布団からどうしてもでたくない。 だから腕の中から逃げようとする人を寝ぼけたふりで抱きしめてみた。 「わっ!なにすんですか!…起きてください。もう朝飯作らないと…」 おどろいてもがかれて、それでも寝たふりをしたまま頬をすりよせたら、恋人が小さく溜息をついた。 顔を見なくても、困らせているのは分かっている。 …でも、今日は休日だ。二人そろってなんて、ほぼありえないはずの。 「イルカせんせ…」 「…んっ…!あ、こ、これ…!?」 寝ぼけたふりで腕の力を強めた。 触れる肌が余りに心地良くて、朝のせいもあってその気になりはじめたそれには苦笑したが、それ以上に可愛い反応をしてくれた恋人のおかげで、もういっそ朝から始めてしまいたくなるほど胸がときめいた。 うろたえて体を離そうとして、でも俺は離すわけなんてないから愛しい人は多分目を白黒させている。 温かい。体の中からじんわりと満たされる。 触れているだけで泣き出しそうになるほどの幸福感をくれる人なんて、この人以外に知らない。 「…っあ…!」 快感に弱いのもこの人のイイ所だと思う。 清廉潔白を絵に描いたような性格をしているくせに、そのくせ感じすぎる体がソレをあっさり裏切るのだ。 始めて夜を共にしたときのことを今でも覚えている。 最初は当然のように抵抗された。 口説いて、うなずいてくれて、でも恥じらいか恐れかでそれ以上の関係を望んでいないのがあからさまだったこの人を、もどかしさに耐えかねて押し倒したのだ。 俺みたいな男相手に正気かだの、聞かされ続けたのかもしれないセリフを鼻で笑って、見せ付けるように足を舐めてやった。 目を剥いて怯えだしたのにまでそそられて、愛しい人の肌を暴くのに夢中になって、とまれる理由なんて欠片もなくて、気付けば足の間で俺の楔を飲み込んで喘ぐのを見下ろしていた。 溺れる人のように力なくもがき、押し寄せる快楽の波に抗い切れずに達して、呆然とへたり込んだ姿なんて、今思い出してもゾクゾクする。 抵抗を途中でやめたのが、普段と余りにも違う俺に怯えたからなのか、それとも快感に溺れて流されたせいなのかは聞いた事がないが、あの媚態はどう考えても後者だろう。 他の誰かに見付かる前に捕まえられて良かった。 …俺以外の誰にも触れさせない。 ヌルついて熱を篭らせたソレが俺の太腿に触れて、吐息に混ざる劣情にくらくらする。 がまんなんてしなくてもいいよね? そう独り決めして布団の中に引きずり込んだら、やっぱりそのまま流されてくれた。 …誰かがこの姿を知ったら、きっと喉から手が出るほど欲しがる。 だから。 「このままずぅーっと、こうしていられたらいいのに」 いつもそう思わざるを得ないのだ。 ***** 胡散臭い知り合いの上忍から、どうしようもなく欲しい相手に変わるまで、そう時間はかからなかった。 どうせ俺に懐いてご機嫌な眠りの中にいる男は忘れているだろうが、こんな関係になる前は、男は俺を厭っていた。といっても、俺にとっては面越しに俺に向けられる氷のように冷たい視線に、この男も九尾の犠牲者かと思っただけのことだったが。 …男の態度を諌めた相手を振り払い、それが単に笑顔が気に入らなかったせいだと言われたときは、苛立ちを通り越して笑い出したくらいだ。 それが、切欠。 男が苛立つという笑顔で、男の神経を逆撫でするように優しく接した。その度に揺らぐ瞳。 …ゾクゾクした。男は俺しか見ていないのだ。 なにがどうなったか、面を捨て、暗闇から這い出してきた男は、それでも闇をどこかに宿したままで。 どこまでも厄介な相手だというに、手に入れたって苦しいだけだと分かっていても、結局欲しいと思う欲には抗えなかった。 男を受け入れて喘ぐのは…男が俺を見ているからだ。 食い入るように俺だけを。 己の空恐ろしいほどの支配欲に怯えて抗って、だが結局俺に溺れる男に理性は白旗を上げた。 そうして、今も。 「イルカ…!」 俺に溺れる男が俺の中を汚し、満たすのと同時に、俺も男を汚した。 狂おしいこの感情。…きっと男は気付かない。 …だから、ずっとこのままで…。 快楽に痺れた脳が意識を手放すのに任せ、擦り寄る男を抱きしめた。 愛しさなんてことばでは言い表せないこの感情で、男を縛り付ける喜びに溺れながら。 ********************************************************************************* 適当。 ねむい…!ねんまつなんてららーらーららららーらー♪ |