食べたい食べたい2(適当)

一目ぼれだったんだ。
疲れたなんていえないけど、まあたっぷり敵はいた。
おかげで自分の寝床に帰ってきたら、そのまま転がって眠ってしまいたいくらいには。
そのくせ世話係なんてものは下の世話ばっかりしたがるから油断できなくて、挙句の果てに出世候補をガキのうちにあわよくばなんて話しか聞こえてこない。
疲れきって腹減ってるのにそんなことされても、萎えるにきまってるじゃない!
そりゃそこそこその辺の欲はあるけど、制御できないほど馬鹿じゃない。
なにせ色ボケ爺の見本みたいなのが身近にいたもんね。
で、そういうのウザイっていったら、流石にその辺適当な隊長も一応配慮してくれて、おかげでわざわざ結界張らなくてもゆっくり寝ることくらいはできるようになったんだけど。
その日、いつものように天幕で武器の手入れを済ませて、そろそろごろごろしようかなーなんて思ったとき、自分の天幕に近づいてくる気配に気がついた。
当然そこそこ警戒した。近寄ってくるのは、大抵ろくでもない連中ばっかりだったから。
でも、その子は違った。
顔中緊張してます!って大書きしてるのに、天幕に入った瞬間から礼儀正しかった。
その顔も態度もあんまりかわいかったから思わず凝視しちゃったのに、一生懸命食事ののったトレーを渡してくれて、しかもめちゃくちゃいい匂いがするから一口食べたらにおい以上に美味しいし!
男の子だっていうのは、入ってきた瞬間にわかってたけど、そのときには多分もう恋に落ちていた。
飯が美味いのと、そんな自分に半ばパニックを起こしながら、どうしたら俺のこと覚えててくれるだろうとか、どうやったら俺を好きになってもらえるだろうとか、そんなことばっかり考えてたら、皿はあっという間に空になって、ついでにその子は大慌てでお代わりを持ってきてくれた。
勢い良く渡されたら、食べないのもおかしい気がしてそのままつられるみたいに食べて、その度に何度もご飯をおかわりしてきてくれるその子がかわいくて、止められなかった。
でも、何度目かわからないくらいお代わりした後、その子が持ってきたのは食事じゃなかった。
「あ、あの…!もうこれしか…!」
戦場で甘いものはそれだけで貴重だ。
かわいいハート型のチョコレートなんてものが、無傷でそこにあるのが信じられなかった。
高級そうなこれが、しかも無傷なそれが、この子の持ち物ではありえない。
匂いからしてこの子の上忍師だろう。…自分の部下を守るために警告でもしたつもりか。
そういえば、今日はバレンタインとかっていう行事だったはずだ。
…これが義理でもなんでも、利用しない手はない。
「ありがと。確かに受け取ったから」
さて、このまま持ち込むにはこの子も驚くだろうし、上忍師も邪魔だ。
あからさまにほっとした顔で笑ってくれたその子は、やっぱりすごくかわいくて、おびえさせたくない。
「じゃ、じゃあ、失礼いたします!」
ぴんと背筋を伸ばして挨拶していったあの子を、どうやって捕まえよう?
とりあえずこの任務が邪魔だ。
今まで長引くこの戦闘に飽き飽きしていたけど、やる気がむくむくわいてきた。
…ついでに、多少下半身の方も盛り上がりを見せたのは…ま、しょうがないってことにしといてよ。
「まっててね…!」
確か名前はイルカって呼ばれてたはずだ。
色々今のうちに調べておかなくちゃね。
…希望でいっぱいの胸を抱えた俺は、相手が天然過ぎるせいで、俺がかわいそうな欠食児童だって思われちゃってるなんてことをまだ知らなかったんだよね…。
ま、ちょっとずつ前進してるから、いいんだけど!


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子カカイル祭り継続中。
まけおしみ子カカチ奮闘編。
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