はぴばれ!4(適当)


 勢いで行動しすぎるのは昔からで、いつだって全部片付いてから反省するんだよなぁ。今回に関してもそうだ。でも、もう後には引けない。
 何かを堪えて耐えて、耐え続けて自分の限界さえ見失ってしまったような人を、俺なんかに縋りついてきて目を細めている人を、傷つけるなんてことはできないからな。
「好き。ねぇ好きなんです」
「っ、の、その、ええと、うぅ…!」
 耳に直接吹き込まれる声の甘さにたじろいで、上手く舌が回ってくれない。こんなに離すのが下手だっただろうか。自分は。
 好きにしろといったのは俺だ。当然抵抗なんかするつもりはないんだが、どうにもいたたまれない。
 こんな壊れ物みたいにやさしく触れてこられるのも、切々と恋情を訴えられるのも、どれもこれも想定外だ。
まあ一番の想定外は、こんなことをしでかしている人が同性で、しかもどちらかというと物慣れていると思い込んでいたってことだろうか。
 ああくそ。なんて言ったらいいんだ?この人が強請るものならなんだってくれてやるのに、それを上手く伝えられない。
「…ね、こんなコトしてるのに聞くのはズルイと思うけど、イルカ先生は、俺のことどう思ってるの?スキ?それともキライ?」
「嫌いな訳ないでしょうが!で、でもそのですね、正直言って、こういうのは考えたことがなかったんで、その」
「ん、怖い?」
「そうじゃねぇよ。あのですね。俺は男ですよ?アンタちゃんとわかってますか?」
 胸は真っ平らで、股間にはつくもんついててまあそれに無遠慮な視線を寄越す辺りちゃんとわかっちゃいるんだろうが、やっぱり正気じゃない人にこういう重大な決断をさせるってのはいかがなものかと俺は思う。
 怖いってのは心外だ。確かに忍は全身凶器といってイキモノだし、上忍ともなればさらに輪をかけて隠し技の一つや二つや三つや…まあとにかく、戦闘特化した存在ではある。
 でもなぁ。この人は違う。俺が里を裏切ったりすればそれは分からないが、仲間に対する思いやりが強くて、すぐに捨て身になっちまうんだよな。頭はいいからちゃんと身を守ろうともしてくれるんだが、もう心配で心配で。待ってる方の身にもなれってんだ。
 へらへら笑って誤魔化すしな!何度拳骨食らわそうと思ったか分からない。
 まあうん。要するにこの人はちょっとツメが甘い人だと思っている。特にプライベートに関しては壊滅的だ。ついついラーメンばっかり食っちまう俺が言うのもなんだけどな。
 そんな人がちょっと具合が悪くて心細くなってるところへきて、つい大ッ嫌いなチョコなんか食っちまったから錯乱してるって可能性はあるだろ。十分に。
「うん。子どもとか、欲しい?多分なんとかはできると思うんだけど」
「いやいやいやそうじゃねぇ。そうじゃねぇよ!あとすぐ術とか作ってなんとかしようとするのはよしなさい!目だって最近痛むの隠してるでしょうが!誤魔化してもわかってんだからな!」
 病人を本人が望んでいるからって淫行に励ませるってのは流石にまずいだろう。正気に返ってから後悔すること請け合いだ。どうせまたそうなっても我慢しちまうのが分かってるからこっちが冷や冷やするんだよ。心の準備とかは一生できそうにもないから勢いでってのは…いやまあそうやっていつも割りと勢いでやっちまってから後悔してるんだが。
「んー?ええとね。ずっと好きで好きで、見てるだけで良かったんだけど暗部も抜けたしちょっと位なら話しかけてもいいかなぁって思ってたら、里にいるってだけでチョコ責めにされるし、あなたには中々じっくり話すこともできないし、落ち込んでたんですよ」
「え、あの、それはその、へへ!」
 なんか、随分晩生なんだなぁ。この人。見てるだけでいいとか、な。諦めちゃだめだろう。それでなくても勝率高そうな顔と地位もあるんだ。それになにより中身がとびっきりいい。後ろ向きなところは心配だけど、そこで引かずにがんばってみりゃあいいんだよ。
 まあ、見てるだけでいいとか言われると腹が立つけど、じっくり話したいと思っててくれたのは素直に嬉しかった。
「…で、ね?困ってたらすぐに来てくれたでしょ?」
「え、ああ、まあそうですね」
 偶然見かけた上忍が随分しょぼくれてたから心配だっただけなんだが、かっこよかっただのなんだのと、一切心当たりのない形容詞が羅列され始めている。なんだそれ、どういうことだ?
「だからね。好きになっちゃったからにはどうにかしたいなって思ったけど、ずっと見てるだけでもいいかもって迷ってたんですよ。そうしたら、あなた受付所なんかでチョコ配るっていうから」
「毎年恒例ですよ。俺は久しぶりの当番ですけどね。女性だと危険なので俺たち男性教諭か男の受付職員が担当するんです」
「ふぅん?ま、イルカ先生以外はどうでもいいの。俺以外にチョコを上げるのなんか許せないなぁって思っただけだから」
「あのーたかがチョコですよ?」
 それもこの人の大嫌いな甘いそれを、そんなに欲しがる理由が良くわからない。わからないがしかし、あの時そういえば様子がおかしかったな。許せないとかこの人の口からきくのは初めてだ。時々こっちが驚くほど強い言葉を使うことはあるが、基本的には穏やかな春の海みたいな人なのに。
「バレンタインのチョコだもの。ずっとあなたからだけは欲しいって言えないし、我慢してたのに。他のヤツが好きなだけもらえるんだなって思ったら、流石にね」
「そ、それはその、すみません?」
 謝るとこなのかどうかはわからんが、この人が珍しくブーたれてるからついな。
 それにしても本当にどうしちまったんだ。今日は。服だけでも着せたいんだが、やっぱり抵抗されるだろうか。
「…ね、駄目?チョコ貰ったよ?それにさっきあげたじゃない」
「ええと、その?」
 色気というものが目に見えるのなら、今この部屋の中はピンク色の霧にみたされてるんじゃないだろうか。流し目ってもんを知らないわけじゃないが、ただ見られているだけなのにこんなに心臓にクるのは初めてかもしれない。
「我慢できない」
 おたおたしている間にひっくり返されてしまったのは、俺が中忍だからじゃないと信じたかった。

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適当。
ばれんたいん4。長くなったので中途半端ですがここできっておきます。

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