お祝い(適当)


「なんでも欲しいものあげちゃいますよ!」
 火影就任祝い…というよりは、内定したとの呼び出しと一方的な命令を受けて意気消沈してるってのに、通りすがりにおめでとうございますと言って来るヤツの多いこと多いこと。
 ご他聞にもれずこの人もそうだった。俺んちで酒盛りですとか言い出して陽も高いうちから引っ張り込まれちゃったのよね。
 あっという間にどこから引っ張り出したのか上忍の俺でさえお目にかかったことのない幻と呼ばれる名酒に、飲兵衛だとすぐ分かる選りすぐりの乾き物、それに魚を焼いたのとお浸しと煮物と飯も並んで、祝う気持ちはホンモノなんだろうってことは理解できた。
 …俺も酔ってた。自棄酒に近かったから飲み方が酷かったのもあるし、酒が美味かったのもあるし、何よりこの人が注ぎ上手だった。
 杯が乾くことなく美酒に満たされ、珍味の類も含めつまみは好みのものばかりで、今夜で終わりかと思うとどこかで理性のタガが緩んだんだろう。
 挙句、その台詞だ。俺の前で絶対に言っちゃいけなかったのに。言うに事欠いて意識も怪しい状態でそんなこと言われたら、どんな目に遭わされるかなんて、想像しなくても分かって欲しかった。
 たとえば俺があなたに惚れてなくたって、酔った勢いでどうこうなんて、腐るほどある話だ。特に俺たち忍は性の垣根が低い。結婚まで続くのは確かに少ないとはいえ、恋人が同性だからといって、どうということもない。だって珍しくもない話だもん。
「じゃ、ちょーだい」
 そう言ってしまったとき、俺は多分わくわくしていたと思う。わーくれるんだ?じゃあもらっちゃおう。非常に素直にそう考えて、くれると言ってしまった人の手を握り締めていた。
「はい!もちろんです!で?何を?」
 それからこの台詞でへそを曲げた。何をなんていわなくても分かるでしょうよ。
 …酔いが醒めてみれば分かるはずないって理解できるんだけどね。好きだなんて悟られないように距離を置いて、一生片思いでもいいからこの人がせめて結婚するまで近すぎず遠すぎず野距離を保とうと思っていたのに、先の大戦でうっかり生き残ったせいで火影なんてものにされそうになっている。
 それで我慢がきかなかったなんて、誰が聞いてもただの言い訳だ。
「イルカ先生ください」
「どうぞどうぞ!で?何を?」
 ニコニコしながら非常に鈍いことを身をもって証明し続ける人を説得する必要はないと判断した。抱き上げてベッドに鼻歌交じりにベッドに連れ込んで、きちんと正座して末永くお願いまでしたんだもの。逃がすつもりはなかった。
 …おたおたしてかわいいとしか思わなかったけど、多分パニック起こしてたよね。ごめんね。かわいいから止まれなくて服全部剥いてたし、俺も脱いだら顔見てうっとりしてくれたから調子に乗っちゃってつい全部その日のうちに綺麗に食べちゃったんだよねぇ。
「…お、おお?なんだ?いてぇ…あたま…ふつかよ…こ、こしが…?尻が…?え、俺まさかこの年で漏らし…うぐ!」
 大変おいしかったので多少がっついてしまった結果がこれだ。うーん?どうしよう?酔ってたのでやりすぎましたなんて言ったらこの人泣き寝入りしそうだもん。そんな理由で逃げられたら困る。
「おはようございます。俺のイルカ先生」
「お、おはようございます…す、すがお…!」
 うーん?俺の顔なんて昨夜たっぷり見せたと思うだけど。口でしてあげたし乳首もかじっちゃったし、調子にのってついついいろんなところにキスマークもつけちゃったもん。特にお尻が。流石にヤリすぎたかも。自分がナカに出したモノが零れてくるのがたまらなく卑猥で、おかわり何回もしちゃったから。今も痛みに苦しんでいる様子は可哀想出し胸も痛むけど、同じくらいたまらなくエロイと思ってもいる。
 逃がせないよねぇ?今更。タナボタだろうがうっかりだろうが、貰ったものは俺のモノ。手放すつもりなんか絶対にない。
 ま、動揺してくれてるうちに丸め込んじゃえばいいか。
 なるようになる。なるようにしかならない。逃げても後悔してもどうにもならないことだってある。
 今しかチャンスはない。それなら最善を尽くすしかない。…この状況でそんなこと考えてるって知ったら、この人は泣きながら怒りそうだ。
「俺のイルカ先生。お引越しはいつにします?」
「お、おれのって、おひっこし?ええと。今学期末なのでもう少ししたら時間はできますが。お手伝いぐらいなら」
「そ?忙しいんだ?じゃ、今日中に後輩に手伝ってもらっちゃいますね?」
「え、え?」
「イルカ先生は身一つで来て下さい。ああ、あと今日はお休みにしておきました」
「お、お休みって、なんでですか?」
「歩けないでしょ?」
「え?そんなはずは。…あれ?おお?うぐ!…なんだこれ足が小鹿…!こ、し、が…!ああああシーツが!なんか、俺、もしかして飲みすぎて…!?」
「はいはい。寝てていいですからねー?全部俺がしますから。むしろさせて?お願い」
「あ、はい。その、申し訳ない」
 よしよし。言質取った。後はついに火影にと大騒ぎしてる後輩暗部たちに手伝ってもらえばいいだろう。オネダリに弱いんだよね。おかげで昨日たっぷり調子に乗らせてもらっちゃったけど、これから先は俺のオネダリだけ聞いてもらわなきゃいけないから、早めに根回しもしとこうっと。
「いいのいいの。お祝い嬉しかったし、ずっと欲しかったものもらっちゃったし?」
「そうですか!へへ!そりゃ良かった!」
 良く分かっていないんだろうに、俺が喜んでるのがよっぽど嬉しかったらしい。痛いのも忘れて鼻傷掻きつつニコニコしている。
 俺も嬉しいですよ。イルカ先生。何せ一生モノのお祝いもらっちゃったんだもん。
「おやすみなさい」
「…はい…おやす、み…」
 素直に眠りに落ちた人の部屋にだけ結界を張って、俺も当然その横に滑り込む。ついでに式も飛ばしておいた。すぐに返事が来るだろう。
「楽しみだねぇ?」
 火影になんて絶対になりたくなかったけど、この人が手に入るなら飲んでもいい条件だ。
 五代目もこの人と同じ台詞を吐いて、だから火影の名から逃げることは許さんと脅してきたっけ。
 ま、もう無駄だけど。
 寝ぼけているのかむにゅむにゅと何事か呟いている愛しい人に口付けを一つして、手に入れた喜びに浸りながらもう一眠りすることにしたのだった。

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適当。
おいイルカ。祝いの肴ってのはそれか?よし!ならあたしが酒はくれてやろう!⇒喜びつつ寂しさも噛み締めつつ、せめて盛大にとがんばる中忍⇒ペロリ☆⇒火影祝いに中忍教師ください⇒よっしゃかかった!だったりして。
木の葉の本当にあった怖い話。

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