とばっちり(適当)



「ねぇ。アレ、なに?」
やっと報告をまとめ終えたばかりの僕に、先輩が指差したのは深夜受付の中忍だった。
一緒に任務についても、疲れ果てている僕と違って先輩は余裕そうに見えるから不思議だよね。
今回は仲間が少なくて、庇わないですんだから体力の消耗も少なかったのかもしれないけど。
先輩は仲間がいると体を張って庇いすぎてチャクラ切れするのが常習化してるから。
「アレって…あの人ですか?深夜受付の中忍だと思いますよ」
名前までは知らない。そもそも直接あったこともない。僕たちの報告は受け付けなんて通さないしね。
でもよく見かける気がする。顔を横に薙ぐような派手な鼻傷があるくせに、人懐っこい笑顔をみせるせいだろうか。
先輩もそれで覚えているのかもしれない。普段ならあまり他人に関心を示さないひとだけど。
「ふぅん」
気のない返事はいつものことだ。きっとなにか気になることがあって、考え込んでいるんだろう。
先輩がこうなったら人の話なんて聞かない。だから僕はさっさと帰ることにした。
もちろん興味はある。でも悩んでいる先輩に付き合ってたら時間がいくらあっても足りないからね。
じっと待つのは任務中だけで十分だ。血臭の漂う体を洗い流して、さっさと寝てしまいたい。
「先輩。お先に失礼します」
報告が済めば別に一緒にいる必要はない。普段なら適当に散るか、怪我を隠す先輩を病院に放り込むかするだけだ。
今日は先輩もピンピンしてるんだから、僕が撤収しても問題ない…はずだ。
「ねぇ。テンゾウ」
こうして呼び止められなければ、だけどね。
先輩が考え込んだ後に出した結論は大抵僕たちの度肝を抜く。
敵を一掃する作戦だったり、敵の正体だったり…色々あるけど、外したことは殆どない。
つまりは、多分あの中忍についてなにか思いついたことがあるんだと思うんだけど。
「なんですか?」
ちょっと恐い。なにって…先輩の頭の中は何が詰まってるんだか知らないけど、時々本当にとんでもないことを思いつくからだ。
役に立つことが殆どだけど、今回は…どう考えても任務とは無関係だし。
冷や汗なんてかくほど落ちぶれちゃいない。でも勝手に暴れだす鼓動に関してはその限りじゃなかった。いくら平静を装っても、先輩にはバレバレだろう。
それを気にするような人じゃないけどね…。
「あの人、欲しいんだけどどうしよう」
やっぱり聞きたくなかった…!
「何言い出してるんですか!?」
「殺す?犯す?閉じ込める?どうしよう。あんなのだめ。なんであの人笑ってるの?」
その口ぶりは淡々としていても、ぎらつく気配は嫉妬に狂った男そのもの。
えーっと。どういうことだこれは。もしかしてもしかしなくても、あの中忍にほれ、た…とか?
「先輩。閉じ込めるのはだめです。ヤるなら同意を得てください」
「んー?どうしようか。殺しちゃえば俺だけのモノだけど。…ねぇ。これって愛ってヤツ?」
「殺すのなんてろんが…」
先輩くらいのステータスがあれば、ヤるだけでも箔がつくから、可能性はゼロじゃない。
でも全部を言い切る前に先輩は…。
「そ?…じゃ、聞いてくる」
「え!?ちょっ!まってくださいよ!」
あっという間に姿を消した先輩が中忍に暴言を吐いたのはすぐ後のこと。
…それからなにをどうやってか知らないけど、いつの間にか付き合い始めた二人に驚かされる羽目になったんだけど。
結構幸せそうだから、そっとしておくことにしている。…関わりたくないってのが本音だけどね。

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適当。
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