「…疲れたなあ…。」 「どうしたの?」 独り言のつもりだったのに、背後から急に問いかけられ、イルカはうろたえた。 「あ、いや別に何でも…。」 とっさに振り返ってそう答えたが、話しかけてきたのは意外な相手だった。 「…うそつき。」 眉を寄せたカカシが腕を組みながらそう言う。…予想外なのはこの人の性格なのかもしれない。 「…カカシ先生って意外に親しみ易い性格してるんですね。」 「んー。どうかな?」 「よく知らない人間に気さくに話しかけるような人とは思いませんでしたよ。」 確か子どもたちから初対面だというのにほとんど自己紹介もしてもらえなかったと聞いている。もっと秘密主義的な性格をしているのだと思っていた。 「ヒドイなあ…ま、ある意味正解だけど。」 その様子にやっぱり裏があるんだと確信した。 「…任務とかなんですか?やっぱり。」 確かに今日は結構面倒な絡まれ方をした。何せ今のナルトの担当上忍は里最強とも歌われる男だ。八つ当たりするにも狙いやすい方を狙ったのだろう。 最近やたらとそういう奴らに襲撃を受けているので、今のところあしらえているので実害は無いが、三代目あたりが気付いてこの人を差し向けたのかもしれない。 だが返ってきた返事はまた意外なものだった。 「目の前にずっと狙ってた獲物が隙だらけでいたらさ、付け込むでしょ?もちろん。」 「えーと…上忍の方に狙われる覚えはないんですが…。」 何せイルカはもてないし薄給だ。上忍にうらまれるとしたらナルトのことでの逆恨みぐらいだが、この上忍はそんな風には見えない。昔のこともあるが、きっと この人は覚えてないだろうし、それにやっぱり狙われるような理由じゃないし…。 「理由…知りたい?」 「あー…どうでしょう…。」 知ったところでこの上忍相手では勝算は薄い。それよりも知らぬ存ぜぬを通して逃げ回る方がいいような気がした。 「ま、お友達からで。」 …なんだろうこの流れは…?まるで…口説かれているような…? まさかな。この上忍はもてるときいているし…。 「何だか分からないんですが、拒否権はあるんですか?俺に。」 「ないかな?」 「…お友達でお願いします…」 友人の名を借りて何かの任務なのかもしれない。 そう思い込もうとしたが、カカシの返答がそれを裏切った。 「そっかぁ。じゃあそこから先は俺次第?」 「どう、なんでしょう…?」 先…先って…なんなんだ? 「まずは、お友達でよろしくね。」 「はあ…。」 上忍と友人関係なんて恐ろしいマネはしたくないんだが…。なにせ拒否権はこっちにないらしいし、この場合おとなしく従っておいたほうが得策だろう。 そう考えてあいまいな返事を返したイルカに、カカシは楽しそうに言った。 「その内俺なしで生きられないくらいメロメロにする予定なんで。」 「はあ!?」 メロメロってなんだ!? 「じゃ。」 「…どうしよう…?」 何で俺、ちょっと嬉しかったんだ…!? ***** 「いってー…。」 中忍が地面に仰向けに転がっている。さっきまで周りにも同じような状態の人間が転がっていたが、仲間がさっさと回収して去って行った。 「あんた毎回馬鹿だよね。」 この中忍は本当に馬鹿だと思う。忍びでもない、九尾だなんだと掟破りなことを言っている輩など、どうせ何も出来ないのだから適当に放っておけばいいのに…。 「あんたは毎回ヒマだよな。暗部の癖に。」 イルカは全身傷だらけの癖に、あきれたような顔で言う。この中忍は、暗部相手に臆することなく毎回こうして話す。 「ま、お仕事だし?」 それに、この中忍の方がよっぽど面倒な事をしていると思うんだが。 「俺があいつらとやりあってるのを見てるのが?」 「そ。」 ま、ホントは不穏分子の監視も兼ねてるんだけど。 …イルカは不審そうに聞いてきたが、途中顔をしかめていた。どうやら口の中を切ったらしい。あれだけの数相手なら、忍術を使った方が絶対にいいに 決まっているのに、この中忍は最後まで徒手空拳のみで通した。 …相手が武器を持っているのに。だ。 しかも今回は、その挙句に無駄に怪我をして、結構な出血までしている。 「ヒマだなぁ。もっと他に仕事あるだろうに…。」 中忍は傷だらけの癖にどこか楽しそうに笑っている。 「そーね。…傷。見せて。」 この中忍の怪我はおそらく命にかかわるものではないが、治療しなくても大丈夫なほど軽症なわけでもない。この中忍の生命を守ることが今回の任務だ。 もちろん襲った連中を記録することも任務に入っている。 だが、こんな事をさせるくらいなら、最初からあの中忍が襲われる前に俺たちを使って幻術なり何なりで対処させればいいものなのに、なぜ三代目はわざわざ この中忍に戦わせるのか疑問だ。 「ホント…ひま…」 あー。もう意識がやばい。病院に運ばないと。 「しっかりしなさいよ!」 「先輩!全員確保です!…ターゲットは無事でしたか?」 「後頼んだから。この人連れてかないとやばそう。」 ホントあのじじい何考えてるんだか! 冷たくなっていく手…こんなことは今までの任務で何度もあったことなのに、この中忍がそうなることが恐ろしいくてたまらなかった。 ***** アカデミーであったときは驚いたんだよなぁ…。 何せ一回大怪我をして以来、あの暗部に会うことがなくなったのだ。そして怪我をすることも無くなった。…襲撃が急激に減ったからだ。 イルカが襲撃されると、いつの間にか現れていたのも納得がいった。つまりあの暗部の任務は、イルカを囮にして不穏分子の洗い出しをすること だったのだろう。わざわざ暗部を使ったのも、これまでのことが、機密…というかこの里の闇に属するものだからだったからに違いない。 …あの暗部の任務内容が理解できたので、任務が終了した以上、おそらく二度と会うこともないだろうと思っていた。 だが、やっとのことでナルトを卒業させてみれば、始めましてと顔を見せたのはあの暗部だった。顔を隠していても分かる。髪の色もさることながら、 チャクラや、飄々とした雰囲気や、その性格があのときの暗部そっくりだった。 でも…覚えてないんだろうなぁ。あの時は俺も若かったし。 それでも最初は、気配が似てるなぁとか、まさか!いやそれはないよなぁなどと自分を疑ってみたのだ。だが、先日のことでそれは確信に変わった。 なにせ自分相手にああいう類のふざけ方をするなど、他にいようはずも無い。 なんなんだろうなぁ…また任務なのか…? ミズキの件で、まだまだ不穏なモノたちがいることが分かったのかもしれない。この際そういった危険を一掃するためには、イルカは都合の良い囮だ。 なにせ、階級は中忍。自分で言うのもなんだが、上忍であるカカシより遥かに扱いやすいんだろう。 でもメロメロは無いよな。ありえない…。 イチャパラなどという18禁小説を愛読しているだけあって、発想が斬新と言うかなんと言うか…。とにかく。理由は納得が出来た。まあ自分がなんで この状況を喜んじゃってるのかは謎だが…。 それはともかくとして、どうしてこの人居ついちゃったんだろう…。 今日も休みだからといって、素顔をさらしてなぜか俺んちでくつろぎきってるカカシ先生…。覆面しててもキレイな顔してるんだろうなぁと分かる輪郭だったが、 素顔は腹が立つくらい造作が整っている。流石にちょっと腹が立つというかなんと言うか…。 「はぁ…。」 「イルカ先生。どうしたの?」 人がちょっとため息をついたら、カカシ先生が閉じていた瞳をうっすら開いた。眠そうだが心配そうに俺の頬に手を伸ばすこの人は、ありえないくらい キレイな生き物だ。 「重いなぁって…。」 「愛の重さですからねぇ。」 「いきなり凄いコト言いますね…。」 この非常識な生き物は、この間さっさと帰っていったくせに、俺が帰ったときにはもうしっかり家でくつろいでて、しかも何だか当然のように泊まっていった。 で、今に至る。つまりは何だか膝枕なんかしてやってるこの状況…。 「あのー…。」 「ん?なぁに?」 「友達ってこんなのと違うと思うんですが…。」 百歩譲って同居まではアリかもしれない。が、なんでまたほとんど年の違わない男をひざに乗せて、しかもくつろがれちゃったりしてるんだろう俺は…。 「ああ、そろそろお友達から卒業を目指してますんで。」 俺がさりげなく意義を申し立てているというのに、カカシ先生はさらっと勝手な宣言をした。 「はぁ…?」 そんな事を言われても…。大体どこまでが任務なんだろうこれ。それともカカシ先生には中忍をいたぶる悪い趣味があったりするんだろうか? 「同棲生活っていいですよね?」 「イチャパラの読みすぎですか?」 「アンタってホント変わってないよね。」 「…いつどこで知り合ったんでしょうか?」 まさかまさか…だって覚えているわけが無い。…いや、でもそうか。俺みたいに馬鹿なやり方でナルトをかばう奴が珍しかったのかもしれない。 で、俺の観察に走ってるとか…。 「覚えてないならいいですよ。…俺が覚えてれば。ああ…でもイルカ先生の頭の中は俺で一杯にするつもりなんで。」 「だから何なんですかそれは…?」 やはりこの上忍の性格は、思ったよりフランクというか…いい加減なのかも知れない。 「そういうわけなんで宜しく。」 「なにをよろしくされちゃったんですか…?大体俺に拒否権って無いんでしたよね…。」 「ま、そうかな。」 「あー…まあその、そこそこのところまでにしといてください…。」 「んー?どうかな?」 「…。」 ふざけた事を言うのが趣味の上忍相手といえど、ちょっと腹が立つ。 「ねぇ。もっと撫でて?」 俺が拗ねた気配に気付いたのか、ひざの上のいい年した上忍が俺のひざに擦り寄りながらそんな事を言い出した。 …俺はこの人の頭をなでるのが好きだと知っているからだと思う。雑草かなんかの様にすさまじい逆立ち具合の毛だが、犬よりはやわらかくて、 猫よりはちょっと腰があってなかなかさわり心地がいい。カカシ先生は、こんな風にちょっと落ち込んでるときとか悩んでるときとかに、 さりげなく甘えるのが上手い。 「あんまりなですぎるとはげたりして。」 確かに癒されるんだがそのまま素直にカカシ先生をなでるのも癪だったので、ちょっとだけ意趣返ししてやった。 「大丈夫ですよー。俺の髪の毛って丈夫だと思いますから。親族の中でハゲたやつがいるって聞いたことないし…あーでも…そんな年まで生き残ったヤツ がいないからわかんないか。」 「そういうことは言わない!」 思わずなでていたその手で軽く頭をはたいてやった。 「てっ!…はーい。」 「素直で宜しい。」 何でこの人いついちゃったんだろうとか、いつこの人がいなくなるんだろうとか…悩んでいたことなど忘れて、その日は日がな一日カカシ先生を撫でて過ごした。 …だからそのすぐ後に、こんな事を聞くとは思わなかった。 「…すみません。もう一度言っていただけますか?」 「…もうお前を襲った奴らは排除したといっておる。」 「誰が…?」 「おや?知らなかったのか?お主らは確か一緒に暮らして居っただろう?」 「知りません…。」 カカシ先生が居ついてることがばれていることより、三代目が言ったことの方がショックだった。 「カカシが不穏な動きをしていたものどもを排除した。他にもお主に危害を加えようとする輩が出てくる可能性はあるが、まずは危険な輩は抑えた。 おそらく大丈夫じゃろう。」 「そうですか…。」 任務だって分かってたのに…どうして俺は落ち込んでるんだろう。 「落ち込むな。イルカ。…処分は下す。里の規律を乱したのじゃからな。が、別に命まではとらん。」 「…ありがとうございます。」 三代目は、俺が捕まった人たちのことを悲しんでるんだと思ったらしい。それも気にはなる。彼らが怒るのは筋違いだし、ナルトに何かするのを許せるわけが無い。 それでも…何かに縋らないと生きていけない気持ちは分かる。 …例えそれが憎しみであっても。 でも今はそれよりもカカシ先生がいなくなってしまうことで頭が一杯だった。 「それはカカシに言ってやれ。…お主もよく頑張った。今日は急に呼び出して悪かったの。」 「いえ!…早速今日はたけ上忍にお礼を言います。」 「なんじゃ急にしゃちほこばって?」 「失礼します!」 不自然だと分かっていても、その場にいることなんか出来なかった。 ***** イルカ先生は素直だ。昔から。 自分の考えは絶対に曲げないが、それ以外のことはどうでもいいというか、割と素直に受け止めて、そのまま流してしまう。というよりむしろ… 諦めてしまっているのかもしれない。何せあの災厄の日から一人残されて生きてきたのだ。望んだものが手に入らないなんてことは身に染みて わかってるんだろう。物欲も薄いし、気前がイイというよりも最初からあんまり何かを望んだりしない。ごく小さな自分が絶対に譲れないことだけを 大切に抱えて生きてるように見える。 それなのに…そのごく小さなことのほとんどが他人のことなのだ。いつでも全力投球で、見ているこっちが不安になる。 まあその性格のおかげで、居つけちゃってるからいいんだけど。 イルカ先生の様子からして、多分俺があのときの暗部だって分かってるんだろう。それは正直嬉しかった。かけらも覚えてないってことは無くても、 俺だって気付かないんじゃないかとか色々想像して気が滅入ってたから。 …でも、全然俺の言葉は信用してない。ただ俺がふざけた事を言ってると思ってるみたい。 まあ命令違反しちゃったから、イルカ先生にも会えなかったんだから当然か。 不審な行動を取る者の洗い出しだけを命じられていたのに、イルカ先生を病院に放り込んだその日のうちに、俺は襲撃者を一掃した。流石に殺しはしなかったが、 相当強力な暗示をかけたから、ある意味人格の死ではあったかもしれない。何かを強く憎むことで孤独になった自分を正当化しているヤツばかりだったから。 それが原因で三代目に頭冷やして来いとか言われて飛ばされるし…。 でもあの狸爺は、もともとナルトの担任に引き合わせるために画策してたんだろうと後で気づいた。それとあの人の性格を見せて、俺にも何か分からせた かったんだろう。俺もあの頃は騙すことと殺すことばっかりうまくなって、それ以外のことなんか全然だったし、ちょっと世を拗ねてたからガンガン 下忍とか落としてたし。ま、素質が無いと思ったからだけど。 だからあの爺さんは俺が反抗したのを見て、嬉しそうだったんだろう。ちょっとは感謝してるけど、その割には処分がえげつない長期任務だったから帳消しかな。 それに…ナルトのことは俺以外の人間じゃ無理だろうと思っていたからいんだが、まさかうちはの生き残りまで引き受けさせられるとは思ってなかったし。 「何考えてるんですか?」 「もちろん。イルカ先生のことですよ?」 「…アンタその冗談飽きませんねぇ…。」 今日も俺はイルカ先生の家でくつろいでるって言うのに、イルカ先生は俺の言葉を信用しない。上忍が遊んでるくらいにしか思ってないんだろう。 でも、家に帰ってきて俺がいるのを見てホッとしてる。だから俺は何度だって同じ事を言う。 「冗談じゃないですよ。」 「あーはいはい。」 いつもこの返事が帰ってきちゃうんだけどね。 「…でも、もういいんですよ?」 イルカ先生の様子がいつもと違う…何かあったんだろうか? 「首謀者は捕縛されたそうです。…昔と同じですね…。だからもう大丈夫なんです。こんな事をしなくても。」 「なにが?」 「俺は寂しがりやなんで。ずっといられると慣れちゃうから駄目です。もう帰ってください。」 「いいじゃない。俺がずっと側にいるから。」 「…任務は終わったんでしょう?最近襲撃がなくなったと思ったら…三代目が話してくれました。」 あの爺!余計な事を…!任務なんて受けてない。勝手にやっただけだ。今回はまあちょっと…根回しはしたけど。またイルカと引き離されるなんて納得いかないし。 「任務じゃない。」 「ウソだ。」 「ウソじゃない。」 「…じゃ、なんでいるんですかうちに…?」 「要するに惚れちゃったんですよね。アンタに。」 最初から自覚してたわけじゃない。ずっとこの人が一人で戦ってるのを見てて、何でこんな無茶するんだと思って、その内どうしてこの人だけにやらせてるんだ と腹が立って、それでもずっと一人で立とうとするこの人を守りたいと思って…。 気がついたら惚れてた。が、気付いたのが別れの日になった。 ナルトの担任になったばっかりの頃だから、結構な期間俺は惚れた相手から引き離されたわけだ。普通ならその間に思いがさめるとかありそうなんもんだが、 俺の場合は長い間思い続けた結果、むしろ熟成されて発酵した。もはや自分でも歯止めが利かないくらいだ。 そんな俺に回ってきた上忍師の任務。折角側にいるチャンスがあるんだし、すぐにも口説こうと思ったものの、イルカ先生からしたら初対面の上忍… しかも怪しい経歴で、怪しい格好の俺。 …無理だなと思った。 でも諦め切れなくて、もう任務でもないのに昔みたいにこっそり見てたら、やっぱり我慢できなくて…イルカ先生の寂しがりやな所を狙って、 潜り込んじゃおうと決めた。 腹の立つことにというか、都合よくというか…不愉快な連中が暴れてくれた。颯爽と助けに入る自分を想像したけど、イルカ先生の方も成長してて、 キレイに受け流していた。前からそういうのが上手かったけど、さらに磨きがかかってて、離れていた時間の長さを痛感した。 がっかりしたものの、カッコイイイルカ先生に改めて惚れ直して、でもどうしようかとおもってたら、思いのほかイルカ先生が落ち込んでた。 …つまりは隙が大きかった。 そのチャンスを逃さず潜り込んだんだ。しかも俺の事を覚えてた。…絶対に逃がさない。 「なんなんだよもう…。放っといてくれ…。」 イルカ先生は俺の事を信用してない。というより、誰かが側にいてくれるってこと自体を信じられない。 でも、俺はこれからずっと…それはもうしつこく一緒にいると決めたので拒否はなしだ。 「いやですよー。拒否権は無いって言ったじゃないですか。」 「なんで…?」 イルカ先生がイヤって言っても聞けない。 「信じなくてもいいよ。今は。でも言ったでしょ?その内メロメロにしちゃいますから!」 「…もうなってますよ!気がついたら!…アンタのことばっかり考えて…あのときからずっと!アンタ俺に会いにも来ないし!俺の周りにうろついてた奴らの 捕縛かなんかが任務だったんだろうからしょうがないけど…。でもアンタがいなくなって…ずっと生きてんのかどうかもわかんなくて!」 「イルカせんせ。」 「だから、アンタに変なコト言われても、生きてたって、覚えてたって!それだけで嬉しくて…。それなのにアンタ家に勝手に居付くし、何か当たり前みたいに 俺の側にいるし…」 一生懸命に話すイルカ先生の言葉は、まるで俺への熱烈な告白だ。居ついたから置いてやってるくらいにしか思ってなかったから、凄く嬉しい! 「それホント?」 そう、思わず確認してしまいたくなるくらいに。 「ホントですよ!ウソだったらいいのに…!」 「駄目。ウソにしないで。」 そんなのは許さない。ウソなんかにしない。絶対に。 「…なんでですか…!」 イルカ先生の頑なさを砕くのは一朝一夕じゃ無理なのは分かった。 もう自分でも何言ってるかわかってないんだろうに、必死で一人でいようとする。 いっそのこと…。 「…身体からとかどう?」 「はあ?」 「いいから。俺の本気受け取ってみて?」 「え…?」 そのまま涙目のイルカ先生を寝室に攫った。 ***** 「なにするんですか!」 何が起こってるのかわからないが、もうからかうのは止めて欲しい。 俺はベッドの上に、カカシ先生は俺の上に乗っかって、しかも腕をつかまれてて身動きも出来ない。 「えーっと。イルカ先生って…こういうことのご経験は…?」 カカシ先生が何をしたいのかが分からない。 「放してください!」 「…なさそうだね。よかった。」 勝手に納得されて喜ばれてもこっちはちっとも嬉しくない! 「あのね。イルカ先生。良く聞いてね?」 「なんですか!」 この体制で何を聞けって言うんだ!重いし、動けないし! 「好きです。」 「まだそんな冗談を!」 「うん。そういうと思った。だから、イルカ先生には俺の本気を受け取ってもらおうと思って。」 本気ってなんだ!? そう思った俺がカカシ先生を睨みつけていると、カカシ先生のちょっと悪巧みしてるみたいな笑顔が近づいてきて、俺の唇に生暖かいものが触れた。 濡れた感触…。これってもしかして…? 「びっくりした?」 「…びっくりしました。」 今俺はこの人と…唇と唇がくっ付いたわけだからつまりえーっと…キス!?しちゃったのか!? しかもこの体制…やばいんじゃないのか俺! 「放せ!馬鹿野郎!」 確かにこの人のことは好きだけど、こんなこと込みなんて考えたことも無い!大体俺もこの人も男だし…遊びにしても質が悪い! 「あはは!やっと気がつきました?で、俺は遊びで野郎とキスなんかできないんですけど、イルカ先生はどうですか?出来る人?」 「できるわけないでしょう!」 誰が好き好んで野郎なんかと…!って、アレ?でも俺驚いたけどイヤではなかったな? 「つまりですね。俺はイルカ先生に本気です。…イルカ先生は?気持ち悪い?」 「いや、そんなことは…」 「じゃ、両思いということで。…続行していいですか?」 「待て待て!それはちょっと違うでしょうが!」 続行って…ココから先なんて想像もつかないのに! 「えーっと…結構切羽詰ってるんですが。…駄目ですか?」 「せっぱつまる?」 「ホラ。」 カカシ先生は自分で抑えていた俺の手をひょいと持ち上げ、あらぬところを触らせた。 あ、でっかい。それに熱くて硬い。…じゃなくて! 「な、なんてもの触らせるんですか!」 「俺の本気かな?」 「だ、だからって!」 人に自分のモノなんか触らせないだろう普通!アカデミー生はまあ、低学年だとお漏らしだの、水遁に失敗してびしょぬれになったりだのするから拭いて やったりするけど…。 大人はありえない! 「イヤなら止めときます。正直相当辛いですけど。…でも俺の本気をウソにはしないで?」 確かにさっき触った感触からしてカカシ先生は相当ギリギリな状態だ。同性としてキツイのは凄く分かる。しかもそれを我慢するといってるんだから、 上忍といえどもかなりの苦行だろう。 「信じます…。だから、その!…それ…何とかしないと…。」 「イルカ先生…一緒はイヤ?入れないから…」 「い、入れるって…入れるって何を!?」 「まあその、俺の…」 「わあ!待った!それ以上いいですから!…何とかしましょう!」 「ん、じゃ、一緒にということで。」 「え?」 そう言った瞬間、俺の下穿きは床に投げ落とされていた。 「ちょっ!」 「イルカ先生…」 いきなりのことにカカシ先生を咎めようとしたが、抗議の言葉を口にする前に口をふさがれてしまった。 「んっ!」 カカシ先生はさっきと違って中々離れない。歯を食いしばって耐えていたら、カカシ先生の手が俺の太ももに触れた。しかもするするとなで上げて…。 「な!んむ!」 慌てて止めようと、口を開いたところに今度は舌が入り込んできた。口の中を這い回る舌はまるで別の生き物のようだ。逃げようとしてもどこまでも追いかけてくる。 焦ってもがいてみたが、どうにもなら無くて、そうこうしている内に得体の知れない感覚が這い上がってきて…やっとカカシ先生が離れた頃には、すっかり息が上がっていた。 「はっ、あ…な、なにするんですか!」 「あー…色っぽい…。」 駄目だ。聞いちゃいねぇ! 「イルカ先生も気持ちよかったんだ。嬉しいな…」 「え…?」 「ホラ。」 そういうカカシ先生の視線の先には…俺の…なんでこんな! 「う!あ!」 慌てて俺の意思に反してヤル気なモノを隠そうとしたが、いつの間にかカカシ先生の手が俺のに伸びていた。 「入れないって約束したし…」 勝手な事を言いながら、上忍らしく器用に動く指が、俺をにぎって擦り上げる。妙につぼを押さえた動きにだんだんと追い上げられて…このままでは… 「…っ!ま、てっ!」 「…俺も。」 人の制止を気にも留めず、カカシ先生は手際よく自分の前をくつろげた。 …さっきから相当な状態になっているのは分かっていたが、実際に目で見てみると、よく我慢できるものだと思わず感心してしまった。 だが、そんなコトしてるヒマがあったらさっさと逃げればよかったと後で後悔した。 後戻りできないところまで来ているモノが俺の切羽詰ったモノと一緒に、カカシ先生の白い手ににぎりこまれたからだ。 「ああっ!」 白い指が相変わらず器用に俺を追い上げる、もう一つの熱い感触も…それに荒い息が首筋にかかって、時折濡れた感触も走る。…もう何が何だか…。 「ね、イルカ先生も触って?一緒に気持ちイイコトしようよ。」 耳に注ぎ込まれる甘くかすれた声に、俺は思考力を手放した。 ***** 正気を手放しちゃったのか、やたら素直になったイルカ先生はかわいかった。声も顔もたまらなく俺を煽って…おかげでシーツは散々な状態だ。 あの時、いっそこのまま最後まで…とも思ったが、約束は守らなければと思いとどまった。それでなくてもイルカ先生は俺をまだ信じていないんだし。 でもそろそろほだされちゃってくれないかな…? そう思ってイルカ先生に聞いてみることにした。 「で、俺の本気はわかってもらえたと思うんですが。」 「馬鹿だ。アンタ…。」 「その言い方懐かしいな。むしろ俺のセリフ?」 「あ…」 うっかり言っちゃったらしいイルカ先生は、まだ瞳を潤ませてけだるそうにしてる。…ホント目に毒だ。 「今は信じられなくてもいいです。でも、絶対メロメロになってもらいますから!」 「…だから!もうメロメロですよ!」 俺の宣言に、イルカ先生が怒鳴るようにして返してきた。真っ赤な顔してうつむいてる。 …今、聞き間違い出なければメロメロって言ったような…?もしかして… 「俺のテクニックに?」 「馬鹿!…アンタはホントに…」 イルカ先生は黙っちゃったけど、今の否定は…つまりそういうことだよな! 「わー…凄く嬉しい…!」 「でも。こんなのはナシです!」 「ええー!」 両思い確定ならやることは一つでしょ! 「まだ、早いって言うかその…!」 「じゃ、いつかは…いいんですね!」 可能性があるなら我慢できるかも。…それにもし今イヤだって言っても、俺の持てる全ての能力を持ってして、絶対イルカ先生を手に入れる! 「う…。」 「がんばりますねー!」 「うう…頑張るって言われても…。」 イルカ先生はまだもにょもにょ言ってるけど、俺は俄然やる気が出てきた。ま、最初から諦める気なんかないんだけどね。 「えーっと。まずは恋人昇格ってことで!今後とも宜しく。」 「…よ、宜しく…。」 イルカ先生からの同意も得たことだし!これで晴れて同居人から恋人昇格だ! 今後もこの人を納得させるのはSランク任務並みに難しいだろう。でも…もう恋人になったんだし、今度こそ離さない。 「俺は絶対に諦めないので。覚悟しといてくださいね。」 「えと、だから拒否権無いんでしょう!もう黙っててくださいよ!」 俺はテレまくるイルカ先生を抱きしめて、やっと手に入った恋人という名の幸せをかみ締めた。 ********************************************************************************* 秋なので、ちょこっとしっとり系を目指して惨敗…orz。 しかも寸止めという…。 一応9000HIT的な何か。ですので、いぇろ増量若しくは変更など、ご意見があれば拍手などから適当にどうぞ…。 |