誰も待っていない気がするヤンカカモノ続きー!イルカてんてー視点。 「こんにちは」 「こんにちは。カカシ先生」 穏やかに微笑む人。 多少変わったところはあるようだが、ナルトにとっては良き師であるようだ。 最初に会ったときの奇妙な既視感と…あの予感というよりは確信に近いものさえなければ、ただ尊敬の念だけを向けられたはずだ。 だが、今は。 「報告書、お預かりします」 自分でもそっけなさ過ぎると思う位に事務的な反応しか返せない。 何故かこの人の前に立つと落ち着かない気分になって…それから、寂しさと懐かしさと怒りと…湧き上がる感情に溺れそうになるから。 普段ならこんな風になることなんてない。確かに我ながら直情傾向はあるけれど、ここまで心が乱されることなんてなかった。 震えそうになる手を堪えて、差し出されるはずの紙切れを待つ。 「お願いします」 偶然のはずだ。他の忍を受付するときも良くあること。 …だが俺にとっては…。 偶然触れた手に驚くあまり、まるで熱いモノでも触れたかのように手を引いてしまった。 はらりと落ちた報告書は、その白い手が難なく捕らえ、すぐに戻してくれたけれど。 「あ、あの…!すみません…!」 言い訳すら思いつかなかった。 どうしたらいいのか分からずに、ただひたすら謝った。 どうしてこんなにこの人にだけ反応してしまうのか。緊張感に追い詰められていっそ叫びだしたいくらいだ。 だが、視線を伏せたままでいる訳には行かない。…恐る恐る頭を上げた。 相手は上忍。怒鳴られても懲罰があってもおかしくはない。そんな性格じゃないと聞いてはいたが、何故か…そう、何故か俺はこの人が怖かった。 僅かに手が触れるだけで胸が熱くなることも、涙がこぼれそうになることも、その手が離れていくだけでぞっとするほど寒く感じることも。 「大丈夫」 …見てはいけなかったのに。 微笑んだその人の瞳は、穏やかなその声を裏切って、確かな狂喜を宿していた。 「あ、あ…う、受付、します」 自分の様子がおかしさことを、同僚は緊張のせいだだとでも思っているらしい。 にやにや笑いながら視線でからかってくる。 …これなら、誤魔化せる。 混乱を押さえつけてなんとか報告書を確認した。 単独のAランク任務。子どもたちの面倒と上忍としての任務を両方こなすなんて、流石だ。 「はい。結構です」 内容も問題があるはずもなく、受領印を押せば任務完了。もうこの人がここにいる理由はない。 そのことにほっとしているのに、何故か落胆めいたものすら感じて、自分で自分がわからない。 ただ、混乱を誤魔化すことしか頭になかった。 「ねぇ。飲みに、行きませんか?」 「え…?」 誘われた。この人に。 …じゃあ、きっと今度こそ俺は…。 何に対してか分からないのに、湧き上がった期待を持て余しながら、気がついたらうなずいていた。 「後で、迎えに来ます」 そういって受付を後にするのを見送って、震え続けている手をさすった。 あの感触が残る手を。 約束…してしまった。 相手は上忍だ。 …約束は果たされなくてはならない。 そう、俺の約束も。 あの人と約束した覚えなどないのに何故かそう思った。 あの人と俺を縛る約束を果たさなければならないと。 受付業務をこなしながら、あの一瞬が何度も頭に繰り返されるのに耐えて…。 この答えを与えてくれる人に会えるということだけを考えていた。 …全てを知っているだろうあの人に…とらわれることだけを。 ********************************************************************************* ヤンカカモノ続きー。 置いていかれたことへの怒りと再会の喜びと再支配への期待と…。 ではではー!ご意見ご感想など、お気軽にどうぞー! |