おくすりのんで(適当)



詰め寄られている。
背後は壁で逃れようもなくて、熱っぽく囁く声には恐怖しか感じなかった。
「好きなの」
「は、はぁ。そうですか」
なにを。とか誰を。というのは聞かなくても分かる。
対象物は俺だ。
この部屋には他に人間がいないし、逸らされない視線からしてまちがいなんかじゃないだろう。
問題は…この人が正気じゃないことにある。
「今すぐひんむいて突っ込んで朝まで啼かせたい。ああうそかも。朝までじゃ足りない」
「え、えーっとえーっと!?」
新薬の試験だと聞いてはいた。
解毒作用が強いが、その代わり耐性がある者に使うと副作用がでたのだという。
立会人に指名されたのはそこそこ仲が良かったからだろう。
副作用の発生しうる条件から考えれば、上忍の中でもトップクラスの耐性があるこの人で調べるってのはある意味正解だとは思う。
効果がちゃんとでなけりゃ意味がないからな。ある意味命を預ける行為なだけに、それだけ信頼されてるってのは嬉しかったさ。
だが、こんなんだって…聞いてねぇ!聞いてねぇぞ!
惚れ薬もどきか媚薬かあるいはその両方か。
ここは密室だ。何かあっても介護人として指名された俺が真っ先に止めるか外部に連絡をとり、場合によっては隔離するためにこういうことになっている。
つまりは逃げ場がない。
それでも必死にもがいた結果、なぜか今、俺のケツは丸出しだ。
下着ごと引きちぎるように文字通りひんむかれた結果、情けなくもケツも前も丸出しな上に、中途半端に脱がされたズボンのお陰で動きにくさがいや増している。
どうすんだこれ!どうやって逃げればいいんだ!?モニタしてないのか!?
「舐めたい」
「や、やめなさいって!落ち着け!正気に戻ってくださいよ!」
こんな行為で、これまでの関係が壊れることに、俺は怯えた。
一緒にいると楽しい。酒飲んだり下らない話をしたり、犬まみれになってそのまま寝たり。
こんなにでっかくなってから、新しく得た友を、失いたくなかった。
押し返そうとした手は、無常にもあっさり捕まえられて、挙句口付けを落とされている。
どうしよう。どうしたらいい?
「正気じゃないけど、狂ったわけでもないよ。…理性がないって、こんなに楽なんだ」
ふふ…っと笑う姿はどこか幼くさえあって、それなのに瞳はぎらついている。
「りせい?あんた知ってたんですかどうなるのか!?」
副作用は予測できないって聞いてたのにどういうことだ!
密室でなにがあってもいいように救護の手はずを整えていた俺の努力が…!
「知ってました。だからもう…ね?」
触れる。唇が、肌が、下肢さえも隙間なく。
熱を孕むそれが恐ろしいほどに尖り、突きつけられている。
「ねぇ。何も考えなくていいから、俺だけ見ててよ」
そこで頷いてしまった理由なんて、俺にも分からない。
*****
さんざっぱらやられた。
そして今も。
「も、やですって…!」
「やだ。たらない」
「ひっ!ぁ!」
ずるりと押し込められた凶器は、幾度もその欲を解放しながら収まる気配を見せない。
興奮剤でもはいってたのか。アレに。
「だって、好きっていってもらってない」
「あっあっ!なに、いって…!」
「好きっていうまで、する」
本気なのは良く分かる。本当に見事に理性をすっとばしていることも。
そしてこれだけの激情を、これまで押さえ込んできたってことが、何より胸に迫った。
「ああくそ!好きです!あんたもうしりませんよ!俺が考えないようにしてきたこと全部勝手に暴きやがって!」
コレで収まりがつく。男としてのプライドや、この人の未来のことなんてもう知らん。
欲しい物は欲しいといったもの勝ちなんだ。きっと。
「おれ、の」
にこりと笑う男は、それはもう天使のようだった。
幸福を体現したかのような笑みを浮かべて、それから。
…また更にさんざっぱらやり倒されて、そういえば理性が溶けてたんだってことを今更ながら体で思い知らされる羽目になったのだった。
*****
「ごめんなさい」
「うるせぇ」
「でもうごけないし」
「あんたのは自業自得だし、おれもうごけない」
「うん。ごめんなさい」
理性を吹っ飛ばすということは、限界を超えても暴走するということだと学んだ。
要するに俺も男も断つことすらできずにベッドに二人して転がっている。
医療忍が入ってきたときも行為が続けられていて、俺はもう助けをもとめることしかできなくて、そこから先は…まあすさまじかった。
鎮静剤を構えた暗部にとりかこまれるなんて経験、多分もう二度とすることはないだろう。
この人の方まで腰が抜けるまで励んでいてくれたお陰で、捕獲は比較的容易に出来た結果、被害は最小限ですんだ。
男がこの期に及んで繋がったままでいたがったおかげでもあるのは…まあ深く考えると死にたくなるからスルーだ。
「あー…で、責任はとってくれるんでしょうね?」
これだけの目に合わされて、薬のせいで忘れちまったとかだったら、殴るなんてもんじゃ済まされない。
その怒りを込めた視線に男はうっとりと潤んだ瞳で返してきた。
「もちろんです!一生ずっと!」
きっぱりとはっきりと、それこそ今にもやりたそうな顔で。
最悪なのにどうしてか笑えて仕方がない。
まあ、いいや。俺だって惚れてるんだし、頭が多少煮えてたっていいよな?
指先だけを絡ませるのが精一杯な自分を笑いながら、男が酷く悔しがっているのを、もうしばらく楽しめそうだと思った。

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適当。
いちゃいちゃ ー。
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