おいていかないで。 どこにいくの?なんで? 「とうさん」 「へあ?うお?カカシさん?」 しがみ付いたのが目的のものじゃなかったことに驚いて、それから自分の手が思ったよりもずいぶんと大きいことにも気がついた。 そうだ。あれはずっと昔の夢。今はちゃんとそばにいてくれる人がいる。 「…ごめん。寝ぼけちゃったみたい?」 笑ってごまかそうとしてみたのに、普段はあれだけ鈍い人がなぜかいきなりぎゅうぎゅうに抱きしめてくれた。なんでそういうところばっかり察しがいいんだかね。 この人が落ちてくれるまでそれはそれは時間も労力もかかったんだけど。主にこの人があまりにも鈍いって理由で。 かっこつかないじゃない?でも振り払えない。この人じゃなきゃもうだめなんだ。俺は。 「俺がいます。執念深い方なんで、何があっても爺になってもそれから先に死んじまっても、ずーっとずーっとそばにいますから。覚悟してください」 にかっと笑って、胸張ってそんなこと言ってくれちゃうんだもんね。 格好つけたくても、なんでかしらないけどこの人にはすぐばれちゃうし、今はただ与えられるぬくもりに素直に甘えることにした。 「うん」 あったかい。この人を手に入れるために弄した策もなにもかも、きっとたいしたことじゃなかった。 だってこんな人、絶対に他にいない。 「やー、なんていうか。その、へへ!」 妙にニヤニヤしてるっていうか、これ脂下がってるっていうんじゃないの? 眠りに落ちるまでは散々アンアン言わせてたのに、あっという間に形勢逆転って感じ。それもまた嫌じゃない。 なにせ相手がこの人だ。意外性ナンバーワン忍者の最初に師だけあって、どんなにこっちが先を読もうと、里中に手を回そうと、自然体でその全てを無にされることなんてしょっちゅうだった。それでもどうにかして手に入ったんだから、楽しまなきゃ損でしょ。 ま、単に惚れた弱みってやつかもしれないけど、ね? 「なぁに?教えて?」 耳元にささやいただけなのに、ちょっとだけ意趣返しにはなったらしい。あからさまに真っ赤になっちゃってまー。食っちゃいたいけど流石に今日はこれ以上やったら殺される。 耳弱いんだよねぇ。それと俺の声にも。…父さんからもらったものは、忍の才とこの外見と、それから声も似ているらしい。あんな夢をみたあとじゃ、素直に感謝なんていえないけど、ありがたい、のかもしれない。そう簡単に割り切れないくらいには複雑だけど。 「…あんたが、甘えるなんて珍しいし、その、かわいいってだけです!ほらもう寝る!」 恥ずかしさが限界にきたのか怒鳴り散らすほうが近所迷惑だと思うけど、その凛とした声も好きだから、素直に胸にしまわれることにした。 俺だけの大切な人。今度は幸せな夢を見られることを祈って瞳を閉じた。息苦しい位の抱擁に幸せだと感じる自分を、いつか、先に逝ってしまった人に告げられる日がくるなら。 それはもう嫌ってほど惚気てやろうと心に決めて。 ******************************************************************************** 適当。 キャンプファイヤーをおもいだしたので。リハビリ。 |