを掴み、謎の液体を喉に流し込む。…固体も一部含まれていたようだが…っていうか、イカゲソが入っているのが見えた。
鮮やかな手際についつい感心していると、飲まされた同僚が苦しみはじめた。
「うが!げふっ…。うぅう…。」
流石にイルカも慌てた。いくら酔っていても、やりすぎだ。
「おい!何飲ませたんだ!」
だが、慌てるイルカを尻目に、飲ませた方は力いっぱい親指を立てながら言った。
「残った酒色々混ぜた奴!」
「あーあー。」
 まあ、美味くはないだろうが、酒が主成分ならしにはしないだろう。イルカは一応水を飲ませて、そのまま転がしておくことにした。
…結局途中から脱線したが、十分笑い話になった。その後も、まだ生き残っていた同僚たちと散々飲み食いし、大分遅くなってから、 飲み会はお開きになった。
生き残った者たちが少なかったので、イルカは結局、つぶれてしまった滞納同僚を担いでそいつの部屋に放り込むことになった。
重い荷物から開放された肩をまわしながら、自分の部屋の鍵を開ける。
いつもどおり、帰ってすぐにポストの中身を確認する。と、昨日と全く同じ紙切れが入っていた。
…またか…。無駄なことを…。
イルカは酒の回った頭で、紙切れを配った相手を哀れみながら、そのまま紙切れを捨て、そのままさっさとベッドに入ったのだった。
*****
「おはようさん。」
 アカデミーへ出勤途中、昨日怪しい酒を飲まされていた同僚と行き会ったので、イルカはいつものように挨拶した。
「う…はよぅ…。うぷ。」
 同僚は昨日の謎の酒の影響か、かなり弱弱しい。相当ひどい顔色をしている。目もうつろだ。
「あー。二日酔いか?」
イルカが、うつむいた同僚の顔を持ち上げると、同僚が低い声で呻いた。
「頭…ゆらすな…いてぇ。うぅ…。」
「…アカデミー着いたら薬飲んどけよ。」
どうやら相当状態が悪いようだ。イルカは二日酔いの薬のことを考えながら、同僚の頭をそっとはなした。
「ううううううう…。」
 だが、同僚は未だに呻き続け、今にもその場で吐きそうだ。イルカは何とか引きずるようにして、重低音を発し続ける同僚を、アカデミーの医務室に運び、 アカデミー医務室特製、異常にマズイが、非常に早く、しかも良く効く二日酔いの薬を飲ませた。
「うぇえええ…。」
「あー吐くな吐くな。すぐ良くなるから。」
 二日酔いと薬の相乗効果で、涙までこぼしてぐったりしている同僚の気を紛らわそうと考えていて、イルカは昨日の紙切れのことを思い出した。
「あ、そういえば、また入ってたんだよ、昨日の紙切れ。」
「あ?ぅ。…。」
「お前も帰ったら見てみろよ。無駄に派手で、野郎相手ににそれ配った奴想像すると、ちょっと笑えるぞ。」
イルカが同僚に言うと、また、不思議そうな返事が返ってきた。
「あー???入ってなかったぞ?」
「そりゃ、お前そんな状態じゃ見落とすだろ。」
同僚はかなりのよれよれ具合だ。小さな紙切れに気付かなくても不思議はない。イルカは笑いながら言った。だが…。
「だから、何にも入ってなかったって。ひょっとして督促状とか来てるかなーって不安だったから、ちゃんとチェックしたし。」
同僚の状態からして、誤魔化したりからかっているわけではなさそうだ。
どうにもイルカの腑に落ちない。…同僚の家にだけ、入っていないのだろうか。
…ひょっとして…。
「お前さ、回覧板飛ばされたりとかしてないか?」
「ちゃんときてるって。…それ、お前んちにだけ配られてんじゃないのか?」
イルカが真剣に考えた答えを、同僚にあっさりと否定されてしまった。
「なんでだよ!!!」
気持ち悪いことを言わないで欲しい。
「んー。あ!髪の毛が長い!!!」
「あのな。どうみても男だろうが!」
 しかもそれでは、どこかで髪の長い人間がいないかを、ずっと見張りながら配っていることになる。イルカのあきれた様子に、同僚も不満そうに言った。
「そんなん知るかよ!…おお、すっきり。…いつも思うんだけどさ、こんなに効くっておかしいよなー…。何、入ってるんだろう…?」
どうやら二日酔いは治ったようだ。薬の中身は…作るのを手伝ったことのあるイルカは知っているが…。
「気にすんな!考えない方がいい事だってある!さ、職員室急ぐぞ!」
「うお!もうこんな時間かよ!」
イルカは時間に託けて同僚をごまかせたことにホッとした。
…それにしても不気味だ。忍相手にそんな商売の勧誘をするなんて頭がどうかしているとしか思えない。なにか勘違いした一般人が、 くのいち相手に同じことをしようものなら、血の雨がふるだろうし、男のイルカでも十分不愉快だ。
そういった商売を馬鹿にしているわけではないが、忍としての誇りを傷つけられたようで、いい気はしない。
「気にしないのが一番だよな。うん。」
イルカは己にそう言い聞かせ、放っておくことにした。
*****
「またか…。」
今日もイルカの部屋の郵便受けに、怪しい紙切れが入っていた。これで一ヶ月以上、イルカの元に届けられ続けたことになる。
…いい加減頭にきた。それでなくても、今日は会議はもめて長引くは、授業を脱走しようとした生徒を捕まえに出ることになって、 結局授業が予定通りに進まなかったので、補習が決定するは、さらには受付で任務先とのトラブルが発生した忍が長時間粘り、 受付業務が遅延するはで、気力体力ついでに忍耐力が限界に達していた。
こうなったら、直接文句を言ってやろう!!!こんなもんが届くから、イライラがひどくなるんだ…!
そう思ったイルカは、いつもはゴミ箱に直行させていた紙切れを手に取り、電話をかけた。もう深夜といってもいい時間だ。
流石に出ないかもしれないと思ったが、予想に反して1コール目で電話は取られた。
「もしもし、オイあんた、俺んちにしつこく広告入れてるだろ!迷惑なんだよ!こっちは忍で、しかも男だ!あんたのとこで働く気は全然、全く、 これっぽっちも無い!!!さっさと広告入れんのやめてくれ!!!」
 気にしないでいたつもりだが、気づかないうちに結構たまっていたようだ。イルカは自分でも驚くほど、声を荒げてしまった。
おそらく一般人であろう相手を脅かしすぎてしまっただろうかと思ったが、電話口の相手は、いたってのんびりと答えた。
「あー。すみませんねぇ。では、お詫びに…これからすぐ伺いますので。」
「はあ!?」
「では…。」
「オイ!ちょっと待て!!!配んのやめてくれってだけで…。くそっ。切れた。」
これからすぐと相手は言った。相手は確かにイルカの家を知っているだろうが、もうこんな時間だ。おそらく電話口のイルカの態度に腹をたてて、 意趣返しをしただけだろう。
「全く。なんなんだよ…。」
得体の知れないものを感じながらも、今日はさっさと寝てしまおうとしたとき…扉が叩かれた。
瞬身の術でも使わないと、こうも早くは来れないはずだ。
…本気ですぐきやがった!!!っ!?しかも、相手も忍か…!!!
一瞬、イルカの脳裏に、ナルトのことがよぎった。イタズラか何かの勘違いかと思っていたが、もっと根の深い嫌がらせだったのかもしれない。 イルカはクナイを握り締め、そっと扉に近寄った。
「夜分遅くにすみません…。」
一応しおらしげなことを言っているが、気配が全くしないことから、相手は相当の手練と思われた。
「どこのどなたか知りませんが、もうこんな時間です。…お引取り下さい。」
一応、追い払おうと試みたが、こんな手の込んだマネをするやつが、この程度で引き下がったりはしないだろう。
イルカはすばやく己の装備を確認した。…今日はアカデミーでの授業と受付だけだったので、仕込みはそんなに多くない。
…こんな相手とやりあえるだろうか…?最悪、三代目に式を飛ばして…。
そんなことを考えていたら、目の前の鍵をかけておいた扉が、まるで鍵などかかっていないかのように簡単に開いてしまった。
しまった…!!!
「おじゃましますねー。」
耳元で声がしたと思ったら、一瞬赤い光が煌き、視界が暗転した。
*****
「お金、嫌いですか?…っていうかテクニックには自信が…」
「金?何の話だ!!!そもそもテクニックってなんだ!そんなもんの自信はいらん!!!」
一方的にまくし立てる侵入者は、銀髪上忍…はたけカカシだった。…ナルトたちから変だけど頼りになる上忍師だと聞いて、 密かに尊敬していただけにショックだった。
本当に変というか…変態だったんだな…。
イルカは嘆きながらも反撃を試みる。
「やだなあ上忍としてってやつですよー。もーう。なーに想像したんですかー?」
だが、カカシはしゃあしゃあと言ってのけた。
…いつかコイツを一撃でヤれるぐらい強くなってやる!!!
そう決意しながら、イルカはとにかくこの危険物を叩き出す算段をした。
 まず現在の状況。
奴→元気いっぱい。
俺→疲労困憊+縛られている。
って、いつの間に…!!!
「おいコラ!さっさとこれ解きやがれ!っつーかどっからこの縄持ってきやがった!」
「あら元気!…じゃ、早速頂きましょうかね。」
嬉しそうにきれいな笑顔をさらしながら、上忍がにじり寄ってくる。手つきも態度も怪しさ全開だ。
「断る!何なんだ!何する気なんだ!そもそも目的が皆目検討もつかん!説明ー!説明しろー!つまびらかに速やかに滑らか…じゃなくてもいいから!!!」
イルカは、教師生活で培った大声で、慌てながらも訴えた。
「えー説明してもやる事かわんないしーめんどくさいですよ。」
イルカの必死さなど我関せず。カカシはふにゃふにゃしたしゃべり方でイルカのイライラを増長させた。
「あんたそれでもホントに忍びなのかー!!!いいから、とにかく、さっさと!説明しろっ!!!」
再度カカシを怒鳴りつけた。腹の底から声をだしたので、カカシにも少しは堪えただろう。そう思ってイルカがカカシを見上げると、 カカシは少し考えるようなそぶりを見せた後、意味不明なことを口にした。
「えーと。イルカ先生が魔性だからです。以上説明終わり!じゃ、早速…。」
「…わかるように説明しろ…。」
思わず上忍相手ににらみ付けながらすごんでしまった。おそらくチャクラも相当凶悪なものが漏れていただろう。
「イルカ先生こわーい。もうしょうがないなあ。」
カカシは少しも怖がっていない様子でそういった。
相変わらず気に障る話し方だ…!
そう思いながら、イルカはカカシに早く説明するよう促した。
「いいから、早くしゃべれ…!!!」
*****
「つまり、あの紙切れの段階から罠だったと…。」
 「罠じゃないでーす。作戦でーす。アルバイトに応じてくれてたら、お金も払うし、懇切丁寧に俺だけのイルカ先生にしてあげたのにー。 で、経験をつんだイルカ先生は俺から離れられなくなって、いずれは永久就職で!」
頬を膨らませて拗ねる上忍は、子どもっぽい表情とやたらいい見た目と反して、とんでもないことばかり口にする。
「…かわいこぶるな…。」
思わずドスの聞いた声がでてしまったが、この変人にはどうでもいいことだったようだ。
「先生、もう説明しおわったから、いーい?」
縛り上げたイルカのズボンをくいくいと引く様子は、子どものおねだりとそっくりだ。内容に全くかわいげがない所が大きく異なるが。
…一応聞くだけ、さっきよりはましか…。だが…!そんなもんは断固断る!!!
腹にすえかねたイルカは、縛られたままであることさえ忘れて、その場でカカシをこんこんと説教しはじめた。
「いいですか、カカシさん。…」
*****
「…ということです。…ちゃんと、わかりましたか…?」
長い長い説教を終えたイルカは、肩で息をしながらカカシに聞いた。人としてやってはいけないことについて、それこそ懇切丁寧に教えたつもりだ。
上忍ともなれば理解力、判断力は非常に高いはず、しかも相手は写輪眼のカカシ。暗部の部隊長まで勤めた猛者だ。
…頼むから理解して欲しい。
イルカは期待と不安に満ちた瞳で、カカシを見つめた。
「はい!!!イルカ先生が一生懸命、顔真っ赤にして話してるの聞いてるだけで、すっごく興奮できるから、しばらくは我慢プレイを 堪能することにしました!!!」
カカシは元気一杯にそう宣言すると、にこにこ笑いながら、むしろ褒めて欲しそうにしている。
…もうすぐ夜明けがくるというのに、俺の努力は…全部、無駄だったのか…?
疲労のあまり、一瞬魂が抜けそうになったイルカだったが、あまりのカカシの常識の無さが、教師魂に火をつけた。
だが、ここで諦めてはアカデミー教師の名が廃る!!!
改めてこの危険人物の教育に熱意をもって取り組むことを誓った。
「…カカシさん。あなたには色々と問題があります。でも…大丈夫です!ちゃんと俺がついていますから、これからちょっとずつ、直していきましょう!!!」
「えー?どっこも悪くないですよー?ほら…」
「ああ、それは仕舞っときなさい。いいんです!見せなくても!…ってコラー!!!ぬ・ぐ・なー!!!」
手のかかる生徒がやっと卒業したと思ったら、新たな問題児が…。
そう嘆くイルカの前途は多難なようだった。

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カカシ先生がイルカセンセの頑張りによっていつか真人間に…。ということは永遠にありません。
イルカ先生の苦労は永遠に続き、カカシのイルカゲット作戦も立てられ続ける…。という話。


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