「ん…」 眠りに落ちると縋るように抱きしめてくる腕にももう慣れた。 腰に回る手は無意識であるはずなのに背筋を震わせるほどの快感を連れてきて、どこまでも迷惑な男だと嘆息させられる。 「好き勝手しやがって」 挙句にこれだ。 …どこまでも幸せそうに頬を緩ませ、する前とは間逆の顔なんかするから突き放せない。 恋人じゃない。そして任務でもない。 縋る手を振り払えなかった時点で受け入れたようなものだから、これは正しく情人だ。 嵐のように一度目を済ませれば多少は落ち着き、それからは罪悪感かそれとも押さえきれない衝動からか、甘える視線に応えるように足を開く。 そうして終わればコレだ。すっかり安心しきった寝顔をさらし、こうして話さないとでも言うようにぎゅうぎゅう抱きしめてくる。 やってることはろくでもない大人そのものだが、この男の中身が年相応に成長しているとは到底思えなかった。 目覚めたらまたしょぼくれた顔で謝ってくるんだろう。 おずおずと指先だけ握ってきて、「怒ってる?」なんて言い出すんだぞ?天下の上忍様が。 怒っていないと告げればそれだけで大喜びして、あきれているだけだと告げれば一丁前にショックを受けた顔してごめんなさいなんていいながらひざに懐いてくる。 そのくせ幾度繰り返しても反省らしきものはすぐに吹き飛んで、すぐにまた転がり込んでくるのだ。 せめて依頼書でももってこいってんだ。 「イルカせんせ」 風呂に行きたくて少し体を起こしただけでガキみたいに泣きそうな声を上げて、でも拘束する腕だけは上忍のものだ。 なんでこんなイキモノが存在するんだろう。 愛情を寄越せと喚いて縋って、与えるといわないうちに毟り取る。さらにはそれを咎められないだけの地位にありながら、怯えたように許しを願うのだ。 それは…ずるいだろう? どっちにしろ俺は許すしかないのに。 「ばーか」 意趣返しにもならない憎まれ口を叩いてみた所で、当の本人はすっかり眠り込んでいる。 何で拒まなかったのかなんて、この男は考えもしないだろう。 欲求に忠実なのは早くに上り詰めた忍にはありがちなことで、特にこの男には顕著だ。 生き残るためにはそれが必要だから。 ただそれがこの男の本質とは違っていたというだけのことだ。 縋る腕。…これをいつか振り払えたらいいのに。 そんなことしなくてもアンタのモノだと、どうしても俺からは言ってやりたくない。 「欲しいなら言え」 どんなに腹立たしく思っても惚れた相手の素肌のぬくもりは心地良いから、とりあえず抱きしめ返しておいた。 ********************************************************************************* 適当。 ご意見ご感想お気軽にどうぞー |