「おーい撤収するぞー」 「おー」 取り敢えずこれで任務は終了だ。 まあ報告までが任務だぞって教えてるし、そういう意味では里にはもどるまでは油断しないつもりではあるんだが…。 「それにしても大量だなぁ。どうすんだこれ」 これだけ大量の仕事をこなした後だと、もう開放されたいって思うのも無理はないはずだ。 「式飛ばしたし、すぐ回収されるんじゃないか?…まあどうやってどうするのかまではわからんが、依頼はここまでなんだし」 野生化した虎の回収だなんて言われたから、なんでそんな簡単な任務に中忍のスリーマンセルを、しかもこの人手の足りない時期にと思ったんだが、内容を確認したらとんでもなかった。 一匹や二匹ならいい。依頼書にあったのは少なくとも二十頭を越えると記されていた。 結局人員の確保もままならず、こうして俺まで借り出される羽目になった。 ぎりぎりまでアカデミーで授業をし、とっととこれを片付けたら殆ど休みもなく次の授業が待っている。 飛び込みの任務では良くあることだが、お陰でさすがにくたくただ。 帰ってからのことを思うとげんなりする。 それでもまあ前よりはましになった。寝る時間くらいは確保できるからな。 とは言え山中をうろつきまわるトラを誘引剤や幻術を使って引き寄せて、片っ端から眠らせるなんて任務は、俺の体力を根こそぎ奪い取ってくれた。 アカデミーを休まされてまで駆り出された仲間も、あらかたくたばっている。 何せ術を使いっぱなしだ。延々と誘われてやってくるトラを捕まえて眠らせて転がして…体力にそこそこ自信があるとは言え、キリがない。 結局トラの山ができたわけだが…彼らがどうしてこんなところでこんなに大量にいるのかまではわからなかった。 依頼人の申告よりも3倍いると思う。数えるのは途中で諦めたけどな。後で確認しなくちゃ…。 「おい!まだいたぞ!?」 「なんだって!?」 やっと誘い出される獣が途絶えたと思ったのに。 指差す方こうにいるのは真っ白なトラ。…っていうかアンタなにやってんだよ!? 幻術の張り巡らされたままの空間で、そのトラは俺に向かってまっすぐに飛びかかってきた。 「うわっなんだなんだ!?イルカ!」 「あーへーきだから。アンタなにやってんですか…」 全身をこすりつけてごろごろなつく姿はまさにトラなんだが、普段の様子を知っているだけに、いい年こいて甘えてくる成人男性ってどうなんだとしか思えなかった。 「だって!他のと遊んでて楽しそうなんだもん!」 毛まみれの忍服にさらに上書きするように、すりすりと白い毛がこすり付けられていく。 「お前の忍獣か…?」 「えーっと、あーまあなんつーかそんなようなもんだ」 「へ、へー?すごいの使ってんな?」 「そうだな。…とりあえず先に帰っててくれ。コイツ、甘えん坊で、こうなると言うこと聞かないんだよ」 「おう!わかった!」 「気をつけてなー!」 半笑いで手を振る俺に、同僚は苦笑しながら去って行った。 気をつけてもなにも、この男がやってきた理由など分かりきっている。 「ねぇ。したい」 「アンタいい加減変化といてくださいよ。食われそう」 「これから食うけど?ま、この格好じゃ痛い思いさせちゃうしねぇ?」 煙を立てて変化を解いた男が随分と汚れた格好であることにも驚いた。 「アンタなにやってたんですか…?」 「んー?実験場の破壊。かな?コイツら逃がしてるヤツがいたのは見たんだけど…まさか木の葉に依頼するなんてね」 「ってことは…!?」 「大丈夫。依頼人…っていうか、も確保したし。この子達はちゃんと連れて帰ってなんとかしてくれるってさ。暗示かけて人を襲わせるつもりだったらしいけど、お陰で幻術にすっごい弱いんだよねー?俺たちにはどっちにしろ効かない兵器ってこと」 事情はやっと飲み込めた。 こんな数確保してるってことは、城でも落すつもりだったんだろうけど、維持費の方がかかりそうだ。 「で、何で脱がすんですか」 「これからスルからでしょ?」 「外ではいやだってこの間も」 「じゃ、トラの上?」 「アンタ馬鹿ですか!?起きたらどうすんだ!」 「起きないでしょ?俺が幻術かければ」 「そういう問題じゃないだろ!」 「じゃ…帰ろっか?」 「最初からそうしてください…」 なんで疲れ切ってるのにさらに疲れることするために、こんな問答繰り広げなきゃならないんだ…。 まあ、その、したいってのには…いやいやいや!ダメだろ!報告が先だろ!…でも仲間が…? 「炭焼き小屋あったんだよねー?」 …ホンモノよりコイツの方がずっと手のかかる獣だよなぁ。 浮かれた声で行き先を告げた男に抱えられながら、また帰還が遅れるんだろうなと思った。 ********************************************************************************* 適当。 頭痛良くなったとです*。(*´Д`)。*°がんばらねば! ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |