その先に、ある温かい手



イルカは代々続くうみの男爵家の長男であった。
幼い頃、両親が亡くなり、たった10歳で、この家を引き継いだ。
幼少時よりの頼れる家臣は何とかこの男爵家を守ろうと奔走したが、男爵と言う爵位に群がる人間の多くは イルカの存在を認めず、ただ爵位だけを欲していた。

「愚かなことを・・・」
はたけカカシは人間界で起こっている騒動を空から見下ろしていた。
黒い蝙蝠の羽が怪しくきらめく。
「だから、人間には興味がないんだよ」
カカシは吸血鬼であった。
吸血鬼は人間の血を好んで飲む、永い眠りから覚めたカカシは血を喰らいたい人間を探していた。
「ん?あの少年は・・・」
騒動の起こっている屋敷の隅の部屋で、現当主がソファにたった一人で座っていた。
ぬばたまの髪、夜を思わせる黒曜石の瞳、月の光を浴びて白く輝く頬・・・・。
「あぁ・・、見つけた・・・」
カカシはその少年に心を奪われていた。

「こんばんは、小さなご主人様」
カカシは少年のいる部屋の窓からするりと室内へ入った。
黒いマント、礼服、冷ややかな視線・・・。
空から舞い降りた、銀髪の綺麗な男が、そこにいた。
「誰?」
小さな身体から、少し高めの声がする。
カカシは、その震えた声音をねっとりと飲みこむように身体に染み渡らせた。

「今宵は、大盛況だね、不埒なオトナがたくさんいる・・・」
少年はカカシから顔を背けると、膝を抱えて震え始めた。
「怖いのかい?ん?」
カカシは、そっと少年に近づいた。
「俺だったら、お前を守ってあげられるよ。さぁ、この手をとってくれないか?」
カカシは小さく震える少年に跪き、手袋を外した掌を差し出した。
少年はおそるおそる手を伸ばした。
「いい子だ・・・。それでこそ、俺が守るだけの価値のある人間だ・・・」
カカシは小さな掌を包むように握り締めると、そのままマントの中に小さな身体を滑り込ませるように抱きしめた。
「俺が守ってやる、お前の一生を、な・・・」
少年の細い首筋に、二つの牙が深々と埋め込まれた・・・。
「うぅあぁぁぁ・・・」
全身の血が首筋に集まる。
脳に酸素が足りなくなり、意識がまどろみ始める・・・。
「お前は、俺のものだ・・・。男爵・・・」
カカシは小さな男爵の血を貪り喰らった。

ぐったりと小さな身体がカカシの腕の中で崩れていった。
しばらく、カカシは少年を抱きしめていた。
首筋の小さな傷痕を舌で舐めると、不思議なことに、傷痕が消えていった。
むっくりと小さな身体が起き上がった。
少年の瞳はもはや黒曜石でなく、紅玉の鮮やか紅い瞳に塗り替えられていた。
「お前が俺を目覚めさせたのか?」
カカシは最後に自分の血をこの小さな身体に注ぎ込んでいたのだ。
吸血鬼に喰らわれても、吸血鬼の血を注がれると、その人間は死することなく、吸血鬼に生まれ変わるのだ。
「そうですとも、我が主・・・」
カカシは跪いた。
「そうか、では、これから、不埒な輩をはらいに行こう」
小さな後姿は先ほどとはうって変わってたくましく見えた。

喧騒のやまない大広間の扉を開ける。
中にいるオトナが一斉に振り返る。
小さな主を一瞥すると、再び自分たちの欲にまみれた話を続ける。
「愚かなことを・・・」
小さな掌が中にいる人間を追いはらうかのようにゆるりとふられた。
すると、大広間にいた人間はあっという間に灰になってしまったのだ。
「お見事です。我が主」
カカシは小さな身体に跪いた。
「カカシ、俺と共に・・・」
重みのある言葉が発せられると、カカシは微笑んだ。
「カカシは、いつもお傍におります」
「約束だ、カカシ」

「イエス マイロード」

おしまい

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kai様のコメント→こちらのssは某チャットでご一緒された方には、フリーといたします。
誤字脱字、ごめんなさい!

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相互リンクさせて頂いたkai様のブログから、お言葉に甘えまくってステキ作品をまた奪い取ってきました!!!
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でもって、こちらの作品のお持ち帰りは厳禁!ですので、宜しくお願いいたします!あ、でも萌えはお気軽に叫んでいってください!

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