「えーっと。そんなに見たいんですか?」 「はい」 瞳を期待でめいっぱい輝かせている恋人に逆らえる男がいるだろうか。 たとえソレがちょこっと機密にふれちゃうかもなーって中身でも、かわいくおねだりされたらがんばっちゃうのが男ってもんでしょ? ま、どうせ普段から火影の執務室に出入りしてるからあの服自体は見慣れてるだろうし、俺が元暗部だっていうのは、里の知名度を上げるためだとかでわざわざ噂にしてくれた上層部のおかげで周知の事実だ。公然の秘密なんてものを、今更隠す意味もないだろう。 それにしてもどうしていきなりこんな事を言い出したんだか、そっちの方が気になった。 …ちょっと探りを入れてみるか。 「えーっと。なんでまた急に?」 出会った頃は既に正規部隊に所属していたから、当然普通の忍服を着ていた。 それにこの人は言っちゃ悪いが結構ずぼらだ。 他人の噂話なんか興味がないなんてもんじゃない。自分からしないのは当然のこと、聞いてもその端からどうでもいいと切り捨てて、どんどん忘れていくような人だ。 任務となれば話は別だろうけど、基本的に自分の大事なモノ以外どうでもいい人なのよね。 そんな人だから、俺のことだって知り合うまで殆ど知らなかったらしい。 一応里の看板だと思ってるんだけど、この人にとってはただの男。 最初は胡散臭い上忍師扱いだったけど、信頼してもらえてからは少しずつ壁が消えて笑ってくれるようになった。 それからは遠慮なく怒られたし、でも謝るときも男らしく頭を下げてくれて、怪我何かしようものなら手当てが終わるまで忍そのものみたいな顔してたくせに終わったら泣きだされたし。 ま、それが新鮮で、嬉しくて、居心地が良くて…気づいたときにはしっかり惚れちゃったんだけどね? 近づきすぎたことに気づけなかった時点で俺の負けってヤツ。 …そういえばこの人がどうして俺の告白に頷いたのか知らないんだけど。 好きって言ってくれた時点でさっさと既成事実作っちゃったからなー?逃がすつもりなかったし。 まあとにかく、そんな人がこんなことを言い出すってのはやっぱりちょっと裏考えちゃうでしょ? 「暗部のときの先輩はかっこよかったって、ヤマトさんが。そんなこと言われたら気になるじゃないですか」 ふぅん?犯人はアイツか。照れてるイルカ先生はかわいいけど、今度締める。 それになによ。その言い方だと俺が今かっこよくないみたいじゃない!俺の恋人だって知ってるくせにいい度胸だ。 「そーんなに言うならちょっとだけですよー?」 勿体つけつつ正直言うとちょっと浮かれていた。 いうなればコレはいつもは素晴らしく男らしい恋人の、初めてといって良いほどのかわいい嫉妬な訳だ。 男前過ぎてちょっと寂しい部分もあるわけよ。好きって言った時の返事だってそりゃもう男らしかったし。 俺は男でどこも柔らかいところもねぇし、俺とじゃ子供も残せない。でもそれでも、俺は一生あなたを守りたい。それを許してもらえるなら、俺は絶対何があっても何に対してでも戦い抜きます。 まっすぐに俺を射抜いて、睨むより鋭く輝く瞳でそんなこと言われたら、もう。 自分から告白したのに改めて魂ごとごっそり全部持っていかれた気がした。 ま、夜の方はしっかりリードさせていただいたって言うか、男前の癖に経験少ないみたいでほぼまっさらだった体をそりゃもうじっくり俺色に染めさせて貰ったんだけどね。 これはある意味チャンスだ。庇護欲全開の恋人に守られるのも居心地が良いんだけど、ちょっとは見直して欲しい。それにほら、単純に恋人にはかっこいいって思ってて欲しいじゃない? それに未だにあっちの任務に呼び出されることもあるから、モノ自体は揃ってる。 「うっ!…その…いや、…やっぱりあの!」 今更ながら思い切りの良すぎる言動に躊躇したらしい。でもま、手遅れだけど。 「待ったはなーし。じゃ、ちょっと待っててね?」 寝室の扉を見せ付けるように閉めて、早速家主の許可も取らずに勝手においている荷物の中から暗部服を取り出した。 「なんて言ってくれるかなぁ」 …やたら露出の多い服を抱きしめながらそう一人ごちる姿がどんなに間抜けでも、それはもういまだかつてないほど真剣だった。 ***** いそいそ着替えて、顔が一番かっこよく見えるように面の角度まで完璧に整えてからふすまを開けた。 結構な音がしたけど、普段は怒るイルカ先生は気づかなかったようだ。 「わ…!すご…!かっこいいなぁ」 「そ?」 あーかわいい。今日はもうこの格好のまま持ち込んじゃおうかなー? 舞い上がる俺を、イルカ先生は笑顔で地獄に叩き落した。 「昔はかっこよかったんですねぇ…!」 なにそれ。昔…昔ってひどくない!?今でも現役バリバリですけど!ま、ホントはやめたいんだけど!いちゃつく時間減るから! 「…今、は…?」 ちょっと流石に悲しくなって、恐る恐る聞いてみた。 「…今は…か、かわいいですけど…!」 何真っ赤になってんの。何言わせんなそういうとこもかわいいんだよって。ちょっとねぇ。 嬉しいんですけど! 「イルカせんせ…!」 「わぁ!?アンタ何急に盛ってんですか…っんぁ…!?」 そうして、俺よりずっとかわいいくせにそんなかわいいことを言う、かわいいかわいいイルカ先生はそのまま俺の餌食になったんだけど。 …ま、自業自得ってヤツよねー? ちなみに後輩には早くただのかわいいカカシになりたいから、俺が完全に抜けられるように死ぬ気でがんばれって脅しておいた。 それから…ちゃんとバレンタインのときも協力しろってのも一緒に。ね? ********************************************************************************* 適当。 ではではー!ご意見、ご感想などお気軽にどうぞー! |