この執着を愛と哂って

湿った熱気を孕むベッドから這い出して、冷蔵庫から麦茶のボトルを取り出してそのまま飲んで、それからにやにやと笑っている男を置いて風呂場に向かった。

風呂場のタイルは夏でも冷たくて、頭から水を浴びると火照ったからだが少しはマシになった気がする。

「ねぇ?薄情なんじゃない?」

当然のような顔で、男が追いかけてきた。
不満そうな声。…だが、その顔にはからかうような笑みが浮かんでいる。

「うるせー…」

かすれた自分の声がわずらわしい。

なんだってこんな暑い日にわざわざ暑くなることばっかりやってるんだ俺は?

自分に問いかけてみても、男が帰って来るなりベッドにも連れ込んだ理由なんて、理性と一緒にどこかへ行ってしまって覚えていない。
ただ、伸ばされた手に応えて、触れる肌に溺れて、熱さすら快感に変えた時間だけが焼きついているだけ。

始めたのが馬鹿みたいに暑かった真昼で、今はもう日も沈んで大分経っているようだから、散々熱くなることをやってたわけだ。

「暑い?ならココでシようか?」

それなのに、熱が脳まで回ったのか、我慢しきれないらしい男の興奮した証拠を押し付けられた。

こういう時男は不便だ。

…隠そうにも隠せない欲望が、勝手に男に応えてしまう。

「暑いのはイヤだ。」

口に出した言葉さえもはや遠くて。
絡みつく熱い腕が、頭を沸騰させる。

肌を伝う水よりも鮮明に、その腕がどう動いたのかが再生されて、沈めたはずの興奮が引きずられるように甦って、理性なんて一瞬で解けてしまう。

「そんなの、わかんなくなるくらいすればいい。」

駄目押しのように男が囁く。…獣の瞳で。

…食らいついたのは自分が先だった。

「んっ…っふ…っ!」

誘うように笑う男が獲物になどなるはずもなく、主導権はあっさりと奪われた。
熱い肉…そのどちらが自分のものかも分からずに、ただそれをむさぼり食らい尽くすことだけで思考が埋まっていく。

この凶暴な衝動は当分治まりそうにもない。

暑いのに、わざわざ熱くなるようなことを…それも馬鹿みたいに必死になってしている。
思考力なんてもう欠片だって残っていない。欲しいモノをただ貪りあうことしか考えられない。

この獣の行為が、狂うほどの愛だと嘯く男に縛られているから。

だから…きっとこんな馬鹿な夜はまた訪れるだろう。
奪い合うだけの夜。それに満たされる馬鹿な自分を哂って。
それから、ただ溺れた。

…愛という名のこの執着に。

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暑いよう…!
ということで、変なモノを置いておきました。
ではではー!ご意見ご感想などお気軽にどうぞー!!!

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