わん。(適当)



この人の前では犬のように忠実だ。
「昔は狂犬なんて言われてたっけね。そういえば」
敵か味方かの区別以外どうでもよくて、邪魔をされるのが嫌いで、突っかかってきたヤツは容赦なく再起不能になるまで叩きのめしたりもしてた。
ま、今はだーいぶ丸くなったけどね。むしろ忠犬?
任務がなければ送り迎えもしてるし、飯だってできるだけ俺が作ってるし、ちゃーんといい子にしているはずだ。
その分ご褒美にご主人様の愛をたっぷり欲しいと思ってるだけだもん。
さっきまで散々喘いで切なげに身をよじって俺の名を呼んでいたのとは別人のようにすこやかな寝息を立てている。
ちょっと悪戯したくなって唇に触れたら、もごもごと口を動かしながら頬を緩ませた。
「ふへへ…うめぇ」
「んー?」
俺の指なんだけどね。さっきまでアンタの中にも入ってましたよー?ま、風呂には入ったけどね。
この顔は…多分ラーメン食ってる夢でも見てるんだろう。
普段はきりっとした顔してばっかりだけど、ラーメンとか美味いもの食ってるときだけこうなるんだよねぇ?
後は、やってるときくらいか。表情豊かだけどどこかに残る硬さがぐずぐずに崩れるのは。
あの顔で縋ってこられるとたまんないよね。
…ま、それでやりすぎちゃったんだけど。
失神するみたいに意識を落としたかと思えば、もにょもにょと名前を呼ぶから目がさめてしまった。
「夢に見られるくらい愛されてるってこと?」
にへにへと笑って、ちょっとよだれもたれている。それでも指は離さずにもぐもぐぺろぺろしながら幸せそうにしている。
なんであんなのに転んだんだと口々に喚く後輩共に、この姿を見せたら卒倒するかもしれない。
印を組み、クナイを持つ指を、忍の一番の武器を、意識もおぼろげな相手の口に預けてニヤついてるんだから。
…あーやりたくなってきた。この人がこんなに無防備なのが悪い。
もうだめとか、ね。可愛いこといってくれるから際限なく欲しくなる。煽ってる自覚なんてないんだろうけど。
さて、どうしようか?明日もこの人出勤だよねぇ?
「んん?あ。う?」
口から抜くと追いかけてくるのが楽しくて、ぷにぷにと唇を弄んでいた指に、やっと違和感でも覚えたんだろうか。
薄っすらと瞼が開き、とろんとした瞳があっという間に見開かれた。
「おはよ?」
「ああああななな!ゆび!あぶないでしょうが!おはようございます!ってまだこんな時間じゃねぇか!なに遊んでんですかちゃんと寝なさい!」
「はぁい」
怒られちゃったからいい子にしてなきゃね。
何せ俺はこの人の忠実な犬だから。…ま、本人はそんなこと気付いちゃいないだろうけど。
俺が素直に謝…ってはいないけど、いい子のお返事をしたせいで、却って冷静になったらしい。
「…うっその、すみません。俺が寝ぼけてたのも悪いのに…。でもですね。寝てる人間の口に指なんか入れたらあぶねぇだろうが!」
「ね、どんな夢見てたの?」
「へ?ああなんかカカシさんとラーメン食ってましたね。でもなんでか犬みたいな尻尾と耳ついてて、触らせてもらったりしてました…って何でこんな夢を…?」
夢の中でも俺はこの人の犬だったのか。…それだけ、俺はこの人の中に食い込んでいるのか。
「いい夢ですね?」
「え?変な夢ですけど、そういやそうか。あんたがいたからイイ夢か」
そうしてあの顔で笑ってくれたから。
寝ぼけながらうっかり煽るようなことを言った俺の飼い主は、結局夜通し可愛い声で啼いてくれた。
…犬にはご褒美が必要なんですと声もでないくらいぐったりしている恋人に囁いたら、乱暴に頭をなでられて、アンタしょうがない人ですねぇって言われたけど、幸せ。


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適当。
とある方のおかげでケモカカイル萌え再燃気味。
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