それは、とても陳腐な
「愛してるからに決まってるでしょ?」
そんなセリフを口にして、呆れたように男はため息をついた。
ため息をつきたいのはこっちだ!
「じゃあ…アンタは俺が同じことしても許すんだな!?」
何でこんなコトしやがったんだこいつは!
…確かに付き合ってはいる。…ちょっと…いや、大分騙されたって言うか、それでもほだされたって言うか…。
でもとにかく、俺だって惚れちまったのは確かだ。
こんなヤツに。こんなヤツなのに。
「同じこと?出来るの?」
俺の怒りを哂うように、すかした顔で俺の顎を掬ってからかうように撫でていく手に、頭が沸騰しそうになった。
が、「できるの?」なんていわれたら…答えは否だ。
「うっ!」
上忍で…無駄に強くてついでに無駄に性格が悪くて俺より一枚も二枚も上手なこいつに敵うなんて思えない。
それに、自分にされていやなコトはしないのが常識ってもんだろう?
「ほーら。出来ないことなんか考えないの。いいからさっさと…」
いつだってそうだ!
コイツは…微妙に上から目線で俺をコントロールする。
最初は気付かなかった。それくらいさりげなく、今だって愛情ごかして俺の…俺の大切な…!
「うー…!!!馬鹿―!いいじゃないか!俺のちょっとした幸せを…!」
感極まって涙がこぼれた。
…自分でも分かってるさ!いい年した…それも中忍が泣く様なことじゃないなんてのは!
でも…でも俺にとっては大切だったんだ…!
「ああもう!ほーら。泣かないの。」
慌てたように伸ばされた手が頬を伝う涙を掬い取って、すぐにソレを追いかけるように唇が滑っていく。
…気持ちイイ。こうやって大事にされるのも、いつもは余裕たっぷりのコイツの慌てた顔をみるのも。
「泣くようなコトしたくせに…!」
ちょっと気が大きくなって、子どもみたいに拗ねて見せたら、今度はさっきと違ってちょっと甘いため息が聞こえた。
「睨んでも可愛いだけよー?」
いつだって余裕たっぷりにこうやって…俺を慰めてるように見えるけど。
本当は知ってる。焦ってるって。
…だって、ちょっとだけど鼓動が早くて、目だってゆらゆらしてるし、俺に触れる手が…ほんのちょっとだけ緊張で冷たくなってるから。
普段は鉄面皮みたいに冷静なコイツが。
「じゃあ!返せ!」
ここぞとばかりにわがままを言うと、頭をガリガリ掻いたカカシが、ふぅっと深く息を吐いた。
眉間に皺なんか寄せやがって!そっちこそ可愛いだけなんだからな!
「もーアンタには敵わないなぁ…。…いーい?一個だけ。それと俺と半分こね?身体に毒なんだから。」
これは多分カカシから引き出せる最大限の譲歩だ。
これ以上ごねたら…多分身体で説教に移行する。
「…分かった。」
しぶしぶながら俺は条件を飲んだ。
ホントは全部一人で食べたかった。すっごく楽しみにしてたってのもあるけど、何より…コイツは上忍で俺よりずっと身体に気を遣わないといけないから。
でも…これが我慢できるか!
新発売の生味噌ラーメン極上仕上げ冬の国限定バージョン!
インスタントだけど…折角貰ったお土産だったのに全部捨てようとしやがって!
友達から貰ったものをそんな風に捨てたいわけがないだろう?
「ま、しょうがないか、なんてったって、アンタのこと愛してるしね?」
それはとても陳腐なセリフ。
でもそれが本当だって俺はよく知ってるから…。
「お、俺も愛してるに決まってるだろ!」
陳腐なセリフを返して、それからぎゅっと抱きしめてやった。

…まあそんな訳で、ラーメンを食うのはそれから数時間後になったけど。

俺たちは勿論幸せだ。

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何故かリリカルふぉもバカップルが湧いたので拍手に置いておいたもの。
無駄に長くなりそうだったのを適当にぶった切りましたが、妙に気に入ったのでこの辺においておきます。
こんなもんでもご意見ご感想等ございましたら、お気軽にどうぞ!


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