「雨、か。」 深夜のアカデミー。 日中は子どもたちの声が満ちている校舎も、夜の闇に沈んだ今は、まるで違う場所のように静かで、暗い。 忍の身で闇を恐れることなどありはしない。 …ただ、少しだけ。 染み込んで来るような漆黒の海に包まれていると、その中に溶けてしまいそうな、そんな感じがしただけ…。 感傷的な己を嗤いながら、そろそろ引き返そうと思ったときだった。 「イルカ先生。」 ぞくりと背筋が波立った。 触れたのは白い指先。 この上忍は闇をはじく銀色を纏いながら、どこまでも闇に溶け込む。 今自分を包み込み、覆い隠すこの暗闇のように。 「カカシ、さん?」 普段どおりの夜のはずだった。 深夜の見回りも済んで、これから宿直室に戻る。…いつも通りに。 そんな日常に、この上忍は関わるはずもない。 それなのに、当然のように存在している。気配は完璧に消されているのに、圧倒的な存在感は俺を居竦ませるに十分で…。 その両腕が俺を待ち受けるように開かれていくのをただ見ていた。 「攫いに来たよ。」 嬉しそうに俺を見つめ微笑む男の瞳には、夜の闇が溶け込んだように暗く沈んでいる。 「どこへ?どこへ行くんですか…?」 俺の問いかけに応えは帰らず、ただ微笑むだけの男は強く腕を引く。 「どうして?」 その問いかけは、己自身にたいしてでもあったかもしれない。 連れて行かれることを受け入れようとしている己への…。 「さあ?でもねぇ。」 腕の力が強くなった。 「離さないよ?」 夜そのもののように絶対的な支配者が包み込むように俺を抱きしめる。 その腕の確かさにどこか安堵しながら。 …後には、ただ闇だけが残された。 ********************************************************************************* こっそり増える拘束具シリーズ??? 誘拐犯かなぁどっちかっていうと…。 |