布団以外の重みにまどろみかけた意識が浮上した。 「起きちゃった?」 わざわざ人を起こすようなことをしておいて、すまなそうにする男に文句を言うのも飽きた。 怒ろうがとつとつと説教しようが、この男の行動が変わることはないからだ。 「…起こすようなことをしたのは誰ですか」 小言を零したのはうかつだったが、眠気に支配された頭ではうんざりした気持ちをいまさら隠そうとも思えなかっただけだ。 おかげでいつも以上に嬉しそうな上忍にのしかかられている。 「うん。ね、したい。シよ?」 何をだと聞くのも馬鹿らしい。乱暴に服を脱ぎ捨てていくのをとがめるほどの気力もない。 こうやって突然たずねてきては好き勝手に振舞う男に、気づけばすっかりならされてしまっている。 「しないって言ったら、あんた帰ってくれるんですか?」 ぞんざいな物言いにもめげずに、むしろ笑みを深くした男は、こっちの服にも手を掛けてきた。 ほらみろ。やめる気なんてないじゃないか。…俺の意思なんて必要ないじゃないか。 同意を得るふりなんてしなくても、どうとでもできる相手だと、その行動で証明しているくせに、どうしてこんな茶番を繰り返すのか理解できない。 好きにすればいいんだ。どうせこっちには打てる手などない。 「イルカせんせもいっしょならいいよ?」 そう嘯く男に好きにしろと言ってみた事もあったか。 本当に担いで術まで使って攫われて、連れ込まれた部屋で何が嬉しいのかたっぷり盛ってくれた。 結局、この男が欲しいのは刺激だ。かまってやればそれがどんな反応であろうが喜ぶばかりで、こっちの意図など汲み取る気は毛頭ないんだろう。 嬉々として同じ男の足を担ぎ上げて、同じモノをぶら下げている股間に口付ける男の頭の中身など理解できない。…理解したくもない。 「っく…明日、ああ、もう今日か。演習があるんです、だ、から」 「そ?準備早いの?なら急がなくちゃね?」 配慮にならない配慮めいた言い訳のようなものを口にして、割り開いた下肢に乱暴に潤滑剤をぶちまけてくれた。 冷たさにわずかに居座っていた眠気が吹き飛ぶ。なるほど、それが目的か。 気のないふりさえさせたくないと、言外に俺の関心のすべてを寄越せと強請る男は、それを自覚してすらいないだろう。 「はやく」 終わらせてくれとも、誤魔化しきれない疼きに支配され始めた体を何とかして欲しいとも告げずにそれだけ伝えてやった。効果は覿面だ。切羽詰ったものを我慢しきれなくなったらしい男が、覆いかぶさりながらそそりたつものを押し付けてくる。 「イルカ先生」 切なげに眉根を潜めて名を呼ばれた。ねじ込まれる他人の熱に慣れたいなどと思ったことはなかったはずなのに、こんなにも満たされる。 望んでなどいなかったはずの欲に支配されていく頭で、男に狂わされていく体と心を持て余している。 …あとどれくらい、安眠と平穏が欲しいと己に言い訳できるだろう。 溜息にすら興奮するのか、揺さぶってくる男の背に腕を回してしがみ付いた。 決してその顔に宿る感情を見てしまわないように。 ******************************************************************************** 適当。 無自覚に惚れて先に行動を起こしてしまった上忍と、それに気づいた上でほだされてしまったのに、相手に自覚がないことにも気づいてしまった中忍の話。 |